世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

次世代エコカー・本命は?(87)

2015-03-31 00:00:00 | Weblog

研究の内容

 本研究は、金属リチウムの負極側にのみ有機電解液を用い、正極の空気極側では水性電解液を使うという着想を基にしている。負極側の有機電解液と空気極側の水性電解液の間に、リチウムイオンのみを通す固体電解質を隔壁として使用すれば両電解液の混合を防ぐことができ、かつ電池反応を進めることができる。これによって、正極での固体反応生成物である酸化リチウム(Li2O)の析出を防げることを発見した。すなわち、この電池では、放電反応により生成するのは固体の酸化リチウム(Li2O)ではなくて、水性電解液に溶けやすい水酸化リチウム(LiOH)であり、空気極のカーボン細孔の目詰まりは起こらない。また、水や窒素などは固体電解質の隔壁を通れないため、負極のリチウム金属と反応する危険性がない。さらに、充電するときには、充電専用の正極を配置することにより、充電による空気極の腐食と劣化を防ぐことができる。


図2 新しい構造の「リチウム-空気電池」の構成 左図:放電時 右図:充電時


 負極として金属リチウムリボンを、負極用電解液としてリチウム塩を含む有機電解液を組み合わせる。正極と負極を分離する隔壁としてリチウムイオン固体電解質を中央に配置する。正極用の水性電解液としてアルカリ性の水溶性ゲルを用い、微細化カーボンと安価な酸化物触媒で形成された正極と組み合わせた。

 放電時の電極における反応は次のようになる。

 1)負極での反応:Li → Li+ + e-
金属リチウムがリチウムイオン(Li+)として有機電解液に溶解し、電子は導線に供給される。溶解したリチウムイオン(Li+)は固体電解質を通り抜けて正極の水性電解液に移動する。
 2)正極での反応:O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-

導線から電子が供給されて微細化カーボンの表面で空気中の酸素と水が反応して水酸イオン(OH-)が生じる。正極の水性電解液においてリチウムイオン(Li+)と出会って水溶性の水酸化リチウム(LiOH)となる。

 充電時の電極における反応は次のようになる。

 1)負極での反応:Li+ + e- → Li
導線から電子が供給され、リチウムイオン(Li+)は正極の水性電解液から固体電解質を通り抜けて負極表面に達し、そこで金属リチウムの析出反応が起こる。
 2)正極での反応:4OH- → O2 + 2H2O + 4e-

酸素発生反応が生じる。発生した電子は導線に供給される。

 今回新たに開発したアルカリ性水性電解質ゲルを用いたリチウム-空気電池を、空気中で0.1A/gの放電レートで放電すると、放電容量は約9000mAh/gとなった。また、充電容量も約9600mAh/gとなった。この放電容量は、これまでに報告されている従来型のリチウム-空気電池の容量(700~3000 mAh/g)に比べると、大幅に増加している。さらに、アルカリ性水溶性ゲルの代わりにアルカリ性水溶液を使うと、空気中で0.1A/gの放電レートの放電で、図3に示すように連続的に20日間の放電ができ、その放電容量は約50000mAh/gとなった。


図3 新しい構造の「リチウム-空気電池」の長時間連続放電曲線

 この新しいリチウム-空気電池は、放電が終わった後に充電する代わりに、正極の水性電解液を入れ替え、負極側の金属リチウムをカセットなどの方式を利用して入れ替えれば、連続使用可能になる。これは一種の燃料電池であり、「金属リチウム燃料電池」と呼ぶことができる。理論的には金属リチウム30キログラムはガソリン40リットルとほぼ同じエネルギーを持っている。空気極側で生成した水酸化リチウム(LiOH)を使用済みの水性電解液から回収すれば、電気的に金属リチウムを再生するのは容易であり、燃料として再利用できる。リチウムが循環使用される「金属リチウム燃料電池」のコンセプトを図4に示す。

図4 リチウムが循環使用される「金属リチウム燃料電池」のコンセプト


今後の予定

 今回、産総研が開発した新しい構造の新型「リチウム-空気電池」は、実用化に向けて技術の向上がさらに必要であり、充電可能な電池として、また大容量連続放電が可能な「リチウム燃料電池」として、さらなる研究開発を進める予定である。
・・・・・・
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html



リチウム-空気電池」は一種の燃料電池と言っても差し支えない、と言っているので、燃料電池車を世界に先駆けて世に出したトヨタでも、開発を進めているのではないのかと思っていたら、そんな話がトヨタのホームページに載っていた。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(86)

2015-03-30 00:00:00 | Weblog

それらの論考を載せる前に、その内容から小生なりにこの「リチウム・空気電池」を概略する。正しく内容を表現しているかは保証できないが、次のようになる。

(1)先ず電池であるからして、電解質を挟んで負極と正極がある。負極が金属リチウムで正極が空気である、といっても小生のような素人には正しくイメージ出来ないのだが、正極はどうも酸素を含みやすい(通しやすい)炭素材料などを使うようだ。

(2)負極の金属リチウムのリチウム原子から電子が放出され電流となり正極へ移動する。電子を失ったリチウム原子はリチウムイオンとなり、電解質を通って正極に移動する。これが「放電」である。

(3)正極に移動したリチウムイオンは、大気由来の酸素と反応して、酸化リチウムLi2Oとなり堆積する。
Li2Oが正極の炭素材料(の細孔)に蓄積し目詰まりとなり反応が停止してしまうため、炭素材料に酸化物触媒をくっつけて水溶電解液(アルカリ性の水溶性ゲル)と組み合わせるなどの方法が考案されている。

(4)以上が「放電」であるが、「充電」は、この酸化リチウムが酸素を大気に放出してリチウムイオンと電子となり、リチウムイオンは電解質を通って負極に戻り電子は導線を通して負極に戻り、そこでリチウムとなり蓄積される、という過程で進むということらしい。


参照論考①「IBM、電気自動車用リチウム空気電池を開発中。1回充電で走行距離800キロめざす」(http://sustainablejapan.net/?p=1248)
参照論考②「次世代二次電池の研究成果」(http://www.toyota.co.jp/jpn/tech/environment/next_generation.html)
参照論考③「新しい構造の高性能「リチウム-空気電池」を開発(産総研)」
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html



このため理論的には、何らかの方法をとれば、放電と充電を繰り返すことが出来そうだ。また負極の金属リチウムをその都度供給し正極の多孔質炭素を入れ替えれば、放電は理論的には続けられるという。燃料電池の場合は、この金属リチウムが水素に置き換わっているのである。だから水素が継続的に供給され酸素と結びついてゆけば、燃料電池は発電し続けるように、理論的には金属リチウムが供給され続けて正極からも酸素が供給され続ければ、「金属リチウム・酸素電池」は発電し続けるのであろう。

Wikipediaによれば、この動きは「燃料電池」と同じであると言う。


燃料電池とは次のような反応である。

(1)負極に水素H2を供給する。

(2)H2は電子を放出して水素イオンとなる。H2→2H++2e-

(3)電子2e-は正極に移動する(放電)。電気が発生する。

(4)水素イオン2H+は高分子電解質膜を通り正極へ移動する。

(5)正極では2H+と2e-と、空気中の1/2O2と結合して水H2Oとなる。

このH2をリチウムLiに置き換えれば、リチウム・空気電池と同じ様子となる。だからリチウム・空気電池は一種の燃料電池といってもよいのである。

そしてこのリチウム・空気電池の性能は、リチウムイオン電池の5,6倍以上の電池性能を持っているといわれている。だから電気自動車の電池として有望視されているのである。

ということの様であるが、次に参照した論考を掲載する。




新しい構造の高性能「リチウム-空気電池」を開発(産総研)
発表・掲載日:2009/02/24

・・・・・・
研究の経緯

 産総研エネルギー技術研究部門では、次世代「リチウムイオン電池」を目指して、電極材料をナノ構造化することで、大出力化が期待できることを示してきた(2005年1月18日、2007年11月19日、2008年8月27日産総研プレス発表)。自動車用にはさらなる大幅なエネルギー密度のアップが必要となるので「リチウム-空気電池」の研究も精力的に進めてきた。


従来のリチウム-空気電池の問題点
1)正極に固体の反応生成物(Li2O)が蓄積し細孔を目詰まりさせ、放電が止まる。
2)空気中の水分が金属リチウムと反応すると危険な水素ガスを発生する。
3)空気中の窒素が金属リチウムと反応して放電を妨害する懸念がある。

