世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

ならず者国家・中国、アレコレ!(45)

2016-01-29 00:00:00 | Weblog

なぜ量より質が大事かと言う事が、この論考でいくばくかでもご理解頂けたことと思います。いかに付加価値を付けるか、と言う事なのだ。それには、それなりのイノベーション・技術革新が必要なのである。これこそが「中進国のわな」から脱却するための要なのである。

しかし中国の今後の経済成長に対しては、それぞれの局面で大きな問題を抱えていると、津上俊哉氏は「中国の台頭の終焉」(p228)で解説している。

経済成長の局面は、短期、中期、長期のその何れでも、中国の経済は大きな問題を抱えていると言うのだ。

短期とは、2015年まで。これはすでに経過している。
中期とは、2020年まで。
長期とは、2021年以降だ。

短期での問題は、三つの過剰問題だ。過剰設備、過剰債務、過剰在庫(以前に雇用としていた)だが、これはすでにやってしまったことなので、どうしようもない。

長期の問題は、少子高齢化だ。これもすでに言及している。今後長い間どうしようもないことだ。ただそうだとしても、放っておけばますます厄介なことになるので、即効はないにしても今から何らかの手を打っておく、否、打ち続けていく必要がある。同じ問題は日本にもあるのだが。

中期の問題は、賃金・物価上昇以上に生産性や付加価値を向上させてゆかなければならない、と言う事である。津上氏はこれこそが「要中の要カナメ」と言っている。そしてまだ何とか打つ手があるのではないか、と言っている。

ここからこの「中国台頭の終焉」は、「中国での分配の公平性が許容度を超えていること」が問題だと、話を続けている。

「生産性の向上」と「分配の公平性」とは、どんなつながりがあるのか、小生には詳(つまび)らかではないが、小生なりに理解すると次のようなからくりではないかと、無理やり納得させている。

多分、所得を増やして実質賃金を上げるためには、企業は生産性をそれ以上に向上させたり、付加価値の高い製品を作り出し販売をそれ以上に向上させて、売り上げや収入を増やすことが大事になるが、それと同じことが、所得の公平な分配で同じ効果が得られるのである。富が一か所に集中して一般大衆が貧困に窮している状態も、その富を公平に分配できれば、一般対象の所得は向上することになるので、経済が成長したと同じ効果が得られるのである。

と言う事は、社会一般がそれなりに豊かになれば、技術革新・イノベーションへの強い動機づけとなるのである。

だから小生はイノベーション・技術革新が、「中進国のわな」からの脱却にはとても効果があるものだと思っているが、イノベーションによる経済成長・所得の向上を図るためには、所得分配の公平性を確保することがイノベーションを強く促す基になるものと考えられるのである。何といってもイノベーションの担い手は民間企業であるから、民間企業が豊かになるためには「国進民退」では困るのである。民間企業を活性化させる必要があるのである。

中国では、都市と農村の二元構造の害や官民格差や国家資本主義の弊害などの問題が存在している。この不公平を解消させるためにも、政府による「分配の公平性」の確保が重要なのである、としている。。

この分配の不公正は、次の二つに集約できるのであると言っている。

第一は、人民間の貧富の格差である。

この最たるものが農民差別である。農民は中国人民の3分の2を占めている。農民工と言う言葉に象徴されるように、早急にこの農村戸籍と都市戸籍の解消が第一である。更には青色戸籍などと言う特別な戸籍も存在している(2015.12.7のNO.16参照のこと)。

また政府や国有企業の幹部に対する優遇も、解消させなければならない。特に中国の年金官民格差は日本の比ではないと言う。公務員や共産党職員は年金保険料を負担していないのであり、そのうえ給付額は倍以上貰っているのである。


第二には官民格差の是正である。いわゆる「国進民退」そのものを是正する必要がある。

このことを次のように述べている。(230~231頁)

ここでいう「官民格差是正」の本丸は、それらの原因となっている「国家資本主義」や「国進民退」そのものを是正することである。政府の経済的な役割の見直しや国有企業の改革が中途半端なまま、長い高度成長期を経験したことで、中国の「政府と経済の関係」は今や異形を呈しており、特に「分配」の在り方は完全に失調をきたしている。

「国家資本主義」による経済果実の過剰占拠・無駄遣い・腐敗、「国進民退」下の「民営企業差別」、そして強大すぎる実権を手にする党や政府の高層と親密な関係を結ぶ「権貴(特権)資本家」の跋扈は、庶民の怒りと不公平感を買う代表選手であるが、これらはいずれも「官」の役割・実権を縮小しないと緩和されない問題である。また、それは次に述べる今後の成長政策とも重なり合う課題でもある。



今後の成長のカギとなる生産性の向上や付加価値の増大のためには、このような格差を是正してゆかないと、そのようなイノベーションへのインセンティブになり得ないのではないのかな。経済成長のベースとなる社会生活の向上を図るためには、このような普遍的な格差をなくすことが必須なのである。

今まではインフラなどへの投資で経済成長が進行したが、公共投資などによる経済成長は頭打ちとなっている。

だからこれからは「従来の産業・都市インフラ投資から「都市・農村二元構造」や「農民差別」の解消へと財政投入の方向をもっと大胆に転換すべきだったが、逆に「4兆元投資」で旧い方向の「ダメ押し」をしてしまった。これ以上、膨大な経済資源を地方政府の自由にさせることは、無駄なばかりか危険である。地方政府の権能や経済実権に大きくメスを入れなければならない。・・・・・
また、「官」と「民(営企業)」の間に存在する格差は、中期成長モデル転換の成否を決する核心中の核心問題である。効率の劣る国有セクターが多くの重要産業分野を独占し、効率の勝る民営企業の活動範囲を狭めていること、「官」が成長果実の多くを取り過ぎて「民(営企業)」の資本蓄積を妨げていることは、両々相まって中国経済サプライ・サイドの活力を奪い、成長空間を狭めている。国有セクターのダウン・サイジングを進め、民営企業に活力の場を広げてやり、資本蓄積を許すことで、経済の効率化高まり成長を促進できるのである。
」(232~233頁)と、記述されている。

まあ中国では共産党の一党独裁政権による独裁政治であるために、国有企業が強力な力を有しているのであり、そのためにその既得権益も半端ないものになっているのである。これが正常な民間企業の活躍の場を制限しているのである。この既得権益は何も中国に限ったことではなく日本にもあるもので、改革には必ずややり玉に挙がっている。

このことなどは中国政府もわかっているようで、すでに2012年11月の共産党第18回党大会で言及されている、と津上氏は説明している。

2012年11月の第18回党大会は胡錦濤政権の主催であったが、この国家資本主義の既得権益にメスを入れるべき政権は、習近平政権となる。習近平がこれに本気で取り組む気があるかと言う事であるが、「腐敗撲滅」がその取り組みの先がけとなるかは今後の課題である。いよいよその手が上海閥に伸び始めたといったニュースも聞かれ始めたが、「国進民退」の動きを止めて「民進国退」へと舵を強烈に切らなければ、それこそ「中国停滞への突入」となってしまう。

まあ、それこそ共産党の終わりに近づくことになろう。

アメリカ経済は、それなりに順調である。最近は「シェールガス革命」も下火になってきているが、エネルギーの輸入国から輸出国へと転換しようとしている。だから貿易赤字で国が衰退するという話はないであろう。

中国が「GDPでアメリカを抜く日は近い」と言われていたが、中国の経済成長は7%どころか現在は5%成長もおぼつかないのが現状である。決して、中国がアメリカを抜く日は来ないと断言できる。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(44)

2016-01-28 00:00:00 | Weblog

(4) 7%成長へのこだわりへの疑問

中国では、雇用不安が社会を不安定にする、と恐れられている。そんなところから7%を割り込むと雇用維持が崩れて、中国社会は不安定化すると恐れられている。しかしすでに見てきたように中国の実質の成長率は5%を割り込んでいるのが実情ではないか。それに中国を不安定にするのは、分配の不公平に気付いた人民がその不平等への怒りを社会に向け始めたことによるものではないのか。

