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平安夢柔話

いらっしゃいませ(^^)
管理人えりかの趣味のページ。歴史・平安文学・旅行記・音楽、日常などについて書いています。

史伝 後鳥羽院

2007-02-18 10:32:26 | 図書室1
 本日は、激動の時代の中、波瀾の生涯を送った天皇について書かれたこの本を紹介します。

☆史伝 後鳥羽院
 著者=目崎徳衞 発行=吉川弘文館 税込価格=2,730円

☆本の内容紹介
 異数の幸運によって帝位につき、天衣無縫の活動をしながら、一転して絶海の孤島に生を閉じた後鳥羽院の生涯を、史実に基づき描き出す。和歌などの才能にあふれた多芸多能な側面にもふれ、生き生きとした人間像に迫る。

[目次]
起の巻
 棺を蓋いて事定まらず/運命の四の宮/幼帝と権臣/十代の太上天皇
承の巻
 和歌への出発/『新古今集』成る/秀歌と秘曲/狂連歌と院近臣/鞠を蹴り武技を練り/習礼と歌論
転の巻
 北条殿か北条丸か/はこやの山の影/治天の君の苦悩/内裏再建の強行と抵抗/敗者の運命
結の巻
 『遠島御百首』の世界/人それぞれの戦後/歌道・仏道三昧の晩年/氏王

 この本は、長年にわたって後鳥羽院を研究して来られた目崎先生による後鳥羽院(1180~1239)の伝記です。後鳥羽院の生涯だけでなく、その時代背景、周囲の人々の動向にも触れられていて大変読み応えがあると思います

 彼は、以仁王の謀反の年に生まれ、4歳の時に、安徳天皇を奉じての平家の都落ちによって思いがけず皇位につきます。つまり、大変な幸運の星の下に生まれた…と言っても良い人物でした。そんな後鳥羽天皇は十代後半で土御門天皇に譲位します。その頃から側近の源通親によって和歌の道を教えられ、やがて夢中になっていきます。和歌への熱中が、やがて「新古今和歌集」を編む原動力となるわけです。それと同時に蹴鞠に熱中したり、石清水八幡宮に徒歩で登山したりもしていますので、文武両道に優れているという印象を受けます。
 また、この本は寵愛していた女房に死なれた後鳥羽院が、彼女を偲ぶ歌を詠むところから始まっていますので、なかなか情の厚い生年…というイメージも受けました。

 しかしそればかりではなく、後鳥羽院は宮中の古い行事を復興させたりもしています。つまり彼は、朝廷の権威を取り戻そうとしていたのでした。そんな彼が新興勢力の鎌倉幕府と戦うことになる……これはごく自然なことだったかもしれません。

 さらにこの本では、承久の変に至る朝廷の動きだけではなく、鎌倉幕府の動きにも詳しく触れられています。そして、戦いに敗れ、隠岐に流された後鳥羽院の晩年についても焦点が当てられています。後鳥羽院は孤独に耐えながら、「新古今和歌集」の改訂版を編むことになるのですが、彼にとって和歌がどんなに慰めになっていたかがひしひしと伝わって来るようで、切なくもあります。

 こうしてみると、後鳥羽院の生涯は源平合戦に始まり、鎌倉幕府の開幕から承久の変に至るまでの激動の時代を生き抜いた、波瀾の生涯だったと言えそうです。この本ではそんな後鳥羽院の生涯が、激動の時代と重ね合わせて描かれています。研究書という色の濃い本ですが、色々なエピソードも織り込まれていますし(私は、後鳥羽院と皇位を争った三の宮惟明親王のその後と、後鳥羽院のご落胤で、父とは対照的な生き方をした氏王が大変興味深かったです。)、詳しい注釈もついています。後鳥羽院や、鎌倉時代初期について知りたい方にはお薦めです。

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内親王ものがたり

2006-12-10 09:26:14 | 図書室1
 今回は、「尊子内親王」「選子内親王」を書く上でお世話になったこの本を紹介します。

☆内親王ものがたり
 著者・岩佐美代子 発行・岩波書店 税込み価格・3045円

☆本の内容紹介
 選ばれた最愛の姫君にして、最高貴の女性―内親王。神に捧げられ、和歌や物語と深いかかわりをもった内親王たちを軸にして、千二百年の歴史を描く。運命を甘受しつつも、けなげに美しく生きた人々の面影をうかびあがらせる。

[目次]
1 激動の斎宮
 一 斎宮とは
 二 二上山を仰ぐ斎宮―大伯内親王
 三 竜になった皇后―井上内親王
 四 夢かうつつかー恬子内親王
 五 黄金のおしどりー雅子内親王 

