電脳筆写『 心超臨界 』

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( ブリガム・ヤング )

戦略的思考の本質 《 過去は知の宝庫――山内昌之 》

2024-05-27 | 04-歴史・文化・社会
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 歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」
 東京大学教授・山内昌之

  [1] 平和のリーダーシップ
  [2] 古代ギリシャの予言
  [3] ローマ人の勇気と臆病
  [4] 政略に敗れた義経
  [5] 裏切られたサラディン
  [6] リンカーンの決断
  [7] 『戦争論』とビスマルク
  [8] 石原の東亜連盟構想
  [9] 毛沢東の凄み
  [10] 過去は知の宝庫


トゥキディディスがペロポンネソス戦争を未来にいくつも起こる大戦の前ぶれと考えたのは、規模や犠牲の大きさの点だけに限らない。むしろ彼は、予測不可能な大事件の勃発に際してペリクレスなどの政治家が悲劇を予防できなかったのはなぜかという問題提起によって、将来の世代に同じ誤りを避ける教訓を示したのである。こうした教えは、カルタゴ軍を迎え撃ったローマのように逃げと粘りによって、アテネとスパルタが陥った不毛な悲劇を繰り返さない知恵として受け継がれるはずだった。この意味で、戦争はあくまでも政治の延長にすぎないというクラウゼヴィッツの指摘は、人間の自由な判断で戦争を避けることもでき、歴史の経験を学ぶことで非戦の知恵を得られるという考えにもつながる。


歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」――[10] 過去は知の宝庫
([やさしい経済学 10.01.15日経新聞(朝刊))

戦略的思考の本質は、予測不可能な事態が勃発(ぼっぱつ)した時に真価が問われる。『不連続の時代』を書いた米国の国際政治専門家ジョシュア・ラモ氏は、既成のリーダーたちは想定外の危機に対応できないと手厳しく批判した。かれらは従来とは異質な思考法ができないというのだ。しかし、予測不可能な事態もすべて解釈できないものではない。そのかなりは歴史の過去に類似の現象を見いだせるからだ。たとえばエボラウイルス感染の脅威は、かつてペストや梅毒の流行を恐れた西洋人たちの経験を想起させる。

トゥキディディスがペロポンネソス戦争を未来にいくつも起こる大戦の前ぶれと考えたのは、規模や犠牲の大きさの点だけに限らない。むしろ彼は、予測不可能な大事件の勃発に際してペリクレスなどの政治家が悲劇を予防できなかったのはなぜかという問題提起によって、将来の世代に同じ誤りを避ける教訓を示したのである。こうした教えは、カルタゴ軍を迎え撃ったローマのように逃げと粘りによって、アテネとスパルタが陥った不毛な悲劇を繰り返さない知恵として受け継がれるはずだった。この意味で、戦争はあくまでも政治の延長にすぎないというクラウゼヴィッツの指摘は、人間の自由な判断で戦争を避けることもでき、歴史の経験を学ぶことで非戦の知恵を得られるという考えにもつながる。

この教えを忘れると、政治から離れた戦争を純理のように弄(もてあそ)ぶか、政治を長期で考える道筋を忘れるかのいずれかになり、広い視野で戦略的思考を生かせなくなるのだ。サラディンは個人として徳義も高く寛大だっただけに、十字軍侵略の野望を打ち砕く冷厳な戦略的リアリズムに徹しきれない面もあった。

他方、国家戦略の次元でリーダーシップの行使に成功した政治家はリンカーンであろう。彼は合衆国の解体を許さず外国の干渉をしりぞけるために、奴隷解放という世界史で一番崇高な道義を掲げて戦争の悲劇を政治の理想に置き換えてしまった。国民党軍への敗北を忍耐力の神話に変えた毛沢東の戦略も、不意の衝撃への対処や逆転の発想を教えてくれる点で、ラモのいう想定外の危機に対応する政治家のリーダーシップのあり方を教えてくれる例といえよう。予測不可能な世界の未来を分析する戦略的思考にとって、歴史は依然として知の宝庫なのである。

=おわり
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