物語が立ち現われるのは、明確な二分法をあいまいにする境界であることが多い。虚実の被膜の間、つまりトワイライトゾーンにこそ物語が立ち現われるというのである。よいテーマを貰うと、こちらの心も活性化される。そして、ここから「庭」というイメージが浮かんできた。庭はまさにトワイライトゾーンである。屋外であるが家の敷地内である。 . . . 本文を読む
「ただ、体力をつけたり、他の能力をつけたりするのと違って、意志の力をつけることの難しいのは、それに挑戦するのが意志の力の弱い人の場合が多いので、挫折しやすいということですね」。なるほど、と、まいは心の中で呟いた。「さあ、もう部屋に戻って明日からのプランを練りましょう」。まいがリビングから出ようとしたとき、おばあちゃんは何げなく付け足した。「私は、まいの意志の力が弱いと思ったことはありませんよ」。 . . . 本文を読む
おばあちゃんも別のじょうろで裏庭に撒いていた。紫色のキャベツの外葉に注がれたハーブティーは、くるくると透明な琥珀色(こはくいろ)の玉となって揺れた。眠っていたような青虫やアブラムシはあたふたと逃げ出した。 . . . 本文を読む
「船井流経営法は、人中心で、収益性よりも社会性と教育性を重視する。短所是正よりも長所伸展を主として経営改善を図る」。これは、ハーバード大学ビジネス・スクールが10年前に「船井流経営法」を調査したときの報告内容である。しかも、同ビジネス・スクールの教授は、これはハーバード流とは全く違うようだが、船井流のほうが世の中の真理にかなっているような気もする、と話している。 . . . 本文を読む
先日発売された世界経済フォーラムの国際競争力レポートによると、日本は総合で12位。しかし、国の債務(借金)残高の水準は117か国中114位、財政赤字は113位で最下位に程近い。ところが個人金融資産は世界でトップクラスにある。つまりどういうことかと言うと、戦後の日本人は個人の権利ばかりを主張し、出すものは出さずに保障ばかり要求してきた、その帰結というわけだ。インディヴィデュアルとしての豊かさばかりを追い求めパーソンとしての豊かさは置き去りにしてきた結果でもある。 . . . 本文を読む
20世紀を代表する知の巨人・ピーター・ドラッカー氏(95)が11日、亡くなられた。分権化、目標管理、知識労働者、民営化――。今、当たりまえに使用しているこうした経営用語はすべてドラッカー氏が生み出した造語なのだ。今でこそ当然のごとくに議論されている日本の人口問題、高齢化社会、年金問題などにも、十数年前から警鐘を鳴らしていた。 . . . 本文を読む
斬られた瞬間、ドスンという衝撃を受け、倒れそうになるのを懸命にこらえた。そばにいた加山雄三、田中邦衛ら若侍たちは、私の体から血が噴き出したので「事故か」と思った。映画の中の、口を半開きにして青ざめた彼らの表情は演技ではない。容器から伸びるビニール管が着物の裾(すそ)を通って地下に埋められ、20㍍ほど離れた酸素ボンベにつながっていた。立ち会いの瞬間にボンベの空気が送り出され容器の中の血を5㍍も飛ばしたのだった。その仕掛けを撮影が終わって初めて知らされた。
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かつてレーニンに率いられたロシアのボルシェビキは暴力によって政権を奪取しました。以後、共産主義運動における暴力革命路線が各国で荒れ狂うことになりました。しかし、考えてみれば共産党の民族解放闘争というのは、現在のイスラム過激派によるテロ闘争と類似しているのです。民族解放戦線というのは暴力による政権奪取であり、中国の毛沢東が中華人民共和国を樹立した戦法やかつてのベトコン、カンボディアのポルポトなどと基本的に変わることはありません。 . . . 本文を読む
アメリカ史をひもといて驚くのは、メイフラワー号がアメリカに着く前年の1619年に、すでに「奴隷市場」ができていたことです。アメリカは奴隷解放宣言の1863年まで、244年もの長い間、奴隷売買を続けていました。黒人奴隷を経済の「動力」として酷使し、移民を安い労働力として使い捨てにしてきたのです。経済成長で国内の労働コストが高くなり、製造業でこき使う「奴隷」が枯渇した。困った米国が世界を見渡すと、かつての自国とまったく同じ構造の国がありました。中国です。 . . . 本文を読む
歴史上の戦争は教科書ではどの戦争もその原因がまったく把握されていない。残虐で悪い人間がたくさんいたから戦争が起こったのだ、というくらいにしか読めない。そして今のこの時代にも残虐で悪い人間がたくさんいるからみんなでそれを叩き潰そうと、歴史教教科書は公民倫理の本になり代わって叫んでいる。そこには昔の人間が何を恐れ、何から必死に逃れようとしたかが書かれていない。 . . . 本文を読む
経済制裁、経済封鎖が戦争行為であるとしたら、日本は北朝鮮に対してすでに「宣戦布告」をしているに等しいのではないか。北朝鮮がいきなりノドンを撃ち込んできても、かつての日本のように、自分たちは「自衛戦争」をしているのだと言い得る根拠をすでに与えてしまっているのではないか。 . . . 本文を読む
自分の国の歴史教科書をつくるのにいちいち他国にお伺(うかが)いを立てんばかりの規定を設け、しかも中韓両国の教科書作成に関しては同様の規定がないというこんな馬鹿な話があるでしょうか。これほど情けない独立国は世界広しといえども、どこにもありません。 . . . 本文を読む
「何でもあり」の政界を長く眺めていると、大抵のことには驚かなくなるが、今回の事件には衝撃を受けた。来年度採択の中学校の教科書検定をめぐり、「新しい歴史教科書をつくる会」(高池勝彦会長)が推進する教科書(自由社)が不合格になった件である。 . . . 本文を読む
「泰平の眠りを覚ます蒸気船たった四はいで夜も寝られず」。蒸気船とお茶の上喜撰(じょうきせん)をかけた有名な狂歌である。歴史教科書の教材の定番でもあった。この狂歌が語っていることは、日本は何の前触れもなしに現われた黒船に驚愕(きょうがく)し、夜も眠られないほど周章狼狽(しゅうしょうろうばい)したというもので、日本は未開の遅れた国で、幕府は無能の限りだった、という時代認識を示している。事実はどうであったか。 . . . 本文を読む
米政府がクリントン、ブッシュ両政権下で8年かけて実施したドイツと日本の戦争犯罪の大規模な再調査で、日本の慰安婦にかかわる戦争犯罪や「女性の組織的な奴隷化」の主張を裏づける米側の政府・軍の文書は一点も発見されなかったことが明らかとなった。戦時の米軍は慰安婦制度を日本国内の売春制度の単なる延長とみていたという。調査結果は、日本側の慰安婦問題での主張の強力な補強になることも期待される。 . . . 本文を読む