世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(150)

2023-09-22 00:00:00 | Weblog

章男社⻑「メディアの理解が⾜らない」とコロナ禍でリアル懇親会 

 

 トヨタの章男社長のマスコミ嫌いが増していることについて、筆者は日本を代表する巨大企業の透明性は確保されねばならないとの立場から、たびたび批判してきた。決算会見が宗教儀式と化していることや、気に入らないメディアを出入り禁止にするどころか新聞社を買収する動きを強めていることなどをこれまでに報じてきたので、ご参照いただきたい。 

 

 その章男氏だが、今月初め、東京・日比谷の東京ミッドタウン内にある高級車「レクサス」の体験型施設「レクサスミーツ」で、在京メディアを対象としたリアルでのオフレコ懇談会を実施した。章男氏が直々に参加したが、「初回だからなのか、当たり障りのない内容だった」(先のトヨタ担当記者)という。 

 

 トヨタのオフレコ懇談会自体は、コロナ禍前は愛知県の章男氏の自宅で毎朝行われていたが、章男氏が「在京メディアが批判的なことを書くのは理解が足らないからだと考え、懐柔工作に乗り出してきた」(同)。感染対策の上、午前中に開かれたとはいえ、コロナ禍での緊急事態宣言中にリアル懇談会を開くこと自体、非常識といわざるを得ない。 

 

 

中日新聞、章男社長の「真意」をイタコ報道 

 

 章男氏が在京メディアに不満を持つのも無理はない。愛知県など東海、中部地⽅に本拠を置く地元メディアや、全国メディアの名古屋本社のトヨタ担当記者はすでにポチ化が完了しており、批判的な報道をするようなメディアは皆無となっているからだ。 

 

 なかでもブロック紙の中日新聞の「御用新聞化」は際立っている。代表例が昨年12月25日付朝刊に掲載された『豊田会長発言 真意は「一石」 「EV」ひとり歩きに懸念 電動車への正しい理解促す』だ。「特報」と題されたこの記事は、章男氏本人へのインタビューならまだしも、なんと中面の1面すべてを使って章男氏の「真意」をまるでイタコかのように解説しており、トヨタの⾃社メディア「トヨタイムズ」と錯覚するような、客観報道とは程遠い内容となっている。 

 

 内容的には、昨年(2020年)12月17日に開かれたオンライン懇談会で章男氏が日本自動車工業会会長としての立場から、政府が最近発表した2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル」についての発言を取り上げている。この懇談会では「電動化=電気自動車(EV)化という浅い認識をマスコミと政治家が広げている」という“アキオ劇場”が急に展開され、参加者したメディア関係者のひんしゅくを買ったことについてはすでに報じた。 

 

 中⽇新聞の記事では冒頭から、章男⽒の発⾔が「⼀部報道で、豊⽥⽒がガソリン⾞を廃⽌する⽅向性に反対姿勢を⽰し、あたかも政府と対⽴するような構図で描かれた」とした上で、「豊⽥⽒は本当に脱ガソリン⾞政策に反対し、政府批判を展開したのか。真意を探った」と始まり、章男⽒の主張がそのまま掲載されている。 

 

 筆者は章男氏の「急速な電動化は日本の自動車業界にとってよいことではない」という主張自体は正しいと考えるため、それに沿って記事を組み立てることは問題ではないと考える。むしろ、この記事中で看過できないのは、中⾒出し「『エネ議論』狙い」の部分だ。「複数の関係者によると、今回の一連の発言は、日本がカーボンニュートラルという大きなハードルを乗り越えるために、社会全体の電動車への正しい理解を共有し、エネルギー政策の『大変革』についての議論を促すように一石を投じる狙いがあったとみられる」とあるが、トヨタ関係者からの働きかけに基づいて、こんなヨイショを地の文で書いているのだとすれば、「特報記事」どころか、単なる広告記事である。 

 

 情報誌「ファクタ」が3月5日に「トヨタ章男の奇行に愕然」という号外速報をオンラインで公開した。この記事によると、先月の日本経済新聞社主催の「日経スマートワーク大賞2021」の表彰式で、章男氏が突然会場を訪れ、大賞にトヨタが選ばれたにもかかわらず、日経の岡田直敏社長に向かって普段の⽇経の報道姿勢への批判を始め「出入り禁止だ」などと悪態をつき、場の雰囲気をぶち壊したという。 

 

 これまでの章男氏のマスコミ批判は、記者会見や懇談会など自社の活動の範疇にとどまっていたが、今回が決定的に違うのは、表彰式には章男⽒の⽇経に対する不満とはまったく関係のない企業の担当者も出席していたところだ。自分のストレス解消のために、他人の晴れの場を台なしにするとは、経営者云々というより、もはや社会人として失格である。 

 

 

 圧倒的な社会的影響⼒にともなう説明責任がありながら、報道機関を敵視し、あれこれ批判されると逆ギレする。そのくせ、⾃分はマスコミだろうが業界違いの他社だろうが業務妨害や迷惑⾏為をしても許されるというのは、さすがに傲慢も過ぎるというものだろう。 

 

 章男⽒本⼈は巨⼤企業の創業⼀族として苦労したことを強調するが、それはそれとして、⽇本社会がそういう特別な出自ではない一般人が圧倒的多数を占める以上、最低限の礼節や常識は⾝に着けてほしいものである。「国⺠⾞」をつくってきたトヨタなら、なおさらではないか。 