2 文雅の斎院
 一 斎院とは
 二 幽貞の漢詩人―有智子内親王
 三 絵本を見る尼姫宮―尊子内親王
 四 貫禄の大斎院ー選子内親王
 五 神垣の朝顔ー(示某)子内親王

3 政治と愛のはざまに
 一 院政期以後の内親王達
 二 ただ四の宮を―篤子内親王
 三 大器「春宮姉」―子内親王
 四 我のみ知りてー式子内親王
 五 心の底よ思はれずなれー南北朝期の内親王
 六 御いやさまの降嫁ー親子内親王

終章 


 この本は、伊勢斎宮、賀茂斎院として神に仕えた内親王たちを中心に、飛鳥時代から幕末に至るまでの皇室の歴史と、文学史を綴ったものです。

 取り上げられている内親王も、謀反の罪を着せられて殺された弟、大津皇子を想う哀切な歌を詠んだことで知られる大伯内親王、斎宮退下後に白壁王の妃となり、その白壁王が思いがけず光仁天皇となったことで皇后に立てられるものの、謀反の罪を着せられて廃后され、非業の最期を遂げる井上内親王、在原業平との秘められた恋で知られる恬子内親王、相思相愛の恋人と引き離されて斎宮に卜定され、斎宮退下後は別の男性の妻にならざるを得なかった雅子内親王、激動の時代の中で、数々の情熱的な恋の歌を詠んだ式子内親王、公武合体の名のもと、京から江戸の将軍家に降嫁した親子内親王など、バラエティーに富んでいます。一般的にはあまり知られていない南北朝期の内親王にも触れられているところも嬉しいです。また、彼女たちの著作や、関わった文学作品なども紹介されています。

 この本を読んで思ったことは、著者である岩佐美代子先生の、内親王一人一人に対する敬意と暖かい愛情が感じられたことです。
 神に仕えたり、政略結婚をさせられた内親王を、ただ可哀想…ととらえるのではなく、彼女たちが与えられたそれぞれの運命を受け入れ、精一杯生きていたのだなということが、この本を読むことでしみじみと理解できると思います。そしてそこには、彼女たちを見守る人たちの姿もかいま見られ、心が温まります。

 この本で取り上げられている内親王たちの喜びや悲しみは、現代に生きる私たちとも通じるものがあるような気がしました。歴史というものは遠い世界のものではなく、現代ともしっかりつながっているような気がします。そんな彼女たちの生涯を、この本でしみじみと味わってみて下さい。お薦めです。


源頼朝の世界

2006-11-20 09:29:08 | 図書室1
 先日、「図書室3」のカテゴリで紹介した「北条政子」を読んで、頼朝や政子とその周辺人物、東国武士団についてもちょっと興味が出てきたので、同じ永井路子さんの著書であるこの本を読んでみました。面白かったのでこちらで紹介いたします。

☆源頼朝の世界
 著者・永井路子 発行・中央公論新社 中公文庫 価格・680円

本の内容紹介
 東国武士団の棟梁源頼朝を変革の時代の中に描く。ー平氏による貴族政権に立ち向かってついに壊滅させ、はなやかに歴史の表舞台におどりでた頼朝と、北条政子や東国武者らをめぐる権謀術数うずまく激烈な抗争のドラマ。

☆もくじ

源頼朝を巡る人びと
 源 頼朝
 北条政子
 頼家と実朝
 比企尼と阿波局
 北条義時

逞しき東国武者
 三浦一族
 伊豆の軍団
 荒野のつわものたち

西国の権謀家たち
 後白河法皇
 源 通親
 後鳥羽院と藤原定家

あとがき/解説


 この本は、鎌倉幕府の創設者である源頼朝と、彼を巡る多くの人々の生の軌跡を紹介したものです。

 永井路子さんの歴史エッセー全般に言えることなのですが、この本もその例にもれず、人物が生き生きしていてとても身近に感じられ、かつ斬新でわかりやすいです。

 源頼朝は、「この人のためなら何かしてあげたい」と思わせる雰囲気を持っており、それが彼の運の良さにつながった…という永井さんの頼朝論は面白かったです。
 また、彼を取り巻く東国武士団、特に、鎌倉幕府の主導権を巡って北条氏に70年にわたる戦いを挑んだ三浦一族に興味を引かれました。

