一応これまで会計検査院の記事を書いてきたし、度々批判もしてきたのだが、応援してもいた。で、弁護(笑)というわけではないが、実際どうなのかちょっと調べてみた。キッカケは、次の部分が気になったからだ。
わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる マルサの男「徴税権力」はスゴ本
(以下に一部引用)
・国税庁
・会計検査院
道路一つはさんだだけの、至近距離に位置する2つのビルは、性質を全く異にする。ひとつは、税金をとりたてる側、もう一つは、その税金の使途を監視する側。つまり、国税庁は税金の「入」を、会計検査院は税金の「出」を担う。問題は、その機能の違いではなく、温度の違い、空気の違い。
苛烈を極める国税庁とは対照的に、「官と官の信頼がある」などとのたまう馴れ合いの会計検査院。片方は情け容赦のない徴税、もう片方の税金放蕩放置プレイは、納税意欲が削がれること著しい。
うーん、言いたいことは判るし、私もそうですが会計検査院には厳しい批判をしてしまうだろうな、とは思います。ブログを始めた頃には、「会計検査院憎し」とまではいかないまでも、色々と批判記事を書いてましたからね。でも、多少なりとも評価してあげてもいいのではなかろうか、とは思います。
参考記事:
会計検査院の仕事
ちょっと寄り道
話題シリーズ24
まず、会計検査院から見てみることにする。
会計検査院 HomePage -活動基盤-
(一部抜粋)
これだけは知っておきたい 会計検査院の3つの特徴
特徴 1 内閣から独立した憲法上の機関
会計検査院は行政機関ではありますが、内閣に対して独立の地位を有しています。人事権、規則制定権及び予算の自主性等が保障されているため、職員は公平・中立な立場で検査を実施することができます。
特徴 2 転勤がない
会計検査院には原則として転勤がありません。東京の霞が関(※)にあります本庁に勤めることとなるため、子供の教育環境、職員自身の社会環境が安定し、生活設計を立てるのが容易です。
特徴 3 全国に出張します。
年間約80日にも及ぶ出張をして会計検査を行います。北は北海道から南は沖縄まで、さらには国内に止まらずODAの実施先にまで赴き、会計経理や工事の設計・施工等あらゆる角度から検査を実施しています。
何となく面白いじゃありませんか。1は当然として、2の「生活設計を立てるのが容易です」というのが羨ましさを誘っていますね。で、これと相反するかのように3の「全国に出張します。」(注:ここだけマルが付いてるのは、ひょっとしてモー娘の影響?)というのがまたイイですよね。全国何処でも、海外にも行けちゃいます、ってことかな?これは全く関係ない余談なので、どうでもいいのですけど。
大事なのはこちら。
会計検査院 HomePage -活動基盤-
これによると、H17年度の指摘金額は約453億円(437件)となっています。職員数は約1300人、うち会計検査の中心は調査官及び調査官補の約850人という陣容です。
一方、国税庁の方はどうでしょうか。マルサは「国税庁調査査察部」という部署で、そこの実績を見てみました。
NTA
これによれば、H17年度で着手件数217件(処理214件、告発150件)、脱税額は約274億円(摘発約230億円)、ということです。因みに、これまでの告発による裁判例は「有罪率100%」という実績を誇る(!スゴイ、マルサが誇っているわけではないかもしれませんけど)ようです。職員数なのですが、実際の数は不明でしたが、一応ヒントはありました。調査査察部は「約3%未満」の陣容ということのようですので、ここから推定してみたいと思います。
まず、国税庁全体の職員数は約56000~57000人程度です。この2%であると1120~1140人、3%であると1680~1710人ということになります。恐らくお役人の人が3%未満ということを言う場合には、きっと2.5~3%くらいの「割と正確な数字」を示していると推測します。特に国税庁ですし(笑)。なので、約1500~1600人、というのが妥当な線ではなかろうかと思います。会計検査院の2倍近い職員数である、ということですね。
