頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

店名にツッコんでください75

2013-11-08 | laugh or let me die
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『死もまた我等なり』(クリフトン年代記 第2部)ジェフリー・アーチャー

2013-11-06 | books
稀代のストーリーテラー、ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記。第一作「時のみぞ知る」に続く第二作。

第一作を読んでいないとなんのこっちゃか分からないだろうし、そっちは読んだけれどこっちは読んでない人にとってはネタバレになってしまうので、詳しくは書かずに、感想のみ。

読んでいると、背筋が凍るような思いをし、また電車の中で読みながら思わずガッツポーズをしてしまっていた。これほど私の心を右へ左へと翻弄する小説は最近お目にかかってなかった。遠い昔のことを思いだした。

それほど本なんて面白いとは思ってなかった小学生時代。中学に入って読んだ松本清張の「点と線」でちょっと小説って面白いかもと思った。そして高木彬光の「白昼の死角」 との出会い。こんなに面白いものがこの世にあるのかと思った。それから松本清張、高木彬光、森村誠一や江戸川乱歩、横溝正史を読んでいった。夢野久作「ドグラ・マグラ」やジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」、ルシアン・ネイハムの「シャドー81」などを読んでいた高校時代。本を読むということに完全に没頭でき、そして多くを吸収し、素直に感動し、怒り、悲しんでいた時代。

あんな風な気持ちには、最近なってないなーと思っていたところで読んだ「時のみぞ知る」と「死もまた我等なり」

うおー。コチコチに硬くなった私の感性でもまだこんな風に心震えることがあるのかという喜びで胸がいっぱいになった。(こんな例が妥当か不明だけれど、78歳のおじいちゃんのアレがずっと機能していなかったのに、突如として機能すとことになった、その時の喜びに似ている。と想像するのだけれど、世のおじいちゃん、当たってますか?)

悲しみと喜びとドキドキにもっと翻弄されたい。実生活では全く誰にも何にも翻弄されたくないからこそ、フィクション上では翻弄されたいのだろうか。

今日の一曲

本作の原題はThe Sins Of The Father
罪ということで、



椎名林檎「罪と罰」

では、また。

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Podcastって聴きます?

2013-11-05 | days
iPodで音楽を聴く機会がすごく減ってしまっている。移動の時で、本を読むのが難しいときや、布団に入ってから寝付くまでの時間には、Podcastで録音したラジオ番組を、ほぼ毎日聴いている。去年ぐらいから。

終わってしまったけれと、小島慶子の「キラ☆キラ」は良かった。この番組が終わってから彼女はやたらとメディアに露出するようになったけれど、彼女の良さはラジオで最大限発揮されると思う。吉田豪のコーナーと日替わりレギュラーの宇多丸が良かった。番組終了後の同時間帯はは赤江珠緒の「たまむすび」に、代わったけれどこれもいい。最初はそれほどでもなかったのに、赤江珠緒というやや天然女性の魅力が溢れ出るようになってから猛烈にいい番組になった。こういうタイプの女性に自分が惹かれるということを教えてもらった。(テレビでの彼女はほとんど観ないので知らない。)日替わりのゲスト、カンニング竹山、博多大吉、山里亮太もいい。赤江さんが何か言った後の山ちゃんの切り返しの巧さによく感心する。カンニング竹山と大吉先生の毎週の話がいつも楽しみだ。キラ☆キラ時代から続く町山智浩の映画コーナーはいい。小田島隆の週刊日本の空気もいい。

小島慶子さんの時も赤江珠緒さんの時も、メインキャスターが夏休みの時に、ピンチヒッターとしてTBSの女子アナが日替わりでやって来る。それぞれ、すごくキレイな人にテレビでは見えるのだ。どんな話をするのか軽く期待をしていると、原稿を読んでいるうちはよいのだけれど、アドリブになると地が出てくる。この地がむき出しになった状態の時、私の記憶にある限り、ピンチヒッターたちにはかなり高い確率でちょっとなー、とがっかりさせられる。(品がなかったり、喋る内容が空虚だったり…) この夏休みは、小島慶子、赤江珠緒の二人ががいかに魅力にあふれた女性かを再認識する機会となってしまっているのだ。ラジオだと、美しい顔という武器が使えないので、声と内面という武器で勝負するしかなくなる。とまとめさせて頂きたい。女性(男性も?)の真の魅力はこんな形で露出されうるというまとめ方の方がよろしいだろうか。

また「荻上チキのSession-22」という番組も、すごくいい。時事ネタをかなり掘り下げてくれたり、全く知らないことを、教えてくれる。よくゲストで来るジャズミュージックの菊地成孔のロイヤルホストの話はいつも笑わせてくれる。アシスタントの女性が、声はすごくよいのだけれど、原稿がうまく読めなかったり絡み方がズレたりして難があるのがこの番組の、玉に瑕。

赤江さんとこのアシスタントの女性は、「おばちゃん」的な雰囲気を番組で出すという意味では同一なはずなのに、受けるレベルというか印象は全く違う。たぶん、他人との絶妙な距離感にあるのではないかと思っているのだけれど、この点、鋭意研究中。まあ、それ以前にこのアシスタントの喋りにはむしろ癒されると思うひともいるのだろうと想像するのであくまでも個人的な感じ方なのではあるけれど。

しかし、人の魅力についてモノ申している私は何様なのだろうか。そろそろ誰かに怒られるような気がする。

今日の一曲

バグルスで「ラジオスターの悲劇」



Video Killed The Radio Star そうか。映画やテレビがラジオの主権を奪ったという歌だったんだ。今なら、PC Killed The TV Starってとこだろうか。(いや、次男 Killed The TV Starか)