 頼朝と東国武士団を結ぶパイプ役として、乳母の比企尼の存在があったというのも興味深いです。つまり彼女の養子が比企能員、娘婿が河越重頼と安達盛長であり、彼らは流人時代から頼朝に奉仕していたようなのです。河越重頼は娘が義経に嫁いだ関係で失脚してしまいますが、比企能員と安達盛長はのちに、鎌倉幕府の重要人物になるのですよね。比企尼の存在がどんなに大きかったかがわかるというものです。今まで私は、東国武士団に関してはあまり関心を持っていなかったのですが、なかなか魅力的で面白い人が多いなととても新鮮に感じました。永井さんも本文中で述べていますが、新しい時代を作っていくのはこういう人たちなのだな…と強く感じました。

 それと同時に、私が以前から関心を持っている京の朝廷側の人たちについても触れられていて嬉しかったです。
 激動の時代の中で右往左往していたような所がある後白河法皇、権力に対しては常に積極的な源通親…。特に、「通親は鎌倉幕府を倒そうという野望を持っていたのかもしれないが、彼の本質は朝廷や貴族の権威という古い体質であり、新しい時代の担い手にはならなかったのではないか。」という永井さんの見解はなるほどと思いました。
 藤原定家と後鳥羽院との息詰まるような人間ドラマも面白かったです。

 この本を読んで思ったことは、「鎌倉幕府は最初から北条氏が権力を握っていたわけではない。」「京の朝廷を抜きにして、初期の鎌倉幕府は語れない。」の二点です。つまり初期の鎌倉幕府は、京と鎌倉の多くの人が関わり合い、絡み合って成り立っていたということでしょうか。この本でぜひ、そんな魅力的な人たちのいきざまを堪能してみて下さい。

平安の春

2006-09-03 13:11:03 | 図書室1
 本日は、平安~鎌倉前期の人間模様を描いた学術エッセーを紹介いたします。

☆平安の春 (講談社学術文庫 1360)
 著者・角田文衞 発行・講談社 価格・1008円(本体960円)

本の紹介文
 藤原氏栄華の礎を築き、数々の美徳をそなえた好人物とされる師輔の真の姿を浮彫りにし、専制君主白河法皇の激しくも淋しい生涯に迫る…。後宮の栄光に溢れた優麗典雅の生活あり、争いに敗れ鄙に隠栖する悲しき女性も垣間見える。平安の都を舞台に繰り広げられる人間模様を、多くの文献の読み込みと深い洞察で語る学術エッセイ。

[目次]
第1部 春にかすめる
 平安の春
 師輔なる人物
 花山天皇と熊野 
 紫女と清女
 「源氏物語」と北山
 清少納言と平安京
 王朝貴族の恋
 王朝貴族の婚姻圏
 心やさしき宇治殿 ー藤原頼通

第2部 花の散るのみ
 四条宮下野
 白河法皇
 院宮の女房たち
 三人の野心家 ー忠通 頼長 信西
 沙弥・西念の悲願
 弥陀の浄土
 信夫荘司季春の死

第3部 春し暮れなば
 薄倖の后
 義経と平泉
 実朝の首
 寂蓮の愚息
 恨めしい応仁の乱
 清十郎
 女のいのち

あとがき

面白くてやめられない名著      瀬戸内寂聴


 私とこの本との出会いは今から3年半ほど前のことでした。当時よく出入りしていたあるサイトの書籍紹介コーナーでこの本が紹介されていたのです。そこで、「なかなか面白そう。読んでみたい。」と思って購入しました。
 そして、この本には清少納言が定子皇后崩御後、彼女所生の脩子内親王や(女美)子内親王に仕えていたこと、紫式部の没年が1031年であることなど、あっと驚くようなことが書いてあってびっくりしたのを思い出します。平安~鎌倉初期に活躍した人物たちのことが生き生きと描かれており、学術エッセーながら小説のように楽しく読むことができました。

 今回、この項を書くために再読をしたのですが、初めて読んだとき以上に堪能できたように思えます。

 特に心引かれたのは、この本の中でも最も紙数を費やして書かれていた藤原師輔(908~960)と白河法皇(1053~1129)についての項です。

 有能な政治家でありながらも、実は兄実頼に対して対抗意識を持っており、その証として3人の内親王を次々と妻に迎えた師輔。その師輔の子孫たちが、藤原摂関家の栄華を極めることを考えると興味深く感じます。
 また、専制君主というイメージが強い白河法皇ですが、中宮賢子、、祇園女御、藤原璋子などの女性たちに対する愛情が尋常なものではなかったこと、特に璋子への愛情は、のちの歴史を変えてしまったことなども書かれていました。さらに白川法王は信仰心に厚く、学問にも優れていたという一面もあったようです。白河法皇の一代記を小説やドラマにしたら面白いだろうな…と読みながらふと思いました。

