司法書士のオシゴト

会社にかかわる登記を中心に素朴なギモンにお答えします♪ 

新株引受権付社債 つづきのつづき (完結編)

2009年06月30日 | 株式・新株予約権

昨日のつづきで~す

銀行の問題は何とか解決しましたが、資本金の問題が残っています。

会計士の先生は、社債の償還金100億円以外の100億円というのは、昔の言い方だと「プレミアム」、今で言うところの「発行価額以上に払い込まれた額 すなわち、払い込みのあった金額」 だ。つまり、新株引受権発行時点といえども株主さんから払い込まれた金額なのだから、当然資本金になるべきものだ。
ということは、今回払い込まれる3000万円と100億円 の合算額 100億3000万円が資本金等増加限度額であって、2分の1以上が資本金になるハズだ。
という意味のことをおっしゃったようです。
(最低でも50億1500万円増資することになったら、登録免許税が約3500万円もかかります。今回払い込まれる金額より高額です。)

おっしゃるとおり、新株予約権だったら、行使した場合、新株予約権の発行価額と新株予約権の行使価額の合計が資本金等増加限度額になりますよね。

ですが、新株引受権付社債というのは、昨日のお話のように会社法の適用を受けていません。そうなると、会計の世界だけ会社法ということはあるのでしょうか??
大体、会社法の適用を受けなければ、“資本金の額の計上に関する証明書”を登記の際に添付する必要はありません。

もし、発行時の100億円を資本金にするなら、「どうやって登記するのっ!?(ムッとした感じで)会計の世界だけが会社法なんてことはないはずよっ!」と心の中で思いつつ、「会社法での会計処理にはならないと思いますケド、もう一回会計士のセンセイにお話ししてもらえませんか?」とその場はやんわりと電話を切りました。

その後、その会社の決算書類を何年か遡ってみたのですが、最初は負債に計上されていたモノが途中で資本性の科目に変更されていて、その経緯も不明とのことでした。

結局、会計士の方も一歩も引かず、にらみ合い(笑)が続きましたが、「登記所がそんな登記はできない!」って言ってくれたら、会計士さんも納得してくださるかも。。。ということになり、法務局で相談してまいりました。

案の定、「当然、資本金は3000万円だけだよね♪ あんた、何が言いたいの?」みたいなことを言われ(ちょっとコバカにされた気もしましたが、内心ニヤリ)、お言葉どおり、ご担当者にお伝えいたしました~。

今思えば、やっぱりお上の鶴の一声(?)は、効果絶大だったんですね~。

会計士のセンセイも登記できないと言われれば、やっぱり考え直さないといけないと思われたのか、再度調査していただいた結果、会計処理も現在とは異なるという結論が出ました。(最終的には資本剰余金になったようです。)

あれやこれやと、ギモンだらけ、モンダイだらけの事件でしたが(クライアントさんを責めているわけではありませんよ♪念のため。)、何とか行使の登記が無事終わりました。
あ、それと、全部行使しましたから、併せて抹消登記も申請しました。ですので、同じことは(この会社では)起こりません。

たぶん、ご担当者もホッとされたことと思います。本当にお疲れ様でございました。
会社法では会計の知識も(部分的ですが)必要になってしまい、司法書士(私だけ?)も苦労していますが、今回は色々勉強させていただきました。ありがとうございました。

これで、このお話しもやっと終わりました。中身があったかなかったか。。。

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新株引受権付社債 つづきです

2009年06月29日 | 株式・新株予約権

先週のつづきで~す 

【問題点 1】
銀行が存在しない(権利義務を承継した銀行は良く分からないといい、受けてくれない)ので、とりあえず取扱銀行を変更しなくてはいけません。
行使期間が始まる前に株主総会で変更決議をし、新株引受権者の同意を得る必要があります。

そうは言っても、まずは取り扱ってくれる銀行を探さなくっちゃ!というわけで、ご担当者が日本の銀行に当たってみましたが、とにかく見たことがない発行事項ですし、書類も一部英語のモノしかなかったりして、なかなか引受先が決まりませんでした。

私も、「あんなに大手でもダメなのね~」「もし見つからなかったらどうなってしまうのかしら?」と心配していましたが、行使期間が始まるギリギリのところで、やっと銀行が決まりました。

そうそう、「何でそんなに必死に銀行を探さないといけないの?会社がもっている口座のどれかに払い込めばいいんじゃない?別に銀行の承諾はいらないんじゃない?」と思われた方、いらっしゃいませんか?