 

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト) 

 

 

松岡久蔵/ジャーナリスト 

Kyuzo Matsuokaジャーナリスト 

 

記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。 

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/ 

 

https://biz-journal.jp/2021/03/post_212406_3.html 

(終わり)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(149)

2023-09-21 00:00:00 | Weblog

松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」 

トヨタ、章男社長の暴走…広報が競合他社に関する報道に介入、メディアに“説明”要求 

文=松岡久蔵/ジャーナリスト 2021.03.09 06:00 

トヨタ自動車・豊田章男社長(写真:picture alliance/アフロ) 

 

「最近のトヨタは、日産やマツダなど競合他社の報道についても『ご説明』を求めてくるようになり、異常としかいいようがない」 

 

 トヨタ⾃動⾞の内情に詳しい全国紙ベテラン記者は、同社の広報担当者がマスコミに対する統制を強めていることをこう危惧する。従来からメディアを自社に都合のいいように操りたいという姿勢は示していたものの、今年に入ってから、さらにこの傾向は顕著になったという。 

 

見出しや記事内容が不満だと即座にしつこく電話攻撃 

 

 冒頭のベテラン記者によると、最近のトヨタ広報のクレームは、もはや「立派な業務妨害」のレベルに達しているという。 

 

「トヨタ広報は、決算や各種発表の際、事前に新聞各社の担当記者に⾒出しやトーンなどを教えるよう電話で迫るのが常態化しています。これだけでも十分な『圧力』なのですが、ひどいのは実際に記事が配信されたり、掲載された時です。最近はどこのメディアも⾃社のホームページで当日に記事をアップしていますが、その見出しや内容が気に入らないと即座に現場記者に『後ろ向きの記事ですね』『弊社の販売努⼒をなぜ取り上げないんですか?』などの嫌がらせの電話がかかってくる始末です。他の企業だと、どれだけ⾃社に批判的なことを書かれても後⽇嫌みを⾔ってくるくらいです。事実誤認でもないのに、こんなことは前代未聞で驚いています 

 

 

 本来、報道機関は、事前に報道する内容を教えてほしいなどという要求は断固拒否すべきだが、記者クラブの担当記者は軒並み、トヨタから出入り禁止にされたくないために真面目に電話に出て対応しているという。取材する側もポチ化して、報道機関としての矜持が失われていることも問題だ。 

 

「なぜ他社は批判しないのか?」と他社報道に⼝出し 

 

 さらに、このベテラン記者が⾔う通り、競合他社の報道についても「ご説明」を求める電話攻勢を始めたというから、異常さがさらに一段階上がったといわざるを得ない。この記者の弁。 

 

「例えば、日産は1月27日付で2030年代早期から主要市場で投入する新型車をすべて電動車両にするとプレスリリースしましたが、これについてトヨタ広報が記事を掲載・配信したメディアに対して、『なぜこのトーンや⾒出しになったのか教えてほしい』『なぜ⽇産の取り組みは肯定的に取り上げられるのか』などの『ご説明』を求めたわけです。リリース処理の性質の記事なので、淡々と事実を全社とも書いただけなのですが、2月に入ってからも同様の傾向は続き、マツダなど競合他社の報道についても『ご説明』を求め続けています」 

 

 自社に関する記事についての問い合わせなら、「ご説明」もまだ正当化できるかもしれないが、さすがに他社の報道にまで口出しをするのは、やりすぎだといわざるを得ない。 

 

イエスマンの新執行役員入りが報道圧力を強めた 

 

 トヨタのマスコミ統制がひどくなったのは1月1日付の人事が大いに関係しているという。 

 

 この執行役員人事では、寺師茂樹氏が外れたことで、トヨタを支えるはずの「7人の侍」が章男氏のほか、番頭の小林耕士氏のたった2人になってしまったことが関係者の間で話題になった。7人の侍というのは、18年2⽉に静岡県にあるトヨタ創業者の豊⽥喜⼀郎氏の再現された生家の仏間に集結し団結の⾎判状まで作成した章男⽒と6⼈の当時の副社⻑のことだ。たった3年で⾝内の⼩林⽒しかいなくなってしまい、「章男⽒のワガママっぷりが⼀層進む」(トヨタ担当記者)とみられている。 

 

 その象徴が、新執行役員に昇格した長田准渉外広報本部副本部長だ。広報を統括するチーフコミュニケーションオフィサー(CCO)という日本では聞きなれない役職に就任した長田氏は、社内では「取り立てて目立った業績はなく、章男氏へのヨイショだけでのし上がった」(トヨタ関係者)と評判は芳しくない。この長田氏が広報政策の責任者に就任してから、前述のような業務妨害としか思えないクレーム攻勢が激しさを増したことを考えると、「章男氏の意向を受けた長田氏が社内ヨイショのため、メディアに対する圧力を強めている」(全国紙経済部デスク)と思われる。 

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(148)

2023-09-20 00:00:00 | Weblog

佐藤恒治新社長には責任はないと言うわけではないが、「いいクルマをつくった人」が「良い経営をする」とは限らないのである。「いいクルマをつくった人」の下には、「いい経営をする人」を付けなければいけなかったのである。 

 

「いいクルマをつくった人」を「クルマ屋」と呼ぶのであれば、その許には「良いマネージャー」がきっといた筈なのである。だから「良いクルマ」が出来たのである。 

 

