
[追記追加 11月20日 20.02]
以下の記事は、10日ほど前に載せるはずだったのですが、
例の「倒壊事件」で遅れ遅れになってしまいました。
折角急いで資料を送っていただいたのに、
送っていただいた方には、大変失礼いたしました。
福島県いわき市の「建築設計事務所 檜山延雄+まちづくり工房」の事務所ブログ「木の暮らしblog」(下記)に、次のような興味深い記事が載っていました。
http://ameblo.jp/3-mikan/
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
約16坪の木造住宅の重量を計算しました。
材木や、下地材、板金、タイル、サッシなど上物の重量は約 5.6t。
布基礎の鉄筋コンクリートや捨コン、砕石などの重量は約 17.5t。
建物全体の総重量は約 23.1t。
基礎の重量は、上物の約3倍です。
地面にかかる、建物全体の平米あたりの重量を、
基礎の底辺の面積から出したところ、1.5tでした。
その内、基礎を除いた上物の平米あたりの重量は、約 0.3t。
基礎部分の平米あたりの重量は、約 1.2t。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
早速、図面と計算書を参考のため、お送りいただきました。
2間×5間の横長の木造総二階。一階は根太天井、二階は小屋表し。二階は4坪が吹抜け、ゆえに総床面積16坪。
敷地が水田を埋め立てたところで、地盤調査をしたところ、1㎡あたりで1.5tの重さしか置けない土地。
そこで、設計した建物の重さを詳しく調べた結果が上のデータ。
建物の設計図もいただいていますが、実際にこれから建つ個人の建物ですから
図面は載せません。
それではトップが淋しいので、関係ありませんが、
いま紅葉になりだした神社の杜の写真を載せました。
建物の重さは、通常は、建築基準法施行例(84、85条)の規定する「荷重」の数値を基に計算することになっています。
その基準で計算してみます(〇〇Nは、各面の1㎡あたりの値)。
屋根:金属板 200N×71㎡=14200
木造の母屋 50N×71 = 3550
2階天井(板打上げ) 150N×36 = 5400
1階天井(珪カル敷き) 150N×18 = 2700
1階床 150N×33 = 4950
2階床 320N×18 = 5760
外壁(板+漆喰) 590N×90 =53100
積載荷重 1800N×53 =95400
合 計 185060N
1㎏≒9.8N ∴185060N≒18884㎏=18.9t
この荷重によって、基礎の計算をすることになるわけですが、これを支えるための基礎の重さは、上の計算式に含まれているのでしょうか?
そうでないとすると、この数字に基礎の重さ、おそらく20t近くを足した重さに堪える基礎、という事になります。
そうだとすると、大変なことになりますから、おそらく、あの数字で基礎を設計して大丈夫だという「経験値」なのでしょう。
実は、いままで真剣に計算したことがなかったのですが、あらためて考えて見ると、法令はこと細かく数値を並べてはいますが、実は about なのですね。
それにしても、約6t程度のものを支えるための基礎が、その約3倍、18t必要になる、どう考えても異常です。
軟弱地盤で盛んなベタ基礎にしたら、もっと大変なことになるわけです(ざっと略算すると、ベタ分が約6tほど追加されて、都合約24t。上物の4倍)。
そうだとすると、木造建築の場合、ベタ基礎は、ベタ基礎を支えるためにあるようなもの。軟弱地盤を考慮していることになるのかどうか、わけのわからないことになります。
結局、桧山氏は、独立基礎に設計変更したとのことで、次のようなメールをいただきました。
底盤1m角に300φの(L=600)束(つか)を18箇所にしました所、
基礎重量が8.3tとなりました。
布基礎の場合約17.5tでしたので9.2tも減りました。
この建物の場合、この独立基礎1ケ所で受け持つ荷重は1.3t/㎡となりました。
地耐力1.5t/㎡ですので計算上OKとなります。
独立基礎の方が床下の通風、メンテナンスも容易になります。
「布基礎」、最近はやりの「ベタ基礎」と、木造の基礎は
この二通りしかないようになってますが・・・・そんなことはありませんね。
状況に応じた考えができなくなっています。
残念です。
もしも、昔ながらに地形(地業)を確実丁寧に行い石場建て:礎石建てにしたならば(これについては、後で触れる「登米尋常高等小学校」の基礎地形が参考になると思います)8tものRCが不要になり、結局のところ、地面に載る総重量もほとんど上物だけになるでしょう。
しかし、それでは確認申請が通らない・・・!
