政府がMRJを10機調達

 政府は、三菱重工業が主体となり事業化を進めている小型ジェット旅客機、MRJ(70~96席)を政府専用機として10機導入することを決めた模様。ANAが25機を発注したことから事業化を正式に決定したものの、その後は新たな受注が無く苦戦している売込みに弾みを付けようと云うことらしい。

 これまで、政府専用機としては747という超大型の機材だけで、以前から運用経費が少なくて済む小型機の導入が求められていたが、財政難から認められずに今に至っている経緯がある。そんな中でMRJの10機導入は大英断とも言える。ただ、10機と言うのはいささか多過ぎる気もするが、皇族や首相の輸送だけではなく災害派遣などにも使おうということなのだろう。いいことだ。

 今夏の北京オリンピックに際しては、当時の福田首相が航空自衛隊の多目的小型機U-4で北京入りしているが、いくら近いとは言っても日本の首相がU-4ではいささか寂しい。そういう意味でMRJの導入はGood Choiceなのだが、方や350席クラス、此方90席(実際には特別仕様で席数はもっと少なくなるはず)となると、中間にもう一機種、200席クラスの767が欲しくなると云うのは贅沢に過ぎるだろうか。

 ANAが25機購入、政府が10機導入となると、同クラスの機材をブラジル、エンブラエル社から購入することとしたJALへの非難の声が大きくなりそうだ(JALにとっての初号機となるエンブラエル170を既に受領したことは今月5日に書いている)。MRJは国が約500億の資金を投入することになっている、国家的一大プロジェクト。国策会社という歴史を持つJALがそのMRJに背を向けてエンブラエルを導入するのは、まずかろう。

 5日にも書いた通り、同クラスの機材としてCRJとエンブラエルを持つのはどう考えても効率が悪い。一方、MRJが実際にエアラインに引き渡されるのは5年後の2013年(A380や787の例でもわかるように、引渡しが大幅に遅れる可能性も多々ある)になることから、場合によっては、エンブラエルはMRJまでの「つなぎ」だったということになる可能性もあるのかな。


 例によって記事本体とは何の関係も無い今日の一枚は、いま時分の鬼灯(ほおずき)。
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何故ERJをJALが購入すると背信??? (MRJ?)
2008-10-22 11:38:03
ERJは、川崎重工等の日本企業が開発に参加している飛行機なのになんでJALがERJを購入すると背信行為なのか良くわかりません。 まだ飛んでもいないMRJをそんなに擁護するする人たちの気が知れません。ANA以外に購入先が決まらないのはそれなりの理由があると思います。日本製の飛行機が開発されることは喜ばしいことだけどMRJが本当に運用する航空会社が欲しがっているいるものかどうかは疑問です。 あまり新しい技術を採用しても中小の航空会社は扱えるのかな?
この手の技術を採用した飛行機を開発するには時期が早いような気もします。 
 
 
 
いろんな考え方 (郷秋)
2008-10-23 22:22:59
MRJ?さん、こんばんは&コメントありがとうございます。
いろんな考え方の方がいて良いわけですから、MRJ?さんの考え方に反論と云うことではなく、記事本文では十分に書く事が出来なかった私の考えを少しだけ書いてみたいと思います。

今の日本の航空産業は1950年代の日本の自動車産業に似ています。つまり、いすゞがヒルマン・ミンクスを、日野がルノー4CVを、日産がオースチンA40を、さらに三菱自動車の前身がジープをノックダウン生産していた頃ですね。ノックダウン生産で技術力と資本力をつけ、いよいよ自社ブランドの生産に移行していったのです。

今の日本の航空産業はボーイング、エアバス、ボンバルディア、エンブラエルなどの旅客機の一部分を作り力を蓄えているところですが、航空機産業は自動車と同様に、あるいはそれ以上に裾野が広い産業ですから、いつまでも「一部の製造」にとどまるのではなく限りなく近い将来に「日の丸ブランド」の完成機を送り出さなければなりません。そうしなければ、今の自動車産業のように裾野の広い、日本にとっての最重要な産業の一つとなることが出来ないからです。そして今、YS-11以来となる「日の丸ブランド」の航空機としてMRJが誕生しようとしているわけです。

自動車の場合には各メーカーがそれぞれ自社ブランドを立ち上げる事が出来ましたが、今の日本では航空機産業各社が独自に完成機メーカーとして名乗りを上げる事が出来るだけの技術力も経済的な意味での体力もないのです。ですから国の後押しを受けて、三菱を中核として資本系列に関係なく力を結集して最初の一機を送り出さなければならないのです。

その最初の一機がMRJです。もしMRJプロジェクトが成功すれば、第二、第三のMRJが登場することでしょう。また、ホンダジェットと競合する第二のビジネス機が登場するかも知れません。そのためにも、最初の一機であるMRJのために、日本の持てるすべての力を結集しなければならないと、郷秋<Gauche>は考えているのです。
 
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