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ミサイル防衛のこと

2006年07月12日 14時45分46秒 | 防衛問題
北朝鮮が実際にミサイル発射を実行した後で、いくつかの非難というものを目にしました。主なものは、次のようなものです。

①ミサイル発射の情報が国民に伝わっておらず、国民を守れるのか
②発射から官邸への情報伝達が遅かったのではないか、政府の対応が遅いのではないか
③都道府県などに連絡が来たのは数時間後であり、地方ではどう対応してよいか困った
④政府発表は信じられないので、正確な情報を国民に示して欲しい


まず、昨年3月頃を思い起こして欲しいと思いますが、米軍との衛星情報の共有化という問題や、迎撃ミサイル発射権限の問題ということがありました。うろ覚えですけど、当時の一部メディアには、大雑把に言えば「米軍との一体化が進められ、(軍事大国への)危険性がある」とか、「制服組(要は現場の判断)に迎撃ミサイル発射の権限を許すのは問題で、シビリアンコントロールから外れてる」みたいな意見が出されていたと思うのですが、今の時点でこうした主張を繰り返さないのはどうしたことでしょうか?(笑)

参考:
日米安保とミサイル防衛

防衛情報とインテリジェンス


衛星情報が共有されたりしていなければ、発射から探知までの時間がかかることが想定されるので、米軍からの情報提供をただ待つことになります。自衛隊の一部レーダーでは発射後に探知可能であったと思いますが、事前の発射準備などの分析は必ずしも可能ではないでしょう。日本にも衛星情報があることの方が、明らかに有利なのです。これをダメだ、反対だ、とか言ってた人は、「米軍の衛星情報なんか必要ない、ミサイル発射は事後的に知ればよい」とかを断固主張して欲しいです。

ミサイルが発射されて、これを探知した後で、閣僚とか国会議員たちに緊急連絡を回して、寝惚けてるところを叩き起こし官邸に集合して、対応を話し合ったりしてから、「撃ち落す迎撃用ミサイルの発射許可」を決定し、その後自衛隊に迎撃せよ、とか命令していたんでは間に合わんのですよ。どっちにしたって、迎撃する以外にないんですから。発射許可を文民に求めるべきである、とかを主張していたのであれば、「ミサイル迎撃は間に合わなくても仕方ない、たとえ着弾したとしても文民の許可を求めろ」と、今も大声で主張するべきですね。


現実問題として、今回のように未明のミサイル発射があった場合、緊急のテレビ・ラジオ報道などで情報伝達は困難なのですし、仮に見ている人がいても凄く少ないハズです。「今から逃げれ、地下に隠れろ」とか言われても、無理っぽいですね。北朝鮮からのミサイルが飛来したら、せいぜい10分以内に着弾するだろうから、その時間で行動できることなどは非常に限られていますよね。自分の家に地下シェルターでも設置してあるなら別ですが。なので、発射されてしまえば、取り得る対応など限定的になってしまいますよ。

都道府県にそれを知らせても同じですよね。都道府県内で連絡を受けて、僅か数分の間に緊急避難情報を全部署に通知している作業をやっている間に、着弾してしまうでしょう。最大でも5分以内に連絡を全て完了し、自分もその場を退避することができるように全職員が訓練されているならば、何かはできるかもしれませんけど。知事に連絡なんてやってたり、寝てるところを起こしにいって、指示を聞いて・・・なんてやってたら、それだけでタイムオーバーですよね(笑)。知事からの答えを聞く前に、着弾してしまうでしょうね。

◎本当に実弾を発射されたら、対応時間は極めて短く、対処は限定的である。確実にできることを、決められた手順で行う以外にない。事前の周知徹底や準備が全てである。


政府対応が遅かった、というような批判もチラッとあったりしますが、これも、北朝鮮のミサイルが発射実験である、という相当程度信頼性のある情報・分析が行われていたハズで、それ故、実験なのだから「慌ててもしょうがない」という部分はあったのではないかと思いますね。もしも核弾頭かどうかが不明のまま発射されたのであれば、これは最大級の危機であったと言えるでしょう。そんなにのんびりとは構えていられないでしょう。大体、2ヶ月も前から発射準備の情報を掴んでいて、核ミサイル発射をただ見ているわけがないと思っています。

今、目の前に出刃包丁の刃を研いでいる強盗犯がいて、「強盗に入ってやるぞ」と言っているのに、これを2ヶ月前から続けているのを黙って見ている人はいないのではないかと思います(笑)。これが単なる演技に過ぎず、「映画の撮影シーンの練習だよ」とかが判っていれば、特別慌てたり強盗犯を恐れたりはしないでしょう。政府の判断では、発射実験であるということが確定的であろうと判っていたので、発射後の対応策について準備をしていたのだろうと思います。「本気かもしれない」となれば、戦時下と同じですよ。

ミサイル発射は実験であるということが、事前の情報分析から判明していたので、発射事実そのものについて慌てる必要がなかったのではないかと思います。


発射実験であったため、都道府県への伝達もやや遅れて行われたのであろうと思います。それは緊急に対応する必要性がなかったから、であると思います。今回の一件を、本番同様の訓練として行う積もりでやった方が、様々な不備が明らかにできて良かったのではないか、という見方はできると思います。もしも政府側の準備に余裕があったのなら、各都道府県での対応時間などを抜き打ち的に計測したり、行動計画の何%くらい達成できたか、等、問題点の指摘に使えたのではないかと思ったりもします。地方側も「もっと早く教えてくれ」とか言ってますので。

でも、仮に発射情報が直ぐに伝達されて聞いたところで、地方がどの程度やれたか、というのは甚だ疑問。何故なら多くの地域住民は、元々そのような訓練も指示も受けてないと推測されるから(一部では訓練が実施されてると思いますが、行政職員の訓練が殆どではないかと思います)。しかも、今回の発射では「日本には着弾しない」と判断されれば、一応知らせたとしても、特に避難させたり、発電所を緊急停止させたりする必要性がないですよね。発射実験に対しても、毎回原発を止めてたりする積もりなのでしょうか?「1分前にミサイルが発射されました。次弾以降に備え、警戒せよ。ターゲット、着弾地点は不明」とか、都道府県に情報を出したとして、これを聞かされた市町村職員は、どの程度のことができるでしょうか?その後、住民たちは何ができるでしょうか?



必ずしも多いわけではない意見ですけれども、政府の(発表)情報は信頼できない、というようなものがありました。日本のミサイル防衛能力がどの程度であるか、発射に関する情報はどの程度得ているか、そういう情報を知りたい、ということのようです。しかし、舞台裏の全てを明かす訳にはいかない、と思うのです。防衛情報の全てを国民が知ることになれば、外国にも全部筒抜けになってしまいます。特に探知・防衛能力に関しては、情報の全てを公開するべきものとも思えないですね。

そもそもミサイル防衛力を心配するなら、発射される前に心配しておいて欲しいものです。2ヶ月くらい前から、「兆候がある」と報道されているのですから。もし防衛能力の情報を知っていても、着弾の被害が減らせる訳でもないかも。自分でシェルターを買って設置するのでしょうか。現実的には日米の防衛力に頼る以外になく、信頼できるとかできないとかに関係なく、着弾する時は着弾してしまうでしょう。どうしても信頼できない、という人は、発射兆候が事前に報道されていたのですから、日本から逃げるとかできたはずではないかと思います。