だから今大切なことは、成長の大きさではなくて、成長の質ではないのかな。このことに中国人民は、まだ気付いていない。単純に大きくなればうれしいのであろう。



【ビジネス解読】ハイテク製品輸出で中国が日本を抜いた 中国メディアは「歴史的勝利」に大ハシャギ でも内実はお寒い限りで…
2016.1.24 08:00


 ハイテク製品は日本のお家芸だ。だが、そんな“常識”を揺るがす事態が起きた。アジア開発銀行(ADB)が、通信機器などハイテク製品のアジアでの輸出シェアで、中国が日本を大きく抜き去りトップに立ったとするリポートを公表。中国メディアは「戦略的ハイテク技術分野で前進した」と喧伝し、歴史的勝利に沸いた。だが、「部品を輸入し製品を組み立てただけ」(関係者)というのが実態だ。それを知っている中国は、次世代製造業による質の向上を真剣に模索し始めた。日本も製造業に革新を起こす「第4次産業革命」を目指しており、アジアの覇権をめぐり、つばぜり合いが今後本格化しそうだ。

アジアのハイテク製品輸出、勢力図塗り替わる

 ことの始まりは、ADBが昨年12月に発表したアジア経済統合に関するリポートだった。

 リポートによると、ハイテク製品のアジアでの輸出で、中国が占めるシェアは2000年に9.4%だったのが、14年には43.7%と大幅に拡大した。一方で、対する日本のシェアは00年の25.5%から7.7%に低下した。

 ここでいうハイテク製品とは、航空・宇宙関連製品や医薬品、通信機器、医療・精密機器などを指す。これまでアジアでは、おおむね日本が存在感を示してきた分野だ。

 ただ、日本だけでなく、韓国も10.7%から9.4%にシェアを落とし、マレーシアやフィリピンなど東南アジアの国々もダウンした。ちなみに、輸出依存度の高い経済構造の韓国がシェアを落としたのはスマートフォンなどの輸出が中国勢に追い上げられたためとみられている。ともかく15年足らずで中国が突出し、製品輸出の勢力図が大きく塗り替わった格好だ。

 ブルームバーグによると、HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏は「中国はハイテク製造業を本土に増やしている」と分析。その上で「高度な技能を持つ労働者を備え、研究開発を中国に移す動きも増している」と述べた。

お祭り騒ぎの中国メディア、冷静な見方も

 「中国はアジア最大のハイテク製品輸出国の地位を日本から奪った」「戦略的ハイテク技術分野で大きな前進が見られた」(中国網日本語版)

 「中国のハイテク製品はアジア各国で歓迎を受けている」(中国国際放送)

 ADBのリポートを受けて、中国メディアはこぞって「日本を打ち負かした」快挙をたたえた

 中国国際放送は、高速鉄道や原子力発電ユニット、人工衛星を引き合いに出し、「中国のハイテク製品輸出はアジア一」と胸を張った。

 だが、内実が伴っているかというと、そうでもなさそうだ。

 ADBのリポートで示されている輸出シェアは輸出総額から割り出したもの。日系大手メーカー関係者によると、「中国はコアとなるハイテク部品を日本など先進国から輸入し、組み立てた上で輸出しているにすぎない」という。「ようやく普通のテクノロジーに追いつき始めたところだ」と指摘する声もある。

 ただ、これは中国側も理解している。中国情報サイトのサーチナによると、中国メディアの新浪は、中国企業の進歩の速度は非常に速いが、それは模倣やコピーによるもので「革新」に欠けるとし、「中国の技術力は日本にとって真の意味での脅威にはならない」と指摘している。

それでも猛烈に追い上げる中国、日本は…?

 中国は改革開放政策を推し進めて「世界の工場」と呼ばれ、製品を大量輸出してきた。10年には日本を抜いて世界第2位の経済大国にまでのし上がった。それでも国際競争力のある製造業はほとんど育っておらず、習近平政権は、中国人が日本などで“爆買い”する現実に強い焦りを感じている。

 このため昨年5月、「製造大国から製造強国に転換する」べく、製造業育成のための10カ年計画「メード・イン・チャイナ2025」を発表。「次世代情報技術」や「省エネルギー、新エネルギー自動車」などに重点化し、質の向上による経済成長を目指す姿勢を鮮明にした。

 猛烈なスピードで追い上げる中国。ただ、日本も手をこまねいているわけではない。

 「生産性革命を進める投資によって、世界に先がけた第4次産業革命を実現する」(安倍晋三首相)構えで、あらゆる機器をインターネットにつなぐ技術「IoT」や、人工知能、ビッグデータなどの活用による成長を模索している。

 「アジア最大の製造業国」の地位をかけた争奪戦は今後熱を帯びるのは間違いなく、目が離せなくなりそうだ。(中村智隆)
http://www.sankei.com/premium/news/160124/prm1601240030-n1.html
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(43)

2016-01-27 00:00:00 | Weblog

要は、特効薬のような今すぐ処方できる薬はない、ということなのであろう。根本的な解決策しかないということ。完全な構造改革が必要、そんなことを頭において次の成長要因がらみの問題に移ろう。

それは都市化が問題ならば、何も都市だけにこだわらずに地方で産業の発達させればよいのではないか、そうすれば経済成長は続けられるとの考えもある。

それには都市部から内陸部へ産業を移転させればよい。そんな発想も生まれてくると予想されるが、それは果たして可能なのかはなはだ疑問でもある。内陸部が都市部のように経済発展をしてくれればこの上もないことだが、そうは問屋が卸してくれないのだ。


(2)内陸部への産業移転

中国は広大であるので、都市部が飽和すれば内陸部へ産業を移転させれば経済成長は維持できるのではないか、と言う発想が生まれてくるのは自然のことである。

これも津上俊哉氏は、楽観を許さないと結論づけている。

その理由の第一は、いくら沿岸部が飽和したからといってもまだまだ都市部の強力なインフラ資産には利用価値があるのだと言う。「今日発注すれば明日には届く」と言った物流ネットワークなど、無形だが強力なインフラは相当魅力な資産なのだという。

第二には、内陸部や東南アジアにはそんなインフラはまだ整備されていないうえに、法治・社会制度不備意識・文化遅れや違いなども、移転の妨げとなる。

第三には、たとえ移転できたとしても移転してできたその穴はどのようにし埋めてゆくのか、と言った政策が見当たらないことだ。加工貿易で栄えた華南の東莞市などは、今は軒並み空き家が連なっているという。空洞化するのだ。そこへ何の産業を持ってくるか地元政府がおせっかいしても、結局はうまくゆかないので、地元政府は企業が動きやすい環境を作ってやることが第一だと述べている。しかし地方政府にはそんな考えは持ち合わせていないようだ。

だから産業移転による経済成長の牽引は、あてにはならないということ、しからばしからば今の中国では、企業による「技術革新」による経済成長はありうるのか。


(3)自主創新・イノベーションに頼れるのか。

習近平は、2014.11のAPECの商工サミットの場で、すでに新常態の説明イノベーションによる成長の必要性に言及している(2015.12.22のNO.26参照のこと)し、更には2015.10月の第18期中央委員会第五回全体会議(五中全会)で、第13次5か年計画の目標として2020年「小康社会」の達成させるとして、そのため5つの原則を示している。それは次の5つ、イノベーション(革新的発展)」、第2は「釣り合いのとれた発展(協調)」。以下、「環境に配慮した発展(緑色発展)」「開放的発展」「共に享受する発展(共亨)」と続く。その第一に「イノベーション」が必須だと宣言している(2016.1.13のNO.33参照のこと)。

だから中国は、これからの経済成長にはイノベーション・技術革新が絶対に必要だと判っているようだ。「ルイスの転換点」を通過し、「中進国のわな」にハマっている中国にとっては、このわなから脱却する手段としては技術革新・イノベーションしかないことは、重々理解している。

中国は「世界の工場」と煽てられているが、これは反面、多国籍企業の下請け的存在でしかないのである。例えば、「中国の台頭の終焉」の223頁では、津上俊哉氏はiphoneの例を挙げての次のように記述している。

中国で行われるiphone組み立て工程に支払われるコストは6.5ドル分、1台179ドルの製品原価の3.6%分しかない。製品原価の34%に相当する61ドル分を日本の電子部品が占めるのに比べて、何と割の合わない「世界の工場」であることか。こんな付加価値の低い組み立てをいくらやっても、うだつが上がらないが、中国の輸出額の半分はこういう(賃)加工貿易なのである。
今後の成長にとって必要な生産性向上と同じ意味合いを持つのが、付加価値の向上だ。中国は「世界の下請」から脱却するために「自主創新」を国策とし、科学技術研究や研究開発(R&D)助成への予算投入を急激に増加している。