 その他、義経の忠実な家臣であった佐藤兄弟の祖父に当たる佐藤季春が藤原基衡に対して忠義を尽くした話、義経の義父藤原長成と秀衡の舅藤原基成の関係など、義経や平泉に関する話も書かれています。四条宮下野や建礼門院など、後宮の女性たちに関する項目もとても読み応えがありました。愛憎あり、陰謀あり……、巻末で瀬戸内寂聴さんも書いておられますが、面白くてやめられない本です。

 この本は、一つ一つの項目が独立していますので、自分の興味の赴くままにどこから読んでも楽しむことができます。何よりも、登場人物が生き生きしているので、その人物が私たちの身近にいるような感覚を味わうことができると思います。どうかこの本で、角田先生の描かれる平安~鎌倉前期の人間模様を堪能してみて下さい。

紫式部伝

2006-07-01 00:25:49 | 図書室1
 今回は、1ヶ月ほど前に読んだ紫式部に関する本を紹介いたします。

☆紫式部伝 源氏物語はいつ、いかにして書かれたか
著者・斎藤正昭 発行・笠間書院
税込価格 ・2,310円


 では、本の内容と目次を紹介いたします。

 従来、顧みられることのなかった勧修寺流・具平親王・帚木三帖をキーワードに、紫式部の生涯を通して浮かびあがった、源氏物語成立の謎に迫る。

[目次]
家系―勧修寺流との繋がり/家族と出生/幼少期から少女期/少女期から青春期/越前下向以前/越前下向/結婚/結婚期/寡居期(上)/寡居期(下)帚木三帖の誕生/初出仕/「桐壺」巻の誕生/土御門邸行啓/御冊子作り/玉鬘十帖の誕生/晩期/「若菜上」巻以降の『源氏物語』/没後


 この本は、紫式部の生涯を、「紫式部日記」や「紫式部集」などを参考にしながら、著者独自の見解によってまとめられたものです。研究書という色の濃い本ですが、一般の読者も対象にしているとのことです。そのためか、「紫式部日記」や「紫式部集」などの古典の原文が多数引用されていますが、それぞれ現代語訳と解説がついているので、とてもわかりやすいです。

 紫式部の生涯だけでなく、彼女の家系、周囲の人々についてのエピソードも書かれており、大変興味深く感じました。

 またこの本では、本の紹介文にもあるように「源氏物語」の成立過程についてにも触れられていました。そこで、成立過程について書かれていることを簡単に列挙してみますね。

☆紫式部は少女時代、具平親王の許で宮仕えをしていた。

☆帚木三帖『帚木』『空蝉』『夕顔』は寡居期に書かれた。そして、この三帖における光源氏のモデルは具平親王である。『帚木』『空蝉』の光源氏と伊予介・紀伊守るの関係は、具平親王と為時・為頼の主従関係を連想させられる。また、『夕顔』における夕顔怪死事件は、具平親王の愛妾であった雑仕女の怪死事件と状況が似ている。

☆『蓬生』『関屋』と『玉鬘十帖』を除く「藤裏葉」までの巻は、一条天皇が土御門に行幸した寛弘五年十一月までに成立した。そのうちのラストの二帖『梅枝』と『藤裏葉』は、敦成親王誕生から一条天皇の土御門殿行幸の頃に書かれたのではないか。

☆『玉鬘十帖』は、寛弘七年の道長の次女妍子の春宮入内のために献上する目的で書かれたのではないか。

☆『若菜上』以降は、その後4年間の間に執筆された。しかし、紫式部が一番最後に執筆したのは『夢浮橋』ではなく『竹河』である。

 「源氏物語」五十四帖がどのような順序で書かれたかについては諸説あり、当時の文献が新しく発見されない限りは推測の域を出ないものかもしれません。それでも私はなぜか「源氏物語」の成立過程には興味があります。紫式部という女性に心ひかれると同時に、「源氏物語」をリアルタイムで読んでいた千年前の人たちと同じ順序で読んでみたい…という欲求があるせいなのかもしれませんが…。この本に書かれた「源氏物語」の成立過程についても、諸説あるうちの一つなのかもしれませんが、私にとっては「なるほど…」と新しい発見の連続でした。

 この「紫式部伝」を読んで、「源氏物語」や紫式部にさらに興味が出てきました。「源氏物語」や「紫式部日記」、3年ほど前に読んだ紫式部の伝記「人物叢書 紫式部(今井源衛 吉川弘文館)」もまた読み返してみたいです。

