電脳筆写『 心超臨界 』

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ドクター・スース

戦略的思考の本質 《 ローマ人の勇気と臆病――山内昌之 》

2024-05-27 | 04-歴史・文化・社会
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
20年間で約9千の記事を収めたブログは私の「人生ノート」になりました。
そのノートから少しずつ反芻学習することを日課にしています。
生涯学習にお付き合いいただき、ありがとうございます。

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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
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■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
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 歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」
 東京大学教授・山内昌之

  [1] 平和のリーダーシップ
  [2] 古代ギリシャの予言
  [3] ローマ人の勇気と臆病
  [4] 政略に敗れた義経
  [5] 裏切られたサラディン
  [6] リンカーンの決断
  [7] 『戦争論』とビスマルク
  [8] 石原の東亜連盟構想
  [9] 毛沢東の凄み
  [10] 過去は知の宝庫


勇敢な行為や信念への固執は美徳には違いないが、政治家が市民に勇気を美徳として誇示しすぎるのは禁物である。賢いローマの政治家は国益が危機に瀕(ひん)すると見るや、伝統的な尚武の精神に頼らず臆病なまでにプラグマチックな態度をとった。こうして力を温存したローマは、ハンニバルの戦術的技量に頼るカルタゴを打ち負かしたのである。ローマには戦略的思考があり、カルタゴにはそれが欠けていたのだった。致命的敗北が予想されるなら撤退するのは恥ではない。


歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」――[3] ローマ人の勇気と臆病
([やさしい経済学]10.01.06日経新聞(朝刊))

「思慮をわきまえた人なら、ただ敵を屈服させることだけを目的として隣人と戦うことなどしない」とは、前2世紀のギリシャ人歴史家ポリビオスの言葉である(『歴史』)。

現代の理性的な日本人なら、戦いを好み、戦いを愛する人間がこの世にいるとは信じられないだろう。クラウゼヴィッツは『戦争論』において、「粗野な好戦的国民」なら誰でも「好戦的精神」を秘めているが、「文明国民」ともなると必要に迫られてやむなく戦争にかかわると書いた。

しかし、偉大な文明国家をつくった古代ローマ人ほど、極端に好戦的かつ戦闘的だった民族も少ない。クラウゼヴィッツのいう「名誉と功名とを憧憬(どうけい)する念」はまさにローマ人の資質そのものである。ローマ共和国では白兵戦や戦場で武勲を立てなければ、政治家として大成できなかった。カルタゴ相手の第2次ポエニ戦争において、10年間で20人の執政官のうち12人が戦死し、軍団司令官は常に12人につき2人から3人の割合で命を落としたのだった(バーンスタイン「戦士国家の戦略」、『戦略の形成』所収)。

しかしスパルタやローマがペロポンネソス戦争とポエニ戦争に勝利を収めたのは、単に勇武の気風をもつ国家だったからではない。ローマは尚武の美徳や自己犠牲の精神に加えて、政治的に粘り強い戦略的思考でも敵より勝っていた。19世紀英国労働運動のフェビアン協会に名を留めるファビウスは、カルタゴの英雄ハンニバルに対していかなる犠牲を払っても正面対決を避け、消耗戦と持久戦に徹した。ひきょうを恥じるローマ人が城壁の内に身をひそめ、小競り合いで無理しないことはハンニバルの想像できない光景であった。

勇敢な行為や信念への固執は美徳には違いないが、政治家が市民に勇気を美徳として誇示しすぎるのは禁物である。賢いローマの政治家は国益が危機に瀕(ひん)すると見るや、伝統的な尚武の精神に頼らず臆病なまでにプラグマチックな態度をとった。こうして力を温存したローマは、ハンニバルの戦術的技量に頼るカルタゴを打ち負かしたのである。ローマには戦略的思考があり、カルタゴにはそれが欠けていたのだった。致命的敗北が予想されるなら撤退するのは恥ではない。現代政治でも主張や方針の内容が変化する現実にそぐわないなら、ファビウスのように退くことも大事なのである。ただ、変更理由の説明が必要となる。戦略的思考とは政治を長期で考える道筋を意味しているからだ。
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