世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

日清戦争開始120年に考える。(17)

2014-08-29 00:00:00 | Weblog
生き残った土皇帝や土覇王

 こうした人々は1949年中華人民共和国が成立した後の改革によって根絶やしにされたはずだった。しかしながら、新中国になっても“土皇帝”や“土覇王”は生き残り、今や堂々と復活を遂げ、“蒼蠅”は“老虎”に変身するご時世なのである。彼らは小役人の地位を活用して莫大な富を蓄積し、その富をばらまくことで上位の役人たちを籠絡し、あたかも独立王国のごとき様相を呈している者さえもある。そうした者たちの中で、習近平の重大演説を踏まえて脚光を浴びたのは、中国で最も悪質な“土皇帝”と称される“範士国”である。

 北京市に隣接する河北省廊坊市の管轄下にある三河市の“泃陽鎮”は三河市人民政府の所在地である。“泃陽鎮”の人口は2011年末で5.24万人、このうち都市部に居住するのは6570人で、都市化率は12.5%にすぎない純然たる農村地帯である。“泃陽鎮”には48の村落があるが、範士国はそのうちの“大閻各庄村”(人口3000人)の“村主任(村民委員会のトップ)”である。範士国は2000年に就任してから現在まで13年間にわたって村主任の地位にあり、その地位を利用して私腹を肥やし、絶大な権力を欲しいままにしている。このため人々は範士国を“土皇帝”、“地下市委書記(裏の市党委員会書記)”、あるいは“三河市老二(三河市党委員会書記に次ぐ2番手)”と呼んでいるのである。

 大閻各庄村の人々は長年にわたって範士国の専制的な振る舞いに我慢に我慢を重ねていたが、遂に忍耐の限度を超えたとして、2011年7月に6人の農民が立ち上がり、範士国を職権濫用による土地の転売や公金横領などで告発したのだった。その後も彼らはネットの掲示板に範士国に対する告発文を掲載すると同時に、ネットメディアを通じて告発の動画を流すなどの運動を展開しているが、告発を始めてから1年半が経過した現在も範士国は依然として安泰で、その“土皇帝”の身分には何の変化もない。だからこそ、人々は“老虎”と“蒼蠅”を一挙に打倒するという習近平の重要演説による変化に一縷の望みを託しているのである。

 彼らが範士国を“土皇帝”として告発した理由のうち代表的なものを挙げると以下の通りである。

【1】大閻各庄村には約3000畝(約2平方キロ)以上の“基本農田(食糧確保のために国家によって開発が厳しく制限されている耕作地)”があったが、範士国はそれを私物化し、1000畝を転売して数十億元(約400億~500億円)を懐にした。また、村有企業である耐火レンガ工場を私物化し、レンガ原料の粘土を採るために耕作地の土を地下数十メートルまで削り取り、1000畝もの基本農田を完全に破壊した。さらに1000畝の基本農田に塀を巡らせて私物化し、値上がりを待って転売しようとしている。これらすべては『基本農田保護条例』の重大な違反行為である。

【2】大閻各庄村の南にある50畝(約3.3万平方メートル)の基本農田を“風水宝地(風水が良い土地)”であるという理由で私物化して豪邸を建設した。豪邸の規模は驚くべきもので、食堂だけ見ても、その広さは縦70メートル以上、横30メートル以上で、一度に3000人が食事をすることができるほどである。

【3】その豪邸の北側にある30畝(約2万平方メートル)の基本農田には3棟が連結した豪華な別荘が建設された。これを地元の人間は“範氏皇宮(範氏の宮殿)”と呼ぶが、その建物は豪華絢爛で、内部の壁面は純金の箔で装飾されて光り輝き、床にはクリスタルガラスが敷かれている。宮殿に対する範士国の熱の入れようは相当なもので、家具の搬入時には汗かきな作業員には立ち入りを許さなかったほどであった。

【4】範士国は“悍馬(ハマー)”、“奔馳(ベンツ)”、“宝馬(BMW)”、“陸虎(ランドローバー)”といった高級車を数十台も所有しており、その総額は数千万元(約4億~5億円)にも上っている。

【5】2000年に河北省唐山市と通県を結ぶ国道上に駐車場、車輌検査場、貨物の積み下ろし場を設置し、国道を往来する貨物車輌から保護費を徴収している。保護費を支払わない車輌に対しては過積載などの名目で罰金を強制的に徴収しており、その収入は1日当たり20万元(約270万円)にも上っている。一方、保護費を支払った車輌が過積載などの理由で交通警察官によって運行が阻止されると、手下のならず者を差し向けて交通警察官を打ちのめすので、交通警察も範士国には手出しできなくなっている。