「いいクルマをつくる人」が「良いマネージャー」であれば、それに越したことはない。豊田章男現会長はきっと、この両方を兼ね備えていたと思われるがそのため、彼の許には「いいクルマをつくる人達」と「いい経営をする人達」が、沢山いたものと思われる。だからトヨタは、繁栄していったのである。 

 

幸いにして豊田章男氏は、今まではそれほど暴走はしなかった。だからトヨタはうまくいっていたのである。 

 

だが、こういうことをしたらダメだ。会社経営もダメになってしまう。 

 

「週刊新潮」2023年6月24号(P29)には、次の様な記事がある。 

 

・・・その契機となったが、'21年2月19日のできごとだ。働き方改革で優れた会社を表彰する日経主催の表彰式が、帝国ホテルで開かれた。 

 このイベントに、大賞を受賞したトヨタの章男氏が突如現れ、「うちを批判する新聞社がうちを表彰するのか」と悪態をついたのだ。日経の岡田直敏社長(当時)と険悪な雰囲気になり、以来、トヨタは日経を取材から遠ざけた。 

 気に食わない新聞には広告も出さず、取材から遠ざける---。「独裁者」と化した章男氏の思いつきと、それにより忖度で、世界有数の企業がきしみ始めている。・・・ 

 

 

章男氏は「クルマ屋の限界」と言う言葉を言い訳気味に使っているが、それでは困るのである。 

 

いいクルマをつくらせる人」であると同時に、「いい会社を作り上げる人」でもありたいものである。こんな体たらくでは、いいクルマも作れなくなってしまう。 

 

もし悪態をつきたいと思ったのであれば、このような公式の場では控えるべきであった。何よりも先ず、何らかの理由をつけて、その表彰を辞退することをするべきであったのでしょう。そしてその理由に、「トヨタは日経に批判されているから受賞資格はない」と云って、悪態をつけばよかったのである。ただし、どんな批判であったかはしっかりと確認し理解しておくべきものである。 

 

この論考には、「・・・どの不祥事もトヨタの言うことを聞かなかった結果起こったのではなく、語弊を恐れずに言えば、むしろトヨタの言うことを聞いたから起こったのだ」と書かれているように、トヨタとしては知らず知らずのうちに、「いい会社、いい経営をする」ことから遠ざかってしまったのかもしれないのだ。 

 

このことをよく考えて、今後とも会社を動かしてゆくことが肝要となろう。 

 

日野もダイハツも歴代社長はトヨタからの人間であったわけで、本体が偏っていれば派遣された人間もそれなりに偏っていたのであろう。これは恐ろしいことである。 

 

さて話は飛ぶが・・・、トヨタは現在「脱炭素」のために、水素に力をそそいており燃料電池車の他に水素を直接燃焼させる水素エンジン車にも力を注いでいる。 

しかし、それには水素ステーションの普及が必須である。折角FCVの世界初の量産化を成し遂げたのであるから、自ら水素ステーションの設置にチャレンジしてもよかったのではないのか。テスラは自らテスラ規格の充電ステーション網をつくっているではないか。いまはその充電規格が標準になってしまっている。 

 

東京とか大阪とかのある範囲でもよいが、トヨタとしては、水素スタンド網を造り、その範囲では水素を充填できる様にしてFCVの利便性を高めておくようなトライも必要だったのでしょう。そしてそのような範囲をまた別の場所にも作ってゆく、と言った感じだ。テスラが良い例ではないのか。 

 

トヨタはもっとチャレンジングであってしかるべきである。 

 

また「アリーン」と言う車載OSの開発にも苦戦しているようだが、VW始めFORDなどのどの自動車メーカーもその開発には苦労しているようなのだ。 

 

クルマのスマホ化を進めている、と言うのであれば、いっそのことクルマそのものを「スマホ」にしてしまった方が簡単ではないか。 

 

クルマにスマホをセットして、大きな画面で、(スマホを)自由に使えるようにすれば、簡単にクルマをスマホ化できるのではないのかな。 

 

どんなスマホでも使えるようにスマホをカセットにセットして、クルマに装着して使えればよいのである。 

 

もちろんクルマ独自の機能もあってよいのであるが、全ても網羅したOSを造るのはとても難しいのではないのかな。 

 

 

さて、一寸古いが2021年3月の次の論考を参照願って、この話を終える。 

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(147)

2023-09-19 00:00:00 | Weblog

 コロナ禍の前のことだが、愛知県下にある中堅の自動車部品メーカーの経営者に聞くと「設計変更の依頼にしても、突然、夕方になって連絡を受けて、納品は明日の朝までという急な要求もあり、そのつど現場では大慌てで夜勤のためのシフトの組み替えをやらなければならない」と、ため息まじりに話した。 

 

 さらに、日野とダイハツは、歴代社長を含めてトヨタから送り込まれた人材が経営の中枢を担う。ダイハツの不正行為を発表した記者会見で、トヨタ出身の奥平総一郎社長も「(衝突試験の)担当の人間に、かなりのプレッシャーがかかっていた可能性がある」との見方を示したことも聞き逃せない発言である。 

 

 トヨタグループ、およびその傘下の部品メーカーは、従来から結束力の強さを身上としていた。が、その結束のベースにあったのは、お先棒をかつぐような忖度の類いではなく、何かが起こったらお互いにいつ袂を分かってもいいというほどの緊張関係だった。 

 

 ところが、近年はそうした緊張関係が薄らいでいるようにも感じる。メディアを巻き込んで作り上げた世間の評判とのズレもかなり大きいようで、現在のトヨタグループに蔓延する事大主義強者に追随して自己保身を図ること)への懸念を抱く関係者も少なくない。 

 

 グループ全体で再発防止に向けての改革に取り組むトヨタ本体でも、内部では微妙な混乱が起こり始めている。鳴り物入りで発売した電気自動車「bZ4X」だが直後に品質問題が露見、その解決に数カ月も要したのは、その典型的な例と言えるだろう。 

 

■トヨタへのご意見番が存在しなくなった? 