で、会計検査院の受け持ちは一般会計と特別会計の両方ですけど、特別会計のうち金額の大きい国債や社会保障関連の会計は殆どが決まりきった支出(所謂義務的支出、利払いや借換、医療や年金給付等)ですので、実際の金額としては約10兆円くらいなのではないかと思います。すると、一般会計約45兆円くらいと合わせて約55兆円規模ではないかと思います。このうち453億円指摘ですから、「一万分の824」ということになります。実際の検査箇所では、全体で12500箇所程度(郵便局を除く、郵便局数は25000くらいあるので)のうち約20%くらいは検査しているようです。調査査察部の方はと言いますと、徴収税額が約54兆円で脱税額274億円ですから、「一万分の507」ということになります。
会計検査院は「お金が国庫に返還される」とも限らないのでしょうけど、件数と金額とも指摘効率から見ればマルサを上回っていると思われます。国税庁の場合には、主に悪いヤツラから「ぶんどり」を実行し、当然かなり追徴するので国民からみると「すっげえ、よくやった」という感情を生じやすいと思われます。国のお財布(=国民のお財布って感覚だろうけど)が「確実に増えて」良かったネ、ということだな。会計検査院が指摘したとしても、国のお財布にどれくらい返ってくるかよく判らないし、本来的には「無駄遣いしないで、ちゃんとやっとけよ」的なことなので、不満を生じやすいのではないかと思えます。会計検査院では「ぶんどり」が仕事なのではないからです。あと、会計検査院の検査というのは、「合規性」や「正確性」ばかりではなく、「経済性」「効率性」「有効性」という観点から検査しなければならない(会計検査院法第20条)為、「コイツら裏金にして隠してるな」というような事ばかりではなく、例えば「もっと安いソフトを導入しても、十分同様の業務をできたハズ」みたいなことも調べなければならないのです。委託先が1千万円で請け負っていても、別な業者に頼めば800万円で請け負える環境にあった、というようなことが確認できるのであれば、「無駄遣い」ということになりますから、そういうのも調べなければならないのですよね。こういうのは、本来担当している行政の部署が自発的に「やってくれればいい」ことなので、指摘する会計検査院の方でも大変だろうと思うのですよね。国税庁の「e-tax くん」のキャラはかなり狂ってる感じでアレなんですけど(笑、もっと違う名前だったか?)、「電子確定申告の利用率はたったの0.5%で非効率」(うろ覚えで不正確かも)みたいなことも調べねばならんのですよね(笑)。
そういう訳で、国税庁も無駄遣いをしているし、会計検査院はそれなりに頑張ってやっている面があるということ、マルサの調査査察部よりも少ない人数ながらも指摘金額や件数は多いこと、そういう部分は評価してあげて欲しいかな、とは思います。
更に重要なことは、国民がそうした活動を側面支援すること、関心を持って見ていくことだろうと思います。国会が検査結果を受けて是正策を考え審議したりする役割を持つのであって、翌年度以降の予算編成などに反映していくことは国会議員たちにその責務があるのです。そういうシステムを活かすのも殺すのも、国民からの目、声、そして1票なのです。できるだけ多くの国民の方々にそのことを考えて頂ければ、会計検査院は益々その機能や能力を発揮して活躍することが可能になるだろうと思います。
わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる マルサの男「徴税権力」はスゴ本
(以下に一部引用)
・国税庁
・会計検査院
道路一つはさんだだけの、至近距離に位置する2つのビルは、性質を全く異にする。ひとつは、税金をとりたてる側、もう一つは、その税金の使途を監視する側。つまり、国税庁は税金の「入」を、会計検査院は税金の「出」を担う。問題は、その機能の違いではなく、温度の違い、空気の違い。