【6】範士国の娘が結婚した際には、結婚式の手伝いに出向いた人々に合計で数十万元(約400万~500万円)の心付けを配ったし、その後に息子が結婚した際には心付けの合計は百万元(約1400万円)にまで膨れ上がった。

鼻薬を効かせて有力者をコントロール

 上記のような範士国の無法がまかり通っている理由は、範士国から利益の分け前をもらう人々が範士国を擁護しているからである。三河市の交通局長や司法局副局長、さらには“三河市人民法院(裁判所)”の副院長などは範士国から土地の便宜を図ってもらい住宅を建設したし、三河市の“防暴大隊(機動大隊)”の大隊長は範士国に土地を融通してもらって自身が経営する運輸会社の建屋を建設した。

 そればかりではない。三河市を管轄する廊坊市政府の運輸関連部門の“処長(部長)が三河市の運輸行政を検査した際に、範士国が国道で徴収する保護費に問題を提起した。これに怒った範士国は暴力を振るって同処長の脚を骨折させたが、後に同処長に慰謝料を支払っただけで事件を収拾させた。三河市を管轄する廊坊市政府の処長と三河市に属する村落の村主任ではその地位は大きく異なるが、下位の範士国が上位の処長を負傷させたにも関わらず、何のお咎めもなく、慰謝料の支払いだけで幕引きとすることができた背景には、範士国が廊坊市の指導幹部にも鼻薬を効かせていることが容易に想像できる。

 範士国によって基本農田を失った村人たちは農業という生活手段を失い、出稼ぎにでるか小さな商売をすることで生計を維持するしかなくなっている。肥え太るのは範士国その分け前を受けている輩だけであり、村人たちはやせ細るのみ。こうした状況を打開するには範士国の無法ぶりを大閻各庄村が属する泃陽鎮政府およびその上部機関である三河市政府に訴えるしか方策はないと、鎮政府と市政府に問題を提起したが、門前払いで取り上げてもらえていない。そこで6人の村人が範士国を中国社会に告発する挙に出たのだが、現状のところは三河市を管轄する廊坊市政府からも何の反応もないのが現状である。

 中国メディアによれば、(2013)1月22日に習近平の重大演説が行われた後に、記者が三河市党委員会書記の“張金波”、泃陽鎮党委員会書記の“金景輝”および泃陽鎮紀律検査委員会書記の“劉士従”にそれぞれ電話を入れたが、彼らの携帯電話はつながらなかったという。

 1月22日に著名なブロガーの“胡顕達”が自身のブログ“論道書斎”に掲載した「習総書記 “老虎”と“蒼蠅”を一緒に打倒するにはどんな深い意味が隠されているのか」と題する記事によれば、中国の反腐敗闘争は従来の“老虎”退治から“蒼蠅”駆除にその焦点を移してゆくことになるだろうと述べている。庶民にとって最も疎ましいものは身近で起こり、自分たちが直接に影響を受ける“蒼蠅”による腐敗であって、“老虎による腐敗ではない。その“蒼蠅”たちが駆除される可能性が少ないことで増長し、庶民が損害を被(こうむ)る事件が頻発しているのが中国の現状であり、それが庶民の不満をますます増大させているのだという。

社会安定にとってハエ駆除が不可欠に

 ネット時代の到来により、庶民はネットを通じて不満を広く社会に訴えることが可能となり、問題を容易に告発できるようになった。そうした時代の変化に対応して庶民の不満の根源である“蒼蠅”を駆除することは社会の安定にとって不可欠なものとなったのである。

 昨年11月15日に総書記に選出された“習近平”は、(2012)11月17日に開催された18期中央政治局第1回集団学習会で演説を行い、深刻化する幹部の腐敗に触れて「物が腐れば、後に虫が湧く」と述べて、腐敗問題がより深刻化すれば「最終的には必ず党と国が滅ぶ」と危機感をあらわにした。

 習近平が1月22日の重大演説で提起した“老虎”退治と“蒼蠅”駆除の同時進行は、彼の反腐敗闘争に向けての決意表明と評価できる。ただし、問題はそれを実際に貫徹して、反腐敗闘争を勝利に導くことができるかであり、それができなければ自身が提起した「党と国家の存亡の危機」は現実のものとなりかねないのである。

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130129/242995/
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(16)

2014-08-28 00:00:00 | Weblog

狙いの第四は、四中総会で検討しようとする「法律に基づく治国」が関係している。腐敗摘発から腐敗を防止する制度構築に向かわなければ、何の意味もなさない。 いわゆる「根治」制度措置をまとめなければならない、と記述されているが、この「根治」制度根治の意味が判らないが、腐敗を直す(根治)とは、「腐敗」があったらそれを見つけてやめさせる事と小生は理解するが、するとそれはいわゆる腐敗摘発と言う事なのか。こう理解すると「措置」とは、腐敗を犯した者をどう罰するか、という事になる。