平安の都

2006-05-13 15:35:21 | 図書室1
 本日は、平安京と平安時代に関する本を紹介します。

☆平安の都 (朝日選書 515)
角田文衞/編著
発行・朝日新聞社 定価・1631円


[要旨]
独創的文化を生んだ理想郷の風土と人と歴史。平安京ハンドブック。

 では、目次と内容を紹介いたします。なお、各項目の☆以降はえりかによる紹介文です。

 冒頭に「平安京への誘い」という文章が掲載されています。桓武天皇が平安遷都を行った延暦十三年(794)から約400年にわたる平安京の変遷を解説しています。

平安宮中
☆平安京の北部を占めていた大内裏とはどのような場所だったのでしょうか?清涼殿、大極殿などについて、大内裏にまつわる興味深いエピソードも掲載されています。

平安京の内と外
☆土御門殿、河原院、などの貴族の邸宅、大学寮、施薬院などの施設、、さらには法住寺殿や鳥羽殿などの平安京外の御所の様子やエピソードが書かれています。

平安京の寺と社と祭り
☆東寺と西寺、賀茂祭(葵祭)についてなど、文字通り京都の寺や神社、お祭りについて書かれています。

平安人の暮らし
☆千年前の平安京の人たちは、どのような暮らしをしていたのでしょうか?貴族から庶民に至るまで、今では考えられないような風習が数多くありました。平安人の暮らしについて興味深く解説されています。

平安京人物志
☆桓武天皇、淳和天皇、、花山天皇、小一条院、在原業平、菅原道真、清少納言、、紫式部、和泉式部、源成信、中関白家の人々、兼通と兼家など、平安京を彩った魅力的な人物について解説されています。

用語解説
あとがき
皇室関係系図/藤原氏系図/平安京条坊図/平安京大内裏図/平安宮内裏図


 平成六年(1994)に、平安遷都1200年を記念して「平安時代史事典」と「平安京提要」の2冊の本が企画、出版されました。しかしこの2冊の本は主として研究者を対象としたもので、一般読者の「平安京や平安時代について平易に知りたい」という要求をあまり満たしていないとのことです。そこで、上の2冊の本を編集なさった角田文衞先生をはじめとする十数人の先生方が一般の人向けに共同で執筆されたのがこの本です。

 この本には、平安京や平安時代についての百余りの興味深いお話が、「平安宮中」以下五つの章に分けられて掲載されています。一つのお話が見開き2ページで掲載されているので、自分の興味の赴くままに好きなところから読むことができます。
 そして何よりも良いところは、専門の先生が書かれているので内容が信頼できますし、それでいて大変わかりやすいところです。

 私が一番興味を引かれたのは「平安京の内と外」の章に収められているエピソードです。土御門殿、高陽院、河原院などの貴族の邸宅はもちろん、羅城門や朱雀門、施薬院や大学寮など、巻末の「平安京条坊図」を参照しながら読むと、まるで平安京を散歩しているような気分になることができました。平安京の外にある御所や施設の話も面白かったです。これらの邸宅や施設の跡をぜひ訪れてみたいです。

 その他の章にも、興味深いエピソードが満載です。平安京について知りたい方にはもちろん、平安時代への入門書としてもお薦めの1冊です。

新・歴史をさわがせた女たち

2006-02-02 21:51:37 | 図書室1
 本日は、私が「この世をば」を読むきっかけを作って下さった本を紹介したいと思います。「この世をば」は私が平安時代に興味を持つきっかけになった小説ですので、本日紹介する本は文字通り私の原点とも言えそうです。

☆新・歴史をさわがせた女たち
 著者・永井路子 発行・文藝春秋 本体価格・470円

 では、目次と内容を紹介しますね。なお、各項目の☆以降はえりかによる紹介文です。

謎の女帝第1号・推古天皇
☆日本の女帝第一号と言われる推古天皇は、非常に謎の多い女性です。彼女が女帝となることになった経緯、馬子や聖徳太子との関係など、様々な謎に迫ります。

幻の女王・額田王
☆中大兄皇子・大海人皇子兄弟に愛された美貌の歌人額田王。彼女の本当の気持ちは?謎の多い女流歌人の人間像に迫ります。
 
美貌の女帝・元正天皇
☆母・元明天皇のあとを受けて皇位についた元正天皇。とかく影が薄いと言われるこの女帝の生涯を愛情を込めて描いています。

王朝の悪女に乾杯!・伊勢
☆百人一首19番目の歌の作者伊勢は、貴族や皇子や天皇と恋をし、数多くの恋の歌を残しました。そんな彼女のたくましい生き方に迫ります。

王朝の長寿VIP・藤原彰子の系譜
☆祖母86歳、母90歳、本人87歳…。短命の印象の強い平安時代に、女三代にわたってこれだけの長寿を保った系譜がありました。しかも3人とも歴史上にしっかり本名を残しているのです。一条天皇中宮藤原彰子の系譜に迫ります。

