何れにしてもマツダもホンダも、それほど大きくはない35.5kWhのバッテリーを搭載したEVを東京モーターショー・TMSでは展示したわけだ。期せずして同じ容量のバッテリーを搭載して200km程度の航続距離の電気自動車となっている。200km程度では、すこぶる商品力は劣るのではないのかな、少なくともB,Cセグメントの車では400kmは必要ではないかと、小生は考えている。
200kmだった初期のリーフが散々手こずった航続距離であるので、マツダもホンダもそれほど売ろうとは思っていないのかも知れない。
両社とも決してこの数字には満足していないものと思われるが、環境規制や今の流行(環境団体)には抗しきれずに、似たような電気自動車を出してきたものと思われる。
これをベースに、改良を加えてゆくつもりなのでしょう。
だから、これが売れては困るのではないか、と言った論考もある。そんな訳で、航続距離が200kmそこそこのEVを造った訳だ、成程。
記者の眼
ホンダとマツダ、万が一にも売れると困るEV
2019/11/25 05:00 清水 直茂=日経 xTECH
ホンダとマツダが、2020年に欧州で電気自動車(EV)を発売する。ともに1充電当たりの航続距離が約200km(WLTPモード)と短く、商品力は低い。自動車ジャーナリストやアナリストは、「ほとんど売れない」と見る向きが大勢だ。2社はなぜ、時流に乗り遅れた航続距離の短いEVを開発したのか。「売れると困る」のが本音に映る。
ホンダは「e」、マツダは「MX-30」と名付けたEVを開発した。電池容量はともに35.5kWhである。他社を見ると最近は50kWh超、400km超がざらで、2社の性能は明らかにもの足りない。
ホンダe マツダMX-30
(撮影:日経 xTECH)
400km超の航続距離が普通になっているのは、各社が歴史に学んだ結果である。日産自動車の苦戦と、米テスラ(Tesla)の躍進だ。
約10年前からEV「リーフ」を本格的に販売する日産は、販売低迷に長年苦しんできた。苦戦の原因で大きいのが、航続距離が短いことである。「200kmあれば日常走行に十分、というのはメーカーの理屈。当時は消費者の不安感がこれほど強いことを理解していなかった」(日産の初代リーフ開発担当者)。
日産は発売当初に24kWhだった電池容量を、2019年には62kWhまで増やし、航続距離をどんどん延ばしてきた。「消費者が不安を感じない水準を探ってきた結果」(同担当者)だ。一方でテスラは、当初から長い航続距離にこだわり、躍進した。2008年に発売した最初のEV「ロードスター」の電池容量は50kWh超で、航続距離で400km前後を実現していた。
ホンダはeの航続距離について、「日常のコミューター(近距離)用途で十分」(eの開発担当者)というが、300万円以上の価格帯にコミューター市場が存在しないことは、日産が時間をかけて証明した。数万~十数万円ならばいざしらず、300万円超の車両は短距離も長距離も走れて当然と考えるのが、消費者の大半である。
航続距離が短いEVを今さら開発するホンダとマツダは、歴史に学べない愚かな企業なのか。
一見そう思えるが、コトはそう単純でもない。
売る気が感じられないeとMX-30から透けるのは、ホンダもマツダも本音ではEVを積極的に開発したいわけではないが、そんな選択肢を採れないほどに社会の圧力が高まっていることだ。世界で環境団体や投資家が、「脱エンジン」の要求を強めている。
特にホンダとマツダが最初にEVを投入する欧州。ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)の排ガス不正問題以降、環境団体の影響力がかなり増している。日本にいると理解しにくいが、日系自動車メーカーの欧州駐在員は、「欧州の自動車メーカーは、EVの開発に力を注ぐとしか言えないくらいに(環境団体に)押し込まれている」と分析していた。
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フォルクスワーゲンが量産し始めたEV「ID.3」。主力モデルには容量58kWhの電池を搭載した。航続距離は約420km。(出所:フォルクスワーゲン)
今や欧州自動車メーカーの事業運営上の最大のリスクは、CASEでもMaaSでもなく、「環境対策に本気の会社と映らないことで、クルマの販売を許されなくなること」(同駐在員)というのだ。
事実、ここ数年、環境団体の活発なキャンペーンなどを背景に、欧州の都市からエンジン車を排除する動きが進んでいる。「クルマを売るな」と自動車メーカーが言われる“悪夢”は、現実味を帯び始めている。自動車メーカーは「販売禁止」を防ぐために、できることは何でもやる。EVの開発に本気になっていると発信するのは、もはや基本中の基本だ。
投資家の姿勢も変わってきた。「機関投資家を中心にSDGs(持続可能な開発目標)を重んじた投資を求められる。EVを開発しない企業に投資はできないという声が増えている」(東海東京調査センターシニアアナリストの杉浦誠司氏)。 Sustainable Development Goals
EV開発を社会の要請と受けとめて(あきらめて、かもしれないが)ホンダもマツダもEVを開発したが、一方で大量に売れると困るのだろう。売れば売るほど、損が膨らみかねないからだ。電池が高価で、ホンダの技術者は「(eは)全く儲からない」と明かす。
ならば、売れないように造るのが“最善手”。売れないEVの造り方は簡単で、日産の歴史に学び、航続距離を短くすればいい。今さら200kmの航続距離では、“万が一”にも売れない。航続距離を抑えて高価な電池の搭載量を減らすほどに、損を抑えやすい利点もある。
ホンダもマツダも歴史に学ばないどころか、しっかり学んだ“賢い”企業だったわけである。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00138/112000425/?P=1
航続距離は、少なくとも400km以上はないと商品力はないと、小生は思っているのであるが、そこへ敢えて200kmそこそこのEVを投入してきたホンダやマツダは、売れないように200kmそこそこのバッテリーを積んだEVを世に出してきた、と言う訳だ。将に売れては困るのだ。まあ売れないだろう。まあこれも環境対策に取り組んでいる企業とみられんがための、涙ぐましい結果なのだ。
しっかりと(日産リーフの)歴史に学んだ"賢い”企業だったと、これまた皮肉たっぷりにこの論考は結んでいる。さもありなん。
(続く)
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