このように「根治」制度措置を理解すると、この「法律に基づく治国」の意味がおぼろげながら判ってくる。言ってみれば、これは現在中国にはびこっているいわゆる汚職、賄賂、不正などの腐敗などを見つけて罰するぞ、そのように法律を定めるぞ、と言うことを言っているように、小生には判断されるのである。

とするとそれはそれで結構な事であるが、見つからないように、または摘発されないように行えば儲け物と思われかねない、のであろう。これでは「再発防止」の徹底が出来ない。やるなら徹底的にやればよいのだが、それでは共産党がもたない。そう思っているのであろう。自由と法、報道の自由、民主主義と人権の尊重を是とする国家では、国民の審判が定期的に実施される。そこで不正・腐敗を行った候補者は二度と政治の世界に上がれない仕組みと、一応なっている。

中国は共産党の一党独裁の国家であり、国民国家ではない、共産党とその党に奉仕する人民がいる団体か集団なのである。だから国民による審判を行う選挙なる物は存在しないのだ。いわゆる馬賊・匪賊が核武装しているならず者国家なのである。

「法律に基く治国」とは、もぐら叩きのような「根治」制度と措置であれば、腐敗はなくならないのであろう。悪い奴ほど良く眠る、を地で行っているから。さしずめ温家宝などはすこぶるよく眠れている事であろう。

一年以上前のものであるが次の例を見れば、その事がよくわかる。



習近平のトラ退治とハエ駆除
「党と国家の存亡の危機」を回避するための反腐敗闘争
2013年2月1日(金)  北村 豊

 2013年1月22日、習近平総書記は中国共産党第18期中央紀律検査委員会第2回全体会議で“反腐敗(腐敗反対)”に関する重要演説を行った。習近平は中国共産党の党員に蔓延する腐敗の取り締まりに関して、「共産党を厳しく管理し、厳しく処罰し、決して手加減しないことを誓う」として次のように述べた。

 「“老虎(トラ)”と“蒼蠅(ハエ)”を同時に攻撃することを堅持し、指導幹部の紀律違反や違法行為を断固として調査し処罰せねばならない。また、一般大衆の身辺で発生する不正の風潮や腐敗問題を適切に解決しなければならない。党の紀律と国家の法律の前では例外はないという原則を堅持し、それが誰に関わるかにかかわらず、徹底して調査を行い、決して見逃すことがないようにしなければならない」

大きな腐敗も、小さな腐敗も

 この重要演説は中国メディアによって大きく報じられたが、中国のネットでは習近平が重要演説で言及した“老虎”と“蒼蠅”とは何を指すのかが議論の的となった。その正解は、“老虎”とは庶民の上に君臨して大きな腐敗を行う指導幹部を指し、“蒼蠅”とは庶民の周囲で小さな腐敗を行う官僚たちを意味するのだという。

 中国では“老虎”による大きな腐敗も“蒼蠅”による小さな腐敗も同時に多発しているため日常茶飯事化しており、庶民は腐敗に慣れて反応が鈍くなっている。その一方で、庶民には腐敗を問題として提起したくても提起する力がなく、共産党は腐敗を管理したくとも管理できないのが実態である。このため、反腐敗を唱えても腐敗は進む一方で、腐敗に反対すればするほど腐敗は増すばかりで減ることはない。だからこそ、こうした悪循環を断ち切り、 “老虎”と“蒼蠅”を同時に取り除くことによって、中国共産党員による腐敗を根絶しようというのが習近平演説の主旨である。

 中国における従来の反腐敗闘争は、“殺一儆百(一人を殺して大勢の見せしめとする)”とか“殺鶏給猴看, 以警后人(鶏を殺すのを猿に見せて、後に続く人を戒める)”という形で、適当な誰かを見せしめとして処罰することで腐敗を抑制してきた。その適当な誰かとは往々にして“高官大貪(大きな汚職を行った高官)”であり、“抓大放小(大物を捕まえて小物を放置する)”という方式が主流だった。

 しかし今では、“大貪大腐(大きな汚職や大きな腐敗)”を行うのが高官たちだけに許された特権ではなくなり、“村官郷官(村や郷の役人)”といった小役人までが“大貪大腐”を行うようになっている。そうなると従来のような“殺一儆百”といった見せしめ方式では多数の腐敗役人を野放しにすることになり、腐敗で捕まるのは運が悪いからという投機的な心理を増幅させることにつながっていく。腐敗をしても捕まらなければ儲けは大きいから、腐敗をしない方がおかしいことになり、本来は清廉な役人もいつの間にか朱に交わって腐敗役人と化す。これは世の常と言わざるを得ないが、その原因は腐敗を容易に生み出す環境をただ漫然と放置していることにある。