今のトヨタグループには、耳の痛い話でもまずは聞き入れるという意識改革を推し進めることが重要だ       

 

 トヨタグループにとって一番大事なのは、自身の姿である立ち位置を正当に判断することである。 

 

 もちろん自分のことはなかなか自分ではわからないものだが、「トヨタは正しい」という虚像が先行したせいか、苦言を含めて本当のことをトヨタに直言する“ご意見番”が存在しなくなったことも事実。 

 

 本当のことはわかる人にだけ言うというのが処世術の基本のようだが、耳を貸さない相手にモノを言わなくなるのは当然のこと。グループの中に閉じこもって悩むより、外部とのコミュニケーションを再構築することが解決の糸口をつかむことにもなるだろう。 

 

 リーマンショック以降のトヨタはある意味で強運に恵まれてきた。大規模リコール問題など危機に直面することがあってもそれが悪い結果につながらず、ライバルが次々に失策を犯したこともあって、世界ナンバーワンの座は強固なものになっている。 

 

 大事なことは、その成功が実力なのか、まぐれなのかを虚栄心を排して素直な目で見定めることだが、頂点を極めると成功体験が頭をよぎり、自らを見つめ直すのは至難の業である。 

 

 しかし、4月からスタートした新体制に求められているのは、豊田会長のリーダーシップに頼るばかりではな、会社全体で司令塔としての責任の重さを痛感し、耳の痛い話などを聞き入れる意識改革を徹底的に推し進めることではないだろうか。 

 

 それには会社としての器の大きさという点について、もう一段成長する必要もあるが、それが熟した時、初めてグループが本当の結束を取り戻し、強さが本物となるだろう。
(文/福田俊之) 

 

https://bestcarweb.jp/feature/column/679470?prd=3 

 

 

2023年4月に社長に就任し同年6月に代表取締役社長となった佐藤恒治新社長にとっては、有体に(ありのままに)言えば、豊田章男会長に頼らずに、自分の責任で自分が正しいと思うことを実行してゆくことが、最も大切なことである、と上記の論考は結論付けている様に、小生には読めたのであるが、それが『耳の痛い話などを聞き入れる意識改革を徹底的に推し進めることである』と言うことに繋(つな)がることなのであろう 

 

しかもこれらの品質不正は 

豊田章男現会長の社長時代に発生しているものである。

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(146)

2023-09-18 00:00:00 | Weblog

■トヨタグループで相次ぐ不祥事2023年5月、トヨタの完全子会社であるダイハツの不祥事についてタイのバンコクで記者会見し謝罪するトヨタ自動車の豊田章男会長    

 

 トヨタグループの不祥事が止まらない。トラック大手の日野自動車、トヨタ自動車の源流となる企業であり、フォークリフトやディーゼルエンジンなどを手がける豊田自動織機で排出ガスの規制適合で不正を行っていたことが発覚。トヨタ系列の販売会社でも車検不正が相次いで浮き彫りになった。 

 

 そして大型連休に突入する直前の4月末には、トヨタの完全子会社で軽自動車やアジア向け小型車を主力事業とするダイハツ工業が衝突安全審査を違法にパスしていたことが、内部告発により明るみに出た。 

 

 トヨタでは4月1日付けで社長の座をエンジニア出身の懐刀、佐藤恒治氏に譲り、自らは会長に就任した豊田章男氏が、連休明け早々、不正の対象車の主な生産・販売の拠点であるタイのバンコクで記者会見を行い、「不正はトヨタグループ全体の問題。自分が先頭に立って信頼回復に努める」と強調。 

 

 重要な収益源である東南アジアでのイメージダウンにつながりかねないだけに、自らのネームバリューを生かして事態の鎮静化を図る構えを見せた。 

 

 豊田氏は、14年前の社長就任直後に、米国で大規模リコール問題を起こして危機に直面したが、その時、米国の公聴会では「問題から逃げも隠れもしない」と誓って、率先して信頼の回復に全力を尽くした。今回の“謝罪会見”もそうした教訓から素早く対応したものと思われる。 

 

 そのタイでの会見でも豊田会長主導で早期の信頼回復を図る姿勢を示したが、その戦術は、グループ全体にトヨタのやり方をとことん浸透させるという狙いがあるようだ。 

日野自動車の小木曽社長 

 

 2022年3月不正問題では“先輩格”の日野の小木曽聡社長は、大規模な排出ガス不正が発覚した緊急会見の席で、「トヨタには不正をしようとしてもできない仕組みがある」と述べて、これまで不正行為が取り沙汰されずにきた“水も漏らさぬチェック体制”とも類推されるトヨタ方式の導入を示唆する発言を行っている。 

 

 小木曽氏はトヨタでハイブリッド車「アクア」などの開発責任者を務めたエンジニアで、日野に送り込まれてからもトヨタとの連携強化を打ち出しているが、再発防止に向けてのトヨタ流の導入は、小木曽氏の発案ではなく、“古巣”の意向とみるのが妥当であろう。 

