食料自給率を向上させる対策が必要――岡部弘

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今の日本人は、望むだけの食品と量の確保に全く問題が無いと思っているのではないか。しかし世界を冷静に眺めてみると、実体はかなり厳しいことがわかる。かつての世界の４大穀物生産国といわれたアメリカ・中国・ロシア・インド・のうち、中国・ロシアはすでに輸入国に転じている。またインドも急速な人口増加の現状を考えると。遠からず輸入国に転ずると予想される。残る米国も今以上の増産は難しいようだ。ということは、食糧の安定確保は将来困難になるということだ。


◆食料自給率を向上させる対策が必要――岡部弘

「あすへの話題――食料自給率」 デンソー会長・岡部弘さん
（ 2006.06.06　日経新聞（夕刊））

現在日本で農業に従事している人の６０％近くが６５歳以上だと言われている。農業の後継ぎはすくないというから、このままでは遠からず日本の農業人口は激減することになる。現在でも食料自給率は４０％という低さであり、これがもっと低下すれば日本の食糧の安全保障はどうなるのか。重要な問題であると思うのだが、どうも真剣に議論されているようには思えない。

その一方で国内では飽食が続き、大量の残飯が食品廃棄物として捨てられており、その量は米の年間生産量のおよそ２倍に達するという。戦後の食糧難の時代に育った我々の世代にとっては、食物を残すことには強い罪悪感を感ずるが、今の世の風潮では、”食べ過ぎこそが悪”ということになる。それならば出す量を適量にコントロールすれば良いと思うのだが、それもままならない。

今の日本人は、望むだけの食品と量の確保に全く問題が無いと思っているのではないか。しかし世界を冷静に眺めてみると、実体はかなり厳しいことがわかる。かつての世界の４大穀物生産国といわれたアメリカ・中国・ロシア・インド・のうち、中国・ロシアはすでに輸入国に転じている。またインドも急速な人口増加の現状を考えると。遠からず輸入国に転ずると予想される。残る米国も今以上の増産は難しいようだ。ということは、食糧の安定確保は将来困難になるということだ。

食料自給率向上のためには、農業のあり方を抜本的に見直す必要がある。現在の小規模農業を集約化し、より生産性の高い農業の仕組みを検討すべきであろう。そのためには法規制のあり方を含めた国としての対策が望まれる。