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司法書士のオシゴト

会社にかかわる登記を中心に素朴なギモンにお答えします♪ 

代表取締役の重任登記と改印届出(お礼と結末など)その2

2017年08月25日 | 商業登記

おはようございます♪

変則的になってしまい申し訳ありません m(__)m
今日は、例の事件の続きでございます^_^;

え~。。。「登記所に提出している印鑑とは何ぞや!?」という点でございますが。。。まずは、ハンドブックの紹介デス。

P394 参考先例等2-6 をご参照くださいまし(ちょっと要約しております。アシカラズ)。

2-ア 登記所に提出している印鑑とは、当該登記の申請時において提出されている印鑑であり、議事録作成時に登記所に提出している印鑑ではない(H10.2.10民四270号通知,登記研究609号166頁)

2‐イ 従前の代表取締役の印鑑が押印された取締役会議事録を添付して代表取締役の変更登記の申請があった場合には、それと同時に、当該印鑑を紛失したとして改印届がされたときでも、(現)規則61条6項ただし書(以下単に「ただし書き」としますね♪)の適用がある(登記研究470号99頁)。※ハンドブックには書いてありませんが、質疑応答は重任のケースであるコトが明示されています。

2‐ウ 代表取締役がその退任後に取締役としてのみ選任され、取締役会議事録に前代表取締役としての届出印鑑を押印した場合でも、「ただし書き」の適用がある(登記研究273号74頁)

2-エ 代表取締役の改印届と同時に当該代表取締役の重任による変更の登記の申請があった場合(申請書には改印後の印鑑を押印)、取締役会議事録に改印後の印鑑を押印した時は、「ただし書き」の適用がある。
上記アの「登記の申請時において提出されている印鑑」には、イ及びウのような印鑑のほか登記申請と同時に提出した印鑑も含まれるとみて、「ただし書き」に該当するとしたものであろう(千葉和信「代表取締役の変更登記の申請書への印鑑証明書の添付省略の可否」旬刊商事法務1516号28頁)

。。。で、前述の商事法務1516号28頁にはどんなコトが書いてあるのか。。。(これもかなり要約いたします。)

【質問】
・代表取締役Bを増員した取締役会議事録に、既存の代表取締役Aが議事録作成時の届出印を押印した。
・議事録を作成した後に登記所に提出している印鑑を改印した。よって、議事録に押印されている印鑑と現時点で登記所に提出している印鑑は異なっている。

  ⇒この場合「ただし書き」の適用を受けることができるか??

【回答】
★ 規則82条3項(現61条6項)ただし書きの趣旨
規則82条3項の
例外である「ただし書き」の趣旨は、変更前の代表取締役が取締役会決議に加わり、その議事録の作成にも関与し、この議事録に登記所に提出している印鑑と同一の印鑑を押印している場合には、登記所としては、この一事をもって取締役会議事録の真正が十分に担保されていると考えることができるため、出席取締役等の印鑑証明書を添付する必要はないと考えられたことによる。

また、「ただし書き」は、従前の代表取締役がその地位にとどまったまま、新たな代表取締役についてのみ就任登記の申請をする場合や、重任された代表取締役が登記所に提出している印鑑を取締役会議事録に押印した場合も適用されると解されている。

なぜならば、「ただし書き」は「変更前の代表取締役」という規定ぶりになっており、文理上は、その代表取締役自身が変更によって退任することは要件とされていないし、登記所に提出している印鑑を押印した取締役会議事録であるという意味では、典型例(←従前の代表取締役が退任する場合)の議事録と違いはないと考えられるからである。

★取締役会議事録作成の時点から取締役就任による変更登記の申請の時点までの間に改印届がされた場合、「ただし書き」が適用されるか?

登記所に提出している印鑑とは、(1)取締役会議事録作成の時点において登記所に提出される印鑑を指すのか、(2)代表取締役の変更登記の申請の時点において登記所に提出されている印鑑を指すのか? が問題となる。

(1)の考え方の根拠としては、変更前の代表取締役が後任の代表取締役の選任決議に加わり、取締役会議事録に押印していれば、当該取締役会議事録に押韻されている変更前の代表取締役の印鑑の提出時期を問わず、当該取締役会議事録の記載内容についての真正は担保されているのではないかとも考えられることや、取締役会議事録の真実性を担保するためには、その議事録が作成された時点で登記所に提出されていた印鑑が押印されている必要があると考えられることがあげられる。

しかし、代表取締役の変更登記の申請前に、当該印鑑の改印手続きをしたという例を考えると、例えば、改印前の印鑑が悪意ある第三者の手に渡り、議事録の偽造等の不正が行われる可能性も排除できないため、(2)のように考え、登記申請の時点で登記所に提出されている印鑑が取締役会議事録に押印されている場合でなければ、「ただし書き」の適用はない。

よって、本件のようなケースにおいては「ただし書き」の適用はない。
また、取締役会議事録に押印された印鑑と登記所に提出されている変更前の代表取締役の印鑑とが同一であるかどうかを審査するのは、登記官が登記の申請書を調査するときであるから、その時点で登記所に提出されている印鑑を基準とした審査をするのが筋であるともいえる。
以上から、「登記所に提出した印鑑」とは、代表取締役の変更登記の申請時点において、登記所に提出されている印鑑を指すこととなる。