苛烈を極める国税庁とは対照的に、「官と官の信頼がある」などとのたまう馴れ合いの会計検査院。片方は情け容赦のない徴税、もう片方の税金放蕩放置プレイは、納税意欲が削がれること著しい。
うーん、言いたいことは判るし、私もそうですが会計検査院には厳しい批判をしてしまうだろうな、とは思います。ブログを始めた頃には、「会計検査院憎し」とまではいかないまでも、色々と批判記事を書いてましたからね。でも、多少なりとも評価してあげてもいいのではなかろうか、とは思います。
参考記事:
会計検査院の仕事
ちょっと寄り道
話題シリーズ24
まず、会計検査院から見てみることにする。
会計検査院 HomePage -活動基盤-
(一部抜粋)
これだけは知っておきたい 会計検査院の3つの特徴
特徴 1 内閣から独立した憲法上の機関
会計検査院は行政機関ではありますが、内閣に対して独立の地位を有しています。人事権、規則制定権及び予算の自主性等が保障されているため、職員は公平・中立な立場で検査を実施することができます。
特徴 2 転勤がない
会計検査院には原則として転勤がありません。東京の霞が関(※)にあります本庁に勤めることとなるため、子供の教育環境、職員自身の社会環境が安定し、生活設計を立てるのが容易です。
特徴 3 全国に出張します。
年間約80日にも及ぶ出張をして会計検査を行います。北は北海道から南は沖縄まで、さらには国内に止まらずODAの実施先にまで赴き、会計経理や工事の設計・施工等あらゆる角度から検査を実施しています。
何となく面白いじゃありませんか。1は当然として、2の「生活設計を立てるのが容易です」というのが羨ましさを誘っていますね。で、これと相反するかのように3の「全国に出張します。」(注:ここだけマルが付いてるのは、ひょっとしてモー娘の影響?)というのがまたイイですよね。全国何処でも、海外にも行けちゃいます、ってことかな?これは全く関係ない余談なので、どうでもいいのですけど。
大事なのはこちら。
会計検査院 HomePage -活動基盤-
これによると、H17年度の指摘金額は約453億円(437件)となっています。職員数は約1300人、うち会計検査の中心は調査官及び調査官補の約850人という陣容です。
一方、国税庁の方はどうでしょうか。マルサは「国税庁調査査察部」という部署で、そこの実績を見てみました。
NTA
これによれば、H17年度で着手件数217件(処理214件、告発150件)、脱税額は約274億円(摘発約230億円)、ということです。因みに、これまでの告発による裁判例は「有罪率100%」という実績を誇る(!スゴイ、マルサが誇っているわけではないかもしれませんけど)ようです。職員数なのですが、実際の数は不明でしたが、一応ヒントはありました。調査査察部は「約3%未満」の陣容ということのようですので、ここから推定してみたいと思います。
まず、国税庁全体の職員数は約56000~57000人程度です。この2%であると1120~1140人、3%であると1680~1710人ということになります。恐らくお役人の人が3%未満ということを言う場合には、きっと2.5~3%くらいの「割と正確な数字」を示していると推測します。特に国税庁ですし(笑)。なので、約1500~1600人、というのが妥当な線ではなかろうかと思います。会計検査院の2倍近い職員数である、ということですね。
で、会計検査院の受け持ちは一般会計と特別会計の両方ですけど、特別会計のうち金額の大きい国債や社会保障関連の会計は殆どが決まりきった支出(所謂義務的支出、利払いや借換、医療や年金給付等)ですので、実際の金額としては約10兆円くらいなのではないかと思います。すると、一般会計約45兆円くらいと合わせて約55兆円規模ではないかと思います。このうち453億円指摘ですから、「一万分の824」ということになります。実際の検査箇所では、全体で12500箇所程度(郵便局を除く、郵便局数は25000くらいあるので)のうち約20%くらいは検査しているようです。調査査察部の方はと言いますと、徴収税額が約54兆円で脱税額274億円ですから、「一万分の507」ということになります。
