いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

テポドンを追尾せよ!(2)

2006年07月07日 21時27分38秒 | 俺のそれ
第1章 (続き)

・中国―5月5日

中国系米国人からの指令が来ていた。チャン(仮名)は北朝鮮のミサイル発射計画について調べるように、情報提供者である北朝鮮の党幹部に指令を伝える手筈を整えることにした。チャンは、この中国系米国人がソ連に情報を流していることを知っていた。もう随分長くやってきたが、今でもロシアに情報が渡っているのかどうかは確かめようがなかった。まあ、金は確実に入ってきてるから、どちらでも良かったのであるが。


・米国―5月5日

大統領は補佐官と海軍司令官から北朝鮮のミサイルについて説明を受けていた。

「当面、攻撃力には心配ない、ということだな?」

「はい、閣下。短射程のミサイルだけは攻撃力が一応ありますが、韓国に向けて撃つことはないと思われ、唯一の目標になりうるのは日本だけでしょう。ノドンが本当に使いものになるのかは不明です。恐らく慣性誘導はほぼ絶望的ではないかと。」

「日本は過度の不安民族だからな・・・牛肉騒動を見れば一目瞭然だ(笑)。で、将軍、万が一の場合のオプションは?」

「沖縄と厚木にホーネットを各4機待機させ、どちらか一方を予備チームとします。発令から目標地点の攻撃までは、約40分で可能ですので、弾道ミサイル発射の40分前がリミットです。まず2機がASMで攻撃します。2機はバックアップで、最初の攻撃で万が一外した場合に、誘導爆弾で攻撃します。北朝鮮のレーダー網はザルで、対空ミサイルは恐らく1発も飛んでこないでしょう。念のためということなら、プラウラーも一応出せますが、その場合には目標地点到着時間が延びてしまいますので、予め空域に飛ばしておくことが必要になります」

「それで問題ないな?補佐官。よし、いいだろう。日本側にも、攻撃オプションは説明しておくように在日米軍の司令官に伝えてくれ、将軍。その時には、自衛隊にも参加を求める、ということもだ。攻撃できずとも、プラウラーを守ることくらいならできるだろう。駐日大使には、こちらで連絡しておく」


・日本―5月6日

米国駐日大使と海軍司令官は極秘裏に首相官邸に入った。官邸では、総理、官房長官、外相、防衛庁長官らが顔を揃えていた。
駐日大使が概要を説明し、その後、攻撃オプションの詳細については海軍司令官が行った。

「実際、日本に向けて発射するでしょうか?」
「それは何とも言えません。万が一に備える、ということだけです」
「通常弾頭の場合には、ミサイル基地の攻撃をしてもらえるのですか?」
「それは現時点ではわかりません。核弾頭の場合は絶対に阻止しますが」
「しかし、通常弾頭であっても被害はかなりあるかもしれん・・・」
「まずは、発射計画の詳細を調査するしかないと思われます」
「わかりました。大統領によろしく伝えておいてくれたまえ」


・米国―5月8日

国防総省では、依然重要な情報が集まらないことに苛立ちを感じていた。北朝鮮の狙いが何なのか、弾頭に何を搭載して発射するか、ということが問題であった。


アジア地区担当者たちは北朝鮮の分析レポートを提出するため、ミーティングを開いていた。

「今回の発射は、実験なのではないか?」
「確かに、その可能性が高いだろう」
「他の狙いがあるということは?」
「まさか、日本や韓国に攻撃、ということはないだろう」
「やれば壊滅させられる。死ぬ気なのか?」
「わからんね。そもそも金正日が何を考えてるかなんて」
「まあね。現状でも十分キチガイじみてるからな」
「それは言えてる」
「冗談はさておき、発射は何の為に?」
「・・・・・」

