漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

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梨木香歩著「冬虫夏草」・形を変えて生きていける

2013-12-12 | 
待ちに待った「家守綺譚」の続編です。

友人「高堂」の家の家守として住み込んだ作家「綿貫」が
その庭でフリー状態で飼っていた犬のゴロー。
ゴローは、グッドタイミングでひょっこり現れ、すべてお見通しという具合に
助け舟を出してくれる本当に頼りがいのあるいいやつだった。
そしてこの「冬虫夏草」では、ゴローが数か月帰ってこないという。
なんと。
綿貫は、ゴローを見かけたという情報をもとに鈴鹿の山々に出かけていく。

綿貫のゴローに対する思い入れはすごい。
ゴローの素晴らしさを語るくだりは、自らをしっかり下座においている。
それほどゴローはすごいのだ。

ところで、冬虫夏草(とうちゅうかそう)とはサナギダケつまり虫の幼虫にキノコが寄生したもの。
漢方ではコウモリガの幼虫の寄生されたものを用います。

寄生されたと思うと、命を乗っ取られたようだけど、
この本では「冬は虫として夏は草として生きる」との理解でこの物語の象徴となっています。

やがて襲いくるらしい大きな天変地異。防ごうと思ってもどうにもならない。
そこに暮らす生き物はひとたまりもないだろう。
いや、
生き物は、きっとそこで、生きられる形に変化して生きていく。

最後の「茅」の章は、泣いた。
二度目を読んで、登場するさまざまな人たち、河童、イワナ、竜、
季節を彩るたくさんの植物たち、うつくしい日本語たちによって、
情景が一層鮮やかとなり、
そして最後の「茅」の章ではやっぱり、泣いた・・・



過去の家守綺譚のレビューではやはりゴローのエピソードを書き出してました。
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