 

■トヨタグループに蔓延する事大主義 

就任早々、不祥事対応を経験することになった佐藤恒治新社長。今後の舵取りに注目だ 

 

 だが、トヨタ本体のやり方を関連企業にも行き渡らせるという戦術で、グループの緩んだタガを締め直すことはできるのだろうか 

 

 結論から先に述べると、会長主導でトヨタ流を徹底的に守らせれば、品質管理や法令順守などに関わる問題がすべて解決できるというような単純なものではない。傘下の企業で発覚した相次ぐ不祥事は、想像もつかないほどの根深いものがあるようにも見受けられるからだ。 

 

 トヨタの研究開発部門の要職を務めたあるOBは「一連の問題に関する情報をよく分析すると、どの不祥事もトヨタの言うことを聞かなかった結果起こったのではなく、語弊を恐れずに言えば、むしろトヨタの言うことを聞いたから起こったのだ」と指摘する。 

 

 つまり、グループ企業にとってはトヨタからの要求に応えることが最優先事項で、社内では、そのためには「何でもあり」という機運が生じていたのだという。 

(続く)

 

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(145)

2023-09-15 00:00:00 | Weblog

そのうちトヨタ本体からも、品質不正問題が発覚しないとも限らないのだ。 

トヨタとしては、なんと言っても好調が続いており、世界一の販売台数を達成しており、利益も毎期最高益を更新していいる状況から、知らず知らずのうちに慢心状態に陥ってしまっている状態ではないのかな。 

 

 

ダイハツに日野自動車……事大主義の蔓延が不正の始まり!? トヨタグループで不祥事が相次ぐワケと改善への道 

2023年7月31日 / コラム コメントする  

 子会社、関連会社で不祥事が相次いでいるトヨタ。信頼性の高さでは世界最高峰の自動車メーカーであり、それこそが世界中で支持されている理由のはずなのに、いったいトヨタグループに何が起きているのか

※本稿は2023年5月のものです
文/福田俊之、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、Toyota Motor Thailand、ダイハツ
初出:『ベストカー』2023年6月26日号 

 

■ダイハツで不正が発覚

トヨタ ヤリス エイティブ。新興国向けの流麗なデザインの小型セダン。インドネシアではヴィオスの車名で販売している   

 

 

 2023年4月28日、トヨタの完全子会社であるダイハツの不祥事が内部通報で発覚した。タイ、マレーシア、インドネシアで生産され、東南アジア、南米、中東で販売される小型車の、側面衝突時における安全性の確認試験で不正があったというものだ。 

 

 対象は多くがトヨタブランドで販売されているクルマで、ヤリス エイティブ、プロデュア アジア、アギアと現在開発中のモデルの4車種。 

 

 アギアは発売前の新型車だが、ヤリス エイティブとプロデュア アジアは2023年4月までの累計販売台数が10万1717台というクルマで、一時は両車とも出荷中止となった(一部地域で再開)。 

 

 不正があったのはフロントドアの内張り部品で、試験の時だけ切り込みを入れて壊れやすくし、側面衝突時の乗員への攻撃性を低減していたというもの。この切れ込みがなくても安全性に問題はなかったとのことだが、法的に正しい手順、方法に違反していた。 

 

 トヨタの関連会社では、2022年3月日野自動車でエンジンの排出ガス、燃費性能での偽装、2023年2月豊田自動織機でフォークリフト用エンジンの耐久試験で不正が発覚。さらに5月12日にはトヨタコネクティッドを使用する215万件の顧客情報が流出するという事案も発生している。 

 

 信頼性の高さゆえに世界中で支持されているはずのトヨタの子会社、関連会社で相次ぐ不祥事。グループ全体に何が起きているのか気になり、心配になるのは当然のことだろう。 

 

 5月16日現在、ダイハツの案件に対してトヨタが行っている調査の最終結果は出ていない。そのためあくまで“現時点での”ということになるが、経済ジャーナリスト福田俊之氏の見解を掲載する。
 

(文/ベストカー編集部) 

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(144)

2023-09-14 00:00:00 | Weblog

これは当ブログの6/30のNO.90で載せたものであるが、そこでは「全個体電池」にも言及しているので、ご一読願う。 

 

トヨタとしてはノースカロライナ州のグリーンズボロ(のランドルフ・メガサイト)で電池組み立て工場を建設中ではあるが、正極材・負極材・電解質・セパレーターなどの構成部品に含まれる重要鉱物の調達にも注意を払う必要が出てきたのである。これらの重要鉱物は米国か米国とFTAを締結している国からの(購入価格の40%~80%の)調達でないと、税の優遇を受けられなくなる可能性があるのである。調達網の見直しが急務となっている。 

 

だからトヨタのBEV部門やその調達部門は、ある種のカオスの状態に入りつつあるのではないのかな。米国のIRAに合わせるために、調達状況の調査や新たなサプライチェーンの構築に取り掛かってゆこうと、テンヤワンヤの状態になりつつあるのではないのかな。 

 

それとも悠然と構えてサプライチェーンの構築に取り組んでいるのかもしれない。トヨタ程の実力の持ち主であれば、かなりの難関ではあるが乗り越えられないと言うほどのものではないのではないのかな。 

 