では、また。
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『白雪姫には死んでもらう』ネレ・ノイハウス

2013-11-03 | books
11年前の殺人事件当時は大学生だったトビアス・ザリトリウスが刑期を終えて、故郷の小さな町に戻ってきた。スポーツも勉強もできて人気者だったトビアスが二人の女性を殺害したとして有罪となったが本人はやっていないと主張した。遺体は見つからなかったが状況証拠のみで有罪となった。故郷に戻ると、両親は離婚し、父親だけが住む実家は荒廃していた。そして住民たちからは執拗な嫌がらせがはじまった。トビアスの味方は幼馴染ナターリエ。今は有名な女優となった。刑務所を出てから親切にしてくれている。もう一人はアメリー。パブでバイトをしている女子高生。親とうまくいっていない変わり者。昔の事件に興味を持って調べているうちにトビアスにシンパシーを感じるようになってきた。そして11年前の事件が蘇る。空軍基地の跡から少女の遺体が… そしてトビアスの母が歩道橋から突き落とされた… 二人の少女の殺人事件の真相は。小さな村の中の者たちの心が生み出す闇とは…

うーむ。実は最初50頁ほど読んで嫌になって読むのをやめてしまった。人の心の狭さに辟易してしまったのだ。実生活で触れることが多いから、かどうかは分からないが、私自身が作品をフェアー鑑賞できていないということがよく分かります。

それで他の本を読んで、ネレ・ノイハウスの「深い疵」がいたく面白かったことを思いだして、もう一度最初から読み直してみたら…

偏狭という、人間を表現する的確な、あまりにも的確な言葉と、業と宿縁という極めてジャパニーズ(のように感じる)な言葉が脳内をかけめぐっているうちにやめられないとまらないえびせん状態になってしまった。

前作のようなナチスネタはなく、トリックもなく、純粋警察ものミステリ+偏狭な村の人々の心理を扱う小説。読後、人間という生き物に対するとてつもない徒労感と、同時に救われるような気持、を感じた。

主人公の一人、オリヴァー刑事が、妻の不貞を疑い、そしてその疑惑が深まれば深まるほど、仕事に対する集中力がなくなってしまって、こんな男おるんかいな?と思ったが、女性作家による、ある種の男性に対するフィクション(願望?)なのかなとも思った。

偏狭、村八分、疑心、嫉妬、利己心、事なかれ主義、どす黒い闇がてんこ盛り状態。それがすごくいい。丸ごと、横溝正史に出てくるような雰囲気があって、もしかしてドイツって日本と似てる部分が多いのかな、なんて考えてみたりした。同盟国だったことは…関係ないか。しかし、現在の同盟国(?)アメリカよりも、ずっとドイツの方が日本に似ている部分が多いと思う。ドイツ小説はもしかすると我々の肌に合うのかも知れない。

今日の一曲

白雪姫と言えばホワイト。
大好きなバンド、ザ・ホワイト・ストライプスで「セブン・ネーション・アーミー」



ドラムとギターだけでこんな音が出るのか。

では、また。

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『女の庭』花房観音

2013-11-01 | books
京都の女子大時代のの恩師が亡くなった。かつての同級生5名が集まった。34歳。結婚して子供がいてそして体重を増やした者、夫と喫茶店を経営する者、男遊びがやめられない独身者、元モデルでプライドが先行する割に実が伴わない者、エステサロンを自営する者。セックスを中心として、5名それぞれの生活、人生を描く京都小説…

おっと。これはこれは意外な意外な収穫。パラパラめくると性表現ばかりなのでそっち系の本かと思っていた。確かにそっち系描写が多いのだけれど、そっちはあくまでも手段にすぎず、女の苦悩とサガをこれでもかと書いた傑作だった。

京都という舞台設定が全体の物語にうまーくはまる。東京ではうまくいかない。

それと表現の仕方。初めて読む作家の本だけれど、すごく好きになった。

「私は学生時代から、唯が羨ましかったよ。上手く言えないんだけれど、自分の欲しいものが明確にわかってて賢い人だなって尊敬してた」「唯は話をして楽しくて魅力的な女の子だったよ。他人におもねることも媚びることもなく、そういうところもかっこいいと思っていたし」「一番幸せそうだと思った。きちんと自分の道を、惑わされずに歩いているような気がして他の四人は-まあ、いいや、それは」

「私ね、恋愛やセックスだけでは女の人は幸せになれないと思うの。そういうものが一番とか、それ以上の幸せはないとか、確かにそういう人もいるだろうけれど、でも、それって結局、男ありきじゃない。女性誌もドラマも恋愛がどうとかセックスがどうとか、そんな特集ばかりで攻められているような気分になるよ。私みたいな女は、お前は幸せじゃない幸せになれないって、言われているみたい。恋愛やセックスそのものは女を幸せにしないよ。そう思いたいのは男。男がいい気になりたいだけ。女には男が必要だろって言いたいのは、男」


ふむ。媚びているように見える女性(男性も?)はすごく多いような気がする。そして自分が何を欲しているか明確じゃない人も、私を含めて少なくないと思う。だからこそなんだろう。また、はじめに恋愛とセックスありきな世界観は確かに、男性オリエンテッドな考えなのかも知れない。

この本を薦めてくれた方に御礼申し上げます。

今日の一曲

セックスがテーマなのでセックス・ピストルズにしようかと思ったけれど、孤高の天才、岡村靖幸にしよう。



男性から女性への気持ちをストレートに歌った「だいすき」で。登場人物5名への応援歌として送りたい。ところで、ラストの方で「ヘッポタイヤー」という謎の歌詞がある。いまだにどういう意味か分からない。

では、また。

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