私は数年前、数回東南アジアでは植民地にされていないタイに調査旅行をした。植民地された国での卑屈さのない純粋さと平和な社会を想像しながら見回った。しかしそれは感じ得なかった。国王、仏僧、首相の三本柱で支配されるという。地方行きの飛行機を待機していたが、坊さんが優先されているので仏教が国教であることを実感した。またいたるところに国王の写真が貼ってあった。アジア諸国が近代化に鈍感な時、タイ国王は自らイギリスに行って積極的に近代化政策を成し遂げながら外交をして植民地を逃れたのである。国王は尊敬され、軍を統制する。以来タイ政治には国王が安定の軸になり、民主化の弊害にもなる。植民地されなかった分、民主化の先進の国になっていない。今、反政府勢力がバンコク近郊の新旧2つの国際空港を占拠している。国際空港の長期閉鎖という異常事態になっている。民主化は簡単に授かるものではない。多くの犠牲を要するものなのではないだろうか。