 さて、“村官郷官”といった小役人までが“大貪大腐”を行うようになったと述べたが、これは別に今に始まったことではない。中国が皇帝によって統治されていた王朝時代においても、各地に根を張る“土皇帝(地方のボス)” や“土覇王(地元の権力者)”は「“天高皇帝遠(中央の政策が及ばない辺境な地)”」であるということを理由に、官職は低いのに奢り高ぶり、皇帝は“大事(重要事項)”で忙しいから辺境な地の“小事”に関わっている暇はないとして、無法の限りを尽くし、自身の欲望の赴くままに、“魚肉郷民村人を食い物にする)”して懐を肥やした。
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(15)

2014-08-27 00:00:00 | Weblog

中国共産党中央紀律検査委員会周永康を規律違反で処罰すれば、周りの大物もひょっとしたら次は自分かもと、習近平には逆らえなくなる。

これが狙いの第二である。元政治局常務委員の周永康を逮捕・処罰することは、他の強烈な見せしめとなる。


さてここで中国共産党指導組織に触れてみたい。ご承知の通り、中国では自由と民主主義の国家圏での国民国家と言う概念はない。あるのは「共産党が国家を領導する」(中国憲法)と言う概念である。ここで言う国家とは「人民」の集団である。

その中国共産党最高指導機関は「全国代表大会」と言う党大会であり、通常5年に一度の開催である。共産党の組織形態を、2012.11.8に開催された第18回党大会をもとに、偏見と独断で紐解くと、概ね次のようになっている。(遠藤誉氏の「チャイナ・ギャップ」、Wikipediaを参照している。


(1)、中国共産党全国代表大会(5年に1回)、代表2,270人(全国40選挙区)、党大会
↓ ↓:選出
↓(2)、中国共産党中央紀律検査委員会、検査委員130人(候補者141人)
↓↓中紀委・書記、自動的に中央委員となる。
(3)、中国共産党中央委員会(年1回)、中央委員205人(候補者224人)
↓ ↓
↓ (4)、中国共産党中央軍事委員会、主席(総書記が兼務)、副主席2人、委員8人、前副主席・徐才厚は2014.6.30に汚職容疑で党籍剥奪処分されている。
↓          
(5)、中国共産党中央政治局・会議(毎月1回)、政治局委員18人(全体25人

(6)、中国共産党中央政治局常務委員会(毎週1回)、政治局常務委員7人(China7)→中央書記処→中央政法委員会、他5組織

    

全国代表大会で中央委員205人を選出し、その中央委員会はそこから中央政治局委員を25人選出する。この25人の中から政治局常務委員の7人が選出される。いわゆるChina7 である。
このChina7が、中国共産党の最高意思決定機関であり、中国のと言う人民集団(国)を指導して行くことになる。

そしてこの中国共産党中央政治局、特に常務委員(China7)の7人が、中国と言う人民集団(国)を夫々の職権に分かれて指導して行くことになる。

その指導の組織は次のようになる。


(7)、全国人民代表大会(年1回、全人代)、いわゆる国の最高権力機関で、立法・行政・司法。 国会に相当する機関。代表は中国共産党の指名候補者より選抜、3000人以内。

(8)、同常務委員会(全人代の常設機関)、委員はほぼ200人、委員長(1人、国会議長に相当)、 副委員長(若干名)、秘書長(1人) 下記の国家機関を監督する。

(9)、国務院、国家中央軍事委員会、最高人民法院、最高人民検察院



China7の夫々の役割をWikipediaにより下記する。


習近平 - 序列第1位 中国共産党中央委員会総書記、中国共産党中央軍事委員会主席、中華人民共和国主席、中華人民共和国中央軍事委員会主席
李克強 - 序列第2位 国務院総理
張徳江 - 序列第3位 全国人民代表大会常務委員長 
兪正声 - 序列第4位 中国人民政治協商会議全国委員会主席
劉雲山 - 序列第5位 中国共産党中央書記処常務書記、中国共産党中央精神文明建設指導委員会主任、中国共産党中央党校校長
王岐山 - 序列第6位 中国共産党中央規律検査委員会書記 
張高麗 - 序列第7位 国務院常務副総理


(10)、中国人民政治協商会議(年1回)、共産党・同以外の党派、他の人民団体、少数民族の代表、各界・各団体(Ex.台湾同胞、華僑など)代表などで全国委員会を構成する。重要な政治方針の下位伝達と討議・提案を行う。全国委員会主席1人、副主席23人

