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北と南(13):緋寒桜

■旧暦1月3日、土曜日、

(写真)Untitled

旧暦の正月は、中国では「春節」。この日は、沿海部に出稼ぎに出ていた人たちも大勢故郷に帰る。それが、今年は、大雪で交通機関が麻痺して、政府も対応に追われたらしい。そこで、単純な疑問があるのだが、どうして、旧暦の正月に今なお価値を置いているのか。中国の生活には陰暦が隠然と力を持っているのか。新旧の暦の使い分けなど、どうやっているのだろうか。

ここ数日、たて続きにDVDをレンタルしてきた。三谷幸喜の「みんなの家」、同じく「笑いの大学」、「ヒットラー最後の12日間」。三谷幸喜の映画は、これで、全部観たが、もっとも面白かったのは「ラヂオの時間」、次に、初監督作品の「みんなの家」だった。「笑いの大学」は世評は高いが、そして、確かに、面白けれど、ほのぼのしすぎている。そのほのぼの感は、「みんなの家」のような作品にはうまくはまるが、「笑いの大学」は、もっと社会や歴史と切り結んでも良かったんじゃないか。せっかく、「戦時下の検閲と笑い」というテーマなのだから、もっと笑いと社会の根源的なところにまで触れられたはずだと思う。検閲官を人間的に設定したのは、お茶の間向けにはいいけれど、その分、映画としての批評精神は低くなってしまったと思う。

「ヒットラー最後の12日間」は、去年だったか、一昨年だったかの「ドイツ映画祭」で始めて知って、ずっと観たいと思っていた。元秘書の証言を元に実にリアルに最後が描かれている。ブルーノ・ガンツが、ヒットラーその人になりきっている。この映画はいくつも衝撃的なシーンがあるけれど、谷崎潤一郎が戦国時代の悲劇を描いた「盲目物語」をしきりに思い出した。ヒットラーとその臣下の関係は、封建時代そのままの主従関係で、忠誠心がいくつもの死を招く。この関係は、部下の家族関係にも当てはまり、両親が絶対の権力を持っていて、自死するときには、子どもの命までも、当然のごとくに奪っていく。この辺りも戦国時代の落城史のように感じられた。



緋寒桜

真冬に咲く沖縄の桜。寒緋桜とも。地元の人は緋寒桜と呼んでいた。沖縄人が桜と言えば、これを指す。本土の彼岸桜と音が似ているので、寒緋桜に改められたという。でも緋寒桜の方がいい。沖縄本島の北では一月中旬に開き始め、十日から二十日かかって徐々に咲き、満開は下旬。南の石垣島では二月上旬が満開となる。花の色は桃の花よりも濃く、臙脂色。釣鐘状に下を向いて咲く。花は五弁。散り際に特徴があり、房ごと落ちる。

寒緋桜岐路に立つ身の透きとおる   久手堅倫子

※ 宮坂静生著『語りかける季語 ゆるやかな日本』(2006年 岩波書店)より
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