しかしこの中国の国を挙げてのR&Dや科学技術研究には、少なからずの違和感があるとと言っている。

その一つは、この「上からの」予算投入には、中国社会の実情から逃れられない致命的な問題点が存在するのではないかと、言っている。

それは、巨額の金が動くところには、必ずや利権や情実が伴う、ということだ。必ずや官民の癒着が起こり、腐敗の温床となりやすく、効率的にことが運ぶには難関が多すぎるのだという。

その二つ目は、いま中国にとって必要なことは、本当に「自主技術」なのかということである。「自主技術」向上以外に付加価値を向上させる術はない、と言うことではないのではないか。

事実、韓国や台湾は「自主技術開発」で成長してきた訳ではない。ハイテクでない技術でも、自主製品を持つことで、成功する余地は大いにある。

と言うことは、営業部門が顧客のニーズを正確にくみ取り、それを迅速かつ正確に生産に反映でき、顧客の望む製品をいち早く市場に投入することができれば、これはこれで付加価値を多く得ることが出来るのである。いわゆる商売の王道を全うすれば、自主創新に頼らずともおのずと経済は大きくなってゆくのである。

要は民間企業の活力を活発にすることである。企業の取り分を増やして資本の蓄積を促し、私有財産保護への不安をなくせば、中国経済ももっともっと大きくなってゆくはずである。

しかし国有企業が幅を利かせている中国の現状では、これも詮無きことかもしれない。

(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(42)

2016-01-26 00:00:00 | Weblog

その代表例が、この「一人っ子政策」であろう。中国では適正な労働人口を維持するまでには、相当の時間と改革が必要となる気がする。だからこの点からしても、中国経済は相当の問題を含んでいると見なければならない。しかし中国政府はこれと言った解決策を持ち合わせているようには見えない。

とりあえず、マクロ的に見た中国経済の問題点を整理することも必要なので、ひとまず次の記事を掲げておく。



人民元安の裏に潜む中国経済の本当の弱点
2016年1月22日(金)田村 賢司

 1992年9月といえば、通貨史において、最大級と言っていい事件のあった時である。

 ポンド危機。世界最大級のヘッジファンドを率いていたとはいえ、一介の民間投資家に過ぎないジョージ・ソロスが、英国の通貨、ポンドに巨額の売りを仕掛け、買い入れ防衛に走った英・中央銀行のイングランド銀行を打ち負かしたのだ。

 当時、欧州は将来の統一通貨、ユーロの実現のために特別な仕組み(欧州為替相場メカニズム=ERM)を導入していた。緩やかな固定相場制と言えそうなものだったが、ソロスはこのためにポンドが実力以上に高くなっていると見て猛烈に売り浴びせたのである。

 敗れた英国はERMを脱退し、やがて変動相場制に移行していった。政府に対する市場の勝利として名高いこの出来事を思い起こしたのは、年初から大揺れが続く世界経済の混乱の元にある中国と、その通貨、人民元の今を考えたからだ。

市場にすり寄り始めた中国為替当局

 「今の規模で中国当局が為替介入を続けると、あと3~4年程度で中国の外貨準備は1兆ドルに落ちる可能性がある。そうなれば、ポンド危機と同じ人民元危機が起きても不思議ではなくなる」

8.11ショックから人民元安が進んできた
ドル・人民元レートの推移

[画像のクリックで拡大表示]

 みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏はそんな“強烈な”予言をする。中国は、日本や米国のように市場で為替レートが決まる自由な変動相場制ではない。通貨当局が、毎営業日の午前10時過ぎに発表する基準値から一定の幅しか動かさない管理変動相場制をとっている。当局の決めた為替レートからの変動を一定の幅に抑えることで、市場の急変による経済への影響を小さくするためであり、ドル売り人民元買いなど為替介入に使うのが政府の保有する外貨準備だ。

 この人民元の動きに、今の中国が置かれた経済の停滞が、これまでとは質の違うものであることがうかがえる。

 8.11ショック。昨年8月11日、中国は突然、為替相場の管理方法を変えた。それまで中国は、市場で実際に取引される為替レートを見ながら、それとは“別に”基準値を決めていた。ところがこの日、「前営業日の銀行間取引(市場レート)の終値と、主要通貨の動向を考慮して」基準値を決定すると発表したのだ。一定の幅以上には動かさない管理変動相場制は維持したが、元になる基準値を市場の実勢に沿う形にしたのである。中国は基準値を3日連続で引き下げ、人民元は急落していった。

 これまで唯我独尊を貫いてきた中国が、市場にすり寄り始めたのには2つの理由がある。1つは、外資と見られる資本の流出である。「中国株や様々な資産に投資していた(投機の)ホットマネーや、実物資産への投資などが母国に引き上げられている」(富士通総研の柯隆・主席研究員)。

 資本の流出の裏にあるのは、経済失速への警戒と、株式市場や為替市場など、様々な市場に見られる統制経済体制への不満なのだろう。

 人件費の低さを生かし、人海戦術で稼ぐ繊維など軽工業は、賃金上昇人民元高とともに競争力を失い、工場の一部がベトナムやカンボジアなどに移り始めている。一方、鉄鋼や造船、自動車などを初めとした主要産業には、設備と債務と投資の3つの過剰が改めて指摘され始めた。「過剰」の中心にあるのは、国有企業か国有企業と外資の合弁で、社会主義政権の元にある限り、過剰問題を解決する力がないと見られ始めたのである。

3つの過剰の本丸、国有企業の危機

 国有企業問題は、中国が抱える経済の矛盾の凝縮でもある。製造業で言えば、鉄鋼や板ガラス、セメント、非鉄金属、造船、石炭、アルミなどが国有企業の柱。世界一の生産国となった自動車も、中核は、トヨタ自動車や日産自動車、米国のビッグ3、ドイツのフォルクスワーゲンなど外資との合弁企業だ。

 これら国有企業と地方政府、国有銀行の3者がもたれ合って「過剰」を増やしてきたと言われる。国有銀行は、国有企業に過剰融資を行い、地方政府は公共工事などで仕事を作る。あるいは、業績の悪い企業にも融資をしたり、減税をしたりして延命させる。いわゆるゾンビ企業を増やした。

 生産も同様。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎・上席研究員によれば、「世界のGDPに占める中国の比率は約13%(2013年)だが、製造業だけ取り出してみると23.2%に達する」という。その差は、製造業の設備が過大になっている可能性があるというわけだ。鉄鋼の過剰生産もここに原因があり、安値輸出で世界にデフレを広げていると酷評される。

 しかし、より深刻なのは、中央・地方政府、国有企業自身の改革力のなさだ。「過剰」を削れば、雇用が失われ社会が不安定化しかねない。「本来、その政策は失敗する可能性がある」(三尾・ニッセイ基礎研上席研究員)だけに、改革の腰が入らないのだ。

 当局が為替市場にすり寄り始めた理由の2つ目は、意図的な人民元安誘導と見られる。人民元安は当然ながら、ドル高であり、円高と同義である。人件費の上昇などで失われてきた製造業の競争力を回復するには最もお手軽な手段になる。8.11ショック以降、じりじりと進んできた人民元安には、そんな思惑が伺える。

 国有企業を中心とした「過剰」問題のもう1つ奥には「技術革新や生産性向上などを起こすイノベーション力の不足がある」(柯・富士通総研主席研究員)。新興国が、安い人件費や投資コストの低さなどを生かしてある程度の経済発展をした後にぶつかる壁、いわゆる「中所得国のワナ」にさしかかったのかもしれない。

 2008年秋のリーマンショック時のような外的要因や、循環的な景気後退とも異なる不安。市場は、それを中国に感じ始めている。

記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/012000149/?P=1
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(41)

2016-01-25 00:00:00 | Weblog

計画出産委員会による厳罰という名の蛮行

 この政策推進にあたっては計画出産委員会という組織が設立され、全国各地の農村単位までその支部が作られた。その政策の実行は極めて厳格で、一人目を出産したあと避妊手術を受けるなどして「一人っ子宣言」した夫婦に対しては奨励金や医療、教育費の一部免除、退職金の割り増しなど七つの優遇を受ける一方、この政策に違反した夫婦は厳しいペナルティを課せられた。その代表的なものが年収の6倍から10数倍に上るという罰金であり、また二子目の妊娠が発覚したときの強制堕胎措置、また賃金カットや昇進の停止といったものだった。