図1 従来のリチウム-空気(酸素)電池の原理図

 産総研では、従来の電池の問題点を踏まえ、負極側に金属リチウムと有機電解液、正極側に空気極と水性電解液、両電解液の隔壁として固体電解質に着目し研究開発を行ってきた。

 今回の研究の一部は、独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)の科学研究費補助金により行われた。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(85)

2015-03-27 00:00:00 | Weblog

FCVは究極の環境自動車か

 FCVについても可能性と疑問が同居する。燃料電池は確かに見かけ上はゼロエミッション車といえるが、ライフサイクル全体を見渡せば搭載する水素燃料の大半は天然ガスからの改質で生産され、その際に二酸化炭素を排出している。この議論をすると、EVに供給される電力化石燃料発電で二酸化炭素を排出するので同じことになる。

 将来的には、二酸化炭素フリー水素を生成するプロセスの構築、そして水素燃料価格の低減が求められる。もちろん、車本体の価格は重要な要素である。筆者がホンダを去った2004年の段階では、FCVは1台あたり1億円以上していた。10年を経て2015年に自動車大手から発売されるFCVについて、具体的な販売価格は明らかにされていないものの、おおよそ500万~1000万円の範囲かと考える。

 経済産業省は2000年頃に、FCVの活発なプロモーションと開発支援をしていた。その後、FCVが時期尚早であることから過熱気味の雰囲気が途絶えた経緯がある。

 量産体制になれば大幅なコスト低減が図れるという目論見はあるが、必ずしもそうならない部分もある。酸素と水素の反応を促進する白金触媒がそうだ。かつて100kWの燃料電池を搭載すると1台当たり100gの白金が必要だった。その後の研究開発で白金の使用量は大幅に減少できたと各社は発信しているが、具体的な数値は明らかにされていない。

 仮に50%削減できて50gになったと仮定しても、白金の実勢価格からすると1台当たり20万円に相当する。FCVの量産が拡大すれば白金価格はコストダウンどころか高騰する可能性すらある。ならば白金に依存しない新規触媒に期待かかるが、多くの研究がなされているものの見通しは得られていない。

 同じことはガソリン車の排ガス制御触媒でも言える。筆者がホンダに入社した1978年、三元系触媒である白金-ロジウム-パラジウムの開発が始められていた。排ガス規制に対応できたものの、触媒にはこれらの元素が必須であり続けるため、ロジウムの価格が高騰した時期は大変な騒ぎになった。燃料電池における白金の触媒効能は高く、代替触媒の実現には大きな関門がある。

 燃料電池については、「固体高分子」による電解質膜も必須部材であるが、これは化学メーカーが既に量産しているため、FCVの量産効果によるコストダウンは期待できない。これらを加味したうえで、量産効果でどこまでFCVのコストが下がるかを定量的に分析する必要があるだろう。

 EV同様、FCV分野でも日本の開発力は世界の先頭を走っている。部材メーカーの技術力を基盤に、日本の自動車大手が開発投資を実施してきた背景と、EVやHEV開発の実績で電動化技術を確立してきた実績がある。FCVの特許でも日本は大きな存在感を示している。

 韓国では現代自動車もFCVの開発を行ってはいるものの、日本勢に比べたら存在感は小さい。これも開発着手が遅かったことと、韓国の部材メーカーの弱体体質があるためだ。

トップを走る日本、逃げ切れるか

 とはいえ、2025年ZEV規制で、自動車大手はPHEV、EV、FCVの3カテゴリーの販売比率を15.4%に高める(2018年規制では22%となっている筈だか?2014.12.2のNO.6参照の事)必要がある。日本の自動車大手幹部は、「究極の環境自動車を決めつけられないから全方位での開発が必要」と述べていることは極めて妥当な戦略だ。

 しかし開発資源を考えると、大手だから実施できるわけで中堅規模の自動車メーカーではすべての技術を開発できない。車両の電動化が進めば、自動車業界の技術提携やライセンス供与などのビジネスモデルが、一層増えてくるだろう。

 さらに日韓欧米の市場に加えて、今後は中国市場を見過ごすことはできない。中国での自動車市場で力強さを発揮しているのはVW、GMであり、日本勢では日産が奮闘しているものの差は依然として大きい。GMはいち早く先端技術研究所を開設して機能拡充を図っている。

 トヨタホンダもこれまでは中国市場での存在感が乏しかった。しかし、今後は両社とも電動車両の技術開発を中国で展開し、車両の現地生産を計画している。そのための研究開発機能も拡大しつつある。電動化の市場拡大を考えれば今後の日本勢の巻き返しも可能となる。

 その際に課題となるのは各業界の協業スタイルである。中国では地元企業との合弁会社設立が前提となり、資本比率も外国企業が49%以下という制限が加わる。中国市場のマーケティング、政府機関とのネットワークや人脈創り、部材のサプライチェーン構築、中国独自のリチウムイオン電池に関する安全性評価基準策定など、さまざまな制限がある中で、どのようなビジネスモデルと事業戦略が最適かを考えることが特に重要になってくる。

 電動車両普及の最大のカギは電池である。世界を見渡しても、車載用電池ビジネスを本格的に推進できるのは日本と韓国だけだ。現状、日韓に技術の差はあり、そして欧米中の電池企業の力は乏しい。しかし、電池の安全性に関する国際標準などではドイツやフランスなどの欧州勢が活発に活動している。

 果たして、日本が逃げ切れるか。各分野での今後の陣取り合戦の行方が注目される。

技術経営――日本の強み・韓国の強み

 エレクトロニクス業界でのサムスンやLG、自動車業界での現代自動車など、グローバル市場において日本企業以上に影響力のある韓国企業が多く登場している。もともと独自技術が弱いと言われてきた韓国企業だが、今やハイテク製品の一部の技術開発をリードしている。では、日本の製造業は、このまま韓国の後塵を拝してしまうのか。日本の技術に優位性があるといっても、海外に積極的に目を向けスピード感と決断力に長けた経営体質を構築した韓国企業の長所を真摯に学ばないと、多くの分野で太刀打ちできないといったことも現実として起こりうる。本コラムでは、ホンダとサムスンSDIという日韓の大手メーカーに在籍し、それぞれの開発をリードした経験を持つ筆者が、両国の技術開発の強みを分析し、日本の技術陣に求められる姿勢を明らかにする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140310/260875/?n_cid=nbpnbo_eco


この記事は丁度一年前のものなので現在の状況は進んでいるのであろうが、この論考で言及されているポスト・リチウムイオン電池と目される「リチウム空気電池」と呼ばれる新型電池とは、どんな電池なのであろうか。

まあこの論考でも言及されているが、走行距離が短く充電時間が長く、しかも価格が高すぎて、更にはバッテリーの経年劣化問題もある。リチウムイオン2次電池と言えども、これらの問題が解消しなければEVの爆発的な拡大は望めないだろう。それでも、いわゆるそこそこの普及に留まらざるを得ないのではないのかな。

まあ各社必死で研究開発を進めているので、その内に何らかのブレークスルーが起こってくるのではないのかな。太陽光などの自然エネルギーで電気を起こし水を電気分解して水素をつくり、燃料電池車にその水素を供給する過程でも、何らかのブレークスルーが起こってくるものと思っているが、この2次電池の開発水素の製造でのブレークスルーは、お互いに競合して新しい技術開発が沸き起こってくるものと確信している。この水素は、資源のない日本で唯一国産化できると思われるエネルギーとなる可能性があるので、将来が楽しみである。

それでは空気電池に関する論考を次に載せよう。

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(84)

2015-03-26 00:00:00 | Weblog

白熱する電動車両開発、日本は勝てるか
カギを握るのは電池技術

2014年3月13日(木)  佐藤 登

 1カ月ほど前の話になるが、2月上旬に米アトランタで開催された国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference)」に参加してきた。その名の通り、車載用2次電池に関するややマニアックな国際会議なのだが、今年は約500人が参加。さらに2月末には東京ビッグサイトで「国際二次電池展」が開催されたが、併設の展示会も合わせて6万7000人以上が来場したという。