・・・・・・といったところか。


だから常務委員会とは中国共産党の最高権力機関で、China9時代の常務委員であった周永康は、中国共産党中央政法委員会書記の任にも当たっていた。この委員会は、「公安、検察院、裁判所、治安維持」などを司っている。

「群体事件(集団抗議)」と言う暴動が多発している中国では、これを取締るのが主な任務となり、当然理不尽な弾圧や拘束が多くなり、それに対する抗議運動「群体事件」が更に輪をかけて多発する。そのため治安維持費は軍事費を上回るまでに膨れ上がった。権限の乱用による国家予算の消費である。これなども周永康が立件される理由であった。



狙いの第三は、“虎”も“ハエ”も一緒に叩くと明言した虎は他にも沢山いる。しかし他の大勢の虎は周永康止まりにするということで、これ以上腐敗をのさばらせないと言うことを、他の虎たちに暗黙の内に、約束させたものであろう。
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(14)

2014-08-26 00:00:00 | Weblog
第3:周立件を見せしめに
他の大物トラは叩かない


 周を「倒した」後に、他の噂されている大トラ(温家宝などは外国メディアにときどきその家族の腐敗ぶりを報道されていた)や年老いた大トラ(とくに電力関連の李鵬一族についてはいろいろな噂がされている)を次々と捕えるのか。これは、中国社会の関心事であり、また待ち望むことでもある。この可能性は、現指導部の第一任期期間中(2012年~17年に)には、小さいと言えるだろう。2期目に至ったら大トラを捕えるかどうかは、今後の情勢発展次第である。

 実は、周立件の目的は「刑罰は常務委員に及ばない」という不文律を壊すだけではなく、数件の指標的意味のある案件の処理で権威を作り、幹部たちを抑圧し、腐敗に手を出せないようにすることにある。言い換えれば、強力な腐敗摘発によって、習総書記は腐敗しない官僚チームを構築していくことを狙っている。

 当面の腐敗情勢から見れば、党幹部で腐敗とまったく関わっていない者は恐らくごく少数で、他人に揚げ足を取られる者がたくさんいるだろう。そういう状況の下で「恐怖のバランス」が生じ、過去の腐敗摘発が深くまで進められなかった原因となっている。今回発表された周立件も、各方面の大物がお互いに取引し妥協した結果であるはずだ。

 しかし、こうした取引と妥協は必ずしも悪いことではない。周立件を取り上げて言えば、習政権への反対者たちにとっては、トップクラスの意志に従わざるをえないこと、習総書記の権威を事実上に認めたことを意味しており、今後は二度と政権に対する牽制となる可能性がなくなることを意味している。

 しかし、もし勝利後にすぐ敵を追い、周立件後に引き続き他の大物トラを攻撃すれば、みんなが戦々恐々とする状況に陥って、習総書記と他の勢力との間でバランスと妥協がとれなくなり、かえて習総書記の地位を脅かすことになる。次々と大物トラをたたけば、自然と社会の新しい期待への刺激となる一方、一旦、失敗したら、習総書記のイメージと中国共産党の政権正統性が傷つくかもしれない。

第4:トラ退治は一段落
課題は腐敗摘発の制度構築


 薄熙來案件と比較すれば、今回は間違いなく周を司法処理(裁判)に移すだろう。裁判をせず、党内の規律に基づいて党籍を剥奪するだけでも処罰になるが、もし周案件が党内処理だけで済むのであれば、それを対外的に発表する意味もなくなる。

 今回、周立件の発表と同時に十八期四中総会の日程とテーマも発表されており、それは周を司法処理に移すことを示唆している。中国共産党の言葉で言うと、いかに職位が高く功労が大きいとしても、党の紀律と法律に違反すれば、法律に基づいて、厳しく処理するということだ。もし周が最後に「ソフトランディング」すれば、いわゆる法治は説得力のないものになるからで、常識的に見れば、周は司法処理に移されるに違いない。

 問題は、四中総会で検討しようとする「法律に基づく治国」は、腐敗摘発にとって、どんな意味を持っており、今現在の腐敗摘発態勢をどう変えることになるのか、にある。現段階での腐敗摘発は二つの特徴がある。一つは、基本的に周をめぐって行われたことで、「倒れた」大物幹部の大半が周と絡み合っている。二つは、問題を起こした高級官僚を厳しく処罰したが、他の官僚が同じ問題を起こすことについては再発防止をあまり考えていないことだ。組織としていかに腐敗から断ち切るか。すでに党の内規だけでは取り締まることはできなくなっている。