 一部の農村の計画出産委員会の役人たちの罰金の取り立てや強制堕胎のむごさは、21世紀に入ってからも大きな人権問題として批判の的になった。

 盲目の人権活動家で2012年に自宅軟禁状態から脱出し米国大使館に亡命した陳光誠は、山東省臨沂市当局の一人っ子政策を理由にした強制堕胎や罰金徴取の違法性を訴えたことが、当局の恨みを買ったために不当逮捕、軟禁、虐待の憂き目にあった。払う罰金がない場合は、暴力的な家探しをして家財道具のすべてを奪ったり、嫌がらせに家屋を破壊したり、泣きながら抵抗する女性に強制堕胎手術を行ったりする計画出産委員会の蛮行が、しばしば告発されていた。役人が超生(政策違反で生まれた子供)を無理やり奪って、養子縁組組織(人身売買組織)に転売する事件もあった。妊娠七カ月を過ぎた段階で見せしめ的に強制堕胎した例も報告されている。

 農村では男尊女卑の価値観が根強く、一子目、二子目が女児の場合、違反を知りながら男児が生まれるまで出産を続けることも多かった。最初に生まれた女児たちは間引かれたり、戸籍を与えられなかったり、売り飛ばされたりして存在しないことになった。結果的に、男児が増え女児が減少する出生性別比の不均衡が現れ、農村では女児100人に対して男児が120人前後という極端な女児不足が続いた。2020年までに結婚相手に不自由する結婚適齢期男性が3000万人前後にのぼるという推計も出された。

政策転換を阻んだ年200億元の利権

 私が北京に赴任した2002年ごろから人口学の専門家は一人っ子政策の転換を訴えていたが、中国政府は農村部ではまだ人口が多すぎる、という理由でその主張を無視し続けていた。当時、農村の労働力は4億~5億人と推計され、うち1.5億~2億人が余剰労働力だと言われてきた。この余剰労働力が都市に流入すれば都市資源があっと言う間に食いつぶされてしまうおそれがあり、一人っ子政策転換は戸籍制度改革問題とセットで政権がなかなか手を付けられない鬼門の政策であった。一方で、一人っ子政策が時代遅れになってきたという認識も芽生えており、農村部では各地の条例により一子目が女児や障害児であった場合、インターバルをあけて二子目を産んでよいとする政策の緩和も始まった。

 2011年ごろから余剰労働力がほぼゼロになり、いわゆるルイスの転換点を迎えたと言われるようになった。だが、50万人以上の職員を抱える計画出産委員会という巨大な役所が得る、年間200億元超えの「超生の罰金」はすでに大きな利権構造をもち、官僚たちは依然、この政策転換に抵抗していた。

 だが、いよいよ一人っ子政策を維持する公式の理由がなくなり、本格的緩和が模索される。夫婦がともに一人っ子の場合、二子目出産を認める双独二胎政策が導入され、続いて2013年暮れ、片親が一人っ子の場合は二子目出産を認める単独二胎政策に切り替わる。1100万夫婦が二子目を生む対象であったが、1年たち、二子目出産を申請したのはわずか70万組と政府の期待に大きく反した。こうして今年夏ごろから一人っ子政策を全面的に二人っ子政策に切り替える方針が固まっていた。ただ既得権益グループの抵抗も強く、実施は来年に持ち越されるのではないかと言う観測もあった。

 こうしてついに、一人っ子政策の歴史が終わったわけだが、国内外の反応は意外に芳しくない。まず、政策転換の理由は、一人っ子政策の非人道性を反省したのではなく、純粋に経済対策として行ったと言うことに対し、一人っ子政策反対派の人権活動家は比較的冷ややかだ。陳光誠はAFPのインタビューにこうコメントしていた。「きょう一人っ子政策をやめても、少子高齢化問題の解決にはあと50年かかる」「彼らはただ制限を少し緩和しただけで、やはり本来個人に属する出産の権利厳格にコントロールし続ける」。

 実際五中全会コミュニケでも、「計画出産政策は国家の基本政策として堅持する」としており、出産が女性の権利として自由になるというわけではなく、また計画出産委員会が解体されるわけでもない。むごい方法で堕胎させられたり罰金を徴収される悲劇が無くなるのは朗報だとしても、「そのうち二人目出産が義務化される」「二人目を出産しないと罰金が科されるんじゃないか」と揶揄する声もネット上には散見された。

労働力不足が招いた外国人違法就労問題

 肝心の労働力不足、少子高齢化問題の緩和も、この政策自体に即効性があるわけではない

 来年生まれた子供が一人前の労働力に成長するのは少なくとも18年後だ。中国は将来10年の間に18歳から22歳の人口が4000万人減り、20歳から40歳の働き盛りの人口は1億~3億人減るという推計がある。この中国の労働人口1億人分を補うために、中国はどうすればいいのか。

 労働力不足に関していえば、この数年、広東省などでは「洋黒工」と呼ばれる外国人の違法就労者急増が社会問題としてメディアでも論じられはじめている。アフリカ諸国やミャンマー、パキスタン、ベトナムなど東南アジアからの不法移民の中国の工場での不法就労が急増していて、それが治安悪化などを引き起こしている。一人っ子世代の若者の工場労働に対する賃金や労働環境の要求が高く、安価な労働力を武器にしていた中国の製造現場に一人っ子世代労働者が寄り付かなくなった。その穴を、工場側は、より低賃金、悪条件で働くアフリカ人や東南アジア人の違法就労で補おうとしているのだ。

 移民は、中国にとっても極めてリスクが大きい。最大の懸念が治安の悪化。さらにイスラム教徒やキリスト教徒ら、中国にとってコントロールしにくい思想、信条を持つ人が多く、各地で地元中国人との間で文化的衝突を起こすほか、国内の少数民族の過激派と結びつくのではないかという不安もあり、彼らが定住化すれば新たな民族問題に揺れる可能性もある。世界で四番目の移民輸出国の中国が、実は国内の不法移民問題で悩んでいたわけだ。

 労働者不足に続いて大きな懸念は、少子高齢化問題だ。高齢者の社会福祉システムの整備が完成していない中国では子供が老親の暮らしを支える。60歳以上の人口2010年11月の段階で総人口の13.3%だが、2042年には総人口の30%を超えると推計されている。労働人口と扶養される高齢者の人口比は2020年で1:3。健康な老人であれば、現行の55歳定年、60歳定年を延長し、高齢者労働力を活用して労働力不足を補うという方法もあるのだが、中国の場合、60歳を過ぎて労働意欲のある高齢者は日本よりずっと少ないように思われる。

 一つの大きな懸念は、政策が変わったことで、むしろマイナスの影響が起きるかもしれない、ということである。子供の教育費が日本などよりもよっぽど割高な中国で、都市民や豊かな農民があえて二人目を生む選択をするかという問題もあるが、たとえば昔の男児重視、男尊女卑的伝統にとらわれたままの貧困農民層・労働者層ほど、子供を多く生み、現役労働力世代が、高齢者の扶養と増えた子供の養育の板挟みになってますます貧困化し、貧富の格差がより激しくなるかもしれない。

計画出産も計画経済も、もう限界

 結局、一人っ子政策の転換は中国の目下直面する経済成長急減速の特効薬ではないのだ。経済成長のための具体的政策があり、給与が順調に増えていくという期待があり、生まれてくる子供に未来のある社会を用意できるのだと思うからこそ、若い夫婦が子供をもう一人産もうと考える。それが正しい順番だろう。

 経済のために、国家のために、子供を何人産めという政策自体が実は極めていびつで、党と政府が出産という家族のプライベートに介入することは、企業の人事や株の売買に行政指導が入ることと同様、国家の成長の伸びしろをたわめることになると私は思っている。

 改革開放以来最大の経済減速期を迎える中国が、次の発展段階の軌道に乗るためには本当ならば「一人っ子政策廃止」ではなくてこう言わなくてならないだろう。

 計画出産も計画経済も廃止する、と。

新刊! 画期的中国人論
『本当は日本が大好きな中国人』

反日デモ、抗日ドラマ……。連日のメディアの情報は「中国人はみんな反日だ」というイメージを私たちに植えつける。
しかし実際は、今や東京の町中は中国人の観光客だらけ。なぜ彼らはいがみ合う日本に夢中になるのか。
そこには共産党政権を背景とした複雑な歴史、文化、社会状況が大きく関係していた。両国の知られざる関係を浮き彫りにした画期的文化論。
朝日新書/2015年5月13日発売。

