ばあさまの独り言

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世論調査を左右するもの

2016年12月02日 | 随筆
 少し古いですが、世界のマスコミが、結果的に誤った予想をしてしまった「次期アメリカ大統領選」について、日経新聞11月20日の「世論調査設問に注目」という記事を参考に考えてみました。
 私は以前から家庭の固定電話による世論調査に大変疑問を持っていました。今どき固定電話で世論調査をしたら、いかにランダムにと言っても、結果は主として高齢者か専業主婦を中心とした結論に偏ることは明白です。
 私の知り合いの若い夫婦も殆ど勤めに出ていて、家庭の固定電話は使わず(或いは持たなくして)、ケータイ又はスマホになっています。
 それは別にしても、日経新聞では、現在国民の関心事であるTPP、改憲、安保法賛否について,次のような警告を出しています。
 結論から言うと、同じテーマでも、設問の仕方によって、結果が異なってくるというものです。

 まずTPPについてです。
1)TPPについて今国会承認に賛成ですか反対ですか(日経新聞調査10月) <これは二者択一の聞き方です。>
結果 賛成38% 反対35% わからない、など27%
  <二者択一にすると結果は半々くらいになっています>

2)政府はTPPの承認案と関連法案を今国会で成立させる方針です。あなたは どう思いますか。(共同通信の調査10月)<これは三択です>
結果 今国会で成立させるべきだ17.7% 今国会にこだわらず慎重に審 議すべきだ65.5% 成立させる必要はない10.3% わからない、 など5.5%
  これをもって、或るTPP参院特別委員の一人が、「今国会にこだわらず・ 」と「成立させる必要は無い」を合わせて「8割反対」といったそうです 。この意見は果たして正しいでしょうか。

  記事にもありましたが、世論は<慎重審議>という中間の選択肢に集中 したものと思われます。自己の結論を明確に表明したがらない日本人の気 質によるものではないか、とも思えます。中間の選択肢があるとそこに集 中しやすい、と言えないでしょうか。
  それぞれに国民の意志ではありますが、聞き方一つで、結果が異なりど れとどれを合わせるか、によっても結論は異なります。

3)憲法改正についてどう思いますか。(日経新聞10月)<二択>
結果 改正すべきだ44% 現在のままでよい42% わからない、など1 4%

4)安倍首相のもとでの憲法改正に賛成ですか、反対ですか。
 (毎日新聞9月)<二択>
結果 賛成32% 反対53% わからない、など15%
  安倍首相のもとで、と限定された解答です。同じ二択で異なっています 。漠然と聞いた時よりも、シビアになっています。

5)集団的自衛権を使える様にしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安 全保障関連法案に賛成ですか、反対ですか。朝日新聞平成27年7月)  <二択>
 結果 賛成26% 反対56% わからない、など18%

6)安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を 強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備 に賛成ですか、反対ですか。
 (読売新聞平成27年7月下旬)<二択>
結果 賛成38% 反対51% わからない、など11%
 「安全を確保し、国際社会に貢献する」というところを強調したら、賛成 が増えました。設問はマスコミの姿勢によって異なり、解答に影響を与え ます。

このようにして、聞き方によっても結果は左右されるのです。
 世論調査は、解答の選択肢が幾つあるか、によって曖昧になったり、単純な設問でも個人名が上がると、その人の印象に反応するなど、実に不確実性の高いものになりやすいと思います。
 現実今年の秋に、わが家にもアンケートと称して電話がありました。たまたま夫が電話に出て、「そういう質問には答えたくありません」と言いましたら、「ではわかりませんの項目でいいですか」と言ったそうです。夫は、「わからないのではなく、答えたくないのです。間違わないで下さい。」と言ったら「はい。わかりました」と切れたそうですが、答えたくないと言う選択肢はなかったのでしょう。
 アンケート結果は、「留守で答えが貰えなかった」のか、「答えたくなかったのか」は判然としません。先の結果の「わからない、など」の「など」だったのかもしれません。
 今回のアメリカ大統領選でも、隠れトランプ氏支持者がいて、(はっきり意志表示をすると「何だそうなのか」と言われることを嫌ったとか、)世界中のマスコミも誤った判断をしたのですから、その原因を正さないと、次回から信用して貰えなくなるでしょう。
 ただし、総投票数では、クリントン氏が多かったので、あながち予想違いとは言えないかも知れませんが、アメリカの特別な選挙システムにも、原因がありそうです。票数の少ない人が当選することは、民主主義の国としては理解の出来ないことです。国民総投票の選挙なのですから、単純明快なシステムにならないのは何故でしょう。
 これからもいろいろの件について世論調査の結果が発表されますが、それをもって「民意」と単純に判断するのは危険だと思いました。「同じテーマ」についての調査であっても、報道するメディアによって、設問に可成りの違いがあることが証明されたと言えます。設問も注意深く良く見て考えて、正しく判断したいものだと思ったことです。

 
 
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