全個体電池を米国で現地生産するなどと言うことはしないと思われるので、税額控除を受けなくてもそれに対抗できるだけの付加価値を付けたBEVを供給するかもしれい、と言うことも考えられるのである。 

 

序に全個体電池」の部分も参考のために引用しておく。 

 

さて注目の「全個体電池」であるが、トヨタは2023.6.13の技術説明会では、「2027~28年にチャレンジ」と言っているが、日産が「2024年にパイロットライン、2028年に市場投入」と言っていることから、「'27年~'28年に投入」と発表したわけだが、どちらかと言うと欧米メーカーの投入予定時期も考慮して、2027年に投入する可能性が高かろう。 

 

なんと言っても、トヨタは2020年8月から全個体電池を搭載した試作車の公道試験を実施している手前、それなりの実用化の目途はたっているのではないのかな。HEVのプリウスの投入の「21世紀に間に合いました」との宣言のように、全個体電池も「2027年に間に合わせました」として、発表するのではないのかな。 

 

とは言うものの、トヨタとしてはこのBEV化の世界の流れや、米国のIRA対策や、次世代電池の開発などは、まだ万全な対応にはなっていないと考えておいた方がよいであろう。だから、トヨタも多事多難である。2027年では一寸遅いかもしれないのだ。 

 

そんな時にトヨタの社内は、敢然と一致団結して難局を乗り越えてゆける体制作りが出来るものであろうか。 

 

トヨタには、気になる事がある。 

 

 

それはトヨタグループ内で、不正が立て続けに見つかっていることである。 

 

先ず第一には、 

2021年の販売店における車検不正事件だ。 

 

この件は↓この論考をご一読願う。詳しく論じているので、よく理解できるものと思う。 

 

車検不祥事、トヨタの「アンドン」はなぜ点かなかったのか
2021.7.30   池田 直渡自動車経済評論家54件のコメント 

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00240/072800014/ 

 

そしてトヨタグループにおける不正を羅列してみると、 

2021年3月と7月に発覚、販売店における車検不正事件 

・2022年3月の日野自動車のエンジン排ガス不正 

・2023年2月には、豊田自動織機のエンジン不正 

・2023年4月での、ダイハツ工業の衝突試験不正 

・2023年5月には、愛知製鋼での鋼材の公差外れ発覚 

 

と立て続けにトヨタグルーブ内での品質不正問題が発覚している。 

 

こう立て続けに品質不正が発覚してゆくと、トヨタグルーブ内にはまだまだ「品質不正」が蔓延っているのではないか、と言った疑念も生ずるものであるが、トヨタとしても内部調査を進めている筈である。しかしながら、内心戦々恐々と言った状況ではないのかな。 

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(143)

2023-09-13 00:00:00 | Weblog

 韓国バッテリー3社の北米生産拠点投資も着実に増えている。LGエナジーソリューションは、米GM、欧州Stellantis(ステランティス)、ホンダ、現代自動車グループと、SKオンは米Ford(フォード)と現代自動車グループ、Samsung SDI(サムスンSDI)はGM、ステランティスと合弁で北米工場を稼働する。 

 

 問題は韓国バッテリー3社が重要鉱物を中国からの輸入に依存している点だ。中国依存を解決しないと米国での今後のビジネスは難しくなるだろう。2022年12月に大韓商工会議所が公開した「二次電池核心鉱物8大品目の供給網分析」によると、韓国は二次電池の製造に必要な8大鉱物のうちの6品目中国からの輸入に頼っている。割合は酸化コバルト・水酸化コバルトが83.3%、硫酸マンガン・硫酸コバルトマンガンが77.6%、酸化リチウム・水酸化リチウムが81.2%、硫酸ニッケルが59%、天然黒鉛が87.4%、二酸化マンガンが69.6%といった具合である。8大鉱物の輸入額ベースで中国依存度は58.7%であり、それは毎年増加している。米国および米国のFTA締結国で採掘・加工した重要鉱物の輸入の割合は15%で、米インフレ抑制法のEV税額控除の対象になるための40%に満たない。米国でEVを販売するためには重要鉱物の中国輸入を減らすしかない。大韓商工会議所は、重要鉱物の特定国依存が韓国の足を引っ張ることにならないよう輸入先の多辺化や技術開発が必要だと分析した。韓国バッテリー3社と材料・部品会社は中国以外の協力先を確保するために、日本、北米、中南米、アフリカ、東南アジアなどの企業と幅広く共同投資や共同研究を進めている。 

 

 重要鉱物保有国でありEV最大市場の中国は米中貿易摩擦の中でも好調である。韓国のエネルギー市場専門の調査会社SNE Researchによると、2023年1~4月のEV/PHEV/HEVのバッテリー市場シェアは、1位が中国・寧徳時代新能源科技(CATL)の35.9%、2位が中国・比亜迪(BYD)の16.1%、3位がLGエナジーソリューションの14.1%、4位がパナソニックの8.2%、5位がSKオンの5.2%、6位が中国・中創新航科技(CALB)の4.6%、7位がサムスンSDIの4.1%という順だった。 

 