 周が「倒れた」ことによって、一つ目の特徴は一段落ついた。二つ目の特徴をめぐっては、中国社会でのいろいろな論争が存在している。このやり方に反対の論者は、政治運動式の腐敗摘発は法治を潰す恐れがあり、あまりに権力闘争を念頭に置くのには懸念があるとする。客観的に言えば、中国共産党の腐敗問題の深刻さから見れば、高圧的な腐敗摘発態勢が必要だが、周立件が明らかになり、多くの官僚が倒れた後、腐敗摘発を段階的に切り替える時期に入り、今までの運動式の腐敗摘発から制度構築に顔を向けて、根本的に問題を解決できる、いわゆる「根治」制度と措置をまとめなければならない。

中国国内では少なくとも
市民は習総書記を支持


 日本など西側の世論を読むと、習近平総書記の腐敗一掃はいかにもやりすぎで、徐々に難しい局面に入り込んでいると強調しているが、中国国内では少なくとも市民は習総書記を支持している。腐敗一掃を通じて目に見えるのは、習近平総書記への権力の集中であり、その政治基盤がより強化されると中国では思われている。

 旧ソ連などの改革を見ると、守旧派の反発は極めて激しい。ただし、市民は改革側にいることも明らかである。中国でももし共産党内部の守旧派が何か行動を取ったら、恐らく市民は天安門広場に集まり、習近平支持の態度を明らかにして、より激しく腐敗一掃を求めるだろう。

 今回の腐敗一掃は、習近平総書記の権限を強め、民衆を支持も得ている。戦々恐々としているのは、腐敗横行の時に甘い汁を吸った高級官僚だけであろう。
http://diamond.jp/articles/-/57209


周永康の立件・処罰は、石油閥の腐敗を裁く事であり、習近平が「反腐敗運動」を開始した事には違いないが、それは「派閥間の権力闘争」が「腐敗撲滅」と言う形式を取ったものに過ぎない、と言っている。されば習近平の狙いは何か。それは当然自身の権威を確固たるものにすること、に違いない。

北京在中のジャーナリストの陳言氏の上記の論文を、小生なりに偏見と独断を駆使して簡単にまとめておこう。どのように言っているのか、おさらいをしてみよう。

習近平の狙いの第一は、習近平自身の政治的権威を確定させるためである。習近平は、既得利益を潰し、腐敗摘発を促進して自分に権力を集中させなければ、「二つの百年目標」などの達成は出来ないとして、自身の政治的権威を高めさせる必要があった。

そのために大物権力者の周永康の処罰を急いだものと思われる。政治局常務委員であった周永康を、25年間の不文律を破ってでも立件した理由がここにあるのである。


本気で言っているのかどうかは判らないが、「二つの百年目標」とは次のものである。

(1)1921年共産党創立から100年2021年には、「小康社会の全面達成」(GDPを2010年から20年までに2倍に)を実現させる。そうすれば少しはマシな生活がおくれる事になろう。少しマシな生活でよければ、中国共産党が軍事費に回している金を幾ばくかでも人民の為に回せば、すぐにでも「小康社会」なんぞは実現できると思うのだが、当分は人民が共産党の犠牲にならざるを得ないようだね、中国では。

(2)1949年中国建国から100年2049年には、「新中国100年には、わが国を富強、民主、文明、調和の取れた社会主義の現代化国家に」すると言うもので、これは2013.10.24~25の「周辺外交工作座談会」で、中国の部長級以上の幹部を前にして、習近平が打った大演説である。

まあ言ってみれば、これが「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」の一側面であろう。一側面であると言ったのは、中国の真の夢は「世界征服」(アメリカを凌駕する)にあるからである。

(この解説は、以下の論考を参考にしている。
http://yuukouhachikara.dondon.cc/images/04%20koenkai%20kodera%20bun.pdf
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/china_research_conference/2013/chu25_11.pdf)

(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(13)

2014-08-25 00:00:00 | Weblog
25年続いた不文律を破って
前最高幹部・周永康立件に挑む習近平の狙い


【第468回】 2014年8月6日 陳言[在北京ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/57209

中国共産党が、前最高幹部の一人である周永康前常務委員立件すると公表した。25年ぶりに「刑罰は常務委員に及ばない」という不文律を破り、腐敗摘発を進める習近平総書記の狙いに迫る。(在北京ジャーナリスト 陳言)

周永康氏は党最高幹部の中の
最高幹部の一人


中国社会が待ち望む中、周永康立件が公表された。

去る7月29日夕刻に、新華社通信は、「周永康の重大な規律違反に鑑み、中国共産党中央委員会は、『中国共産党規約』と『中国共産党紀律検査機関の案件検査条例』の関連規定に基づき、中国共産党中央紀律検査委員会より、本件を立件し取り調べることを決定した」とインターネットで公表した。