 このように盛り上がりを見せる車載向け2次電池関連技術。その背景にあるのは、世界各国で二酸化炭素の排出規制が強化されているからにほかならない。具体的には、カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制、欧州の二酸化炭素規制中国の環境規制がそれぞれ今後強化される。

 自動車大手が、排出規制への有効な解決策として期待するのがハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などの電動車両。各社は血眼になって開発を進めている。これまで積極的でなかった自動車大手も今後は避けて通れない。それどころか、この一連の環境規制に乗り遅れれば企業の存亡にかかわる可能性すらある。

 例えば米国のZEV規制ではこれまで、対象となる自動車メーカーは米国のゼネラルモーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラー(現在はフィアット・クライスラー・オートモービルズ)、そして日本のトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車6社だった。これが2018年からは対象企業としてドイツのフォルクスワーゲン(VW)、BMW、ダイムラー、そして日本のマツダ、韓国の現代グループが追加される。当然、追加対象企業は今後電動車両の開発を加速していくことになる。

多種多様な電動車両

 電動車両とひと口に言っても、採用技術によっていくつかの種類に分類できる。日本の読者に馴染み深いのはHEVEVだろう。HEVは1997年にトヨタが「プリウス」を発売してから15年以上が経過した現在、完全に普及期に突入している。トヨタが圧倒的な存在感を示しており、ホンダも健闘している。米国ではフォードが力を入れているが、日本勢との差は大きい。市場浸透度は電動車両の中でも圧倒的で、今後は欧州勢もHEVの開発に積極的な姿勢を示している。

 一方、EVの市場動向を振り返ると、2012年までは市場での評価が低く、日産の「リーフ三菱の「i-MiEVは苦戦を強いられていた。連続走行距離短く充電時間長いのに価格高すぎるという課題を解決できなかったからだ。

 これが2013年以降、風向きが変わりつつある。特に米国では日産リーフの経済性が評価されてきており、市場での認知度は高まりつつある。昨年末以降、米国では月に1000台のペースで販売されている。米アトランタに本社を構えるジョージア・パワーなどの電力会社が、充電インフラの整備を主体にサポートしていることが奏功しているようだ。

 さらに好調なのが、米シリコンバレーにあるベンチャー企業・テスラモーターズだ。同社のEV「モデルS」はカタログ上の走行距離が日本勢の2倍以上となる483kmを記録。スポーティーなデザインと共に、「1回乗ったらまた乗りたい」と消費者に思わせる価値を提供できている。販売台数は1週間で200台、金額で20億円規模のビジネスに成長しつつある。

 日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車PHEV)は、米国ではGMの「Voltが牽引役となっている。累計で6万6000台を販売、所有者の総走行距離は6億マイル(約9.6億km)を突破した。2013年だけでも約2万3000台販売され、2014年はさらに伸びる勢いだ。

 このほか、燃料電池車(FCVは日本勢が2015年に市販する計画である。ホンダは同技術のコアとなる燃料電池の研究を1986年から開始していたため、29年の歳月をかけた悲願の量産化といえるだろう。

EV普及の条件はインフラ整備にあらず

 それぞれ一長一短がある電動車両の技術。電動車両の登場は、関連業界にとってチャンスであると同時にリスクにもなり得る。法規制を導入する各国の思惑や企業の戦略が注目される。以降ではガソリンなどの化石燃料を必要としない「ゼロエミッション」車であるEVFCVについて分析してみたい。

 EVは究極の環境自動車の候補の1つだ。しかし、その地位は確約されたものではない。なぜならガソリン車と比べて、まだまだ性能(走行距離や充電時間)と価格バランスが悪いからである。

 一連の課題を解決しEVが本格的に普及するための条件は、現状のリチウムイオン電池を超える高性能電池の実現にかかっている。国や研究機関、企業単位で研究開発が進められており実用化が期待されている。

 その中にはポスト・リチウムイオン電池と目される「リチウム空気電池」と呼ばれる新型電池がある。金属リチウムと空気中の酸素の化学反応を活用したものであり、得られるエネルギーの理論値は現状のリチウムイオン電池を凌駕する。

 とはいえ、実用化の目標は2030年であり、まだ先の話だ。「2020年までには実用化できる」と語る関係者もいるようだが、基礎研究段階であるテーマにもかかわらず、実用化の時期を暗示するのはナンセンスだろう。

 大学や素材メーカーが開発した正極や負極素材の単体のデータだけで、「EVの連続走行距離が500kmにまで拡大する技術を見出した」という報道を目にすることも多いが、これも奇をてらった表現だと言わざるを得ない。電極単体で連続走行距離は決まるはずもなく、EVに組み込まれる電池システムにして初めて議論できるのだから、一方的で飛躍的な表現は謹むべきだ。

 日本の大学や企業でもこういった発信が少なからずある。筆者の下にはこうした報道の度に、投資会社や調査機関から意見を求められることになる。その際の筆者の回答は、「冷静に客観的に見ましょう。原理や論理が伴っていない」「あまりにも情報が不足しすぎていてコメントもできない」の2択に集約される。

 もちろん、素材分野の先端研究技術開発日本が圧倒的に強い競争力を持っているため、新たなブレークスルー日本から生まれる可能性が高いのは事実だ。

 実際、2次電池の先端研究で海外勢の存在感は高くない。例えば、韓国サムスンSDIが主管企業を務める韓国の国家プロジェクト「WPM(World Premium Materials)」は、素材関連強化に向けて2008年から国の威信をかけて実施している。だが、素材領域は地道な基礎研究に根付き開花するものであるため、日本に比べて基礎研究力が弱い韓国から驚くような新素材が出現する確率は低いだろう。

 このように、EVの普及には革新電池の実現がカギを握る。新原理新素材――。これら2つについての強力な知財を獲得した研究機関や企業、国が大きな利得を得る構図となる。

 逆に言えば、電池でブレークスルーが実現できなければEVは現状から大きく羽ばたけない。世間では「充電インフラが進まないからEVが普及しない」という声もあるが、それは詭弁だ。EVが本当に魅力的ならば充電インフラは後から必ず整備される。そう理解すべきだ。

小型リチウム電池は当面の主役か?

 注目を集めるテスラについて、新たな動きもある。2月26日付の日本経済新聞1面トップに掲載された記事がそれだ。報道によると、パナソニックがテスラと共同で、米国に小型リチウムイオン電池の新工場を建設し2017年の稼働を目指すとのこと。総投資額は1000億円超。年産50万台程度の規模を目指している模様だ。

 筆者は2020年段階での電動車両は全世界ベースで見て600万台程度だと見ている。EVの占有率は10%程度(60万台規模)だろう。しかし、EV向けリチウムイオン電池を手がける電池メーカーは、パナソニック以外にも数多く存在する。日産とNECの共同出資会社:オートモーティブエナジーサプライ・コーポレーション(AESC)、ジーエス・ユアサコーポレーションと三菱商事、三菱自動車の共同出資会社:リチウムエナジージャパン(LEJ)、東芝、韓国のサムスンSDILG化学など、EV向けの陣取り合戦は白熱している。

 一方、普及期を迎えたHEV用では日本の電池メーカーであるパナソニック、同社とトヨタの共同出資会社:プライムアースEVエナジー(PEVE)、GSユアサとホンダの共同出資会社:ブルーエナジー、AESC、日立ビークルエナジーが確固たる地位を築いている。韓国勢はこの分野で苦戦しており、この構図は簡単にひっくり返るものではない。その分、韓国勢はEVやPHEVへ軸足を置いていると言える。

 サムスンSDIも中国・西安に車載用リチウムイオン電池工場を建設することを決断した。2020年の段階ではEV用リチウムイオン電池が供給過剰になるリスクがあり、パソコンなどの小型リチウムイオン電池で起きたような価格競争が電池各社を苦しめる可能性もある。

 さらにEV用リチウムイオン電池に導入される技術への議論も必要だ。パソコンなど向けの小型リチウムイオン電池と、EV向けに開発された大型リチウムイオン電池との競合である。主力自動車メーカーの量産EVでは、専用の大型リチウムイオン電池が適用されているが、EV市場を引っ張るテスラは小型リチウムイオン電池を適用しているところがユニークだ。民生用電池の流用だからコスト的に有利なのは理解できるが、逆にコストダウンの余地は小さいとも言える。