中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス

 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。

 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。

 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/110200020/?P=1


都市化一つ取ってみても、このように様々な問題が存在している。しかも一党独裁国家中国では、市場の力により水が低きに流れるようにうまく解決策が見つかる気配はない。何事もいびつだ。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(40)

2016-01-22 00:00:00 | Weblog

このいびつな政策とそれによる人口構成のいびつさは、人手不足を招きだした。賃金の上昇とそれによる企業の撤退。次の一文はそこらへんの内容を簡潔にまとめている。


いびつな人口、成長の足かせ 中国が一人っ子政策廃止
2015/10/30 0:15
ニュースソース  日本経済新聞 電子版

 【北京=山田周平】中国共産党は29日、全ての夫婦が2人目の子供を持つことを認める方針を決めた。1979年に導入した「一人っ子政策」のため、近年は高齢化が想定以上に進行していた。いびつな人口構成が労働力不足社会保障費の増加を招き、中長期の成長の足かせになりかねないと判断した。

 共産党は中央委員会第5回全体会議(5中全会)が同日採択した次期5カ年計画の草案に「一組の夫婦が2人の子供を産むことができる政策を全面的に実施し、高齢化に積極的に対応する」と盛り込んだ。実施の時期は明らかにしていない。

 中国では70年代にかけ、人口の多さを国力ととらえた当時の最高指導者、毛沢東氏が多産を奨励し、全土で食糧危機が広がった。毛氏の死後にその反省から、産児制限という世界でもまれな政策を導入していた。

 多産で増えた内陸農村部の割安な労働力が90年代には沿岸部の工場に流入し、輸出産業の繁栄を支えた。しかし、2010年ごろからは人手不足から賃金上昇が続き、12年には就業年齢人口(15~59歳)が初めて減少するなど、人口構成のマイナス面が目立ち始めていた。

 当局は出生数が少ない地方から一人っ子政策を段階的に緩和していたが、13年11月には夫婦のどちらか一方が一人っ子なら第2子まで出産を認めることを決定。当時は年間200万人の出産増につながるとの予測が出ていた。

 しかし国家統計局によると、14年の全国の出生数は1687万人と13年比で47万人増えるにとどまった。このため、当局は次期5カ年計画の策定に合わせ、一人っ子政策を完全に廃止することを決めた。

 中国メディアは今回の措置で「出生数は年間300万~800万人増える」と報じている。ただ、中国も都市部の人口が全体の5割を超え、教育費の高騰などに悩む夫婦も多く、今回も予想に達しない恐れがある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H88_Z21C15A0FF1000/



ただしこの「一人っ子政策」の撤廃は、夫婦が自由に子供を生むことが出来る、と言うものではない。「一人っ子」が「二人っ子」に変わっただけで、出産を国家が管理していることには変わりはない。なんとまあ、むさくるしい国であることよ。

当然ここにも既得権益からの抵抗も激しかったようだ。
一人が二人に代わっただけで、計画出産には変わりはない。そのため罰金を取り立てる「計画出産委員会」と言う既得権益組織は存続している。状況には変わりはないのである。中国には自由はないのである。だから、「そのうち二人目出産が義務化される」「二人目を出産しないと罰金が科されるんじゃないか」と揶揄する声がネット上には散見されるようなことになる。




中国「二人っ子政策」、それは“朗報”ではない「国家管理出産」では経済減速を乗り越えられない
2015年11月4日(水)福島 香織

 中国でおよそ35年間続いていた"一人っ子政策"が廃止された。これからはどんな夫婦も二人まで出産してもいい"二人っ子政策"になるという。これは目下、目立った成果が報じられていない五中全会(18期中央委員会第五回全体会議)で決定されたほぼ唯一の"朗報"であり、とりあえず歓迎の声で迎えられている。

 早速、"ご近所で子づくりに励む声が聞こえる"、"二人目解禁になってから、夜の微博の書き込みが減った"といったつぶやきがネットの上で散見され、東京株式市場でも紙おむつや粉ミルクなど新生児関連の株価が上昇した。来年は中国でベビーラッシュが起きるであろうと言われている。なので、ポジティブなニュースとしてとらえられるべきなのだが、ここであえて懸念もあることをまとめておきたい

五中全会「唯一の朗報」が抱える懸念

 五中全会は25日から29日まで開かれ、最終日にコミュニケが採択された。蛇足ながら中央委員会全体会議は中国において毎年秋に開かれ、翌年以降の重要政策および人事を決める党中央の最重要会議である。毎年春に行われる国会もどきの全人代(全国人民代表大会)には実は政策も法案も決める実質的権限はなく、中央委員会全会の決定をなぞるだけである。五中全会の最大の注目点は第13次五か年計画の内容と政治局人事であったが、人事も経済成長目標も打ち出されなかった。おそらくは人事と経済数値については議論が紛糾したまま、まとまらなかったのだろう

 だが、その代わり、「人口バランスの発展を促進し、計画出産育成の堅持を基本国策とした上で、人口発展戦略を完璧なものとするために、一組の夫婦に二人の子供を出産育成する政策を全面的に実施し、人口老齢化に積極的に対応していく」という一文がトップニュースになった。

 これを受けて、国内外メディアは一胎化政策(一人っ子政策)廃止と大きく報じた。

 一人っ子政策問題は1970年代末に段階的に導入され、80年9月25日の「人口増加抑制に関する問題で全共産党員・共青団員に対する公開書簡」の発表をもって正式に全国での導入が推進された。

 中華民国時代4億人であった人口が1980年にはおよそ10億人に急増し、60年代からすでに人口急増は中国政府の課題であった。この人口の急増が食糧不足を引き起こし、社会の現代化を大幅に遅らせるという問題提起が70年代からさかんになり、文革終了とともに試験的に導入が始まっていた。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(38)

2016-01-20 00:33:15 | Weblog

もう一つ2014年の記事ですが、やはりこの内容は本当のようですね。


中国、人口減少のスパイラルに直面、子育て世代女性が減少に転じ「日本と同じ窮地」に―米メディア
2014年5月20日 08:10 (Record China)

13日、米誌フォーブス(電子版)は、中国の子育て世代女性(22〜29歳)人口が来年から減少に転じるとした上で、「中国が人口問題で日本同様の窮地に陥ることは避けられない」と指摘した。資料写真。 (Record China)     

2014年5月13日米誌フォーブス(電子版)は、中国の子育て世代女性(22〜29歳)人口が来年から減少に転じるとした上で、「中国が人口問題で日本同様の窮地に陥ることは避けられない。中国政府もこの勢いを止める対策をなんら講じていない」と懸念を示した。17日付で参考消息網が伝えた。
記事では、「結婚年齢と第1子出産年齢が高齢化しているのは世界的な傾向だ」「先進国になるほど、女性の教育水準が高くなる」とした上で、「仮に中国人女性の子育て期間を30歳以降に遅らせたとしても、30〜34歳の女性人口は2020年から急速に減少する」と指摘。

その上で、「中国は人口減少のスパイラルに陥っている。現在の中国に投資価値はあるが、10年後にはそのアドバンテージを失っているだろう」と指摘した。(翻訳・編集/NY)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=88303&type=



中国はこの人口減少問題を解決しないと、都市化などによる経済成長は進まないのである。

遅ればせながら中国は、「一人っ子政策」の撤廃に踏み切ることになる。



中国、一人っ子政策撤廃 成長下支え狙い方針転換
2015/10/30 0:08
情報元 日本経済新聞 電子版

 【北京=大越匡洋】中国共産党の中央委員会第5回全体会議は29日、4日間の日程を終え、2016~20年の「第13次5カ年計画」草案を固めた。成長力の低下につながる働き手の減少を食い止めるため「一人っ子政策を撤廃し、すべての夫婦に第2子の出産を認める方針を示した。成長の緩やかな鈍化を容認する一方、経済の安定を最優先課題に据え、年6%台後半から7%程度の「中高速成長を保つ」と明記した


 中国は5カ年計画で中期的な経済運営の方針を定めている。次期計画は習近平指導部が初めて立案する計画だ。国営新華社が29日公表したコミュニケでは具体的な数値は示していない。来年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で詳細な計画を採択する。
    