中国共産党の最高指導部は、205名のメンバーからなる中央委員会である。しかし、実際の業務を担当しているのは25人からなる中央政治局であり、さらにその上で7人(胡錦濤時代では9人)の常務委員がすべての活動を指導している。この7人から共産党総書記、国務院首相、全人代委員長、政治協商会議主席、規律検査委員会の主任などが選出され、日本の内閣よりもっと権力が集中している。周永康は胡錦濤時代の共産党中央の常務委員であり、公安警察武装警察などを管轄していた人物だった。

1989年6月4日の天安門事件で趙紫陽総書記が失脚し、以来25年間、共産党中央委員会常務委員以上の高級幹部は、在任または退職後に立件されることはなかったが、今回は25年ぶりの政変であった。

25年ぶりに打ち破られた
常務委員の特別待遇


多くの中国人は、1989年6月4日天安門事件前後に、実質的に中国で政権を握っていた顧問委員会の小平主任の言葉を覚えている。

当時、トウ小平主任(トウの文字は「登」におおざと)は、まず継承者の胡耀邦総書記(当時)を罷免して、その後趙紫陽総書記をも罷免した。立て続けに二人の総書記を罷免したため、国内政局は不安視されていた。トウ氏は「新しい常務委員会は、今後その結束を維持していくべきだ」と常務委員会で発言して、それ以降、在職または退職した常務委員を失脚させ、立件したりしたことはなかった。常務委員以上の役職者逮捕しないという不文律を25年前に実質的につくりあげ、それによって中国共産党の支配を安定させようとしたのである。

ただし、共産党中央常務委員以上の役職者の罷免または逮捕の前例は、1989年以前にはたくさんあった。文革終了直後の1976年には、毛沢東の妻であった江青など「四人組」と称する常務委員が逮捕されたし、その前には、もっと多くの常務委員が失脚したり、逮捕されたりしていた。

今度の周永康立件は、一年前の薄熙来逮捕とはかなり違う。告知文の表現には、中国共産党が常に使用している「同志」の二文字がなかった。2014年2月、中国共産党が薄熙來の立件調査を発表した際には「同志」の二文字が使われており、当時の薄はまだ党内の同志だということを示唆している。こうした表現上の違いには、相当な工夫が凝らされている。それは、周がすでに党から除籍され、近く開催予定の十八期四中総会で確認待ちか、それとも、近く除籍される予定かのどちらかを意味している。

一方、新華社通信の報道では、中国共産党が周に対しては「調査」ではなく、「審査」という表現を使ったことも、周に対しての調査がほぼ終了し、周の腐敗容疑の証拠をすでに把握しており、これから行おうとしているのは周の紀律違反に対しての定性審査であるとのことを意味している。その点から見れば、周は司法の処罰を免れることができない。

周永康前常務委員の逮捕、処罰によって、間違いなく、25年来の常務委員を処罰しないという不文律はここで打ち破られることになる。

では、周の処罰によって習近平総書記は何を狙っているのか、ここで探ってみたい。それには4つの狙いがあると思われる。

第1:周永康処罰で示す
習近平総書記の政治権威


今年に入って流れた周立件の公表をめぐる噂には、いくつかのバージョンがあった。発表時間の噂が何度も否定されたことによって、周立件は最終的に公表されるのか、と疑う声がたくさん出てきた。一部の人々は「周は、もしかしたら安全に着陸できて、最悪でも党内処理だ」とし、「習近平総書記は周というトラをたたくことができない」と信じていた。こうした見方の根源には、彼らが最近の腐敗摘発を党内の大物、特に派閥間の権力闘争とみなすことにある。色とりどりの政治ゴシップと噂がたびたび出たのも同じ原因である。

周立件が権力闘争の様相を帯びるのはおかしくないが、習近平総書記の腐敗摘発は権威づくりばかりでなく、改革推進などの多様な目的がある。習総書記は指導小委員会の設置を通じ、複数の委員長を兼任することで、党、行政、軍、経済、安保などの権力を一身に集中し、改革を強力に推進しようとしている。十八期三中総会でまとめた「全面的改革計画」も、中国共産党が計画した「二つの百年目標」も、いずれも改革がなければ実現できないものである。しかし、改革はやさしいことではなく、ここ数年の改革が長引いたのは、既得利益と腐敗が障害になったからである。権力の集中は既得利益を潰し、腐敗摘発の促進となる。その点で、周立件は習総書記への権力集中の真偽を判断するための試金石になるだろう。

