司法書士のオシゴト

会社にかかわる登記を中心に素朴なギモンにお答えします♪ 

債権者保護手続 その2

2009年07月31日 | その他会社法関連

個別催告をやりたくない理由とは? のコメントからでしたね~。

①催告書を発送する事務処理が大変
場合によっては何千件、何万件もありますし、海外にも債権者がいたりして、それはそれは大変なことです。人手もたくさん必要ですし。

②催告書発送時点の債権者を特定するのが困難
実務上、「知れたる債権者」というのは、催告書発送時点で会社が債務を負っている相手ということになっていますが、その時点での債権者が誰なのかをはっきりさせるのは非常に困難な会社が相当数あります。
個別催告をする会社の場合、大きい会社ほど取引先も多いので、債権者を特定するためには、基本的に「買掛金」をリストアップします(変動のない債権者(例えば、借入先の銀行など)については、手間はかかりません)。
でも、そのためには経理の方が処理をしなければいけませんので、「それは間に合わない~っ」 という状況に陥ります。ですので、先月の月次決算の数字とか、例年の同時期の数字なども参考にしますが、結局は予想になってしまいますから、多少の危険もありマスよね。 

③債権者の注意を引きたくない?(笑)
 まぁ、これは私の感想なのですが、新聞公告とか、電子公告だったら、見ないヒトもいるだろうケド、催告書を送ったらそりゃあ確実に見るでしょう。すると「コレナンダ!?」 と思われて問い合わせが来たりとか、場合によっては異議が出るとか、イメージが下がるとか。。。少なくとも良い印象を与えるモノではないので、できればサラッとやりたい、とお考えになっているような気がしています。
 以前、日刊新聞に合併公告を出した会社さんは、なるべく注意を向けられないよう、公告がたくさん載っているページじゃなく、スポーツ欄の端っこの方に公告を載せていました。新聞社とのチカラ関係があるんでしょうね~。ビックリしました。

④催告書発送費用もバカにならない
催告書っていうのは、相手に届けば良いので、別に普通郵便で発送しても良いんです。でも、債権者から「来てませんよ」とか「スッゴク遅く着いたから、異議申述期間が足りないんじゃない?」とか言われると面倒なので、発送元で届いたかどうか(いつ届いたか)を確認できる方法で送りたいと思う場合は、書留郵便などを使います。そうすると、郵送費も相当高額になってしまいますよね。公告料なんてメじゃないほど高くなるかも知れません。

そして、さらに来週へ。。。

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債権者保護手続 その1

2009年07月30日 | その他会社法関連

組織再編や資本金の額の減少というのは、債権者保護手続といわれる手続が必要ですよね。
具体的には、債権者の皆様方に対して、例えば 「A社とB社は合併することになりましたから、異議のある方は申し出てください。」 というようなお知らせをするわけです。異議申述期間は、最低1ヶ月間です。

原則としては、官報公告をすることと、知れたる債権者(会社が債権者と認識しているヒト)に対して個別に催告書を発送することによるのですが、例外もあります。
それは、会社の公告方法が、①時事に関する日刊紙(例えば、日経新聞)、②電子公告による方法である場合、その公告方法で公告すれば債権者に対する個別催告はいらないよ。というモノです。(官報公告は必須です。)

会社の公告方法は、上場企業など以外の会社の場合は、通常 「官報による方法とする。」と定められています。
会社が公告することはあまりなく、特に変わったことをしなければ、決算公告くらいです。決算公告は会社が定めた公告方法によって行いますが、①日刊紙は掲載料が非常に高額(官報の10倍~20倍くらい)、②電子公告は掲載料はタダだけど、5年間の継続開示義務があって、あんまり見られたくない。。。というような理由と思われます。

ただし、債権者保護手続となるとハナシは別のようで、個別催告をしたくないが故に公告方法を変更して日刊新聞や電子公告にする会社も珍しくありません。
債権者がた~くさんいる会社は、いろいろとご事情があるようです。

①催告書を発送する事務処理が大変
②催告書発送時点の債権者を特定するのが困難
③債権者の注意を引きたくない
④催告書発送費用もバカにならない
⑤債権者の範囲がよく分からない
⑥催告期間の予備期間を置きたくない

ダイタイこんなところでしょうか?
でも、これだけ言われても~。。。不親切なヒトね。。。と思われるといけないので、ご説明を加えたいと思います。

あしたに。。。。。 

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会社の種類に関する英語表記

2009年07月29日 | いろいろ
定款には絶対的記載事項として商号を定めなければなりませんが、商号を英文にするときに、どのように表記するのか、ということも併せて定款に規定するのが一般的です。

商号については、何年か前にローマ字表記することが認められましたので、現在では結構ローマ字表記の商号の会社(特に外資系)が増えているように思います。
ただし、日本の会社の場合、会社の種類を示す部分を「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」のように日本語で表記しなければならないことになっています。

すると、会社の種類を示す部分は相変わらず日本語のままなので、英語で表記する場合、「株式会社」の部分をどうするか迷われる会社さんも多いのではないでしょうか?