 リチウムイオン電池は安全面に関してはデリケートであるから、個々の電池の制御システムは極めて重要になってくる。電池の大きさではなく個数単位での制御が必要になるため、テスラのモデルSのように7000個を超える小型リチウムイオン電池の制御は、100個以下の大型品を搭載するシステムよりも複雑になる。昨年10月以降に相次いだモデルSの火災事故では、その原因が未だ明らかにされていない。

 テスラのEVがどこまで市場に普及するかの議論は別にしても、パナソニックの決断チャンスでもあると同時にリスクでもある。筆者が1999年にホンダで立ち上げたリチウムイオン電池研究開発のパートナーである旧三洋電機陣営とのプロジェクトを通じて、車載用リチウムイオン電池のあるべき姿を追求してきた。

 以降、旧パナソニック陣営旧三洋陣営との考え方が基本的には一致しないところを客観的立場で多々見てきたが、同一の会社になって電池戦略での不協和音が聞こえてくることが多かった。今は技術開発や戦略でも親会社の旧パナソニックの主導権で展開しているようだ。結果として、旧三洋のキーパーソン一派が離脱する事態になっている模様だ。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(83)

2015-03-25 00:00:00 | Weblog

3.その他について

その他にも「冷暖房をつけて走行距離が縮まっても困らないケースがある」や「充電器渋滞は台数が増えるので一般的ではない」といった説にも正直疑問が残る。

はっきり言ってテスラのようにリーフやアイミーブと比べ圧倒的に走行可能距離が長く、充電の規格が違う車なら冷暖房をつけても気にならないだろうし、充電器渋滞には巻き込まれないはずだ。
だが、私がこの半年間さまざまな場所を巡った充電器で待ちが発生している頻度は体感

だがサービスエリアで9割、道の駅で6割、ショッピングモールで8割程度とかなり高かった。これから充電器が増えてもそれに伴って電気自動車やPHEVが増えれば、この渋滞は収まらないだろう
そもそもテスラは確かに電気自動車ではあるものの、現状リーフやアイミーブなどの一般的な電気自動車とは用途がかなり違ってくるため、一緒にしてはいけない気がするのだが……。

・購入時はよく検討を

それでも電気自動車を購入したいという人は、メーカーのホームページにある航続可能距離などを鵜呑みにせず、きちんとディーラーに話を聞いてから購入したほうがいいだろう。少なくとも「ガソリン車とほぼ同じように使えることは絶対に無い

特に「燃費の節約」のためだけに電気自動車を選ぶのはほぼ後悔すると言っても過言ではないだろう。EVのスムーズな走りを体感したいという人はプラグインハイブリッドカーが良い選択肢だと思う。

私のお話した内容とEVsmartさんのブログどちらの内容が現実的だと思うかは読者の皆さんの判断になると思うが、電気自動車を購入するときはガソリン車を買い替えるときよりもじっくりと考えてからにすることをおススメするぞ。
参考リンク:EVsmartブログ
執筆:なかの
Photo:RocketNews24. (http://rocketnews24.com/)

http://news.livedoor.com/article/detail/9474146/


この「電気自動車は買ってはダメ-(A)」と言うブログは結構真っ当な事を言っていると思うが、対象となっていた「充電スポット検索アプリ『EVsmart』チームのブログ-(B)」の内容を簡単に下記しよう。


(1)、電気自動車での長距離(100km以上)走行するケースは、わずかの0.6%なので、その僅かなケースに掛かる費用を高額だと言うのはおかしい。自宅で充電すれば安く上がる。

(2)、EVの場合バッテリーを空にするまで乗る事はない。だから充電時間は通常一時間以下であろう。充電器渋滞の可能性もあるが、急速充電器の設置も増加しているので、影響は少ない。

(3)、EVの場合、エアコン利用は電気を消耗し走行可能距離も削られるが、寒い国のノルウェイでは電気自動車が大量に走っている。


・・・先に紹介した「第1回 ノルウェーはなぜ電気自動車普及に成功したのか」を参照のこと。まあこれは特殊なケースであろう。と言うよりもこうでもしないとEVの普及は難しい、と言う事。


(4)、充電器の雨ざらしは致し方ない。屋根を付けて欲しいものだが、Gas.スタンドだって屋根は無いケースもある。

(5)、EVの走行性能はスムーズで静かである。

まあこれだけでEVを推奨する気にはならないが。

(6)、走行距離の多い場合には、PureEVではなくてPHEVをお勧めする。

PHEVをEVの派生型としているが、これはガソリン車でないのかな。



と言ったところであるが、詳しくは下記を参照のこと。


ロケットニュース24さん「電気自動車は今は買い時ではない」への反論?
http://blog.evsmart.net/ev-news/rebuttal-rn24/


又この上記のブログが問題としている「ロケットニュース24」の元のブログ-(C)の概略も下記しよう。



【コラム】電気自動車は今は買い時ではない / ガソリン車のほうが圧倒的にいい理由とは  (ROCKET NEWS24)

ガソリン車のほうが何故良いのか。

①、充電費用が有料化となりつつあり、しかも高い。イオンでは急速充電で1回30分300円だ。

②、充電時間が長い。自宅充電では満充電に9時間、急速充電でも80%で30分も掛かる。

③、エアコン使用はバッテリーを消耗する。航続距離が削られる。

④、充電器渋滞が発生してくる。輸入EVも増え、渋滞が懸念されるし、現に起きている。

⑤、充電器の無いところへは行く事ができない。先ずキャンプ゜は無理だ。

⑥、雨天の充電では雨ざらしとなる可能性が大である。

セカンドカーでもガソリン車を推薦するが、PHEVでもよいかも。

http://rocketnews24.com/2014/11/10/506919/



まあ何はともあれもし疑問点でもあれは、夫々のブログのURLを添付しておいたのでそちらを参照して確認願いたいが、事の起こりはA・B・Cの順ではなくて、その反対のC→B→Aの時系列順であることはお解りの事と思う。

そしてテスラのモデルSにも言及していたが、これはいわゆるエコカーの範疇に入れるにはふさわしくない高価な贅沢車であり、FCVに対してイーロン・マスクの言う「馬鹿電池」に対して、あまりにも高価でありすぎるので、小生は「頓馬自動車」と呼んでいる。沢山バッテリーを乗せれば、遠くまで走れるのは当たり前、これでリーズナブルに経済的であればよいのだが、馬鹿高い贅沢車となっている。

いずれにしても、EV航続距離の短さ充電時間の長さ、更にはバッテリーの劣化問題などは致命的な欠陥であると言っても良いものであろう。だからその範囲での使い勝手で収まるような使用であれば、EVはこの上ない環境対応車であることには変わりない、と言うことも事実ではある。

FCVはこれらのBatteryの欠陥3項目を克服しているので、次世代のエコカーであると言う素質を持ち合わせていることは、紛れもない事実であるのだが、いわゆる水素社会の実現には技術革新の時間を必要としている。それと同じように、電気自動車もバッテリーの技術革新が必須の事項となっているのである。

次の記事は2次電池についての全方位的なまとめ記事のようであるが、リチウムイオン電池もまだ目鼻はついていない様だ。

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(82)

2015-03-24 00:00:00 | Weblog

とすれば、今度のプリウスの燃費の40km/Lは、本当の話なのであろう。エンジンの改良もさることながら、バッテリーで走行する距離も相当に伸びているのであろう。

どんなEVを考えているのかは定かではないが、トヨタも大変である。HVもFCVも、更にはEVにも目を配らないといけないのだから。



新プリウス、燃費世界最高のリッター40kmに
2015年1月20日(火)07:17

 トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)の新型「プリウス」を2015年秋にも発売する。

 ハイブリッドシステムの改良などで燃費はガソリン1リットルあたり40キロ・メートルに達し、現時点のガソリン車やHVと比べて世界最高になる見込みだ。

 新型プリウスは、モーターなどのハイブリッドシステムの性能を高めるとともに、排気量1・8リットルのエンジンの燃焼効率を向上させる。樹脂素材を多く使うほか電池の小型軽量化も図り、車体重量は現行の約1600キロから100キロ程度軽くなる模様だ。最も燃費の良いモデルは、現在の32・6キロから40キロに伸びる見通しだ。37キロの燃費性能を備えているトヨタのHV「アクア」とスズキの軽自動車「アルト」を上回る。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20150119-567-OYT1T50152.html