王朝の落ちこぼれ女御・藤原元子
☆藤原道長が栄華を極めた影に、一人の不運な女御がいました。しかし彼女にはあっと驚く後半生が…。一条天皇女御藤原元子と、平安中期の宮廷の勢力争いを描きます。

謎の女富豪・上西門院統子・八条院子
☆親からばく大な財産を譲られ、生涯独身を通した鳥羽天皇の2人の皇女。2人の生き方を通して、源平時代の政争に迫ります。

美女に愛された美女・小督
☆「平家物語」に描かれた悲恋のヒロイン小督。しかし史実は「平家物語」とはだいぶ違うようです。小督の懐妊を巡って渦巻く宮廷の勢力争いに迫ります。

平家一門の肝っ玉母さん・平時子
☆壇ノ浦にて、「海の底にも都がございます。」と言って幼い安徳天皇と供に海底に沈んだ清盛の妻・時子。平家の幕引きをすることとなった気丈な女性の生涯を描きます。

体験的戦国経営学・京極お初
☆京極高次室のお初の姉は豊臣秀吉側室淀殿。妹は徳川二代将軍秀忠の御台所お江。2人の影に隠れて一見目立たないお初ですが、婚家の京極家を再興し、ある時は姉に、ある時は妹にすり寄って戦国乱世を強くたくましく生きたのでした。そんなお初の生涯を描きます。

 優雅なる殺生石・東福門院和子
☆徳川秀忠とお江の末娘として産まれた和子は、政略によって後水尾天皇に入内することになります。江戸幕府と朝廷を結びつけることとなった和子の生涯。

大奥スキャンダルの女王・絵島
☆江戸時代中期、六代将軍徳川家宣の御台所天永院と、側室月光院との勢力争いに巻き込まれ、スキャンダル女中のレッテルを押され、はからずも流罪となった絵島の悲運の生涯。

 この本は、著者の永井路子さんが歴史と関わっていく中で新たに見えてきた12人の女性を取り上げ、その生涯や人物像に迫った歴史エッセーです。内容も大変わかりやすく、小説のように気軽に読めると思います。

 私がこの本と出会ったのは約20年前です。中学時代以来、日本史から離れていた私は、書店で何気なくこの本を手に取り、目次を見てわくわくしたのを思い出します。そこには推古天皇、額田王、平時子といったなつかしい人たちの名前が…。中学生の時、「万葉集」や「平家物語」が大好きだった気持ちを思い出し、即この本を購入しました。そして読み始めてみて、「日本史上にこんな面白い女性がたくさんいたんだ~。」と再びわくわくしました。

 上で挙げたなつかしい人たちはもちろんのこと、今まで名前を知らなかった女性たちの生き方にも感動しました。「この世をば」を読むきっかけとなった藤原彰子や藤原元子、伊勢や京極お初のたくましい生き方……。読んでいて、女性達一人一人の顔が見えるような気がして、とても身近に感じました。日本史上の女性達の生き方について知りたい方にはもちろん、歴史の入門書としてもお薦めの1冊です。

 なお、タイトルに「新」の文字がついていることから、「歴史を騒がせた女たち」という本も出ているのでは……、と思われた方、たくさんいらっしゃると思います。そうなのです、同じ永井路子さんの著書で、「歴史をさわがせた女たち」という本がしっかり出版されていますので、ご安心下さい。
 「歴史をさわがせた女たち」のシリーズは、「日本編」「外国編」「庶民編」と3冊の本が文春文庫より出版されています。どの本も大変興味深い内容ですので、興味がございましたらぜひどうぞ♪

武家の棟梁・源氏はなぜ滅んだのか

2006-01-06 00:02:39 | 図書室1
 本日は、大河ドラマ「義経」の感想や考察を書く上で、特に源氏関係の記事を書いたときに参考にさせていただいたこの本を紹介します。

