マクロとミクロは両輪だよ、と書いた記事の続きです。
正確な地図がなければ、河川工事をしたり何かの建造物を作るということはできません。PDEという酵素の存在と作用が判らなければ、バイアグラという薬剤が生み出されることはなかったでしょう。そういうようなものだ、と。なので、基礎研究がなければ細かく正確な知見を得ることはできませんし、その上に立脚する実用面での成果を得ることも難しくなります。基礎研究があるだけで、現実の何かに対処することができるとは限りません。「バイアグラはPDE阻害作用を有する」という事実が、誰かの悩みや苦しみを軽減してくれることにはならない、ということです。基礎と臨床のどちらもあって初めて人々の役に立つものだろうと思います。
こうした考え方は経済学領域でも同じであるように思え、金融政策においても両方が揃っていなければならないでしょう。金融政策というのは、実験でもなければ研究の為にあるわけではないのです。あくまで臨床なのであって、適切に診断し病状を回復させ、健康的な状態を保てるようにサポートすることが最大の目的なのです。主張や理論の証明を得る為にあるわけではありません。
先頃、日銀の展望が発表になりましたが、昨年(日銀は予想屋と同じなのか(追記後))とは若干トーンの違いが感じられます。白川新総裁の姿勢が垣間見られるものなのかもしれません。
経済・物価情勢の展望 08年4月
日銀が金利正常化路線を完全に捨てた(笑)とまでは確信できないものの、何らかの変化を来たした可能性はあるかもしれない。長年にわたり日銀批判を続けてこられた方々にとっては、朗報かもしれません。これまでの活動については、大変ご苦労様です、と思いますけれども、やり方としてどうだったのか、ということについては、いくつか見方があるやもしれません。長年にわたり、同じような論争が継続してきたのは、批判側にも問題があった、無力な或いは無効な戦術をとってきたが故ではないか、ということがあるかもしれない。ド素人に過ぎない私がこんなことを言うのもなんですが、少なくとも普通の一般人から見て謎といいますか、不可思議現象であったことは間違いないでしょう。
「堂々巡り」の議論
まるでこの前書いた例と似てる気がしないでもありません(笑)。騒動の本質が周囲の人々には殆ど理解できない、というシロモノなのです。相手側陣営を撃破することに重点をおいても、それが事態を動かすようにはならないということであろう、と思うのですよ。
拙ブログにおいて、日銀批判とかをかなり書いてきました。日銀の提灯部隊みたいなマスメディアの人とか業界内の人たちにも、同じく非難を浴びせることになってしまったでしょう。けれども、何かに気付いてもらいたいと考えるのであれば、相手と直接対決をするばかりではなく、周囲の人たちに考えてもらう・知ってもらう、ということを考えた方がいい場合もあるのではないかと思えます。恐らく過去にそうした「戦い方」というものについて考える人たちが少なかったからなのではなかろうか、と思うのです。相手側陣営の撃破(論破)することに重点を置いても、判定者の誰もいない場所で行う限り、殆ど効力を持たないでしょう。結局、誰に届けたいか、誰を説得しようとするのか、どうやって何かを動かそうとするのか、そういうことに関心を払わないと、例のネット規制法案の話でも同じようなものなのですけれど、ただ相手側への批判や人格非難みたいなものが繰り返されるだけになってしまうでしょう。
大事だろうと思うことは、相手側の立場とか置かれている状況とか、そういうような部分について共感を持ってあげることではないかと思います。誰も好きで「バカな道」を選択したいわけではないでしょうから。大抵のことは賢くて真面目で知的水準の高い人々がやっているのだから、何かのワケがあるに決まっているのです。だから、認める部分についてはきちんと評価するべきだし、相手側の言い分を理解しようと努めることも必要でしょう。そういう対話を積み重ねていくしかないのだろうと思います(いや、実際そんなことが向こうに届いていたのかどうかも不明なんですけど。私が対話したわけではないから)。
白川総裁がこれまでの考え方の全てを変えたとか、何かのポリシーを捨て去った、というような劇的変化があったというものではないでしょうが、ウチみたいな低俗ブログの書いたことの何か一つでもいいので通じてくれれば大変有り難いことです。もっと末端のサポート部隊の人たちの誰かにでもいい。本当にそう思います。
もしも何か「響いたもの」があったとすれば、多分、白川総裁に染み付いた「学者さん」気質なのだろうと思いますね。学者気質であるが故に、それも筋金入りのマニアであるが故に、「曲げない」部分があるのではないかな、と。最も許容できない、受け入れ難いのは……ということなんだろうな、と。ホントのところはどうなのか知らないんですがね(笑)。
<ところで:
潜在成長率はまだ2%未満、ということみたいなので、もしもそうであるなら経産省の「2.2%」に引き上げという政策は、ほぼ効果が得られていない、ということなんでしょうね。ダメじゃないですか、それじゃ。って、まだ政策実現してないものが多すぎるのかもしれませんが。調べてないから、判らんし(笑、ごめんね)。
潜在成長率の推計結果みたいなものは、公開するならやってもらった方がいいと思いますね。>