会計検査院は「お金が国庫に返還される」とも限らないのでしょうけど、件数と金額とも指摘効率から見ればマルサを上回っていると思われます。国税庁の場合には、主に悪いヤツラから「ぶんどり」を実行し、当然かなり追徴するので国民からみると「すっげえ、よくやった」という感情を生じやすいと思われます。国のお財布(=国民のお財布って感覚だろうけど)が「確実に増えて」良かったネ、ということだな。会計検査院が指摘したとしても、国のお財布にどれくらい返ってくるかよく判らないし、本来的には「無駄遣いしないで、ちゃんとやっとけよ」的なことなので、不満を生じやすいのではないかと思えます。会計検査院では「ぶんどり」が仕事なのではないからです。あと、会計検査院の検査というのは、「合規性」や「正確性」ばかりではなく、「経済性」「効率性」「有効性」という観点から検査しなければならない(会計検査院法第20条)為、「コイツら裏金にして隠してるな」というような事ばかりではなく、例えば「もっと安いソフトを導入しても、十分同様の業務をできたハズ」みたいなことも調べなければならないのです。委託先が1千万円で請け負っていても、別な業者に頼めば800万円で請け負える環境にあった、というようなことが確認できるのであれば、「無駄遣い」ということになりますから、そういうのも調べなければならないのですよね。こういうのは、本来担当している行政の部署が自発的に「やってくれればいい」ことなので、指摘する会計検査院の方でも大変だろうと思うのですよね。国税庁の「e-tax くん」のキャラはかなり狂ってる感じでアレなんですけど(笑、もっと違う名前だったか?)、「電子確定申告の利用率はたったの0.5%で非効率」(うろ覚えで不正確かも)みたいなことも調べねばならんのですよね(笑)。
そういう訳で、国税庁も無駄遣いをしているし、会計検査院はそれなりに頑張ってやっている面があるということ、マルサの調査査察部よりも少ない人数ながらも指摘金額や件数は多いこと、そういう部分は評価してあげて欲しいかな、とは思います。
更に重要なことは、国民がそうした活動を側面支援すること、関心を持って見ていくことだろうと思います。国会が検査結果を受けて是正策を考え審議したりする役割を持つのであって、翌年度以降の予算編成などに反映していくことは国会議員たちにその責務があるのです。そういうシステムを活かすのも殺すのも、国民からの目、声、そして1票なのです。できるだけ多くの国民の方々にそのことを考えて頂ければ、会計検査院は益々その機能や能力を発揮して活躍することが可能になるだろうと思います。
私(たち?)がマルサや検査院に求めるのは、その結果であってプロセスでは無いと思います。そういう意味で警察や教師に対しても同じ感覚ですね。
何故なら税金を払っているから。
民間の業者なら支払いに対するサービスが不満であれば別の業者を選択できるのですが、役所の場合はそうも行きません。
しかし最近、夕張の破綻について一連の報道を見ながら、実は選挙権の行使と行政監視の義務を怠った市民にも責任はあるんだな~と感じる今日この頃です。
そういう意味で、最終章は納得です。
確かに仰る通りだと思います。私もそうです。
会計検査院の結果は、マルサにそれほど劣っているとも言えないかな、と感じたので記事に書きました。
もしも、もっと厳しい結果を求めたいのであれば、検査院の強化にもっと予算を投入して(人員を大幅に増強したり)、上場企業の会計のような監査制度を行政部門全部に課すとかは可能かと思われます。ただ、そこに投入される費用が、節約できうる費用よりもはるかに多くなってしまう可能性は有り得るかもしれません。帳簿類を精査していくのには物理的限界があると思いますし。
でも、オンブズマンなどの市民グループが地道に調べてくれたりして、明らかになった部分は結構ありますし、やっぱり選挙で「NO」の意思表示はかなり効くのだと思います。また宜しくお願い致します。