 次期計画でまず掲げるのは「経済の中高速成長の維持」だ。今年までの現行計画は年7%の成長を前提としていたが、前年同期比の国内総生産(GDP)成長率は今年7~9月に6年半ぶりに7%を下回った。「中高速」という表現で年10%前後の成長が続く「高速成長」が終わったとの認識を明確にしつつ、安定成長を保つことを最重要の課題と位置づけた。

 計画の最終年となる20年に、10年比でGDPと所得水準を倍増する目標も改めて示した。目標実現のため向こう5年で必要となる年平均6.5%を上回る成長率が「中高速成長」の最低ラインとなる公算だ。景気が失速して失業増などの社会不安が広がれば、党の支配体制が揺らぐとの危機感がある。


中国は「一人っ子政策」を撤廃する=ロイター

 人口抑制のため30年余り続けてきた一人っ子政策」を撤廃するのも、成長を持続させるためだ。少子高齢化で働き手の人口が減り、それが潜在成長率を押し下げている。すでに14年からどちらか一方が一人っ子の夫婦に第2子の出産を認めているが、すべての夫婦に2人まで子どもを持つことを認める緩和策を「全面実施するとした。

 経済の質や効率の向上をめざし、産業の高度化や技術革新、対外開放を重視する。所得格差を縮小するため、都市化や社会福祉の充実を通じ、中国の基準で7000万人いる貧困層の「貧困からの脱却」をめざす。生活水準の向上に注力することで「経済成長に対する消費の貢献を目に見える形で高める」とした。

 経済や社会の安定を図るうえで環境対策にも重点を置く。深刻な環境汚染は国民の不満を招き、持続可能な経済成長を阻む原因でもある。「『美しい中国』の建設」と名付けた環境関連投資で景気を支える狙いもあり、党関係者は「企業の排煙対策、水や土壌の改良などで、5年間の投資は10兆元(約190兆円)規模を見込む」という。

 持続可能な成長の実現には国有企業などの改革が欠かせない。痛みを伴う改革を確実に実行できるかどうかが問われる。

▼5中全会 「中国共産党中央委員会第5回全体会議」の略称。中国共産党は5年に1度開く最高決定機関「党大会」で中央委員を選ぶ。中央委員はふつう年に1回のペースで全体会議を開き、党大会の職権を代行するかたちで重要政策や党・軍の幹部人事を決める。第5回会議は経済政策の大きな方向性を定める5カ年計画の草案を話し合うのが通例で、今回は2016~20年の計画が議題となった。

 中央委員会の全体会議は約200人の中央委員と百数十人の中央候補委員で構成する。習近平指導部が進める「反腐敗運動」で失脚した中央委員の処分は全体会議で正式な手続きを取り、中央候補委員の中から得票順に補充する人事も決める。今回は胡錦濤・前国家主席の側近だった令計画・元全国政治協商会議副主席や、河北省トップだった周本順・河北省党委員会書記の党籍剥奪などが追認された。

 前回の2010年の5中全会では当時、国家副主席だった習氏を中央軍事委員会の副主席に充てる人事を決め、次の国家主席に就くことが事実上固まった。決定事項は政策や人事だけではなく、過去には文化大革命で迫害された劉少奇・元国家主席の名誉回復を決めたこともある。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H7G_Z21C15A0MM8000/



ならず者国家・中国、アレコレ!(39)
'16.1.21


しかし、事はそんなに簡単な事ではなさそうだ。中央と地方の政府での「一人っ子政策」に対する考え方が、一致していないようだ。そのため「一人っ子政策」を撤廃しても、それがすぐには効果に結びついていかないと言われる。中国政府は一人っ子政策の抜け道を沢山設けているが、出生率は想定以上には上がっていないのが、実情のようである。

だから、致命的な労働力不足と言う状況に突入してしまっている現在、一人っ子政策を撤廃してもすぐには出生率が上がると言うものでもないようだし、ましてや出生率がたとえ上がったにしても労働力の解消には20年はかかるものと覚悟する必要がある。

だからこの中国の景気後退は長引くものと小生には感じられるが、先ずは次のFINANCIAL TIMESの論考を見るとよい。



[FT]遅すぎた中国の一人っ子政策廃止
2015/10/30 14:00
ニュースソース   日本経済新聞 電子版


 中国が「一人っ子政策」の廃止を決定した。同政策は数十年の間、海外から批判され国内でも反感を買った近代史の中で最も過酷な社会実験だ。
 中国が国の大半で子どもを1人までしか認めない政策を導入してから30年余りたった29日、国営新華社はすべての夫婦に第2子の出産を認めるという1行の短信を流した。

(削除)
北京市街で子どもにミルクを与える父親。中国は「一人っ子政策」を撤廃し、すべての夫婦に第2子の出産を認める方針を示した=ロイター


 期間やその他の詳細についての言及はなかったが、4日間の日程を終えた中国共産党の中央委員会全体会議を受けての発表だと記されていた。

 同政策によって中国では高齢化が進み、同国経済が減速する中で労働者不足につながっているため、国内では廃止への圧力が高まっていた。

 だが、人口動態の専門家はこの廃止によって人口への大きな影響は出ないだろうと警告した。出生率向上を目的として最近導入した政策もベビーブームにはつながらなかったためだ。

 一人っ子政策はおそらく中国共産党が本土の市民生活に対して数十年行った最もあか
らさまな日常生活への侵害だろう。就労や居住の場所、その他の事柄について制限を解くという方法で他の私生活への締め付けが緩められているこのときに、一人っ子政策は引き続き厳格に、時に残酷に実施された。

 同政策の廃止の決断は重要かつ象徴的な譲歩であり、中国の多くの一般市民がその決断を歓迎するだろう。それでもはやり、人口の半数以上が人口過多の大都市に住む中国では子どもの養育費が主な理由で、市民の大半が第2子を持たないという選択をするかもしれない。

■最近では例外だらけ

 物議を醸した一人っ子政策は、中国共産党が人口が増加の一途をたどるのを恐れて1979年に導入した。だが、この政策も最近では例外だらけになっており、人口統計学者はもはや一人っ子政策という呼び名自体が誤りだと考えている。

 2年前、中国政府は夫婦のどちらか一方が一人っ子なら第2子まで出産を認める緩和政策を導入した。それ以前は両親がいずれも一人っ子の場合に2人目が認められていた。また、ほとんどの農村地帯では、もし女児や障害児が生まれた場合には男児か健常児を持つために2人目までの出産を認めていた。

 少数民族も多くの子どもを持つことが認められている。

 中国政府は2013年の政策緩和で約100万人の出生を見積もっていたが、最近の統計はその半数足らずしか生まれていないことを示している。

 一人っ子政策が及ぼす影響について研究する人口動態の専門家、ワン・フェン氏は同政策は不要だったと言う。というのも、実のところ、経済的余裕がでてきたこと、結婚前出産の最低年齢制限、出産間隔の制限などを背景に、中国の出生率が最も低下した時期は一人っ子政策導入前の10年間だったからだ。1970年に5.8人だった出生率は79年には2.8人と、半分以下に低下していた。

 ワン氏は「今回の発表は人類史上最も長く実施され、最も代償の大きかった産児制限政策を正式に終わらせるものだ。しかしながら、遅すぎた」とした。その上で、「中国社会全体がこの先数十年間この政策の代償を払い続けることになる」と述べた。

■夫婦、申請する義務は残る

 中国人夫婦は依然として子どもを産む前には申請する義務があるため、今後も国による生殖に関する権利への制限は続く。

 現在まで同政策が廃止されなかった主な背景には、政策を実施していた中央と地方の巨大な官僚制度がある。出生計画の担当役人は罰則に関して幅広い裁量が認められていることが多く、住居を破壊したり、違反した夫婦の子どもをとりあげたりすることもできたのだ。

 近年でも多くの農村地帯での一人っ子政策の実施状況はひどいままだ。多くの女性が妊娠検査を義務付けられたり、中絶手術や妊娠後の避妊手術を強要されたりしている。子どもを産みすぎた場合の罰金は世帯年収の3~10倍になることもあり、地域によって大きく異なる。

 今月「フィナンシャル・タイムズ」が訪れた2つの省の村人たちは、国家レベルの緩和政策が発表されても、家族計画に対する規制は厳しくなったと話した。

 2012年には、出生計画を担当する役人がある中国の郡で妊娠7カ月の女性を強制的に中絶させた。生々しい胎児の画像が中国のネット上に広まり、激しい怒りを引き起こした。

By Patti Waldmeir

(2015年10月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO93439720Q5A031C1000000/