☆武家の棟梁・源氏はなぜ滅んだのか
 野口 実・著 新人物往来社 本体2800円

☆目次
八幡太郎は恐ろしや(源義家の実像〉
 後三年合戦 源氏の奥州軍事介入
 作られた英雄 源義家
城外の乱逆 (義平と義賢の闘い〉
 大蔵館の奇襲
武者の世になりにけるなり〈保元・平治の乱と為義・義朝〉
 保元・平治の乱6のなぜ?
 平治の乱
 平治の乱で敗走する源義朝の一日
源氏、平氏相並びて(武家の棟梁義朝と平清盛〉
 平清盛と源義朝-源平相並ばず-
 源義朝の妻藤原季範女
日本国第一の大天狗(後白河院と源氏〉
 後白河院と清和源氏
歎きて二十年の春秋を送り〈伊豆の流人頼朝〉
 頼朝の伊豆配流は清盛の失策か
 頼朝の配流先が海の孤島でなく、「陣」の蛭ケ小島だったのは?
 伊豆北条館で挙兵する源頼朝の一日
 黄瀬川の対面で、頼朝が義経を「弟」と確認できたのは?
 頼朝逆襲! 成功の条件
骨肉同胞の俵すでに空しきに似たり〈範頬と義経の悲劇〉
 源範頼の軌跡-その政治的立場と緑戚・家人に関する覚書-
 義経の郎等たち
 源義経の妻 河越重頼女・平時忠女
武芸は廃るるに似たり〈将軍実朝と法印貞暁〉
 源氏滅亡への途
在京の武士ことごとく以て馳せ下りおわんぬ〈源氏の御台所〉
 竹御所小論ー鎌倉幕府政治史上における再評価ー
 (付論) 武家の棟梁の都
 源氏の軍事基盤、京都・鎌倉・平泉
 関係略年表
 出典一覧
あとがき


 目次を御覧頂いておわかりだと思いますが、源義家から実朝・竹御所までの清和源氏の歴史について書かれた本です。
 源義家と後三年の役から始まり、義賢と義平の闘い、義朝と平治の乱、頼朝、範頼、義経、さらに実朝暗殺後の源氏の軌跡まで、様々な論考が収められています。特に、義朝の妻と義経の妻の項は興味深く、大河感想を書く上でも大変参考になりました。

 さらにこの本にて、私は長い間疑問を持っていた2つのことが解決しました。

 その一つは、清原真衡の養子となった平成衡についてです。

 平成衡は源頼義(義家の父)の娘と政略結婚し、清原真衡の養子となった人物です。このエピソードは平成5年から6年にかけて放映された大河ドラマ「炎立つ」にも取り上げられていました。しかしドラマでは、後三年の役のあとの彼の消息については何も語られませんでした。

 この本にはその成衡の消息が紹介されているのです。
 成衡は後三年の役後、妻の兄弟である義家の庇護を受けて下野国で暮らしていました。しかし、義家はある時期になると成衡の存在が不用になり、在地の豪族に命じて彼を討たせてしまったようです。ある程度予想はしていましたが、成衡の末路は悲惨だったようです。

 二つ目は、鎌倉四代将軍藤原頼経の御台所、竹御所についてです。

 竹御所は二代将軍源頼家の娘で、「源氏嫡流最後の生き残り」と言われた女性です。政略によって15歳も年下の藤原頼経と結婚させられ、彼との間の子を死産して間もなく、31歳で世を去っています。

 私は彼女については、小説等でその生涯についてはある程度知っていたのですが、「政略結婚の犠牲になった悲劇の女性、何か弱々しくてはかない女性」というイメージを持っていました。しかし一方では、「頼家の娘として産まれた彼女が、そんなに弱々しいわけがない」という疑問も持っていたのです。

 この本に収められた「竹御所小論」によると、彼女は北条政子の後継者として、鎌倉幕府内で重要な位置を占めていたらしいのです。そこには、悲劇の女性とはほど遠い、権力を持ったたくましい女性の姿がありました。
 確かに彼女の生涯は短く、ある意味では悲運の女性とも言えるかもしれませんが、私には鎌倉幕府内で自らの才能を発揮し、強くたくましく生きていた女性のように思えてきました。

 他にも、この本は読みどころが満載です。源氏がお好きな方、興味のある方にはお薦めの1冊です。

平家後抄 落日後の平家

2005-12-17 14:28:16 | 図書室1
 本日は、先日UPした、大河ドラマ「義経」の感想を書く上で参考にした本の中から、特にお世話になったこの本を紹介します。

☆平家後抄 落日後の平家(上・下)
 角田文衞・著  講談社学術文庫
価格 上巻=1313円  下巻=1418円(税込み)

☆上巻目次
学術文庫版のまえがき
まえがき
序 章 北山の准后
 貞子の回想
 源氏と平家(付記)
第一章 嵐の後
 女院の還御
 関東護送
 平家の生虜たち
 宗盛父子の最後
 三位中将重衡の場合

第二章 さまざまな運命
 平家の侍大将
 平貞能の東国落ち
 頼盛の軌跡
 流人発遣
 生虜の侍たち
 阿波民部大夫
第三章 平家の残党
 平孫狩り
 宗親と時実兄弟
 盛久と盛嗣の場合
 丹後侍従
 宗家の開祖
 平家谷
第四章 女人の行方
 清盛の娘たち
 女院の大原入り
 大原御幸
 時忠の一族
 治部卿局
 頼盛の遺族
第五章 北陸の空
 時忠と能登国
 時忠の末裔
 長兵衛尉信達
 越後平氏
 平永茂
 建仁の乱
 坂額の奮戦