その後も検討が続けられ、いくつかの見方が出された。幸いにも、もっともらしい理由が見つかったので、報告書にまとめられた。その要旨は次のようなものであった。


北朝鮮は新たな手段を手に入れようとしている。ポイントは2つ。
一つは、イランの戦術である。イランは核を放棄せず、ミサイル発射実験を行った結果、欧州や米国の介入を退け、石油・油田を盾にして外交交渉では優位に立っている。強硬なイランの態度を変えさせるという点においては、現段階でも成果はほとんど上がっていない。この戦術を踏襲しようとしている可能性がある。

もう一つは、ミサイル技術の強化である。3月に行った改良型の発射実験で、ミサイル実験に成功したと考えられている。少なくとも朝鮮半島有事の際には、ある程度の威力を発揮すると思われる。このことは、北朝鮮のミサイル技術が向上してきていることを窺わせるのに十分である。新型ミサイル―テポドン2号―の第2段ロケット部分は、発射実験を経ており、輸出されていることを考え合わせると実用段階に到達している可能性がある。イランでの発射実験は、この第2段部分がある程度使用可能なものと考えることを支持していると考えられる。このことを前提にすれば、第1段部分の発射実験が必要なことは確実で、これに成功すれば、新型ミサイルは完成をみることになるだろう。


・北朝鮮―5月9日

キム大尉はミサイル発射計画に関する新たな情報を探していたが、詳しいことを知る人間は以外に少なかった。それでも、新たな情報として、次のことが判明した。
まず、発射時期が決まっている、ということ。それがいつなのかは、誰も知らなかったのだが。
それと、どうやら新型ミサイルが投入されるらしい、ということ。どこに向けて発射されるかは不明。

こんなショボイ情報でも報告しないよりはマシだろう、と思って、衛星電話回線につないだ。






第2章 先制攻撃


・日本―5月10日夕刻

画像分析は極めて退屈な作業であった。24時間体制で衛星写真をくまなく調べてはいたが、新たな動きはなかった。米軍からの情報で、テポドン(1号あるいは2号)の発射基地周辺の正確な位置を掴んでいたので、その領域は集中的に調べられていた。可能性の高い基地は2つあり、それぞれ命名されていた。一方が「ヤマアラシ」、もう一つは「イタチ」だった。なぜこの名前になったのかは誰も知らなかった。だが、写真に付けられた無味乾燥な名称―エリア「Ⅱ-D-8」とか「Ⅳ-G-12」という―で呼ぶのは面倒なことに違いはなく、分析官たちは好んで「ヤマアラシ」と「イタチ」の名前を用いていた。


午後4時過ぎに撮影された一枚の画像に食い入るように見つめる男がいた。彼は航空自衛隊に入隊した後、画像分析の専門家となっていた。本当はパイロットになりたかったのだが、視力に問題があって道を閉ざされた。航空写真や衛星写真が元々好きだったこともあって、自分に向いているのは画像分析だと確信していた。今はメガネをかけてるから、視力の心配はない。画像を見る目は、パイロットの視力を要求されたりはしないのだ。もっと違った集中力・注意力、そして何よりも想像力が必要だった。物体を判別するための目というのは、「写真では見えてない部分」さえも自分の目の中で構成しなおして、識別する能力が必須であったのだ。


他の分析官たちは、「今日もヤマアラシは静かだね。屹立するモノなんざ、見えないよ」などと軽口を叩いていた。「イタチ」も同様に、何も新たな情報を得られてはいなかった。その傍らにいた先の分析官は、大声で他の分析官たちを呼んだ。

「ちょっと、これを見てもらえないかと思って」
「山岳地帯だな。ここに何か?」
「ああ、ここの部分に禿げてる部分が見える」
「どれどれ。へー、こりゃ見えにくいね。でも確かにそう見えなくもないな」
「ひょっとすると、発射口のようなものなんじゃないかな、と」
「ホントか?もしそうなら、発射準備ってことか?」
・・・・

地下トンネル型のミサイル発射口である可能性があった。衛星情報センターには、米軍の分析官が指導に来ていたので、問題の画像を見せた。すると、分析官は顔色を変えてどこかに連絡し、急遽、他の衛星情報との突合が行われることになった。米軍での分析結果は、内部でミサイルが垂直に立っている可能性がある、という結論だった。ノドンかテポドンかは不明であった。

まさか、発射寸前なのか・・・・?