(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(37)

2016-01-19 00:00:00 | Weblog

さて次の「100年目標2049年のことであるが、その内容は「中国がアメリカを凌駕する」と言うことである。そしてそうなって初めて中国が世界に覇を唱えることになるのである。当然アメリカの力は地に落ち、日本を初め他の諸国も、中国の属国となってしまっている事になる、と中国は考えている。これが「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」なのである。

こんな事になったら、それこそ日本をはじめ世界はひどい目に遭う事になってしまう。

我々日本人は2016年の年頭に際して、しっかりとこの「中国の夢」の実態を感じ取らなければならないのである。そして安全保障関連法制に反対だとか、何の押さえもなく戦争のない世の中にしたい、などと能天気なことを言うのではなく、この冷酷な世界政治情勢をしっかりと身に沁みて感じ取り、自分の国は自分で守る算段を考えてゆかなければならないのである。


しかし「中国の夢・中華民族の偉大な復興」は実現するであろうか、当然疑問も多々ある。


ここに一冊の本がある。津上俊哉氏の「中国台頭の終焉」(日経プレミアシリーズ)である。その本の帯封には「中国が米国を追い抜く日は来ない。」と書かれている。

そこでは中国の経済成長に対する楽観論には、相当の?が付く、と述べている。

まず中国の成長要因として述べられている、「都市化による投資」「内陸部への産業移転」「政府主導の自主創新(イノベーション)」「7%成長の維持」等には、相当の疑問がある、と述べている。

それらを掻い摘んで紹介しよう。

(1)都市化投資による成長

都市化投資とは、都市に人が集まることによって、道路・鉄道、学校・病院・水道などへの投資が起こることをであり、このインフラ整備による投資は当然経済を活性化させる。

更には、人が集まることによって経済活動も活発となり、自ずと産業が勃興しそして経済が集積されていく。いわゆるサプライチェーンが構築されてゆき、その結果企業が集まり、ますます経済が活性化されてゆく。外部経済効果が発揮され、産業の集積が進んでゆくと言うことである。そうすれば外資も呼べる事になり、膨大な人口を抱えている中国では巨大な消費が期待でき、日本からもそれに釣られて多くの企業が中国に投資している。

これには交通渋滞、大気汚染・公害、土地価格の高騰などの外部不経済効果も伴うことになる。

しかし津上俊哉氏は、この中国の都市化には解決されなくてはならない問題が四つあると言っている。

一つは、不動産コストの上昇だ。都市部では、今では採算が取れない程に不動産コストは上昇しているので、採算を取るのが難しいのではないか、と言っている。

二つめは、農村用地と都市用地の二元性が、都市化や人口流入を制約したり、または農村の都市への変容を阻害することになる。

三つ目は、余剰労働力の枯渇である。既に農村では若者は居なくなり高齢化が進んでいると言う。65歳以上の高齢者の割合で高齢化率を定義しているが、高齢化率7%高齢化社会14%高齢社会と言うが、重慶市では僅か10年余で高齢化社会へ移行している。日本の場合は国全体で24年もかかっているのに、中国の「倍加年数」(7%→14%の年数)は恐ろしく早いのだ。これは中国の経済成長への厳しいネックとなる筈だ。

四つ目は、国進民退の結果民間企業が疲弊していることだ。津上氏は民営企業と言っているが、この民営企業こそがイノベーションの担い手なのである。その民営企業が疲弊していれば、イノベーションや資本の蓄積は起こりようがない。

この余剰労働力の枯渇は深刻な問題である。2013年には既にアメリカでは、中国の人口減少が経済成長の足を引っ張ると予測している。




中国が世界一位の大国になるのは不可能?=深刻な高齢化、男女比のアンバランスがネックに―米メディア
配信日時:2013年9月22日(日) 8時0分

2013年9月18日米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語版は、「中国が世界一の大国になることは難しい」と題した記事を掲載、人口問題が今後経済成長の足を引っ張ることになると分析した。

【そのほかの写真】

中国はここ30年の急速な経済成長によって、世界第二位の経済大国となった。中国が世界一の経済大国となることは、もはや既定路線であるかのような分析があるが、このような見方に意義を呈するのは、香港での勤務、居住歴が30年を超えるティモシー・バードソン氏だ。彼は最も早く中国市場の投資銀行に進出した人物だ。

彼は近頃著した『よちよち歩きの巨人:中国が今後直面する脅威』という書籍で、中国が向き合うことになる一連の難問を記述している。彼によると、今後中国が直面するのは人口構造の問題であり、それは以下の4つに現れるという。

1つ目は、労働力の減少が始まり、賃金の上昇によって競争力が失われること。2つ目は高齢化。3つ目は男女比の著しいアンバランス。4つ目は総人口の減少だ。

国連の最も控えめな見積もりによると、今世紀末頃には中国の人口が現在の3分の2にまで減少するという。3分の1の5億人にまで減少するという予測もあり、米国の人口と同等になるという。バードソン氏は、「人口の深刻な減少の中で経済成長を持続できた国は存在しない。2030年代には、中国の経済成長が2%を保っていられれば御の字(おんのじ)だろう」と述べた。

バードソン氏は、中国当局は経済成長のあるうちにこの難問を解決しておくべきだと指摘し、「できるだけ抜本的な改革をしなければならない。2000年以降中国は眠った状態にあり、何らの改革も行われていないからだ」と語った。(翻訳・編集/岡本悠馬)
http://www.recordchina.co.jp/a76993.html
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(36)

2016-01-18 00:00:00 | Weblog

ここに挙げた三つの手法は、どちらかと言うと研究組織やそれに関連する人材を(外から)育成・支援してゆくようなものに小生には感じられるのだが、肝心要なことは、才能ある人材が全く制限なく自由に発想して共産党政府に気兼ねなく物事を進めることのできる雰囲気と言うか風土の醸成が必要なのではないか、と思っている。それをどのようにこの仕組みの中に育て上げるか、と言うことが一番大事ではなかろうか、とも小生には感じられるのだが、どうであろうか。

勿論これだけではないが、政治・経済・社会あらゆる面でこのような取り組みをしながら、2020年までにまずまずゆとりのある社会・「小康社会」を築くことが当面の大目標だと、この論考の前半で言っている。これが「二つの100年目標」のその一であるが、それは先ずは、貧困層をなくすことが取り合えず最小限の目標と定めている。

しかし中国は更に大きな目標を持っている。それは米国に替わって世界に覇を唱えることである。これを中国共産党は、「二つの100年目標」のその二として定めている。

このことは、小生のブログ「日清戦争開始120年に考える」のNO.14(2014.8.26)で少し言及しているので、ご承知のことと思われるが、それを次の掲げる。



習近平の狙いの第一は、習近平自身の政治的権威を確定させるためである。習近平は、既得利益を潰し、腐敗摘発を促進して自分に権力を集中させなければ、「二つの百年目標」などの達成は出来ないとして、自身の政治的権威を高めさせる必要があった。

そのために大物権力者の周永康の処罰を急いだものと思われる。政治局常務委員であった周永康を、25年間の不文律を破ってでも立件した理由がここにあるのである。


本気で言っているのかどうかは判らないが、「二つの百年目標」とは次のものである。

(1)1921年共産党創立から100年2021年には、「小康社会の全面達成」(GDPを2010年から20年までに2倍に)を実現させる。そうすれば少しはマシな生活がおくれる事になろう。少しマシな生活でよければ、中国共産党が軍事費に回している金を幾ばくかでも人民の為に回せば、すぐにでも「小康社会」なんぞは実現できると思うのだが、当分は人民が共産党の犠牲にならざるを得ないようだね、中国では。

(2)1949年中国建国から100年2049年には、「新中国100年には、わが国を富強、民主、文明、調和の取れた社会主義の現代化国家に」すると言うもので、これは2013.10.24~25の「周辺外交工作座談会」で、中国の部長級以上の幹部を前にして、習近平が打った大演説である。

まあ言ってみれば、これが「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」の一側面であろう。一側面であると言ったのは、中国の真の夢は「世界征服」(アメリカを凌駕する)にあるからである。

(この解説は、以下の論考を参考にしている。
http://yuukouhachikara.dondon.cc/images/04%20koenkai%20kodera%20bun.pdf
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/china_research_conference/2013/chu25_11.pdf)