もしかして、そう思われた方のために。。。

実は、新株引受権付社債については、会社法の適用を受けないことになっているんです。商法の時代の改正で新株予約権というモノができましたよね。その際に、転換社債、新株引受権付社債(分離型、非分離型)は、①新株予約権付社債(転換社債型、非分離型の新株引受権付社債に相当するもの)と②新株予約権と社債の同時発行(分離型の新株引受権付社債に相当するもの)とに整理されました。

改正法の施行前に発行された転換社債などは、改正前の規定が適用されることになりましたが、会社法施行の際も「従前の例による」ことは変更されていません。

ですから、登記の際も従前の商業登記法の規定にしたがって、「銀行発行の払込金保管証明書」を添付しなければなりません。そのためには、銀行に別段口座を作ってもらい、証明書を発行してもらわなくてはいけないんです。

ちなみに、資本金の額の計上に関する証明書というものはありませんでしたから、今回は添付不要です。

というわけで、やっと銀行が見つかったので株主総会で変更決議をし、新株引受権者の同意をもらいました。
議事録ももちろん作成しましたが、念のため登記所に確認したところ、「発行決議でどの銀行が決議されていたかは発行の際の登記事項でないため、変更されていたとしても行使の際の添付書類にはならない。」 ということでした。
当然と言えば当然ですね。

ハナシが前後してしまいましたが、登記をする前提で「一体いくら資本金を増やすの?」というモンダイが残っています。
こんなハズではなかったのですが。。。。つづきはまた明日

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新株引受権付社債

2009年06月26日 | 株式・新株予約権

先日、事務所のH君にある上場会社の申請書の作成をお願いしたところ、その会社の謄本を見て「転換社債って何ですか?」という質問がありました。会社法になってから試験に合格したので、「確かに昔(?)のことは知らないんだよな~」と思い、概略を説明していたら昨年の出来事を思い出したので、あまり知ってて得することでもないのですが、今日の話題にしましょう♪

その会社は、何年か前に今の株主さんが買収された外資系の会社です。非分離型の新株引受権付社債が発行されていて、昨年、行使期間が到来したので新株引受権の行使による変更登記のご依頼を受けました。

その会社自体は何度か変更登記をしていて、そういう登記があるという認識はあったのですが、内容について深く考えたことがありませんでした。
依頼があって、関係書類を拝見すると、発行事項は???でした。

【新株引受権付社債の概要】
①社債の総額 約100億円
②新株引受権付社債の払込金額 約200億円
③新株引受権の行使価額 約3000万
④新株引受権の行使については現金で払い込み、社債100億円は償還する。

というモノなんです。新株引受権については現金で払い込みをし、社債はいままで何度もやっていましたが、社債の金額と行使価額の合計額はほぼ一致するもので、こんなに金額がバラけているのは初めてです。
買収という事情があって、発行当時の書類も一部なかったりと、どうしてこんなことになったのかは分かりませんでした。(実は、発行事項にも若干の不備が見つかったりして、その対応もありました。)

私の不勉強のせい(だと思いますが!?)で、結局、どんな意味があるかはわかりませんでしたが、とにかく発行の登記が出来ているのだから一応モンダイはなかったのだろうと都合よく解釈していたところ、行使の際にもモンダイが出てきてしまいました。

問題点1 当初決議していた払込取扱銀行は外資系銀行で、今は日本から撤退して存在しませんでした。 権利義務を承継した銀行はあったようですが、問い合わせをしても「分かりません!」の一点張りで、その銀行での取扱いは難しそうです。

問題点2 会計士の先生が「『行使価額のみならず、償還しない100億円分は資本金と資本準備金に振り分ける必要がある。』とおっしゃったのですが、本当ですか?そうすると、登録免許税は最大100億3000万円の2分の1(約7000万円)もかかってしまうんですかっ!?」というお問い合わせがありました。

さてさて、どうすれば良いと思われますか~?
と、色々考えていただくことにして、ちょっと長くなりそうなので、来週につづきます 

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検査役の調査

2009年06月25日 | その他会社法関連

先日、増資の案件がありまして、珍しく検査役の調査を伴うものでした。
ご承知のとおり、商法の時代から現物出資による増資等については、だんだんと規制が緩和されていましたが、会社法では事後設立の場合の検査役の調査が不要とされてさらに使いやすくなりましたよね。

事後設立は登記とは関係ない場合がほとんどですが、それ故か、後日、事後設立であったことが判明してモンダイになることが多かったんです。後で何かをすれば遡及的に有効になるのかどうかも不明だったので、この改正はありがたかったです。

この会社は、他の会社の事業の現物出資によって増資をしました。税理士等の証明を受けられれば、検査役の調査は不要ですが、証明をしてくださる先が見つからなかったのか、原則に立ち戻り、正々堂々(?)と手続をしようと思われたか。。。というところだと推測しています。