トヨタ プリウス 次期型、発売を半年延期か…デザインを修正?!
2014年12月20日(土)08:15

(レスポンス)  
トヨタ自動車の人気ハイブリッド車、『プリウス』。同車の次期型に関して、発売が当初の計画よりも遅れる可能性を、海外のメディアが伝えている。

これは12月15日、『オートモーティブニュース』が報じたもの。同メディアが独自ソースから得た情報として、「次期プリウスの発売が、半年延期される見込み」と伝えている。

同メディアによると、次期プリウスは2015年の春、生産を開始する計画だった。ところが、トヨタはこれを半年遅らせ、2015年末にするという。一体、トヨタの内部で、何が起きたのか。

同メディアによると、次期プリウスデザイン2015年末に関して、トヨタの上層部が「課題あり」と判断。デザインの修正を行うため、発売時期に、当初の計画から半年の遅れが生じる見込みだという。

2012年12月に発表された新型『クラウン』では、開発の途中でトヨタの豊田章男社長が、「デザインの大幅な手直しを指示した」とも伝えられる。プリウスはトヨタにとって失敗の許されない車種だけに、デザインに万全を期した上で、次期型が登場することになるのだろう。
森脇稔
http://news.goo.ne.jp/article/response/trend/response-number-240061.html


次期プリウスがリッター40kmの燃費とすれば、小生としては、トヨタの電気自動車の開発は後回しにされかねないと気に掛る。タダでさえ航続距離の短さ充電時間の長さなどで、EVに対しては、いくらCO2フリーだと言ってもFCVに比べて使い勝手が悪いので、(FCVがある以上)トヨタでのEV開発には二の足を踏みかねない。

こんな意見もあるのだが、地球温暖化対策の方が重要事項となのだ。背に腹はかえられないと言うことで、トヨタもその内にEVを売り出してくるのではなかろうか。



「電気自動車を今買ってはダメな理由」を徹底解説 / ガソリン車とほぼ同じように使えるという考えは絶対に捨てよう
2014年11月16日 15時0分
ロケットニュース24

写真拡大    
先日「電気自動車は今は買い時ではない / ガソリン車のほうが圧倒的にいい理由とは」という記事でお伝えした内容に対しての興味深い反論を、充電スポット検索アプリ『EVsmart』チームのブログが掲載されていた。

執筆者の方は記者(私)を「電気自動車に一定期間乗ったことがない」と想定されていたが、ここ半年でアウトランダーPHEVには2万4000km、リーフもレンタカーで10数回ほど乗り、西は愛知から北は青森までを走行した結果を踏まえてのコラムだということをお伝えしておきたい。

また、ブログ内で筆者の方は「電気自動車で4000km以上走行した」ともおっしゃっていたが、私から言わせてもらえば「そんなナッパの戦闘力みたいな走行距離でファンを名乗るんではない! 私はナメック星に到着したときのベジータ並の走行距離だぞ! ムハハハ!」といった感じである(すいません)。

冗談は置いておいて、今回はEVsmartさんのブログで反論されていた内容に照らし合わせながら、より詳しく「電気自動車を今買ってはダメな理由」について説明したいと思う。

1.充電費用について

ブログではまず「100km以上の距離を走るのは0.6%と非常に少なく、ほとんど家や職場で充電するため燃費はプリウスよりも良い」と書かれているが、サービスエリアやショッピングモールに置いてある充電器を使う費用が高額になっているのは事実である。

たとえば大きなところだとNEXCO中日本管内の急速充電器は1回30分100円から500円になり、イオンモールの急速充電器は1回30分無料から300円になった。そのため、家や職場でしか絶対に充電しないという人以外は、値上げの影響を確実に受けているのだ。

日産自動車は月額3000円で充電し放題の会員制プランを提供する予定だが、その額で現行プリウスの(燃費30.4km/l)なら月に608km走れてしまう。(3千円なら150円/Lとして20LのGas.が買える。それで掛け算で608kmも走行できる、と言うこと。)家で充電するだけなら絶対に電気自動車のほうが安いが、1回の充電で8時間かかったり家族で連続使用できないというデメリットが。

電気自動車を使って遠出したいという人は現在のところメーカーなどの会員制プランに加入しないと使い物にならないため、もし値段を吊り上げられても言いなりになるしかない。いまはそういった状況のため、様子見をお勧めしたいのだ。

2.充電時間について

これについてはブログで「私のテスラモデルSの毎日の充電時間は30分未満、遠出しなければ1時間以下」と書かれていたが、200vの充電器で30分未満の充電しかしなかったら、リーフの場合10kmも走れないだろう。それなら電気自動車でなくてもアウトランダーPHEVでもいいしプリウスPHVでも良い。あまりに非現実的である。

また、「充電器は増えてきているが高速道路の充電器は混雑している場合があり、その場合は近隣の充電器を」とも書かれているが、すべてのSAやPAに充電器が無い現状は、次のSAに行くまでに電欠してしまう。混雑していたら高速道路を降りてディーラーで充電するか、その場で待っているしかないのだ。

さらに「テスラは30分で270km走行できる充電器を現在国内で3箇所、2015年末までに32箇所作る予定」といった内容については、今買ってはいけない理由を話しているため特に意味は無いと思う。しかしガソリンスタンドの数と比較したらやはり少なすぎる。作る場所にもよるが遠出は難しいだろう。

また、テスラのスーパーチャージャーは現行のリーフやアイミーブなどではそもそも使うことができないので、やはり “今” は買うべきではない。将来的に使えるようになれば違ってくると思うのだが……。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(81)

2015-03-23 00:00:00 | Weblog

■次期プリウスでは10%燃費向上

 トヨタはHVシステムの技術を活用してFCVを実用化する一方、燃費の大幅向上を目指した次世代プリウスの開発も進めている(表)。次世代プリウスは、モーターや電池を小型・高性能化することなどで、米国燃費基準(EPA10%以上高める計画だ。

表 次世代「プリウス」で目指す性能や最新技術(トヨタの資料などを基に日経Automotive Technology誌が作成)

 これまで各世代で燃費を約10%ずつ高めてきた歴史がある。現行はEPAで50MPG(21.2km/L)なので次世代は55MPG(23.3km/L)以上を見込めそうだ。

 日本の基準(JC08モード)では、欧米に比べて低速の走行になるため、燃費の絶対値はより高くなる。次期プリウスの燃費が日本でも10%向上すると考えると、現行の32.6km/Lから36km/L以上となる。ただ、小型HVの「アクア」や「フィットハイブリッド」が36~37km/Lで競い合っていることを考慮すると、車格の違いはあるにせよ、少なくとも同程度以上にする必要があるだろう。

■急速燃焼技術でエンジン熱効率向上

 米国でHVの開発について触れた小木曽氏によると、次期プリウスでは「燃費向上のためエンジンの熱効率を高めつつ、HVシステムの電動部品は小型化を図る」という。

 例えば、ガソリンエンジンは熱効率を現行の38.5%から40%以上に高める。HV向けのエンジンで使われてきたアトキンソンサイクルと高圧縮比による低燃費に加えて、新たに空気と燃料の混合気がシリンダー内で縦渦(タンブル)を起こすことで混合気を短時間で広く燃焼させる、急速燃焼技術を導入する模様だ。シリンダー内に残留する燃料が減り、ノッキング(異常燃焼)も減らせる。

 トヨタは燃費を10%以上高める高効率エンジンを2014年4月に発表し、同月に部分改良した小型車「パッソ」(排気量1.0L)や「ヴィッツ」(同1.3L)に初めて採用した。今後は1.5L以上のエンジンについても高効率エンジンへの置き換えを進める。

 高速域の燃費を改善するために、エンジンを駆動軸と直結する方法も採用する可能性がありそうだ。この技術はホンダが2013年6月に発売した「アコードハイブリッド」で採用している。高速域ではモーターよりもエンジンで駆動した方が効率の良い領域があるため、同機構が有利に働く場合がある。

 トヨタのHVシステムは、エンジン駆動とモーター駆動の比率を燃費が最適になるように遊星歯車機構で切り替えて運転する。しかし、欧米の高速走行を重視する設計にすると、エンジンの出力軸を駆動軸に直結するモードも必要になる。

■モーターと電池は小型化

 モーターは小型化しつつも出力密度を高め、現行プリウスと同様に減速機を介して駆動する。モーターの出力密度は、初代プリウスに比べると3代目の現行プリウスでは4倍に高まった。次世代は4倍以上に高める。