 中国におけるEV内需が好調だったことから、中国勢のシェアが伸びて韓国勢のシェアは減少したが、順調に顧客を確保し生産を伸ばしていることから、韓国の証券業界の見通しでは韓国バッテリー3社の受注残高は1000兆ウォンを上回る。韓国バッテリー3社は生産拡大のために正極材・陰極材・分離膜などの原料確保と、全固体電池など次世代バッテリーの研究開発に投資を続けている。中国勢が得意としていたLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーでも競争力を確保し、2026~2028年には全固体電池を商用化するとしている。韓国バッテリー3社は生産・事業の拡大に伴い社員数も増え続けている。よりよい人材を確保するため2021年より大学と契約学科を設立、産学共同研究も増やしている。契約学科は企業が必要とする人材を育てるための学士・修士・博士課程のことで、該当企業に就職または共同研究をする条件で授業料の全額支援や、生活費・海外留学の支援などを受けられる。 


https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00087/?P=2 

 

 

トヨタとしても現在ノースカロライナ州で「電池工場」((TBMNC) Toyota Battery Manufacturing North Carolina)を、建設中である。 

 

トヨタ・90%、豊田通商・10%の出資で、59億ドル(およそ8200万円)を投じて、2025年稼働を目指している。日本ではパナソニックと組んで、車載電池の作っているが、米国では通商と組んでおり、パナソニックとは組んでいない。 

 

どうも決定がもたつくことを恐れて、パナとは組まなかったようだ。 

 

米国にはIRA法・Inflation Reduction Actがあるので、どうしても北米での現地生産が必須となっているので、後はBEVの組み立て工場をどこに作るかが課題として残っているが、これも現在はHEVを組み立てているケンタッキー州の「TMMKToyota Motor Manufacturing Kentucky」で、ライン改造を施して「3列シートのSUV」のBEVを生産することになっている。 

 

もちろんバッテリーは、TBMNCから供給されるから、トヨタ初の電気自動車の生産も2025年からとなる。 

 

トヨタは、2026年までに10モデルを投入して、年間150万台のBEVを販売する計画であるので、このTMMKのBEVラインはEVの主力工場の一つとなろう。 

 

150万台も350万台も膨大な数字であり、各種の電気自動車を組み立てなければならないわけで、そのプラットフォームもキチンと準備されているようだ。 

 

プラットフォームも一つではない、次の3種類を考えているようである。と言うよりも、新工法によるP.FormでないとBEVとしては効率的ではないようだ。 

 

(1)マルチパスウェイ プラットフォーム---現行TNGAタイプ 

(2)BEV専用のプラットフォーム-----e-TNGAタイプ(bz4xタイプ) 

(3)新工法による次世代プラットフォーム--次世代型(2026~'30/170万台) 

 

(続く)

 

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(142)

2023-09-12 00:00:00 | Weblog

購買価格の40%から80%を米国かFTA締約国から調達すべき重要鉱物とは、次のものをいうのであろう。 

 

リチウム二次電池では、正極材・負極材・電解質・セパレーターで構成されているので、そのそれぞれを構成する鉱物が該当するのであろう。 

 

正極材 コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムの複合金属酸化物やニッケル・コバルト・マンガンの三元系やリン酸鉄リチウム 

負極材 黒煙(カーボン・炭素材料) 

電解質 有機溶媒 

セパレーター ポリプロピレンやポリエチレンを積層した多孔質膜 

 

なおトヨタの次世代電池については、当ブログの6/26のNO.86でも少し言及しているのでご承知の事と思う。 

 

中国のバッテリーメーカーである世界シェア1位・2位のCATL・寧徳時代新能源科技やBYD・比亜迪などは当然米国進出はしないから、次の韓国の「LGエナジーソリューション」や「SKオン」、「サムスンSDI」の韓国御三家は今後新たに中国以外から原料確保にまい進しなけれ次ならないわけだ。 

 

中国依存度が、60%から鉱物によっては80%以上になるというので、大変だ。 

 

 

米インフレ抑制法その後、現代自動車と韓国バッテリー3社の北米投資増も課題は鉱物 

趙 章恩 ITジャーナリスト2023.06.09 

 

 気候変動対策などのために4300億ドル規模(58兆円)を投じる米インフレ抑制法(Inflation Reduction Act、IRA)のガイダンスが2023年4月18日から適用となった。同法が定める要件を満たす電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を購入すると最大7500米ドルの税額控除を受けられるというものだが、ガイダンスではその条件が大幅に修正され、極めて厳しいものとなった。北米でEVの最終組み立てを行うだけでなく、車載電池(バッテリー)の部品の一定割合を北米で造ったり、重要鉱物の一定割合を米国や米国が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国などから調達したりする必要がある。これにより、韓国の現代自動車グループや起亜自動車、日産自動車が北米で生産するEV「リーフ」は対象外となった。 

 

 インフレ抑制法のガイダンスは2023年6月中旬までパブリックコメントを募集中であり、韓国政府と企業は積極的に意見を提示し米政府と交渉を続けている。というのも韓国バッテリー大手3社は重要鉱物の輸入先を増やそうとしているが、まだ中国からの輸入に依存している。そのため、ガイダンスに中国の鉱物はもとより、中国企業との合弁で調達した鉱物・部品も⼀切使⽤してはならないといった条件が盛り込まれないようにすることが目標である。ガイダンスにある、「FTA未締結国で抽出した鉱物でもFTA締結国で加工し50%以上の付加価値を創出すれば税額控除の対象になる」という条件をうまく利用して、中国の原材料を韓国で加工して米国で売るという流れを守りたいからだ。 

 