正確な地図がなければ、河川工事をしたり何かの建造物を作るということはできません。PDEという酵素の存在と作用が判らなければ、バイアグラという薬剤が生み出されることはなかったでしょう。そういうようなものだ、と。なので、基礎研究がなければ細かく正確な知見を得ることはできませんし、その上に立脚する実用面での成果を得ることも難しくなります。基礎研究があるだけで、現実の何かに対処することができるとは限りません。「バイアグラはPDE阻害作用を有する」という事実が、誰かの悩みや苦しみを軽減してくれることにはならない、ということです。基礎と臨床のどちらもあって初めて人々の役に立つものだろうと思います。
こうした考え方は経済学領域でも同じであるように思え、金融政策においても両方が揃っていなければならないでしょう。金融政策というのは、実験でもなければ研究の為にあるわけではないのです。あくまで臨床なのであって、適切に診断し病状を回復させ、健康的な状態を保てるようにサポートすることが最大の目的なのです。主張や理論の証明を得る為にあるわけではありません。
先頃、日銀の展望が発表になりましたが、昨年(日銀は予想屋と同じなのか(追記後))とは若干トーンの違いが感じられます。白川新総裁の姿勢が垣間見られるものなのかもしれません。
経済・物価情勢の展望 08年4月
日銀が金利正常化路線を完全に捨てた(笑)とまでは確信できないものの、何らかの変化を来たした可能性はあるかもしれない。長年にわたり日銀批判を続けてこられた方々にとっては、朗報かもしれません。これまでの活動については、大変ご苦労様です、と思いますけれども、やり方としてどうだったのか、ということについては、いくつか見方があるやもしれません。長年にわたり、同じような論争が継続してきたのは、批判側にも問題があった、無力な或いは無効な戦術をとってきたが故ではないか、ということがあるかもしれない。ド素人に過ぎない私がこんなことを言うのもなんですが、少なくとも普通の一般人から見て謎といいますか、不可思議現象であったことは間違いないでしょう。
「堂々巡り」の議論
まるでこの前書いた例と似てる気がしないでもありません(笑)。騒動の本質が周囲の人々には殆ど理解できない、というシロモノなのです。相手側陣営を撃破することに重点をおいても、それが事態を動かすようにはならないということであろう、と思うのですよ。
拙ブログにおいて、日銀批判とかをかなり書いてきました。日銀の提灯部隊みたいなマスメディアの人とか業界内の人たちにも、同じく非難を浴びせることになってしまったでしょう。けれども、何かに気付いてもらいたいと考えるのであれば、相手と直接対決をするばかりではなく、周囲の人たちに考えてもらう・知ってもらう、ということを考えた方がいい場合もあるのではないかと思えます。恐らく過去にそうした「戦い方」というものについて考える人たちが少なかったからなのではなかろうか、と思うのです。相手側陣営の撃破(論破)することに重点を置いても、判定者の誰もいない場所で行う限り、殆ど効力を持たないでしょう。結局、誰に届けたいか、誰を説得しようとするのか、どうやって何かを動かそうとするのか、そういうことに関心を払わないと、例のネット規制法案の話でも同じようなものなのですけれど、ただ相手側への批判や人格非難みたいなものが繰り返されるだけになってしまうでしょう。
大事だろうと思うことは、相手側の立場とか置かれている状況とか、そういうような部分について共感を持ってあげることではないかと思います。誰も好きで「バカな道」を選択したいわけではないでしょうから。大抵のことは賢くて真面目で知的水準の高い人々がやっているのだから、何かのワケがあるに決まっているのです。だから、認める部分についてはきちんと評価するべきだし、相手側の言い分を理解しようと努めることも必要でしょう。そういう対話を積み重ねていくしかないのだろうと思います(いや、実際そんなことが向こうに届いていたのかどうかも不明なんですけど。私が対話したわけではないから)。
白川総裁がこれまでの考え方の全てを変えたとか、何かのポリシーを捨て去った、というような劇的変化があったというものではないでしょうが、ウチみたいな低俗ブログの書いたことの何か一つでもいいので通じてくれれば大変有り難いことです。もっと末端のサポート部隊の人たちの誰かにでもいい。本当にそう思います。
もしも何か「響いたもの」があったとすれば、多分、白川総裁に染み付いた「学者さん」気質なのだろうと思いますね。学者気質であるが故に、それも筋金入りのマニアであるが故に、「曲げない」部分があるのではないかな、と。最も許容できない、受け入れ難いのは……ということなんだろうな、と。ホントのところはどうなのか知らないんですがね(笑)。
<ところで:
潜在成長率はまだ2%未満、ということみたいなので、もしもそうであるなら経産省の「2.2%」に引き上げという政策は、ほぼ効果が得られていない、ということなんでしょうね。ダメじゃないですか、それじゃ。って、まだ政策実現してないものが多すぎるのかもしれませんが。調べてないから、判らんし(笑、ごめんね)。
潜在成長率の推計結果みたいなものは、公開するならやってもらった方がいいと思いますね。>