[図面の断面表記間違いのため、図面を差替えました:03月10日 8.33]
ATELIER ALVAR AALTO所載の Saynatsalo Town Hall の屋根の詳細図。ここに載せるために、編集し、文字も追加してある。
屋根は葺き材が二段に分かれ、上部が亜鉛メッキ鋼板の瓦棒葺き、下段が銅板の平葺き。
ただ、回廊が回っているコの字型の部分の屋根(図のC部)と、図書館の屋根は仕様が変っている。前者は雨樋がまわっているが、後者にはない。
図書館では、上の図のように、上段の亜鉛鍍鉄板部分の先端に堰板がV字型に設けられ、そこに集められた水を排水する形をとっている。言ってみれば、瓦棒葺き部分の先端そのものが樋。下段の銅板葺きの部分の水は垂れ流し。
なぜ二つの方法をとっているのか、よくわからない。
コの字部分の排水は、多分、中庭の池に集められるのだろう。図書館から池までは距離があるので、図書館の屋根の水を引くのをきらったのかもしれない。
Town Hall(議場)へと登る階段部分の屋根がD部。ここは銅板平葺き。
「けらば」や「水切」「水返し」などは銅板だが、それは手作業による加工。
水をどうやって切るか、どうやって侵入を防ぐかについて十分に配慮のなされた、現在の機械加工ではできない細かな細工がなされている。
特にD部の欄間開口上部への気遣いはまさに心憎い。各所の凹凸の加工はダテではない。いかにして水を切るか、押さえるか・・・入念に考えられている。
手描きの時代では、こういう部分を描くには、その部分の備えなければならない要件を考えながら描かなければならないから、自ずと、実例や先達の図面などを調べざるを得ない局面に立たされる。そうやって、「詳細」「納め方」を覚えていったのである。なかでも一番参考になったのは、職人さんの仕事を直かに見ることであった。
なお、このような配慮・細工は、かつて、日本の板金でも普通に行われていて、それと形はほとんど変らない。
現在は、シーリング材にたよるからか、きわめて粗っぽいつくりが多い。また各種建材メーカーから既製品も売り出されているが、それらも機械加工ゆえに、細かな配慮はどうしても欠けるようだ。
第一、設計自体が粗くなっているような気がする。その一つの理由は、最初から、若いときから、CADまかせになっている、CADにたよってしまっているからではないか、と私は思う。