危機管理センターに、「ミサイル発見」の一報が届けられた。米軍の決断は早く、すぐさま出撃体制をとる、ということだった。夜間にいつでも発射できる状態になる、という可能性が否定できなかったからだった。航空自衛隊にもスクランブル要請が来た。総理以下、主要閣僚には既に連絡が入っていた。


日本の対応は、敵の領空外ならば航空自衛隊機を出撃せられる、というものだった。勿論、交戦は避けなければならなかったのだが。更に、弾道ミサイル発射に備えて、イージス艦を出航させた。


イーグルの部隊にスクランブル発進の指令が下った。三沢基地を飛び立ったイーグルは、米軍のプラウラーが空域に到達するまで警戒飛行を続けることになっていた。初めに2機、1時間後に次の2機が飛び立っていった。厚木のプラウラーは、ミサイル発見から僅かな時間で離陸した。足がノロかったからだ。攻撃するホーネットの部隊にも命令が下っていた。HARMを搭載した第一陣、ウォールアイを搭載した第二陣が待機していた。あとは、攻撃命令がくるのを待つだけだった――。


・米国―5月10日

衛星によるノドンの隠蔽サイロと思われる発射口の発見は、大統領に伝えられていた。攻撃するか否かの決断をせねばならなかった。

「状況を聞こう」
「ハッ、大統領閣下。現在赤外線衛星の画像では、熱源は非常に微弱で、活動状況は不活発と思われます。しかし、既に作業終了ということも考えられます。」
「で、ミサイルは何なんだ?」
「正確には判りません。地下の深さの推計ができてないので。しかし、テポドンではない、というのが情報部からの情報です」
「それは当てになるのか」
「どうでしょう。仮にテポドンだとしても、米国本土には撃ってこないでしょう。これは確実です」
「弾頭は何か判ったのか」
「いいえ。核の可能性はかなり低いでしょう。しかし、否定材料は今のところありません」
「ふーむ、サイロを潰すのはわけないが・・・極秘で攻撃できるか?」
「はい、閣下。正体不明の山火事くらい、いつでも起こせますよ」
「なるほど。謎の鉄道大爆発や工場爆発が珍しくない国だからな」
「仰る通りです。北朝鮮は隠蔽サイロを潰されても、公表できないでしょう」
「夜明け前に発射される可能性は?」
「光学式の偵察衛星を避けるならば、発射する意味はありますが・・・」
「熱源探知は逃れられない、と」
「その通りです。赤外線衛星には必ず探知されます」
「北朝鮮は本当に発射するつもりなのか?」
「それは何とも。発射可能なサイロであることは確かです」
「発射を思いとどまらせるルートはないのか?」
「成功するかどうか分かりませんが、シグナルを送ってみましょうか?」
「それは?」
「中国経由で、『口を閉じないと火事が起こるぞ』と(笑)」
「いいだろう。攻撃部隊はとりあえず待機。変化がなければ、夜間のうちに攻撃だ」
・・・・・


中国の駐米大使はパーティ会場へ向かう車の中で、至急中国大使館に戻るようにメッセージを受けた。大統領補佐官の1人から電話があったからだった。緊急事態ということであった。
大使館に戻るとすぐに、指示されたホワイトハウスの番号の一つに電話した。連絡してきた補佐官は、緊急で北朝鮮にメッセージを伝えて欲しい、ということを告げてきた。これは重大事件だ・・・、と大使は思った。

大使は電話を切ってから、クソ、伝書鳩じゃないんだぞ、と悪態をついた。ワインで酔ったその役立たずの脳みそを少しは働かせろ、と大使館員を罵倒してその憂さ晴らしをした後で、本国の緊急回線につなげ、と怒鳴った。


※昨日書いた内容を一部訂正してます。10日の米国の部分です。時差があることを忘れていたためです。お詫び申し上げます。適当に書いてる物語であることを考慮して頂き、各種不備については御容赦願います。