崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

チーズといいながらシャッターを押す

2006年02月23日 07時25分00秒 | エッセイ
 チーズとかキムチといいながらカメラのシャッターを押す。このように私たちは日常的にいわば「やらせ」の写真を撮る。しかしドキュメンタリーではやらせは厳しく禁止している。それは全体が本当であるかが疑わしくなるからである。
 私は先日韓国で製作された古いドキュメンタリー映像記録を分析したものを発表した。結婚式を終えて馬に乗って別の場所に行った。しかし、そこには結婚式の時に使用したものと同様の屏風や敷物があることがあることを明らかにした。つまりやらせが見つかったのである。それで全体が疑わしくなった。極端に言うと劇映画はやらせである。しかし中に表現しようとする真実がある。だが記録映像は「そのまま」が真実である。そして記録すべてが真実であり、劇性を持っている。日常的に記録映像を見て私たちは記録性を借りた劇性に染まっていく。