「舟を編む」三浦しをん 光文社 2011年(初出CLASSY2009年11月号~2011年7月号)
玄武書房が新しい辞書、大渡海を作る。辞書編集37年のベテラン編集者荒木はもうすぐ定年退職。後輩を見つけ育てなければならない。社内を探すと辞書編集に向いた人材として営業部に馬締(まじめ)を見つけた。彼はまじめ一本やりの27歳。辞書編集をめぐる物語+恋愛…
いやいやいや。最初のつかみでノックダウンされてしまった。
なぜ荒木が辞書編集の仕事をすることになったのか昔を振り返っていた第7頁をめくったと思ったら次の頁では37年後の現在に時間が飛ぶ。巧い。この頁の使い方が巧い。文庫になったらどうなるか分からないけれど。最初の30頁くらいは馬締を引っ張ってくるところまで描かれるのだが、ここまでの展開の無駄のなさ、スムーズさ、くすぐり、しかし意外かつ先を期待させる展開、魅力的な人物造型、その全てが詰まっている。
本書の最後を見たら、CLASSYで小説を連載していたということにも驚いた。三浦しをんがファッション誌で…うーむ。
【恋愛】特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。(新明解国語辞典)
という引用がある。小説の内容から離れるけど、「やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて」とあるので、片思いは恋愛じゃないのか?と思った。片思いの場合、決してかなえられないものね。
あるいは、馬締が事情を全て喋ってしまうことについて、
馬締はマーライオンのごとく、持てる情報のすべてを流出した。(49頁より引用)
というこの比喩。マーライオンをこんなところで使うとは。世界三大ガッカリのひとつのマーライオンが。
前にも書いたかも知れないし、「まほろ駅前多田便利軒」や「風が強く吹いている」などの作品を読んでも、本作でも感じるのは、
三浦しをんは本当に男の気持ちを書くのが巧い女性作家だ。ということ。それは女として男のハートをゲットするのが巧いのとはまた別ではないかと彼女のスットコドッコイなエッセイを読むと思う。三浦しをんは新刊が出たら絶対読む作家であることはやはり変わらないが。
では、また。
舟を編む | |
三浦しをん | |
光文社 |
ブランチブックコーナーで取り上げられてました。
神去りなぁなぁ で初めて三浦しをんを読んで良かったので舟を編むも読んでみます。
三浦しをんさんは漫画を紹介していてBLなのかと思ってました。
黒薔薇アリスと海月姫を紹介してたことあって、それらの漫画にハマりました。
今年は漫画だと“河内 遥”の『夏雪ランデブー』読んでキュンキュン来てしまいました。
機会があったら是非読んで見て下さい。
彼女はBLマンガが大好物なそうですが、彼女が書く小説は必ずしもそうではなりません。男性の心を描写するのに長けているのはBL好きと関係があるのかも知れませんが。
夏草ランデブーですね。覚えておきます。感謝。
最初から捕まりました。
面白いですね。
キャラクター設定も見事だし。
目に浮かぶようだ。
猫とおばあちゃんとカグヤちゃんと。
辞書を作る。から言葉の引用と妄想タイム突入の馬締くんとか。いじる西岡。松本先生と荒木さんの関係。
みんなキャラ立ちしてますもんね。
文章のリズムがいいんだね。
軽快でね。
うんうん。いいながら、その感じわかるでぇ。
言葉の海を渡る。
思考する楽しさが味わえますね。
ゆっくり遅読で読んでます。
合間にアプリのケリ姫クエストやってます。
レベル上げをチマチマしてます。
おっしゃる通り、リズム、キャラ立ち、そしてストーリー展開全てがよい小説でした。
書店でも平積みになっているのをよく見かけます。こういう本が売れると嬉しいですね。
最後の数ページはスポーツした汗のような爽やかな涙を流しながら大渡海の完成を喜んでいました。
中盤はグッと来る場面があったりしても、ちょっとずつ笑いを足してくれるから良かったですよ。
シメる のくだりでは本読みながら大笑いしてしまって。
友人に貸そうと思います。
落語や漫才のテンポのような文章のリズムですよね。
読んでて
とても心地いいです。
三浦しをんが只者ではないのは、どの作品でも同じテンポで書いているわけじゃないところですね。作品によって文体やテンポを意図的に変えていてそれがまた作品の持つテイストによく合っています。
材料によって料理法を大胆に変える名シェフといったところでしょうか。