「布基礎」は、悪い地盤での建物の不動沈下を防ぐための発案だったわけですが、逆に、「布基礎」の重さのために、基礎ごと傾くこともあり得るのです。ベタ基礎では、実際にそういう事例があるようです。
こうしてみると、あらためてわが国の木造建築が、石場建て:独立基礎でつくってきたのは、きわめて理に適った方法だったのです。
礎石の下の地形(地業)が確実に行われていれば、不同沈下は、先ず起きないのです。
実際、何度も例に出す奈良・今井町の「高木家」は、きわめて地盤が悪いにもかかわらず不同沈下らしいものは見当たらなかったといいますし、明治につくられた宮城県登米(とよま)の木造二階建ての「登米尋常高等小学校」も、地下水位のきわめて高い河川敷のような土地に建っていますが、この場合も切石の独立基礎:石場建てであるにもかかわらず、不同沈下はきわめて僅少だったといいます(下記記事参照)。建設後、現在、「高木家」は155年、「登米尋常高等小学校」は120年経ってます。
註 「トラス組・・・・古く、今もなお新鮮な技術-2:登米尋常高等小学校」
同建物の平面図と外観写真は、下記
「スナップ・・・・登米尋常高等小学校」
桧山氏の言われるように、木造建築の基礎は布基礎、あるいはベタ基礎にしなければならない、という現行法令の規定は、そしてその厳守を求めるのは、奇怪至極な話なのです。
別の見方をすれば、建て主は、余計なものに金を払っていることになります。
その分、地域の建設業が潤う?そういうのは少しも地域経済振興にはなりません。
やはり、なぜ布基礎推奨なのか、基礎とは何か、根本から考え直す必要があるのです。
追記 [追記追加 11月20日 20.02]
登米尋常高等小学校の基礎・地形(地業)について、解体修理にあたった方(ishi goro 氏)からコメントがありました。
しかし、コメントで隠れているのはもったいない内容ですので、記事の方にコピーします。
旧登米小学校校舎の背面には、現在の登米小学校の校庭があって、
ここに旧校舎の一部が張出していたことが古写真から判明しました。
それで、校庭の一部を発掘したところ、確かに古写真の通り、
入念な地業が現れたのです。
地業を確認しただけで、発掘は終わったのですが、
おそらくこの下には、小端建ての割クリ石が敷き詰められていたものと想像します。
当時の根切りは当然手堀りですから、地盤の堅さ、特に根切り底の堅さは
サウンディングなどしなくても土工の感覚でわかります。
実はこの感覚が非常に大切だったと思います。
根切り底をしっかりすることがいかに大切かを教えてくれた現場でした。
以下の記事は、10日ほど前に載せるはずだったのですが、
例の「倒壊事件」で遅れ遅れになってしまいました。
折角急いで資料を送っていただいたのに、
送っていただいた方には、大変失礼いたしました。
福島県いわき市の「建築設計事務所 檜山延雄+まちづくり工房」の事務所ブログ「木の暮らしblog」(下記)に、次のような興味深い記事が載っていました。
http://ameblo.jp/3-mikan/
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
約16坪の木造住宅の重量を計算しました。
材木や、下地材、板金、タイル、サッシなど上物の重量は約 5.6t。
布基礎の鉄筋コンクリートや捨コン、砕石などの重量は約 17.5t。
建物全体の総重量は約 23.1t。
基礎の重量は、上物の約3倍です。
地面にかかる、建物全体の平米あたりの重量を、
基礎の底辺の面積から出したところ、1.5tでした。
その内、基礎を除いた上物の平米あたりの重量は、約 0.3t。
基礎部分の平米あたりの重量は、約 1.2t。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
早速、図面と計算書を参考のため、お送りいただきました。
2間×5間の横長の木造総二階。一階は根太天井、二階は小屋表し。二階は4坪が吹抜け、ゆえに総床面積16坪。
敷地が水田を埋め立てたところで、地盤調査をしたところ、1㎡あたりで1.5tの重さしか置けない土地。
そこで、設計した建物の重さを詳しく調べた結果が上のデータ。
建物の設計図もいただいていますが、実際にこれから建つ個人の建物ですから
図面は載せません。
それではトップが淋しいので、関係ありませんが、
いま紅葉になりだした神社の杜の写真を載せました。
建物の重さは、通常は、建築基準法施行例(84、85条)の規定する「荷重」の数値を基に計算することになっています。
その基準で計算してみます(〇〇Nは、各面の1㎡あたりの値)。
屋根:金属板 200N×71㎡=14200
木造の母屋 50N×71 = 3550
2階天井(板打上げ) 150N×36 = 5400
1階天井(珪カル敷き) 150N×18 = 2700
1階床 150N×33 = 4950
2階床 320N×18 = 5760
外壁(板+漆喰) 590N×90 =53100
積載荷重 1800N×53 =95400
合 計 185060N
1㎏≒9.8N ∴185060N≒18884㎏=18.9t
この荷重によって、基礎の計算をすることになるわけですが、これを支えるための基礎の重さは、上の計算式に含まれているのでしょうか?