第一の100年目標」の2021年と言えば東京オリンピックの次の年であり、五年後のことである。中国はその間GDPを2倍にさせると言う目標を掲げている。2010年から2020年の10年間で、GDPの倍増だ。高度成長期の日本も所得倍増計画なるものがあり、所得を倍増させた経験があるが、果たして中国のこの倍増計画は実現可能なものなのか。日本の経験からすれば、倍増もあながち実現不可能なものではないと思われる。

世界経済のネタ帳」の「中国のGDPの推移」(http://ecodb.net/country/CN/imf_gdp.html)によれば、2010年から2015年までのGDPの推移は次のようになる。


       2010年   2015年   '15/'10  '20/'10
名目GDP  40,890.30  69,238.05  1.693   2.87
実質GDP  13,722.24  19,981.46  1.465   2.12
(単位:10億人民元)


2010年から2015年までの倍率をそのまま2015年から2020年までのGDPに単純に掛け算してみれば、2020年のGDPは、名目でも実質でも倍増している。問題は同じ傾向でGDPが成長してゆくか、と言うことであるが、今まで見てきたように中国の成長は現在急速に低下してきているので、2020年のGDPは如何程になるかは微妙なところだ。仮に成長率を先に予測した年率5%としたら、2010年から2020年までのGDPは2倍(1.858倍程)にはなりそうもない。名目では2倍は達成しそうなので、中国政府はこれで倍増したと、ごまかすのではないのかな。

まあ、現状の経済活動の低下をどのように処理してゆくかにかかっているものと思われるが、小生の感で判断すれば、少しのところで倍増は出来ないのではないのか、と思われる。

年明けの上海の株式市場の状況などを見れば、今の不景気はかなり深刻な状態ではないのかなと、感じている。過剰設備や過剰債務・過剰雇用の状況下にして、今の低迷は相当長引くのではなのかな、と小生は感じているのである。

いわゆる「中進国の罠」からは容易に抜け出せないのではないのかな、と言うことである。抜け出すためには、ただ時間が過ぎれはよいと言う訳ではないがそれなりの時間か必要である、と考えるものである。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(35)

2016-01-15 00:00:00 | Weblog

AIIBは世銀より優れたルール作りを狙う

 注意していただきたいのは、新しいルール作りといっても既にあるルールを否定するものではないことです。例えばAIIBが融資するルールは世界銀行やアジア開発銀行が既に運用しているルールを踏まえて作ります。したがって、日本や米国が危惧しているような、既存のルールに劣るものにはなりません。むしろ、現行のルールが持つ非効率な部分を是正する、より優れたものを目指すでしょう。

 ここで、もう1つ大事なのは、中国は制度的な統合(一体化)だけでなく、物理的なインフラ整備(物理的のネットワーク、一体化)を重視していることです。中国は2002年にASEAN諸国とのFTA(自由貿易協定)に署名しました。しかし、思ったほどの経済効果は上がりませんでした。物品を運ぶ物理的なインフラが十分に整備されていなかったからです。せっかくおいしいバナナを輸入しても、輸送する途中で腐ってしまう。

 これが教訓になり、自由貿易ルール(制度的な統合)を拡大する時には物理インフラ(インフラの統合)も含めて整備する必要があるとの考えを持つようになりました。AIIBを設立し、一帯一路沿線・沿岸のインフラ整備を支援する取り組みは、ここにつながるものなのです。

 RCEPも新しいルール作りの1つに数えられるでしょう。

---中国はRCEPを、TPP(環太平洋経済連携協定)に対抗するものとして確立する意図があるとの見方があります。中国はTPPどう評価しているのでしょう。

金:経済政策としてよりも、中国を囲い込むための安全保障政策として懸念する向きがあります。

---中国が加盟を考えた時、国有企業に対する規定などはクリアーしづらいものでしょうか。

金:そんなことはありません。国有企業に関する規定は中国のWTO加盟議定書に書かれている規定と大差ありません。中国がその気になればクリアーできるものです。その他の規定(環境基準、労働基準)も同様です。なので、中国政府はTPP加盟するかどうかは別として、TPPのルールに合わせて水面下で準備を進めていると考えられます。

「ストックの改革」から「フローの改革」へ

---お話しを伺っていると、中国共産党が今回発表したコミュニケは、「イノベーション」だけでなく随所に「攻めの姿勢」を示していますね。その一方で、足りない部分はありませんか。

金:国有企業の改革についての記述があまり見当たりません。この点には不満を覚えます。共産党は「国有企業改革については既にガイドラインを発表している」と言うかもしれませんが。

 ただ、今回のコミュニケは「ストックの改革」から「フローの改革」へ--という傾向が見て取れます。

---ストックとフローですか。

金:中国の用語です。「ストックの改革」は国有企業改革など、既に明らかになっている問題点を改めること。「フローの改革」は、イノベーションの推進など、今ある力をより強めるための改革です。「ストックの改革」は既得権益を持つ勢力がおり、進めるのは困難を極めます。なので、進めるのが比較的容易な「フローの改革」に重心を移したのでしょう。

---中国が持つリアリズムが表われている気がします。小平がかつて先富論を唱えました。同氏は「黒猫でも白猫でも、ネズミを捕るのが良い猫だ」と言い、「富むことができる人から先に富め」と主張しました。習近平指導部も同様に、進められる改革からどんどん進めよ、ということでしょうか。

金:習近平指導部は、そういう政策決定をしたのだと思います。ただし、詳細は記されていませんが、第5の原則である「共亨」によって、発展の成果が国民一人ひとりに行き渡るようにする、すなわち「猫理論」を補正する政策も用意していくと考えられます。

 もう1つ不満なのは、イノベーションの推進やネット強国となることを掲げつつ、今のところ、その枠が小さいことです。例えば私が中国に行くと、日本でアクセスできるサイトの半分くらいはアクセスできなくなります。ネットの世界を中国国内に留めたままでは、大きなイノベーションを生み出すことはできません。

中国は「政経分離」にかじを切った

---最後に日中韓首脳会談についての評価を聞かせてください。11月1日に、日本の安倍晋三首相、中国の李克強首相、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が会談しました 。

金:私はポジティブに評価しています。日中韓3カ国によるFTAの交渉を加速化させる合意は朗報です。

 日中韓FTAは3カ国のいずれにもメリットがあります。中国は東アジアの各国とFTAを結んでおり、唯一残っているのが日本です。韓国にとっても同様です。日本にとっても,

拡大が続く中国市場の門戸が広がることは朗報でしょう。

 加えて、この取り組みは、日中関係が再び政経分離に戻るスイッチになる可能性があります。日中関係は元々、政経分離で進んできました。政治でもめることがあっても、経済関係は安定的に深めてきた。しかし、日本政府による尖閣諸島国有化を契機にこれが政経一体化に変化しました。この間に政経分離を実践したのが欧州諸国です。

---10月19~23日に習近平国家主席が英国を訪問 。その後、フランスのオランド大統領とドイツのメルケル首相が相次いで訪中しました。“中国祭り”さながらの様相を呈していました。
金:そうですね。欧州諸国はかつての日中両国が「政経分離」で大きな成果を収めたことをならって「政経分離」の政策を実践しているように思われます。欧州諸国と日本とでは置かれた事情が異なるでしょうが、日中関係が元々の政経分離の状態に戻るのは悪いことではないと思います。

 中国は、既にその方向にかじを切っているのではないでしょうか。国慶節に多くの国民が日本を訪れました。ちょっと前の中国だったら、日本への渡航を規制していてもおかしくありません。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/110400013/?P=1


イノベーションを推進するためには、ここでは、三つの組織で推進してゆくと言っている。

一つ、政府主導の研究機関、国有企業や公立の研究所等だ。
二つ、私営組織、民間企業などだ。ここではファーウェイやアリババなどを挙げている。
三つ、ベンチャー、大学・高校の学生や職人とベンチャー企業を挙げている。

そのため起業支援の政策を充実させるとも言っている。そして注目点としてはサイバー関係を重視することもうたっている。もともと中国は人民解放軍内にサイバー部隊を持っているので、アメリカを始め日本にも散々サイバー攻撃を掛けてきている。それを更に全人民(草の根)にまでネットに精通させようとしている。

今後中国からのサイバーアタックは、ますます増加する筈だ。日本もその防御を更にしっかり固めなければならないのだ。ハードでもソフトでも、日本の高度な技術・知的財産・文化などを掠め取ろうとしてくることであろう。

(続く)
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