ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

孤独のしあわせ

2010年11月08日 | 随筆・短歌
 寂しがりやの私は、家族が誰も居なくなって、たった独りになったら、さぞ寂しいに違いないと、常々怖れています。ですから、家族のいる現在を大切にしなくては・・・と何時もそう思って、現在の状態に感謝して暮らしています。「年老いたら、孤独に強くならないと、自らを不幸にする」と夫は良く「万一」を心配する私にそう云います。
 二人共退職してから、常に朝起きるのも同時、午前中の約一時間のウォーキングも一緒、そして夜はレンタルのDVD鑑賞から最後のニュースまで、何時も一緒が多く、また二人とも関心の強い話題について話始めると際限なく続いてしまいがちです。居間にはテレビが一台しかないので、このように過ごすのは当たり前だと思っていました。
 ところが最近は大抵午後は夫は自室へ籠もって、庭の良く見える窓際に肘掛け椅子を置いて、読書、昼寝、音楽鑑賞、囲碁などを楽しみ、夕食の私の調理の洗い物を手伝うまでの時間は、独りの時間を楽しむようになりました。
 勢い私一人が居間に陣取って、私も一人の自由を満喫するうになりました。見たいテレビを見たり聴きたいクラシックの音楽を聴いたり、短歌を詠んだり、ブログや手紙を書いたり、思う存分好きなことができますから、これがまさに天下晴れての自由な時間になっています。
 二人で図書館へ行くとか、街へ出る等の外出する用のない日は、午前中にウォーキングと買い物などの用事を二人で済ませ、午後は各自自由な時間を満喫するというふうになって、もう7年位になるでしょうか。
 この孤独は、家族が同じ屋根の下にいて何の心配もなく、必要とあらば直ぐに飛んでいって相談出来るというとても恵まれた状態のもので、むしろ自由を楽しむ時間というべきでしょう。思えば義母が亡くなって、義父が一人残ってからの日々は、「寂しくないですか」と聴く私に何時も「少しも寂しくない」と答えていた義父の気持ちも解る気がします。
 今では私達はお互いのこの孤独な時間がとても大切に思われて、何とか確保するように日程をやりくりして、午後を空けるように努力しています。毎日が日曜日であっても何かと用が出てきて、週に4日も確保出来れば良い方です。私は、その内2日は午後にフイットネスクラブに通うので、帰ってからの僅かな時間しか残りません。その間洗濯もしなくてはならず、それでもこの孤独は蜜の味です。
ところが今日たまたま町内会の日帰り旅行があり、参加した夫が、ご主人を亡くされたお二人のご夫人の孤独について、身につまされたと言って帰ってきました。仏壇の遺影に、「行ってきます」とか「今帰りました」とか言葉に出して言いながら、淋しさを耐えているというのです。「お宅は二人して元気でいいですね、といわれたよ」と言いながら、私達は二人とも何処も悪くない訳ではないけれど、毎日揃ってウォーキングや買い物が出来る幸せを、今更のように感じたようでした。
 人間ですから、「我や先、人や先」の違いはあっても、100%亡くなります。矢張り「どちらか独りが先立った後の孤独」をどう耐えて生きていくか、その心構えを日頃からしっかり考え鍛えておかなければならないと思っています。
 先人が孤独についてどのようにいっているか、少し調べてみました。

☆人生とは孤独であることだ。  ヘッセ

☆孤独は青年時代には苦痛でありましょうが、ひとかどの年をとってしまうと甘美なもの です。   アルバート・アインシュタイン
  
☆私はかつて孤独ほど仲のよい仲間を見出したことはない。  ソロー

☆われは孤独である。われは自由である。われはわれみずからの王である。                                    カント

☆神は人間に孤独を与えた。然も同時に人間に孤独ではいられない性質を与えられた。                               佐藤 春雄

☆孤独は山になく街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるの である。     三木 清

☆歳を経るごとに新しい友人を得ることができないと、必ず孤独に悩まされるようにな  る。常に友情の手入れを怠らないことだ。友人を冷たくあしらい、優しい言葉一つかけ ずに友情を死なせるものは、人生という疲れ果てた巡礼の途上におけるこの上ない慰め を、わざわざ自分の手で捨て去る愚か者である。      サミェル・ジョンソン


 先人の言葉に少し耳を傾けて、真の孤独と向き合う日になった時には、どう生きるか静かに考えています。ただ孤独を敵側に追いやるのではなく、味方につける方法もあるのではないか。それを見付ける方法を考えたいとしきりに思っています。

 
 人間(じんかん)をすり抜けて行く交差路に孤独の影の群れが行き交う (再掲)
 明日へ明日へ時を追ふごと雲走る流れに乗れない我を残して (某紙に掲載)
 寂しい時悲しい刻に持つマウス見知らぬたれかに癒し求めて (某誌に掲載)

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