江戸糸あやつり人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。その魅力を広めるためブログを通して活動などを報告します。

春画

2010-12-20 23:16:35 | 日本の文化について
田中優子著「春画のからくり」(ちくま文庫)を読んだ。
面白かった。
と同時に、この国の自国の文化に対する意識の低さを改めて感じた。

「春画」というと、いやらしさを感じる人は多いだろう。
女性だから書けたといえるかもしれない。

春画の特徴は、「隠す・見せる」「覗き」そして「笑い」になるという。
春画は男女の交わりを書いている。
今だったら全裸になるのだろうが、春画は初期を除いてなんらかで隠し
「局所」を強調している。
隠すものは着物だったり、衝立や障子、蚊帳だったりする。
そして細かく小道具を書き込むことでその状況を想像できるようになっている。
つまり見る人は、その小道具から二人がどうして結ばれるようになったか
物語を想像する、それを楽しむようになっている、というのだ。

また「覗き」では、その行為自体を「笑い」に導こうとしている、という。
敢えて覗く必要が無いと言うことらしい。
つまり障子しか隔てるものが無いから、意識しなくても見えたり聞こえたりする
ということなのだ。
だから春画は、一人でこっそりと見るものではなく、男女で、何人かで見て
笑っていたのではないかと推測している。

春画のピークは歌麿で、それ以降は形式的になっていくという。
確かに北斎はつまらない。
また鈴木春信は余り好きな作者ではなかったが、
春画を見てすっかり好きになってしまった。
あの単純に描かれた顔が、目の線ひとつで恍惚となったりしらけたり
表情が豊かに描かれている。

ペリーが本国に送った報告文には
春画や春本、男女混浴の公衆浴場を指して
「日本人は淫猥である」とあるそうだ。
それ以来春画は日本の恥部になってしまい、タブー視されるようになった。
大英博物館で企画された「歌麿展」を日本の美術館で開かれたとき
春画が全てカットされていたそうである。
とても恥ずかしい事である。
コメント
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