ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

貴方の好きな歌は何ですか

2023年08月27日 | 随筆
 私は随分古くからの(さだ まさし)のフアンです。あの頃から久しく時が過ぎましたが、家族が全員揃って暮らす事が出来なかった頃があって、そんな時は夫と二人で当時流行っていたカラオケに出掛けて、他人を気にすることもなく、さだまさしの歌など歌った事も度々でした。

        案山子(かかし)

  元気でいるか 街には慣れたか 友達出来たか
  寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る
 
  城跡から見下ろせば 蒼く細い河
  橋のたもとに 造り酒屋のレンガ煙突
  この町を綿菓子に 染め抜いた雪が 消えれば
  お前がここを出てから初めての春

  手紙が無理なら電話でもいい「金頼む」の一言でもいい
  お前の笑顔を待ちわびる おふくろに聴かせてやってくれ
   元気で居るか街には慣れたか 友達出来たか
   寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る (以下略)

 しみじみと心に響く歌です。父親の心が染み込みます。離れて暮らしている家族を持つ人は、きっと同じ思いをしている事でしょう。私もこの歌を歌いながら何度涙を流したことでしょうか。

 さだまさしには秋桜(コスモス)というヒット曲があります。この歌は
山口百惠の為に創られたと聞いています。当時山口百恵はスターでしたから、さだが白羽の矢をたてるような気持ちを込めて選んだのでしょうか。山口百恵は未だ結婚していませんでしたし、<嫁いでゆく娘の心情>の表現が、残念ながら今一つ不足だったように思われて、ファンとしては少し残念でした。 後にさだ自身が歌って、大変なヒット作になりました。私も大好きです。歌詞もメロディーも素晴らしいです。
 
         秋桜(コスモス)
淡紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽だまりに揺れている 
此頃 涙もろくなった母が 庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては 私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で 

 こんな小春日和の穏やかな日は
 あなたの優しさが浸みて来る
 明日嫁ぐ私に 苦労はしても
 笑い話に時が変えるよ 心配いらないと 笑った
    
      (中略)
  ありがとうの言葉をかみしめながら 
  生きてみます 私なりに
  こんな小春日和の穏やかな日は
  もう少しあなたの 子供でいさせてください

 この詩のどこが私の心を掴んだかというと、<生きてみます私なりに>というところです。一般的には「生きてゆきます」と花嫁の心情を素直に表現するところですが、彼は「もし駄目であっても」と人生のをかけた厳しさを表している点が、さだの非凡さを表していると思えて気に入っている場面です。ごく自然ですが、そこには前途に少しばかりの不安もにじませて、さりとて臆するわけでもなく生きて行きたいという結婚適齢期の女性の願望がしみじみみと伝わってきます。娘心の揺れ動きが自然に伝わって来て、さだまさしの天才的な歌詞に心を打たれています。

     空蝉(うつせみ) 

 名も知らぬ駅の待合室で 僕の前には年老いた夫婦
 足元に力なく寝そべった 仔犬だけを現世(うつせみ)の道連れに
 小さな肩よせ合って 古新聞から おむすび
 灰の中の埋火おこすように
 頼りない互いのぬくもり抱いて
  ああ昔ずっと昔 熱い恋いがあって
  守り通した ふたり

 いくつもの物語を過ごして
 生きて来た 今日迄歩いて来た

 (中略)

 都会へ行った息子がもう 迎えに来るはずだから
 けれど急行が駆け抜けたあと
 すまなそうに駅員が こう告げる
   ああもう汽車は来ません とりあえず今日は来ません
   今日の予定は終わりました
   ああもう汽車は来ませんとりあえず今日は来ません
   今日の予定は 終わりました

 この歌を歌う度に幾たび涙を流したことでしょうか。歌う度に涙する私に夫は「そんなに涙をこぼして歌うようなら、その歌を歌わない方が良い」と云いました。けれども私は毎回同じようにして心を込めて歌い続けては泣いていたのでした。今は幸せな暮らしをしていますから、当時の事は遠い過去ですが、それだけ現在が一層有り難い日々です。

 さだまさしの沢山の歌が好きな私ですが、何と言っても素晴らしい歌は「防人の詩」でしょうか。これは映画「二百三高地」の主題歌だそうですが、私は名曲の中の名曲だと思っています。

    防人(さきもり)の詩(うた)

おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
風はどうですか 空もそうですか
おしえてください

私は時折 苦しみについて考えます
誰もが等しく抱いた悲しみについて
生きる苦しみと 老いてゆく悲しみと
病の苦しみと 死にゆく悲しみと
現在(いま)の自分と

答えてください
この世のありとあらゆるものの
すべての命に約束があるのなら
春は死にますか 秋は死にますか
夏が去るように 冬が来る様に
みんな逝くのですか

わずかな生命のきらめきを信じていいですか
言葉で見えない望みといったものを
去る人があれば 来る人もあって
欠けてゆく月もやがて満ちて来る
なりわいの中で・・・(以下略)

 20代の若者が書いた詩とはとても思えない深い思いから発した素晴らしい詩だと感動しています。命あるものは全て死ぬ運命にあることを肯定した上で、それでも尚いくらかの希望をもって生きて行きたいと言う真摯な若者の仏教観が、聞く人の心に迫ってきます。
 永遠に不滅の名曲だと思っています。

 私は高齢者ですから、もう残りの人生は沢山はありません。誰もが通り過ぎる終末を見送って貰えるという好運を思う時、「有り難う」と身の回りで助けてくれた人々に、心から感謝したいです。
 私の知人に死の直前で生き返ったと思われる人がいます。その人は死ぬ直前に素晴らしい光の道が、遙か彼方から真っ直ぐに自分に向かって続いているのを見たそうです。生き返った時、死にそうな自分の周りに集まっている人々が誰か良く解っていたと云います。
 この様な不思議な人生の中で、今日も酷暑の一日が暮れていきます。皆様のご健康を祈っています。

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