税理士や会計士等の専門家が証明をすれば、検査役の調査が不要という改正は、商法の時代に行われましたが、伺ったところでは、大手の監査法人、税理士法人はこの手の証明をしないと決めていらっしゃるところが多いそうです。
確かに、証明責任があるので嫌がるお気持ちも分かります。

というわけで、今回はほんとうに久しぶりのことでした。
検査役の調査が入りますと、手続に時間がかかります。申立ては、増資の決議が終わってからになります(議事録を提出します)ので、決議と払込期日(または期間)の間が空くわけです。しかも、もし調査が終わらないまま期日が来てしまった場合は、手続がパーになってしまいますので、かなりの余裕を見て日程を決めることになります。

今回の会社さんは、あまりにも余裕を取りすぎてしまったため、結局、払込期日の繰り上げる株主総会決議をすることになりました。
そういえば、検査役の調査の規制が緩くなった背景には、手続の遅延というモンダイがあったよな~。。。ということや、「検査結果が出ました!」という連絡を心待ちにしていたことなどを思い出した一件でした。

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監査報告 その2

2009年06月24日 | その他会社法関連

ちょっと昨日の続きです。
あるクライアントさんから、「会計限定されている監査役とされていない監査役の監査範囲のチガイが知りたいのですが?」というお問い合わせがありました。

会社法が施行されて間もない時期でしたので、条文を読み直していたところ、あることに気が付きました。

会社法第389条第3項では、会計限定監査役の監査範囲について、次のように定めています。
取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案、書類その他の法務省令で定めるものを調査し、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない

“ 法務省令で定めるもの ” は、会社法施行規則第108条に規定されています。具体的には、自己株式の取得、資本金の額の減少・増加、剰余金の処分などです。

何が言いたいかというと、“ 株主総会に報告しなければならない ” のですが、通常、減資や増資を決議した場合、議案内容に関する監査報告は議事録に記載していません。
でも、計算書類に関する監査報告と同じように考えれば、議事録にそれを書かなくて良いのだろうか? と考えてしまったわけです。

実は、この後、会社法施行前はどんな規定ぶりだったのか調べてみましたら、元々同じような規定が置かれていたということを知りました(知らなかったのはマズイんですが。。。)。

有名どころのお書きになった書籍のモデル文例なんかには、そんなモノは一切書かれていないので、「記載はいらないってことなのかしら~?」と思ってみたり、「私は書くぞ~!」と思ってみたり、そんな事例があるたびに迷いに迷っているのですが(今もです)、未だ踏み切れないでいます。
突然、「監査報告は必須ですから、議事録に記載しなければいけません!」とまで言うと、「何で今までは良かったんですか? 大体、そんな議事録は見たことがありませんよっ!」と返され、「え~っと。。。」と詰まってしまいそうですし(苦笑)。

それに、監査報告をしなければいけないってことは、少なくとも監査役は出席しなくてはいけないハズですが、こちらは普通に欠席している会社もあったりします。

自分のなかでは、かな~り悩ましいモンダイなのですが、皆さんどう思われますか?

会社法施行規則第百八条  法第三百八十九条第三項 に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 計算関係書類
 次に掲げる議案が株主総会に提出される場合における当該議案
 当該株式会社の株式の取得に関する議案(当該取得に際して交付する金銭等の合計額に係る部分に限る。)
 剰余金の配当に関する議案(剰余金の配当に際して交付する金銭等の合計額に係る部分に限る。)
 法第四百四十七条第一項 の資本金の額の減少に関する議案
 法第四百四十八条第一項 の準備金の額の減少に関する議案
 法第四百五十条第一項 の資本金の額の増加に関する議案
 法第四百五十一条第一項 の準備金の額の増加に関する議案
 法第四百五十二条 に規定する剰余金の処分に関する議案
 次に掲げる事項を含む議案が株主総会に提出される場合における当該事項
 法第百九十九条第一項第五号 の増加する資本金及び資本準備金に関する事項
 法第二百三十六条第一項第五号 の増加する資本金及び資本準備金に関する事項
 法第七百四十九条第一項第二号 イの資本金及び準備金の額に関する事項
 法第七百五十三条第一項第六号 の資本金及び準備金の額に関する事項
 法第七百五十八条第四号 イの資本金及び準備金の額に関する事項
 法第七百六十三条第六号 の資本金及び準備金の額に関する事項
 法第七百六十八条第一項第二号 イの資本金及び準備金の額に関する事項
 法第七百七十三条第一項第五号 の資本金及び準備金の額に関する事項
 前三号に掲げるもののほか、これらに準ずるもの
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