「手描きの時代」育ち-5・・・・アアルトの設計図面 (4)

2008-03-12 08:47:06 | 設計法

[図版差替え:10.24]

上の図は、先に紹介の Saynatsalo Town Hall 、図書館部分の外壁開口部詳細図。
前掲書 ATELIER ALVAR AALTO からの転載。一部、文字書き込み。

ここは前面の道路から見れば2階。この外壁の煉瓦は、コンクリートの柱で支えられたスラブ上に積まれているものと考えられる。残念ながら、当該箇所の詳細断面は見つからないので、煉瓦壁下部:階下開口部上端との納まりが不明。階下のコンクリートの柱まわりの詳細は、P断面図の左側の図。

階上の図書館部分の重い煉瓦積壁面が、いわば宙に浮いている形になっていて、普通なら違和感を感じるものだが、不思議とそれはない。それに、もしこの部分が階下から煉瓦積だとすると、かえって重く見えてしまい、逆に違和感を感じるのではないだろうか。

図面は、木造の開口部の図面。縮尺は、書物上の縮尺。原図と同じかもしれない。L1、M1図の傍に、棒尺を書き込み追加した。

ガラスの押縁など、凝った形状をしている。この細工は手間がかかる。ガラスを押縁の「面」で押さえるのではなく、「角」で(つまり線で)押さえる工夫。面よりもガラスをしっかりと押さえられるのかもしれない。シーリング材を使っている気配はない。
銅板の水切など、日本のような吹き降りの雨だったら、簡単に水が侵入しそうな納まり。


このような図を見ると、この設計者は、何を考えてこういう形にするのか、推測する楽しみがある。彼は多分こんなことを考えていたのだ、と推定し、その目で全体を見わたして、その推定で間違いなさそうだ、と分ったときが楽しいのだ。

また、このくらいの縮尺の図は、描いていても楽しい。描きながら、たとえば、この場所の方立は、そこで起きるであろう事態に対して、どういう形状であるべきか、などといろいろ考えるからだ。単に見えがかりの「形」の格好よさを考えているのではない。

はじめてこの図を見たとき、断面のハッチングに驚いた覚えがある。ハッチングの線は、できるだけ等間隔にしなければならないと思い込んでいたからだ。あるいはそのように教えられていたのかもしれない。ところがこの図は、間隔不定のハッチング。しかも、その方が、なんとなくリアルではないか!また、コンクリートの表現もうまい。
それ以後、線の間隔など気にしなくなった。要は、「それらしく」見えるように描くことのようだ。

CADで図面を描くときには、どのような楽しみを味わえるのだろうか。

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