他の会社はどうしているんだろう? と思われる方もいらっしゃるでしょうから、今日はある会社のご担当者様からのメールとワタシからの返信メールをご紹介したいと思います。

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【ご担当者様からのメール】

平素より大変お世話になっております。****と申します。
先生にはこれまで同様、新会社設立に関連しましてお世話になることが多々あることと存じますが、何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、早速の質問で恐縮ですが、現在新会社設立に伴いまして英語表記をどのようすべきか社内で検討中でございます。
Co., Ltdや株式会社をそのままローマ字表記(Kabushikikaisha)で記載したりする場合をみかけますが、その他に一般的に「株式会社」として使用される英語表記がございましたら、より多くの例の中から考慮したいため、ご教示頂ければ幸いです。

また、多くの表記の仕方のなかで、通常、どのような場合にどの表記を使用するか、慣例・基準等ございましたら併せてご教示いたけますと幸いです。
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【ワタシからの返信メール】

ご連絡ありがとうございます。
色々とお世話になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

お問い合わせの件ですが、残念ながら、私自身、あまり詳しくはないので基準や慣習に関してはご参考になるようなことは申し上げられません。

実務上は、おっしゃるとおり、「Co., Ltd.」「Kabushiki Kaisha」とする会社が多いように思います。
「Inc.」や「Corporation」は、感覚的には、大きめの会社が使っている傾向があるように思います。
なお、「K.K.」を使われる会社もそれなりにあります。
「Ltd.」ですが、弊事務所のクライアントでは、使用している会社はあまり多くありません。

結局は、日本の会社が「株式会社」という会社の種類を示す言葉をどういった英語で表記するかということなので、決まったルールはなく、好みの問題ではないでしょうか。
また、アメリカやイギリスでどのような使われ方をしているかということも参考になるかもしれません。
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メールのとおり、結局は好みの問題なんだと思います。(ご解説いただける方がいらっしゃれば、よろしくお願いいたします

日本の会社で、会社の種類を示す言葉が法律に定められているように、外国にだって、同じような規定があるはずです。でも、それはあくまでも外国の法律なのであって、日本の会社にダイレクトに当てはまるものではありません。

ですから、英語使用国の法令でどのような使われ方をしているかということを考慮することも一つの考え方ではありますが、そうしなければいけないワケではないですよね。

英語使用国の法律に出てくる会社の種類を示す言葉は、かえって紛らわしいので、ここは素直に「Kabushiki Kaisha」「KK」などを使うという会社も実務上はかなり多いですし、そういう会社は外資系だったりもします。

メールの中で「Ltd.」はあまり使わないと言っていますが、これは有限会社のイメージが強いせいかな。。と思います。

ちなみに、商号を英文表記にする場合、全く関連性のないような表記でも問題ありません。例えば、「株式会社 リス・インターナショナル」を「Realty Investors Services K.K.」のように、商号(本名)は頭文字にするけれど、英語表記では何の会社か想像しやすいように略さない、という会社も多いです。また、逆に英語にするときは頭文字をとる会社もあります。

それから、定款に定めずにテキト~に英文で表記している会社もありますが、日本語の読みをそのままローマ字表記する以外は、きちんと定款に規定されることをオススメします。
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メールでの決議 その2

2009年07月28日 | いろいろ

昨年の暮れのこと、T税理士法人はとうとうメールによって、社員総会を行うことになりました。

株式会社の場合、株主総会を開催するために電磁的方法を使って招集手続を行うためには、一定の準備が必要になるということは、何日か前にご説明したとおりですが、

http://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/8839760bbda05503141e2cc5c727d084

税理士法人にはそういった規定はないように思えます。そもそも、社員総会という法律上の機関がないので、当たり前といえば当たり前です。

また、書面やメールで直接議決権を行使するような場合、株式会社では、株主総会参考書類の提供が必要になりますが、もちろん、そんなモノもいらなさそうです。

さらに、株式会社では株主全員の同意によって、株主総会の決議を省略できる(いわゆる「書面決議」) という規定がありますが、社員全員の同意も関係なさそうです。

議事録の作り方、というか、議事録作成義務というような規制もありません。

ということで、自分の頭の整理をする意味もあり、ちょっとカンタンにまとめてみましょ。

税理士法人が何か決めるためには、原則として、社員全員の同意が必要
定款の定めにより別段の定めができる

T税理士法人は、定款によって定めた事項は社員総会の決議が必要、← 決議機関の定め
(総社員の同意によることは不可)
社員総会の決議要件は、総社員の3分の2以上の賛成 ← 決議要件の緩和

社員総会の決議については、理事長が必要と認めたときは(緊急性?)
メールによる提案を行うことができる  ← 書面決議に似た定め

メールによる提案が行われた場合、各社員はメールまたは書面で
賛否の意思を表示する ← 書面による議決権行使に似た定め

社員総会決議については、議事録を作成する ← 作成義務の定め

ちなみに。。。社員総会の決議事項でも理事会の決議事項でもないものは、法律上の原則どおり、社員全員の同意によって行うことができます。
ただし、理事会で必要と認めれば、それ以外の事項でも社員総会で決議することができるという定款の定めもあります。