 モーターコアで使われる電磁鋼板の薄板化も必須条件になる。電磁鋼板は1枚ごとに厚さ方向に、熱となる渦電流が流れる。モーターコアの損失の7割を占める渦電流損は「電磁鋼板の厚みの2乗に比例する」(新日鉄住金)ことから、薄い電磁鋼板を使えば損失を低減できる。ただ薄すぎると、金型でプレスしたときに電磁鋼板の形状がひずんでしまい期待した磁力が得られないということにもなりかねない。

 現行プリウスのモーターコアは、厚さ0.3mmの電磁鋼板を積層している。発売後5年が過ぎ、金型の進化や電磁鋼板の性能の進化もあり、次世代プリウスでは0.1mm程度の電磁鋼板を使う選択肢もあり得るだろう。

 電池は車両の特性に応じて、リチウムイオン電池ニッケル水素電池の両方を使い分ける方針だ。プリウスは世界中で販売されている。リチウムイオン電池に一本化するには供給体制が十分ではない。

 ニッケル水素電池は初代から使っており、コスト競争力も高い。車種によって電池を使い分けることで価格競争力や室内空間・航続距離などで特徴を出す。既に現行プリウスでも、ベース車はニッケル水素電池であるのに対して、PHVの「プリウスPHV」、3列シートの「プリウスα」ではリチウムイオン電池を採用している。

 電池の出力密度やエネルギー密度を高めることで、次期プリウスPHVでは「1回の充電でのEV走行距離を現行の26km以上に延ばす」(副社長の加藤光久氏)としている。

■2020年に向けてインバーターを改善

 次期プリウスが発売される2015年ごろには間に合わないが、2020年ごろの中長期で開発を進めているのが、インバーターや昇圧コンバーターを含む高効率のPCUである。

 PCUは電池電圧(200V)からモーター駆動電圧(650V)に昇圧したり、直流を交流に変換する。PCUには多くのパワー半導体が使われていることから、パワー半導体の電力損失はHVの電力損失の2割を占めるほど大きい。

 現在使われているシリコン(Si)製から炭化ケイ素(SiC)製に変えることで電力損失を大幅に低減できる。トヨタは2020年までに炭化ケイ素製のPCUを実用化する計画で、現行のシリコン製と比べて10%の燃費向上を目指す。次期プリウスが36km/Lだとすると2020年には40km/Lも視野に入る。

 トヨタはデンソーなどと共同で、炭化ケイ素製のパワー半導体を使ったダイオードとトランジスタを試作した(図4)。電流を流したり止めたりするスイッチングを短時間で高速に実行できるようになるため、熱になる「テール電流」を抑えることができる。

図4 (a)左が炭化ケイ素製パワー半導体を使った開発品、右がシリコン製の従来品。(b)炭化ケイ素を使ったトランジスタとダイオード 

 さらに高速で電流をオン・オフすることでPCUに必要なコンデンサーコイルも小型化できる(図5)。コイルやコンデンサーはPCUの容積の4割を占めるため、PCUのサイズも現在の5分の1程度に抑えられるようになる。

図5 パワー半導体を炭化ケイ素製にすると高周波で駆動できるため、組み合わせるコイルやコンデンサーを小型化できる。PCUも小さくできる

 試作した炭化ケイ素製パワー半導体を組み込んだPCUをHVに搭載したところ、燃費を5%改善できたという。燃費を10%向上させるパワー半導体の技術は、2020年に向けてHVの大きな競争力になりそうだ。
(日経Automotive Technology 小川計介)

[日経Automotive Technology 2014年9月号の記事を基に再構成]

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78987190Y4A021C1000000/



しかもこのプリウス、2015年の春発売予定だったものが、2015年末に発売を遅らせると言うことらしい。デザインが気に入らなかったと言っているが、デザイン上のそんな話は相当前から詰めてゆくものなので、小生はデザインの問題ではなかったのではないのかな、と勘ぐっている。

とすれば新型プリウスの燃費を世界最高にしたかったので、発売を半年遅らせたのではないのかなとも考えられる。

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(80)

2015-03-20 00:00:00 | Weblog

 このように、ノルウェーでは政府の政策目標の下、EVのイニシャルコストランニングコストの双方を優遇したことで、まさにEVで走れば走るほどユーザが得をするようになったのだ。また、ノルウェー国民の39%セカンドカー(2台目の車)を保有しているという統計もある。通勤や買い物などちょっとした外出のための2台目として、すでにガソリン車を保有する世帯にEVが好まれたようだ。EVがガソリン車と同程度の価格で、しかも渋滞を免れられ、有料道路や公共駐車場を自由に使えるとなれば、EVが爆発的に増えたのもおかしくない。

 EVが増えたもう一つの理由は、市場に出回るEVのモデルが近年増えてきたためだ。日産自動車「リーフ」は以前から高いシェアを維持してきたが、ここ1年に発売された米国のテスラ社「モデルS」とドイツのフォルクスワーゲン「e-up!」も、近年大きな市場シェアを獲得しており、EV市場規模の拡大に寄与している。

ノルウェーの新車市場に占めるEVのシェア
[画像のクリックで拡大表示]

ノルウェーのEV市場の内訳(2013年)
[画像のクリックで拡大表示]

 EVの車両価格は同性能のガソリン車と比べて非常に高いため、ガソリン車並の普及を目指すためには、購入補助金や、税制上の優遇施策などの経済的なインセンティブが必要だ。加えてノルウェーは、バス専用レーンをEVにも開放して、渋滞を回避できるほか、公共駐車場の無料開放、無料で使える充電器など、EVユーザの利便性を向上させる社会的なインセンティブを取り入れている。

 今回取り上げたノルウェーのEV推進政策は、普及台数が5万台になるまで継続される予定である。現在のペースでは、5万台の目標達成はもう目前だ。すべての優遇策がなくなるわけではないが、今後EV普及のペースは一体どうなるのだろうか。次回は、EVの普及推進政策を持続可能にするためのポイントを考えてみたい。

国吉 浩 (くによし ひろし)

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
理事/エネルギー・環境本部長

1984年通商産業省(現経済産業省)入省後、エネルギーや技術に関する様々な政策を企画・実施してきた。国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長補佐官や東京工業大学教授など、経済産業省以外でも活躍。現在は、NEDO理事兼エネルギー・環境本部長として、スマートコミュニティをはじめ、エネルギー・環境関係の技術開発や実証事業を推進している。JSCAの事務局長でもあり、GSGFの副議長を務める。1958年生。東京大学工学部電気工学科卒業、ケンブリッジ大学修士(国際関係論)、京都大学博士(エネルギー科学)。関西学院大学客員教授。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20141007/381051/?ST=eleizing&P=1


まあ環境対策として国が率先して電気自動車の普及に対して、相当な支援策を実施しないと、なかなか普及は難しいということなのだ。このノルウェイの場合は、EV購入価格の補助はもとより、EVを使用する時に諸々の費用も補助対象として、公共の駐車場料金無料化、充電インフラ設置への補助、有料道路の無料化などなどと、かなりの厚遇策を実施した結果、EV大国となったと言う事のようだ。

燃料電池車にとっては、水素ステーションが普及しないと始まらないし、そのために日本は今そのための施策をとり始めている。ノルウェイの場合は、そのお国柄水力発電による電気が豊富で、その上国策としてもCO2削減に力を入れて、しかも2050年には全くCO2を出さないことを目標に掲げている。そのためにも本気でEVの普及に努めている、と言う事情もある。だから日本の場合には、水素の確保を国策として実施してゆくことが求められるのではないのかな。水素社会の実現と言う事は、そういうことなのである。

なんと言っても、水素は日本でも自給できる可能性のある資源であるから、国としてもエネルギーセキュリティの観点からも、水素社会を実現させることは国益上の観点からも、相当優先順位は高い施策となる。これには長い道のりが必要となるが、化石燃料に頼らないエネルギー社会の実現が見えたきたことは、一つの希望となろう。まあ50年、100年の長期にわたるものとなるのだが。

