「建築」は何をつくるのか-4・補足

2009-08-04 10:42:29 | 設計法

[註記追加 23.04]

前回の屋根を二段構えにする理由の説明図が、上掲の上ニ段の図です。

上段の図は、屋根の大きさ:高さによって、実際に私たちが目にする姿が変わってくることを示したもので、例として「唐招提寺」の「当初想定断面図」と、「現状断面図」とで比較しています。
当初は、中国に倣った緩い勾配で、その場合は、おそらく現在見るような凛とした姿ではなく、非常に穏やかな、あるいはのどかな佇まいだったのではないか、と思います。
屋根の見え方によって、あたりの雰囲気がまったく変ってしまうのです。
なお、大きさはまったく違いますが、当初の姿に似た穏やか・のどかな感覚は、「新薬師寺本堂」で味わえるのではないかと思います。
詳しく見てはいませんが、中国の場合、このような点については、あまり神経を使っていないように見受けられます。

二段目の図の右側は、「破風尻を引く」例で、今井町・「豊田家」を例にしています。左側の図には、「通り」側の二段構えの屋根の勾配を記しています。「高木家」などよりも、勾配は急です。

   註 [註記追加 23.04]
      勾配の設定や破風尻をどの程度引くかは、工人の「勘」による、と
      考えてよいでしょう。
      日常の「見る」「観る」ことを通じて会得したものと思われます。

三段目の図は、「通り」に対して、二階を迫り出すつくりかた。
「中山道・妻籠宿(つまご・じゅく)」の例です。
山地ゆえに、元来は板葺きの緩い勾配の屋根です。
「通り」の幅は、今井町などに比べ、相当広い。そのため、迫り出してきても、天空が狭められることはなく、むしろ、落ち着いた佇まいをつくりだし、旅人を招き入れるような空間になっています。

次の三段の図版は、「妻入り」の町家の例です。
降雪地では、屋根から落ちる雪が出入口を塞ぐため、「平入り」:屋根が「通り」に向って傾斜するつくり:は避けざるを得ません。そのために「妻入り」にして、奥行の短い「庇」を設けています(もっとも、敷地内に落ちた雪の処理も大変です)。
この「庇」を、「通り」に沿ってつなげれば、「がんぎ」と呼ばれるアーケードになります。青森の弘前、黒石などに今でも残っています(青森では「こみせ」と呼ぶ場合もあるようです)。中越地域にもあります。

最下段は、群馬県・沼田にあった「妻入り」の商店です(現在は、移築されています)。
いずれの例も、「平入り」の町家と同じく、「通り」と「建屋」の関係に意を注いでいることが分ります。その結果、「通り」は単なる通路ではなくなるのです。

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