どうですか?
結構イイトコどりって気がしますが、定款自治の世界では、「決めなければ何でもあり」になってしまうので、使い勝手を良くするためには創意工夫が必要で、それはそれで大変ですね。

そうそう、昨日のギモンについても念のためオサライいたしましょう。

1.メールで決議した場合、議事録は作成する必要があるのか?作成する場合、内容はどうするのか?
→定款に定めがあるので作成は必須です。内容は定款では決めていませんが、会社のもの適宜加工して作成しました。

2.そもそも、メールで社員総会の決議ができるという定款規定は有効なのか?
→定款の定めに従い行うことができます。

3.株式会社の書面決議とは何が異なるのか?社員全員が投票しなくても良いのか?
→会社と異なるのは、全員が投票しなくて良い点と、反対のヒトがいても良い点でしょうか。
社員全員の投票は必要ないのですが、そうすると、いつ決議が成立するのかが不明になってしまいます(決議要件が充たされた時点で決議成立などと定めることもできそう)。なので、投票の〆切日とか、決議の効力発生は何時なのかとか、予め決めておかないと、後々不都合が出ることが判明しました。

念のため、法務局への確認を行いましたが、相談官は顔をしかめてました。法人の定款っていうのは、結局どこかのモデルに限りなく近いことが多いので、ちょっと変わった内容だと、違和感があるようでした。(最終的には問題ナシ)
ワタシも同じだったワケですが、このようなケースでは、アタマを柔らかくしなければいけないんですね~。 

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メールでの決議

2009年07月27日 | いろいろ

とある大手税理士法人のお話です。

何年か前、ワタシ共司法書士のような士(サムライ)業の法人化が認められました。監査法人だけはずいぶん昔からありましたが、監査の関係なのでしょうか?

司法書士法人のオシゴトは受託することがありません(って、自分でやるからですよね、当然!)し、我が事務所も法人化していませんが、昔からお付き合いのある税理士事務所さんが、制度が新設されてすぐ税理士法人を設立して、以来ずっと色々なご依頼をいただいています。

会社と会社以外の法人というのは、似て非なるものです。しかも、それぞれの法人は、それぞれの法律に基づいて設立、運営されますから、共通点、相違点などを理解しなければならず、結構大変です。また、基本的には閉鎖的で小規模なことが多いので、法律では細かいことを強制せず、定款自治に委ねられる部分が非常に多いのも特徴ですね。

T税理士法人は、一昨年に定款を大改定しました。 それまでは解説書にあるようなノーマルな定款でしたが、改定後は相当ユニークな内容になっているように思います(他の税理士法人を知らないので想像ですが。。。。)。
おそらく、一番大きな改定内容は、代表社員の廃止です。ここ最近、大手監査法人でも代表社員制度を廃止するのが流行っていますが、T法人も代表社員を廃止して、全社員が各自代表権を持つこととなりました。

内部的には「理事長」がおり、理事長が印鑑届出を行い、実質的な代表者となっていますが、そんなことは登記簿からは分かりません。
代表社員制度をやめるに当たって、「印鑑証明書に“理事長”という肩書を載せることはできないんですかっ!?」とサンザン言われましたが、どうおっしゃろうとも、「法律上の機関じゃありませんから、理事長というのは登記できません。ですから、印鑑証明書に理事長という肩書を載せることはできません!!」と申し上げるしかありませんでした。

それ以外に大きな定款変更はない、というご担当者のお話しでしたが、どっこい、条項のタイトルとかは似ているけれど、内容自体は全然違うモノになっておりました
不思議なことですが、この定款は事前のご相談がほとんどない状態でドラフトが作成されていました。ですので、決議までの時間が差し迫っていて、詳細を検討するのは難しく、今考えるとそのことで後々のギモンが湧いてきてしまったように思います。

定款規定の中には、「メールによる決議」 という条項がありまして、「理事長が必要と認めたときは、社員総会の決議事項をメールによって提案することができ、社員はメールによって賛否を投票できる。」というものです。

前提として、税理士法人は、会社法の持分会社の規定を広く準用しています。社員は無限責任を負いますし、所有と経営が分離していません。また、機関としても、法律上は社員(代表社員)だけで、社員総会はありません。
そして、何かを決める時は、社員の同意を得る(重要なものは総社員の同意)というのが、基本になっています。

T税理士法人は、社員総会、理事会、理事(理事長)、監事という機関を設けています。以前は、社員総会で決議すべき事項(定款で定めています)は、必要に応じて総社員の同意により定める・・・という定款規定でしたが、一昨年の定款変更により、社員総会で決議すべき事項は社員総会を開催するか、メール(又は書面)による決議を行うことになりました(総社員の同意ではダメで、必ず社員総会の決議が必要という内容です)。

メールによる決議を行うに当たっては、いくつかの疑問がありました。

1.メールで決議した場合、議事録は作成する必要があるのか?作成する場合、内容はどうするのか?
2.そもそも、メールで社員総会の決議ができるという定款規定は有効なのか?
3.株式会社の書面決議とは何が異なるのか?社員全員が投票しなくても良いのか?

などです。
どう思われますか~? と質問を投げつつ、明日に続きます。 

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