まあ100年先とはちょっと大げさな言い回しであるが、現在の地球上ではCO2を出さないCO2フリーの社会の実現は必須事項となっている。まだ大量にCO2を出しっ放しにしている無責任な国もあり誠に困ったことではあるが、自動車としては、航続距離が伸びなくても当座はバッテリーEVに頼ってでも至急CO2を出さない車を世に出さなくてはならない、という事であろう。

トヨタがEVを出すのか出さないのか分からないが、HV車の燃費は相当向上させないと、世に受け入れられないとの考えを持っているようだ。次期新型プリウスの燃費は、そのためL40km程度で発売されるのではないのか、と言った噂もある。しかも当初は2020年での40km/Lの実現を目指していたものが、ひょっとしたら今年2015年発売の新型プリウスでそれを実現してしまう、と言った話もあるようだ。もしそうなったとしたら、プリウスが世界最高燃費の車(32.6km/L→40km/L)となる。



20年に40km/Lも視野 トヨタ、次世代HVの青写真
2014/11/12 7:00  ニュースソース  日本経済新聞 電子版

 ハイブリッド車(HV)の代表格である、トヨタ自動車「プリウス」の勢いに陰りが見えている。燃費で同車を上回るようなクルマが相次いで投入されているためだ。次世代プリウスは、モーターや電池を小型化しつつ、大幅な燃費向上を目指す。中長期では高効率のPCU(パワー・コントロール・ユニット)を開発し、2020年には40km/Lが実現できそうだ。

 プリウスの燃費である32.6km/Lを上回る小型HVや軽自動車が続々と登場しているが、トヨタは手をこまねいているわけではない(図1)。環境対応車全方位戦略を実現するために、HV技術の横展開と次世代車の取り組みに着手している。

図1 燃費競争は35km/L以上が主戦場に。現行プリウスは発売から5年がたち、燃費の優位性は薄れつつある

 「約700万円の価格で販売できるのはHV技術があったからです」。2014年6月量産型燃料電池車(FCV)発表会で、トヨタ自動車常務役員の小木曽聡氏は自信を示した(図2)。

図2 2014年度に発売する量産FCV(燃料電池車)。ハイブリッド技術の活用で価格を約700万円に抑えた(左)。右は、トヨタ自動車常務役員の小木曽聡氏(右写真:宮原一郎)


 トヨタのHVシステムは、電気自動車(EV)/プラグインハイブリッド車(PHV)/燃料電池車 FCVといった電動車を展開する上でのベース技術となっている。HVシステムのガソリンエンジンを燃料電池スタックに、燃料タンクを水素タンクに置き換えればFCVに必要な要素部品はそろうのだ(図3)。

 HVの電池やPCU(パワー・コントロール・ユニット)、モーター、発電機などはそのまま使える。HVの量産実績が、FCVの価格低下に役立つというのだ。700万円という価格ではすぐに普及は望めないが、第2世代、第3世代のFCVになれば既存のHVに近い価格帯も見えてくるかもしれない。

図3 トヨタのハイブリッドシステム。エンジン、発電機、モーター、PCU、電池で構成する。走行状態に応じてエンジンの駆動力走行用と発電機用に柔軟に割り振る独自の仕組みを採用する


(続く)
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次世代エコカー・本命は?(79)

2015-03-19 00:00:00 | Weblog

想定以上に拡大する可能性のあるEV市場にトヨタが目をつけた」と言った主旨のことが書かれているが、まあそんなところであろう。何と言ってもFCVは5年10年かけて普及が進む車であるからして、ここでは20~30年と書かれているが、その間、当然ある程度EVが幅を利かすことになる。燃料電池車は将に全くの新技術なので、インフラ整備や低コストの水素の生成にはそんなに時間が掛るのである。

そんなこともあってトヨタの小木曽聡常務役員は、燃料電池車は(数ある中の)一つと言った主旨のことを言ったものと思われる。小木曽聡常務役員は初期からハイブリット車の開発に従事してきた方であるが、この6月にはトヨタのブレーキ事業を統合した「アドヴィックス」と言う会社の社長に栄転することになっている。



アドヴィックス社長に小木曽氏 トヨタ常務役員
2015/3/6 2:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 アイシン精機子会社でブレーキ事業を手掛けるアドヴィックス(愛知県刈谷市)は6月の株主総会後にトヨタ自動車の小木曽聡常務役員(54)を社長に迎える人事を固めた。川田武司社長(67)は顧問に就く見通し。

 トヨタグループ内の部品再編でトヨタ、デンソー、アイシンのブレーキ事業はアドヴィックスに集約される。同社がトヨタから直接社長を迎えるのは初めて。小木曽氏は1983年にトヨタに入社し、製品企画などの部門を経て2013年に常務役員に就いた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO84023860W5A300C1TJ1000/



まあ航続距離が短くて、バッテリーへの充電に時間が掛るEVは、ある意味誠に不便である。特にマンションなんぞときたら、精々一基しか充電設備は設置されていない。戸建住宅であれば、寝ている間に充電が出来るので、家持ちにしかEVは売れないことになる。マンションの住民は出勤先の近くか会社でしか、満足な充電が出来ないことになるが、アメリカでは「リーフ」が静かなブームになっていると言うし、ノルウェイでは国の施策もあってか電気自動車が非常に普及していると言う。


電気自動車普及に成功した国は何をしたのか?
第1回 ノルウェーはなぜ電気自動車普及に成功したのか
国吉 浩=独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
2014/10/29 00:00


 2014年8月、Global Smart Grid Federation(GSGF)は、電気自動車(EV)のインタフェースの世界的な政策動向と提言を取りまとめた白書「EVの系統相互作用とインタフェース(Grid Users Interactions and Interfaces)」を発表した。この白書は、GSGFに設置された作業部会(WG)において、約1年を掛けて情報収集、議論を重ねた成果だ。WGには、アイルランド、オーストラリア、カナダ、韓国、台湾、デンマーク、日本、ノルウェーの8カ国が参加。日本からは、WGの議長を務めた筆者(写真)をはじめ、日本自動車工業会(トヨタ自動車)の汲田邦彦氏、三菱総合研究所の志村雄一郎氏などが参加し、白書の取りまとめをリードした。同白書は、EVの普及政策について、課題や優良事例を示すとともに、EVの本格普及に向けた充電インフラ整備の必要性などを提言している。世界の産業界の見解として、今後のスマートグリッドに関する政策に影響を与えることが期待されている。ここでは、この白書に示された電気自動車普及のポイントについて紹介したい。

 第1回目は、電気自動車(EV)普及先進国として知られるノルウェーの事例を見てみよう。ノルウェーは政府の手厚いEVに関する支援策によって、急速にEVが普及している国である。GSGFの白書を取りまとめた時期には、2万台程度のEVがノルウェーの道路を走っていたが、この記事の執筆時には3万4千台まで増えており、その伸びはとどまることを知らない。今年8月には新車販売台数の実に15%近くがEVだった。

ノルウェーにおけるEVとPHEVの普及の推移
ノルウェーNPO「Gronn Bil (緑の車)」Webサイトより

 ノルウェーはスカンジナビア半島の北西に位置し、冬の寒さが非常に厳しい国である。電力のほぼ全てが水力発電で賄われており、電気代は安いものの、冬期のヒーター使用によりEVの電費(ガソリン車の燃費に相当)はあまり良くない。実は、ノルウェーは北海油田を擁する世界有数の産油国でもある。化石燃料に事欠かないノルウェーで、なぜEVがここまで普及したのだろうか。
ノルウェーの急速充電スタンド
[画像のクリックで拡大表示]
大学キャンパスの駐車場には多数のEVが並ぶ
[画像のクリックで拡大表示]

 ノルウェー政府は2020年までに二酸化炭素の排出量の30%削減2050年までにカーボンニュートラルな社会の実現を目標としている。運輸部門もその例外ではない。すでに2020年までに新車のCO2排出平均を85g/km以下にすることを目標としており、その達成のために水力発電をエネルギー源とするEVが有望視されているのだ。このため政府は、2000年代からノルウェーをEVの普及先進国にするという政策目標を掲げ、EVユーザを厚遇する政策を長期にわたって提供してきた(下表参照)。

表 電動車向けの優遇施策の例
 施策例         概要
税制上の優遇     ・自動車登録税の免税(VWゴルフは75-125万円)
              ・消費税免税(25%)