。。。というワケで、文献の内容のご紹介(うまく要約できていなかったらスミマセン。原典を是非読んでみてくださいませ。)でございました。
とりあえず、これをお読みいただきまして。。。次回へ続く~♪

コメント (7)    この記事についてブログを書く
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7 コメント

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Unknown (金子登志雄)
2017-08-25 11:03:04
 詳細な解説、ありがとうございます。

 ポイントは条文に「変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑」とあり「提出していた印鑑」となっていないため、勘違いが生じたのだと思います。

1.A→AB(代表者増員事例)
 この場合は変更登記の対象にないAが改印すると、即座に旧印は廃止されてしまい、新印だけが登記調査時点に存在しているから、旧印は不可。

2.A→B(交代事例)
 この場合は変更登記審査中はAの印が登記所に廃止されず残っているため「提出している印鑑」に該当する。

3.A→A(重任事例で改印)
 この場合も重任後のAが新印を届け出たと判断され、重任の登記審査中はAの旧印も残されているから旧印との照合でよいが、新印も提出されており、また代表者は同一人物だから申請前(重任前)に改印した場合と同様に新印も対象に含めてよい。

 ということでいかがでしょうか。
 代表者の変更登記ですから、「代表取締役の変更前の印」という意味ではなく、「変更前の代表取締役」の印であり、この印は旧印でも新印でもよいともいえます。
 
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Unknown (charaneko)
2017-08-25 11:33:15
金子先生、ポイントを分かり易くまとめていただき、ありがとうございました。

2と3についてはワタシも同意見でございます。
1に関しては、登記申請と同時の改印ではないケース(=商事法務の実務相談のケースと同様)を想定されていらっしゃるのですよね?

続きの記事に書くつもりですが、まさにこの「登記申請と同時にする改印届出」の部分が誤解の元だと考えておりマス。

代表取締役増員のケースであったとしても、Aの改印届出がBの代表取締役就任登記と同時になされるものであれば、取締役会議事録に改印前のAの届出印が押されていても可ということになると思いますが、いかがでしょうか。

「その1」にも書きましたとおり、「変更前の代表取締役」には、「代表取締役の増員決議の際に代表取締役の地位に変動がない者」も含まれると解されているようですので、増員と重任のケースの考え方は同様になると考えております。

今回は重任のケースなので、増員のケースは直接的には関係ありませんが、過去の事件では増員と同時に改印したケースでも特に問題なく登記が受理されたと記憶しております。

お時間があるようでしたら、ご確認いただけると嬉しいデス。
どうぞよろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (金子登志雄)
2017-08-25 11:51:40
>代表取締役増員のケースであったとしても、Aの改印届出がBの代表取締役就任登記と同時になされるものであれば、取締役会議事録に改印前のAの届出印が押されていても可ということになると思いますが、いかがでしょうか。

賛成です。増員Bが社長になり、A社長が会長になるケースは、社長印をBが使い、Aは会長印の新印にしますが、この場合は、Bの登記が審査中は改印についても保留ですから、ご意見のとおりです。
返信する
Unknown (charaneko)
2017-08-25 12:01:25
金子先生、お忙しいところありがとうございました m(__)m

若干ドキドキしていたので、ホッとしました。

今回は商号変更による改印でしたが、仰る通り、社長交代のケースで考えると分かり易いですね。
さすがです!

いつもありがとうございます。
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Unknown (金子登志雄)
2017-08-25 23:33:43
 増員と変更しない代表者の改印ですが、新保さんは申請と同時の改印か、それ以前の改印かという改印時期の問題と捉えているようですが、私は、商号変更や社長の交代のような場合は、改印が商号変更登記・増員代表取締役の登記の審査完了を条件に提出されていることが明白だからであり、増員と代表者交代・重任とはちょっと違うように私は考えています。

 変更前の代表取締役に変更しない代表取締役を含むが、特に条件もなく申請時に改印した場合は、直ちに旧印は廃止され、変更前代表取締役の印は新印のみと考えます。

 もっとも、議事録が旧印であれば、増員代表取締役の登記審査完了まで旧印を廃止しないように条件付で改印されたと登記所も善解するでしょうから、結論は一致するでしょうけど。そう善解してくれない場合は補正に素直に応じます。
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Unknown (charaneko)
2017-08-29 09:51:42
金子先生、コメントありがとうございました。

ワタシとしては、事実上印鑑照合ができる状況であれば、再任も増員も結論は一致すると考えておりましたので、そこまで深くは踏み込んでいませんでしたが、ちょっとドキッとしました。

実際、先日ご指摘いただいたように、社長交代に伴う改印のケースは良くあるコトで、改印ではなく廃印の場合もあり、議事録には一律に旧届出印を押していただいていました。

改印後の届出印を押す方がいやだなぁ~と思っていましたが、今後はケースを分けて対応した方が無難なのかも知れません。

いつもありがとうございます。
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AIの法務業務はどうなのか (技術経営)
2025-04-01 17:08:14
最近はChatGPT(LLM)や生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術とは違った日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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