この人のエッセイを読んだことがある人なら、直木賞なんてあげたらマズイだろうと思わせる小説家、三浦しをん。妄想なら誰にも負けない。そんな彼女が「似合わない」スポーツを描こうとするのが
「風が強く吹いている」三浦しをん 新潮社 2006年
寛政大学に入学した蔵原走(かける) ふとした事から家賃3万円のアパートに入居できることになる。しかしそれは箱根駅伝へ出場するためのプロローグに過ぎなかった。
てな感じ。ネタバレを避ける必要もなく既にあらすじ紹介でネタバレされている。ので、軽くネタバレする。
4年生の清瀬は箱根駅伝に出場したい。で、才能のある者を探し、少しずつアパートに格安の家賃で入居させ食事の面倒までみてあげる。そして終に10人目の蔵原(高校時代有名なランナーだった)がやって来た。こっからは箱根駅伝に出場する「ため」にが描かれ、後に箱根駅伝に出場し「ちゃったら」が描かれる。
いやいや。こりゃうまい。箱根駅伝とは何ぞや?をきちんと説明しつつ、清瀬たち大学生の青春、恋愛、バカバカしさを上手く絡めながら、すぅっと箱根駅伝開始まで持って行く。三浦しをんはもしかすると稀代のストーリー・テラーなのかも知れない。エッセイで炸裂している妄想の欠片も見つからない。
こりゃ傑作だ。
閑話休題
人は見かけによるとか、よらないとか言う。エッセイを読んでこんな人なんだと思っていたら、小説では全く別の人が書いたよう、だなんてことがたまにある。それとはまた逆でエッセイやらビジュアルやらのイメージと作品のイメージが全く同じというような人も。北方謙三氏とか。
自分の生き方とか考えとか性格とかその他諸々を排除して、あくまでも作品は作品として描けるのもまた大きな才能なのかも知れない。サイコ・スリラーを書いてるから、あんな事を日頃「やりたくて仕方ない」と考えているわけじゃないし。
今日の教訓
箱根駅伝
スタートの瞬間は
まだ一度も
見た事がない
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