有料道路料金免除   ・EVは有料道路料金から免除されている

バス専用レーン利用  ・EVのナンバープレートに「EL」の記号があり、
               バス専用レーンを走行できる

充電インフラの補助金 ・急速充電インフラと普通充電インフラの
                補助金がある

公共駐車場の無料開放 ・EVはノルウェー全土の公共駐車場に無料で
                 駐車できる

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(78)

2015-03-18 00:00:00 | Weblog

なんと言っても昨年2014年の12月15日にトヨタが、世界に先駆けて燃料電池車「ミライ」を発売した事である。トヨタが何故FCVを造ったのかに対しては、いくつもの理由があるが、その最も重要なものの一つは、この2018年ZEV規制対応であったと小生は思っている。

ZEV規制については当ブログの2014.12.1のNO.5~などを参照願いたいが、現在は、自動車メーカー各社のこのZEV規制対応が、すこしづづ日の目をみることになりつつある時期ではなのいかな。BMWの「iシリーズ」などは、一つにはこのために開発してきたモデルであろう。BMWも日本のスバルも、加州のこの2018年ZEV規制の対象となってくる。

そのために各社は必死に電気自動車などを開発してきたのであるが、先の「世界のEV大図鑑」の記事の中に、スバル富士重工の名前がなかったことが気に掛るのである。BMWの名前もなかったが、BMWはすでにi-3などのEVを発売している。スバルは現在アメリカでは人気の車種で、大いに売り上げを伸ばしているというので、なんと言う車でこのZEV規制を乗り越えようとしているのか、いささか気になるところである。ひょっとしたらスバルのレガシィなどに、トヨタの燃料電池を積んでアメリカで売り出されたりして、なんて想像もしたくなる。当然それにはFCスタックの絶対的な生産能力が足りないのだが。

それともレガシィにLIBリチウムイオンバッテリーなどを乗せて、売り出されることになるのかな。目が離せないところだ。

もう一つ目が離せないことは、トヨタの電気自動車だ。i-ROADなどのシティコミューターは、盛んに記事となっているが、いわゆる近中距離タイプのEVをトヨタは持っていない。トヨタは燃料電池車一本槍で、この手のEVに対しては本当に開発する気もないのかな。

トヨタは、エコカーは燃料電池車だけとするならば、「ミライ」よりも一回り小型の「昔で言うならばコロナ、今アリオン」「カローラ」クラスの車にも燃料電池を搭載してもらわなければならないことになる。FCスタックがそれだけ小型でコストを抑えることが出来ているか、という事になる。

それにはまだまだ時間が掛りそうな感じがするので、その内にEVも出すのではないのかな、などと思っているのであるが、案外そんな風になるのかもしれない。

昨年2014年の七月の記事なのだが、今から思うと燃料電池車の開発も一段落して、トヨタとしては相当先も見えてきた頃なので、少し余裕も出てきた時であろう。そして、FCVの普及までの(トヨタとしては)過渡期となる時期のエコカーに目が行き始めた、というところか。



[NEWS REPORT]
燃料電池車に懸けるトヨタのエコカー戦略に変化の兆し
2014年7月8日
http://net.keizaikai.co.jp/archives/9657



「ハイブリッド車(HV)に次ぐ、次世代エコカーの本命は電気自動車(EV)ではなく燃料電池車(FCV)」と明言してきたトヨタ自動車に変化が表れている。拡大の兆しが見えてきたEV市場に対し、同社がどのようなアプローチをするかが、大きな焦点となってきている。


2014年度内に発表予定のFCVを披露する加藤光久・トヨタ副社長(Photo:時事)

エコカー戦略にEVを追加か

 6月25日に東京都内で開いたFCVの発表会後に、トヨタの小木曽聡常務役員が記者団の取材に応じ、「FCVは、次世代エコカーの主流のひとつ」と発言した。FCVを次世代エコカーの「本命」としてきたこれまでのスタンスから、微妙にニュアンスが変わり始めたとも取れる。

 「FCVが普通の車になるための、長いチャレンジの始まりだ。水素社会の一翼を担っていきたい」

 トヨタの加藤光久副社長は、発表したFCVの市販モデルの前で、普及に向けた決意をこう述べた。当初、2015年中としていた発売時期を「今年度中」に修正するとともに、「1千万円を切るレベル」としていた価格も同社の高級車「レクサス」並みの700万円まで下げた。トヨタの本気度、野心を内外に示した形で、世界初の市販化を実現させ、これからのFCV市場をリードしたい思惑も透けてみえる。

 トヨタは、年間100万台を超えるレベルにまで販売を成長させたHVと同様に、自ら主導する形でFCV市場を引っ張っていきたい考えで、世界で「エコカー=トヨタ」のイメージを定着させていく。今後、各国政府からの補助金などの支援を受けながら、徐々に、価格を下げ、本格普及に乗り出す戦略だ。

 一方で、トヨタにとって〝目の上のたんこぶ〟とも言えるのが販売面で出遅れたEVだ。

 トヨタは、これまで、1回の充電での走行距離が200〜300キロ程度のEV普及は限定的として、販売に力を注ぐ日産自動車の動きとは対照的に、力を入れてこなかった。

 走行距離もさることながら、普通充電時の充電時間が3時間以上と長いこともネックで、「マンションなどで充電設備を作っても奪い合いになる。現実的には普及が難しい」(トヨタ幹部)としてきたことも大きい。何より、売れているHVを押しのけてまでEVを発売するメリットは薄いと判断してきたからにほかならない。

 ところが、ノルウェーでは、手厚い税制優遇の恩恵もあってEVがブームになっている。今年3月には、新車登録台数における電気自動車の割合は5台に1台に達した。微粒子状物質PM2・5が拡大し大気汚染が深刻な中国も、EVの普及に本気で、大連市は日産自動車の中国合弁会社、東風日産が9月に発売する「e30」を年末までに1千台を一気に調達し、公用車やタクシーとすることを決めている。独ダイムラーや米テスラ・モーターズが中国でEV販売に本格参入するのも、「中国政府の本気度をかぎ取ったため」(専門紙記者)とされる。

 小木曽常務が、FCVを「主役」でなく、「主流のひとつ」と〝下方修正〟したのも、「EVの将来性について少しばかり見誤った反省」(同記者)との見方もできそうだ。

部品メーカーとの関係はどうなるか

 では、トヨタのEVへの本格参入は、もはや時機を逸したと言えるのか。日産が、苦労してEV市場が何とか形成されたため、イメージという点では多少の出遅れ感も否めないが、答えは「NO」である。

 トヨタがこれまで手掛けてきたHVのハイブリッド技術は、FCVのみならず、EVの基礎技術をすべて網羅するコア技術である。いわば、他社を凌駕するEV技術は既に確立しており、「EV市販はしようと思えばいつでもできる」(証券アナリスト)。

 既に昨年3月には、子会社の日野自動車、ヤマト運輸と協力して、商用EVの実証実験を開始。走行距離が予測しやすい業務用途には、一定の需要が見込めると判断し、実用時期を見定めている。小木曽常務も「PHV、EV、FCVに応用できるバッテリーの開発は、かつてない投資規模で進めている」としている。

 ただ、本格参入しようにもできない理由は別にある。取引先との関係が崩れるという点だ。

 約3万点の部品で構成される複雑な構造のガソリンエンジン車に対し、EVは電池とモーターがあれば基本は動く。安全性は大前提だが、部品点数も少ない。しかも、心臓部である電池は自動車メーカーではなく、パナソニックなど電機各社が技術を保有しているケースが多い。電機メーカーとの取引が増えれば2万6千社前後ともされる取引先の部品メーカーとの関係が成り立たなくなり、部品メーカーの多くの経営が立ち行かなくなる恐れがあるからだ。

 もちろん、FCVも内燃機関がないという点で構造は同じだが、20〜30年かけて普及をもくろむ間に、部品メーカーに徐々に構造転換を求めればよく、それまでにはまだ猶予がある。

 とはいえ、エコカーの絶対的な主導権を握りたいトヨタが、想定以上に拡大する可能性も出てきたEV市場に対し、何も手を打たず、指をくわえてみているはずもない。

 特に国内での充電インフラ整備も、政府の支援も手伝って整ってきた。「近い将来、トヨタがEVを本格発売する時期が来る」とみる業界関係者は決して少なくない。
(文=ジャーナリスト/原田浩一)
http://net.keizaikai.co.jp/archives/9657
(続く)
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