ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

奥さん元気?

2013年02月02日 | 随筆・短歌
 この団地に住み始めた頃から見ると、義父母の年代の方達は、もう皆鬼籍に入られて、夫や私達の年代が高齢層になり、次の代の人が現在働き盛りの年代層となりました。そろそろその子どもさん達も独立する頃となり、今では小さなお子さんが少なくなりました。もう新しく家を建てる空き地もないので、二世帯の住宅を三世帯用に建て替えたりして、やはりお年寄りの多い地域ではあります。
 近所にお住まいで、夫と出会う度に「奥さん元気?」と必ず仰る方がいます。もう70代に入るかという年代ですが、スポーツマンで、私達がウォーキングをしていると、「その歩き方では、ウォーキングとは言わず、散歩と云うんです」と言われます。確かにウォーキングと言えばかっこいいのですが、ただ毎日欠かさずに歩いているだけで、あちこちキョロキョロして、あそこの家の花が咲いたとか、最近誰さんに出会わなくなったけれどお元気かしら、等と話しに夢中になっていて、歩くのは二の次ですから、散歩というのが正しい表現と云えましょう。
 「ほら、こうしてしっかり歩かなくちゃ」と歩いて見せて、笑われています。でもこうして声を掛けて下さったり、「この頃見えなかったから病気でもしているのではないかと心配していた」等と言われると嬉しくもあり又有り難くもあります。
 この方はリッチな方で、スポーツは何でも出来、特にスキューバダイビングが得意で、良く海外へ潜りに出掛けておられました。その一方で地域のゴミステーションを見回って、管理状況を点検することを誰に頼まれた訳でもないのに、ボランティアとしてせっせと行って、皆さんに尊敬されています。
 もうお一人、以前教師で、退職の頃は県の教師を束ねる程に偉くなっておられた人がご近所におられます。この方も退職後は、地域の中に溶け込んで、誰とでも気安く言葉を交わしておられます。今は離れたところで俳句の指導をしておられるのですが、口に出したりされないので、ご近所でもそれをご存じない人は多いと思います。私は、図書館で、折々結社の発行する句集を読みますから、如何に素晴らしい俳句を作っておられるか知って居ます。この方とも夫は格好な話相手で、お互いに出会えば冗談が飛び交い楽しい会話が始まります。
 この様に現役の頃は地位の高かった人が「実る程に頭の垂れる稲穂かな」を実践されて爽やかに生きておられるのが、感動的です。地域では、皆一箇の人間として平等に、お互いに尊敬し助け合って生きて居るということは、本当に素晴らしいことだと思っています。
 私達と言えば、多分現在は「何時も二人一緒にリュックで歩いている老夫婦」として認識されているのではないでしょうか。「車でない旅行はリュックで行く」所から始まり、だんだん日頃のウォーキングと帰り道の買い物がリュックに変わりました。
 昨日のことです。スーパーで、「アッこの鰰(はたはた)を買っていきましょう」と小ぶりで安い鰰を私が見つけて、2パック夫の押すカートに入れました。その時年配の見知らぬ男性が、「この小さいはたはたをどの様にして食べるのですか」と聞かれました。「はらわたを出して、醤油とみりんで味を付け、網付きバットに並べて一晩冷蔵庫干しにして、焼いて食べるのです。美味しいですよ。」と答えました。「今度私も作ってみよう。ところで貴女はスリムになりましたね」と笑顔で仰るではありませんか。私としては全く初対面としか思えない人でしたから驚きました。
 尤も私は、人の顔が中々覚えられず、地域の人は地域に居られる時はわかりますが、別の場所でお会いしても解らない人が多いのです。
 スーパーでは、見知らぬ人の親切に合う事も多く、「この舞茸は油揚げと一緒に甘辛く炒めると美味しいのですよ」とこれも見知らぬおばあさんが教えて下さいました。以来私も簡単な調理方として重宝させて貰っています。売り場の係りの方は、「今日はこれが買いですよ」と折々教えて下さいます。
 ある新聞の歌壇に一人暮らしの人が、スーパーのレジ係と交わした一言だけが一日の会話であったというのがあって、悲しい思いで読みました。一人暮らしでは話す相手もなく、きっと寂しいに違いないでしょうが、それを克服して生きて行く、自分なりの道を見つけだせれば、それが幸せな老後に繋がるのではと思ったりしています。
 私達はスーパーでも、レジの人達がちょっと暇で、他に並んでいる人が居ない時には、冗談を交わしたりします。こんなおしゃべりは、余り見かけません。尤も私は機転が利かなく、パッと切り返す能力もなく、中々ウィットに富んだ会話は出来ません。傍で笑って眺めて相づちを打つだけです。夫はユーモラスな冗談に長けていて、良く笑わせて帰って来ます。
 夫は祖父の遺伝子を継いだようです。息子も又夫と同じでテレビを見ていても、次々に冗談が飛び出します。笑いは精神的にも生理的にも、大変良いと聞きます。
 私は今年は、「○○さんお元気?」と先に声を掛けるように心がけたいと思っています。その方が、より明るく生きられて、きっと心身共に健康に過ごせると思えるからです。

独り居の三軒隣の女性より絵手紙のあり赤い寒椿(再掲)

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