 現代自動車グループは自社負担の割引プロモーションで客離れを食い止めようとしているが、税額控除対象外になったことで、消費者からすると現代自動車グループのEVセダン「IONIQ 6」が競合する米Tesla(テスラ)の「Tesla Model 3」より高くなってしまった。IONIQ 6は2023年4月に米ニューヨークで開催した「2023 World Car Awards」で「World Car of the Year」「World Electric Vehicle of the Year」「World Car Design of the Year」の3冠を達成したものの、北米市場の販売台数が予想を下回っているのはやはりEV税額控除の対象外になったことが響いているとみられている。 

 

現代自動車グループのEVセダン「IONIQ 6」(出所:現代自動車)[画像のクリックで拡大表示] 

 

 現代自動車グループはEV税額控除をめぐり対米投資を見直すと強気の発言をしたこともあったが結局は、米ジョージア州にある年間30万台の生産能力を持つEV工場に55億ドルを投資、2023年4月には韓国のバッテリー企業SK On(SKオン)と50億ドル規模、2023年5月には韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と43億ドル規模の合弁会社をそれぞれ設立し北米でEV向けバッテリーを生産することにした。3つの生産拠点は2025年に稼働を開始する。SKオン とLGエナジーソリューションの2社と合弁したことで、北米でバッテリーセル生産規模が年間65GWhとなり、約60万台に搭載できるバッテリーを確保できるようになった。現代自動車グループとLGエナジーソリューションの合弁はこれが2度目である。1度目は2021年にインドネシアで年間生産10GWh規模のバッテリーセル生産工場を合弁で設立しており、2024年の上半期に量産を開始する。現代自動車グループは「米国生産EVに最適化したバッテリーセルを調達し、高性能・高効率・安全性の高いEVを販売する」と意気込む。現代自動車グループはグローバル市場でのEV販売を2030年に187万台へと伸ばして世界EV生産トップ3になり、グローバルEVの半分を北米で販売することを目標としている。環境対策と税額控除で勢いよく成長している米国EV市場を取りこぼすわけにはいかないからだ。 

(続く)

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カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(141)

2023-09-11 00:00:00 | Weblog

 

今村卓丸紅 執行役員 経済研究所長 

 

分析・考察 

関税ではなく米国の消費者に対する税額控除を使うことも影響したと思います。米国民の税金を使うなら米国、製造業なら一体の北米の雇用創出と産業強化を優先すべきという主張は、少なくとも米国内では公正であると理解され強い説得力を持ちます。EVや電池、重要鉱物では競争力のある中国を念頭に置いた経済安全保障の目的もあり同盟国や同志国を優遇対象に加える考えは成り立ちますが通用しませんでした。前者の主張に割り込ませるだけの説得力を与えられなかったということでしょう。当然、米国と日本など同盟国の関係には悪影響を与えます。逆にそれを日欧韓は強く訴えてバイデン政権に譲歩、条件変更を求めていくべきだと思います。 

2023年4月18日 8:38 (2023年4月18日 8:49更新)96 

鈴木一人東京大学 公共政策大学院 教授 

 

分析・考察 

日欧韓はインフレ抑制法が出来てから必死になって交渉し、「みなしFTA」として重要鉱物の要件をなんとか満たそうとしたが、及ばなかったようだ。今後、対象車種に選ばれる可能性はあるとしても、優遇税制を受けられる車種とのブランディングの差が生まれ、市場参入は容易ではなくなる。米国メーカーばかりが選ばれたのは保護主義的なニュアンスを伴うが、それでも米国内で生産しているメーカーに対しても厳しいというのは、やはり電池分野で中国にサプライチェーンを握られたくない、という思いなのだろう。ここまで来ると安全保障の問題ではなく、産業保護と中国企業の台頭への恐怖としか思えなくなる。 


 

2023年4月20日 5:0511 

鈴木亘学習院大学経済学部 教授 

 

分析・考察 

当然、欧州は対抗措置として、米国メーカーのEV車の税制優遇を止める可能性が高い。問題は、そうなった時に日本はどうするかである。日本メーカーのEV車の税制優遇しか認めない保護主義をとると、日産サクラ・三菱EKクロスEVのような日本でしか通用しないガラパゴス規格の車ばかりになってしまい、EV車の正常な競争がそがれてしまう可能性がある。いずれ、自由競争に戻った時に、取り返しがつかない遅れとなる。一番良いのは、欧州と交渉し、EV車の優遇税制を相互に認める協定を結ぶことである。韓国や中国とも結べばさらに良い。そうなると、米国VSその他世界という構図になるので、米国が政策を変える可能性も高まると思われる。 

2023年4月18日 8:38109 

菅野幹雄日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員 

 

ひとこと解説 

テスラ2、GM6、フォード3、その他ゼロ。流れはすでにできていましたが、やはり、露骨な自国EV車の優遇ぶりをこうして具体的に見せつけられると、民主主義や自由貿易を率いるはずの超大国としての身勝手な振る舞いに強い違和感を新たにします。バイデン政権としては、「自国優先」の強さで共和党候補と戦う来年の大統領選挙に向けた背水の陣を引いたところなのでしょうが、国際的な信用には響くのではないでしょうか。日本はもちろんEU、韓国などがこの決定にどう反応するかが焦点。米国に批判の強い圧力をかけて改善を迫るか、泣き寝入りの形で米国一貫生産などの体制を整えるか、巨大市場との関わり方で難しい選択を迫られます。 

2023年4月18日 7:36 


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN17CCA0X10C23A4000000/ 

(続く)

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