補 註
諸家系譜抄
 桓武平氏高望流 桓武平氏高棟流 宗家 長家

☆下巻目次
第六章 鎮魂の歌
 冷泉大納言隆房
 平家公達草紙
 栄耀の日々
 草紙と絵巻
 女院の動静
第七章 時の流れ
 伊賀大夫
 悪七兵衛景清
 三日平氏の乱
 乱の余波
 流人召
 忠快僧都
 幻の旅路
第八章 おどろの路
 院の近臣
 維盛の遺族
 勢観房源智
 信範の一家
 従三位教子
第九章 暗 雲
 順徳院の周辺
 鎌倉家の末裔
 鎌倉家の御家人
 貞子の結婚
 頼盛の子孫
第十章 源平の黄昏
 四条局の禍福
 金仙院 ー建礼門院の末年
 貞暁僧都
 竹の御所
 脩明門院
終章 怨念無常
 四条家の隆昌
 『平家物語』の作者たち
 堂上平氏の存栄
 六波羅家の後裔
補註

諸家系譜抄
 西洞院家、平松家、石井家および梶野・小松両家
 四条家、西・生嶋家、東・生嶋家、豊嶋家
解説 角田史学の心髄をみる
人名索引


 題名の通り、壇ノ浦合戦以後の平家の軌跡が語られている本です。

 平家は維盛の子息六代が斬られたことによって滅んだ」と私はずっと思っていました。しかし、この本を読んでそれが大きな誤解であったことに気がつきました。

 例えば、清盛の娘の一人は藤原隆房に嫁ぎ、その血は四条流藤原氏や天皇家に脈々と受け継がれることとなります。
また、順徳天皇のそばには平家ゆかりの女性達がたくさんいたようなのです。順徳天皇は、そんな平家ゆかりの女達の昔語りを幼い頃から聞かされて育ったと考えられます。そんな順徳天皇が、後年鎌倉幕府討伐に立ち上がったことはごく自然なことだったのかもしれませんね。

 さらに、平家の生き残りの男子の中には処刑を逃れ、僧として活躍していた人物も何人かいることがわかりました。

 そして、私が最も興味をひかれたのは、のちに対馬国の領主となる宗家の系譜です。どうやら宗家は、平知盛の子孫である可能性がかなり強いようなのです。著者の角田先生は、その裏付けを色々と述べられていますが、「本当にそうかもしれない!!」と思い、私は読みながらわくわくしました。

 他にも、建礼門院の晩年など目からウロコが落ちるような話が満載です。ぜひ、壇ノ浦以後の平家の軌跡を堪能してみて下さい。
  

菊と葵のものがたり

2004-12-26 13:15:41 | 図書室1
 本日、12月18日に逝去あそばされた高松宮喜久子さまの斂葬の儀が行われたようです。

 大変恐れ多いことながら、昭和62年2月、喜久子さまの夫君の高松宮殿下が逝去あそばされたとき、私は、「高松宮さまってどなた?」と思ってしまったのです。そして、ニュースを観て、「ああ、昭和天皇の弟宮なのね。」ということがわかりました。さらに、妃殿下の喜久子さまは江戸幕府第十五代将軍徳川慶喜のお孫さんだということも知りました。歴史の教科書でしか知らなかった徳川慶喜さん(幕末の歴史は苦手なので…)のお孫さんが、現在でも生存なさっていらっしゃることにびっくりしたものです。

 本日のタイトル、「菊と葵の物語」は中央公論社より出版された高松宮喜久子さまのご著書です。「菊」は婚家の皇室を、「葵」は実家の徳川家を表しているのだと思います。
 この本には、インタビューや対談、エッセーなどが多数収められています。私は特に、高松宮さまとご一緒に行かれたヨーロッパ視察旅行の話と、スピード違反をして宮内庁のお叱りを受けた話が面白かったです。そしてこの本には、喜久子さまの上品でユーモラスで明るいご性格があちらこちらに現れていると感じました。あと、若い皇族の方々への暖かくて深い愛情を感じました。きっと、皇室の行く末を最後まで心配していらっしゃったのだと思います。
 この「菊と葵の物語」は、現在では残念ながらなかなか手に入りにくいかもしれませんがおすすめです。興味がございましたら図書館か古書店で探してみて下さい。

 末筆になりましたが、高松宮妃喜久子殿下のご冥福を心よりお祈り申し上げます。