崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

台湾「国名を揚げてオリンピックにでることもかないません」

2016年10月07日 04時27分47秒 | 講義

 最近の学生、特に留学生はアルバイトを優先して講義を二の次にする学生が多い。中にはアルバイトのために留学に来ているような学生もいる。私も学生時代にそれに似たことで考えたことを思い出す。1960年代に韓国では学生アルバイトといえば家庭教師であった。いわば名門校へ合格させると多くの学父兄が集まり授業料が高くなる。当時私と友人の申君の二人は人気があった。それでも私は大学の授業を優先していたが、申君は受験生のクラスを優先し、増やし、予備校を作り、韓国トップの予備校を作るまで成功し、後にアメリカに移住して今はボストンでカメラショップをしている。大企業家となったのである。彼は成功し、私は負けたことになる。
 ここで学生の価値観を覗いてみる。教育と労働の関係、その価値観を模索するのが大学生時代である。一般的に人類史は長い間、労働を中心とした。子供の時から働いて、早く結婚し、今から考えると子供が子供を産み、短命による世代交代が早い。しかし人類は教育期間を長くするようになり、教育を受けてから働くことになった。つまらない学校の授業よりはアルバイトで稼いだ方が賢明だと思うかもしれない。自分の家庭菜園で取れたものだけを食べて昼寝を楽しんで生きるのが一番楽なのではないかとも考えられる。しかしそれは豊かな社会が滅亡し、原始未開へ戻る現象ではないかと私は懸念する。明日は土曜日。講義にはアルバイトのために欠席する人がいるかもしれない。公開講座「アジア共同体」の2回目の講義、担当は台湾中央研究院の黄智慧先生である。「国名を揚げてオリンピックにでることもかないません」という話をぜひ聞いてみないか。