そうでないとすると、この数字に基礎の重さ、おそらく20t近くを足した重さに堪える基礎、という事になります。
そうだとすると、大変なことになりますから、おそらく、あの数字で基礎を設計して大丈夫だという「経験値」なのでしょう。
実は、いままで真剣に計算したことがなかったのですが、あらためて考えて見ると、法令はこと細かく数値を並べてはいますが、実は about なのですね。
それにしても、約6t程度のものを支えるための基礎が、その約3倍、18t必要になる、どう考えても異常です。
軟弱地盤で盛んなベタ基礎にしたら、もっと大変なことになるわけです(ざっと略算すると、ベタ分が約6tほど追加されて、都合約24t。上物の4倍)。
そうだとすると、木造建築の場合、ベタ基礎は、ベタ基礎を支えるためにあるようなもの。軟弱地盤を考慮していることになるのかどうか、わけのわからないことになります。
結局、桧山氏は、独立基礎に設計変更したとのことで、次のようなメールをいただきました。
底盤1m角に300φの(L=600)束(つか)を18箇所にしました所、
基礎重量が8.3tとなりました。
布基礎の場合約17.5tでしたので9.2tも減りました。
この建物の場合、この独立基礎1ケ所で受け持つ荷重は1.3t/㎡となりました。
地耐力1.5t/㎡ですので計算上OKとなります。
独立基礎の方が床下の通風、メンテナンスも容易になります。
「布基礎」、最近はやりの「ベタ基礎」と、木造の基礎は
この二通りしかないようになってますが・・・・そんなことはありませんね。
状況に応じた考えができなくなっています。
残念です。
もしも、昔ながらに地形(地業)を確実丁寧に行い石場建て:礎石建てにしたならば(これについては、後で触れる「登米尋常高等小学校」の基礎地形が参考になると思います)8tものRCが不要になり、結局のところ、地面に載る総重量もほとんど上物だけになるでしょう。
しかし、それでは確認申請が通らない・・・!
「布基礎」は、悪い地盤での建物の不動沈下を防ぐための発案だったわけですが、逆に、「布基礎」の重さのために、基礎ごと傾くこともあり得るのです。ベタ基礎では、実際にそういう事例があるようです。
こうしてみると、あらためてわが国の木造建築が、石場建て:独立基礎でつくってきたのは、きわめて理に適った方法だったのです。
礎石の下の地形(地業)が確実に行われていれば、不同沈下は、先ず起きないのです。
実際、何度も例に出す奈良・今井町の「高木家」は、きわめて地盤が悪いにもかかわらず不同沈下らしいものは見当たらなかったといいますし、明治につくられた宮城県登米(とよま)の木造二階建ての「登米尋常高等小学校」も、地下水位のきわめて高い河川敷のような土地に建っていますが、この場合も切石の独立基礎:石場建てであるにもかかわらず、不同沈下はきわめて僅少だったといいます(下記記事参照)。建設後、現在、「高木家」は155年、「登米尋常高等小学校」は120年経ってます。
註 「トラス組・・・・古く、今もなお新鮮な技術-2:登米尋常高等小学校」
同建物の平面図と外観写真は、下記
「スナップ・・・・登米尋常高等小学校」
桧山氏の言われるように、木造建築の基礎は布基礎、あるいはベタ基礎にしなければならない、という現行法令の規定は、そしてその厳守を求めるのは、奇怪至極な話なのです。
別の見方をすれば、建て主は、余計なものに金を払っていることになります。
その分、地域の建設業が潤う?そういうのは少しも地域経済振興にはなりません。
やはり、なぜ布基礎推奨なのか、基礎とは何か、根本から考え直す必要があるのです。
追記 [追記追加 11月20日 20.02]
登米尋常高等小学校の基礎・地形(地業)について、解体修理にあたった方(ishi goro 氏)からコメントがありました。
しかし、コメントで隠れているのはもったいない内容ですので、記事の方にコピーします。
旧登米小学校校舎の背面には、現在の登米小学校の校庭があって、
ここに旧校舎の一部が張出していたことが古写真から判明しました。
それで、校庭の一部を発掘したところ、確かに古写真の通り、
入念な地業が現れたのです。
地業を確認しただけで、発掘は終わったのですが、
おそらくこの下には、小端建ての割クリ石が敷き詰められていたものと想像します。
当時の根切りは当然手堀りですから、地盤の堅さ、特に根切り底の堅さは
サウンディングなどしなくても土工の感覚でわかります。
実はこの感覚が非常に大切だったと思います。
根切り底をしっかりすることがいかに大切かを教えてくれた現場でした。
現在の登米小学校の校庭があって、
ここに旧校舎の一部が張出していたことが
古写真から判明しました。
それで、校庭の一部を発掘したところ、
確かに古写真の通り、入念な地業が現れたのです。
地業を確認しただけで、発掘は終わったの
ですが、おそらくこの下には、小端建ての
割クリ石が敷き詰められていたものと想像します。
当時の根切りは当然手堀りですから、
地盤の堅さ、特に根切り底の堅さは
サウンディングなどしなくても土工の感
覚でわかります。
実はこの感覚が非常に大切だったと
思います。
根切り底をしっかりすることが
いかに大切かを教えてくれた現場でした。
貴重な体験と実感のご報告、本当にありがとうございます。
「当時の根切りは当然手堀りですから、地盤の堅さ、特に根切り底の堅さはサウンディングなどしなくても土工の感覚でわかります。
実はこの感覚が非常に大切だったと思います。」
何でも計算、計算至上主義?の方々には、1年から3年の現場実習が必修、などという「制度」ができないかな、などといつも思います。
申し訳ありませんでした。