ここで考えてみたい。もし「周」という「トラ」は倒れることなく、最後、無事に着陸したとしたら、あるいは、周は厳しい党内処分を受けないとしたら、中国世論はどうなるだろうか。民衆は習近平総書記の改革推進能力を疑うだろう。それが故に、習総書記の政治的権威は、この「大物トラ」を打倒できるかどうかに直接に関わっている。さもなければ、これまでの苦労も、意気込んでいる改革計画と民族復興の夢も水の泡になってしまい、社会は「幻滅感」に満ち溢れていることになる。それが故に習総書記には、他の選択肢がなく、この大物トラをたたくしかない。

第2:四中総会の議題は法治
公安警察担当だった周を生贄に


周立件の発表を巡っては、何度も発表時間の詳細まで明確にされた噂が出たが、たちまち偽情報と証明された。今年の秋に開く十八期四中総会が近づくなか、周立件は四中総会の会期中に発表されるという声も出たが、結局、中国共産党は7月29日情報を公表した。この時期の発表は、多くの人々の予想を越えていた。

実は、習総書記は、「周立件は長引けば長引くほど、自分の腐敗摘発に不利」ということがはっきりわかっていたはずだ。国民周知の案件を遅々として公表しないなら、善意の者は「トラをたたく途上で障害に遭った」と読み、悪意の者は「そもそも、トラをたたく意がなかった。ただ民衆を騙すだけだ。一方、周を打倒するのに、殺傷力のある証拠が必要だ、証拠把握も時間がかかる」と理解するだろう。

では、なぜ四中総会の会期中に発表しなかったのだろうか。考えられる要因は二つある。一つは、もし四中総会で周立件を議論し発表すれば、会議テーマのインパクトを弱めてしまうという懸念である。四中総会のテーマは「法律に基づく治国」で、会期中に経済問題をも議論することにもなる。もし総会で周立件を論議すれば、事件への関心が高まる中、周立件が党中央委員たちの関心事になり、社会全体の周立件への関心度もきっと、経済状況と法治主義への討議を超えるに違いない。

第二は、周立件を総会で議論することになれば、意見を一致させまとめられるかどうかに疑問符がつく。一方で総会の前に周立件を発表すれば、政治局での採択と一部の元老との意思疎通だけで十分である。
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(12)

2014-08-22 00:00:00 | Weblog

反撃に打って出た石油閥
掘削事件の「黒幕」か


 しかしまさに今年の3月後半当たりから、習近平氏石油閥叩き作戦暗礁に乗り上げる様子となった。まずは周永康氏自身が、当局の調査に対し横領などの容疑を全面否定、協力を一切拒んでいることが4月になって複数の党関係筋によって明らかにされた。どうやら周氏は徹底抗戦の構えのようだ。彼がそれほど強気になっているのには当然それなりの理由がある。

 周氏に対する摘発が進んでいく中で、彼と同様に引退の身となった一部の長老たちはこのままでは自分たちの身も安全ではなくなると危惧し始めたことから、江沢民派・石油閥は反撃に打って出た。政治局常務委員会の中では石油閥の代弁者である筆頭副総理の張高麗氏や江沢民派重鎮の張徳江全人代委員長らが「摘発の行き過ぎが党の威信を傷つける恐れがある」との理由から、習近平・王岐山サイドの進める腐敗摘発=石油閥叩きにブレーキをかけ始めた模様である。

 そうすると、それまで順調に進んできた周永康摘発の動きが徐々に鈍くなってきた。前述のように、今年3月の時点で中国の一部メディアは既に「周永康に問題あり」とのような報道をしていたが、中国国内の一般常識からすれば、この問題に関するメディア報道の「解禁」は普通、摘発に関する政治的決着がすでにつけられていて正式発表が間近であることを意味している。

 しかしこの常識に反して、それ以来現在に至るまで、周永康摘発の正式発表は一切なく、摘発の進展を窺わせるような動きも一切なかった。「周永康問題」はとっくに全国民の知れるところとなっているのに、問題の決着がここまで先延ばされているとはまさに異常事態である。しかも、去年9月に「調査開始」と発表された蒋潔敏氏に関しても、現在に至って何の調査結果も発表されることなく、処分も決まっていない。それもやはり異様である。

 こう見ていると、現在、江沢民派・石油閥は、習近平氏の叩き潰し作戦に対して必死の抵抗を試みている最中であることがよく分かるが、このようなタイミングで、中越間の衝突を起こした掘削の意味を考えてみると、一件無関係に見えるこの二つの動きの間に関連性があるのではないかと思いたくなるのである。

 そう、問題の海域で掘削を断行したのはまさに石油閥傘下の中国海洋石油総公司であり、その総公司の上位機関である国務院国有資産監督管理委員会の元主任はまさに石油閥主要幹部の蒋潔敏氏である。今はまさに、彼らが習近平氏の腐敗摘発によって追い込まれている立場であり、自分たちの権益と命を守るために最後の戦いを強いられている最中なのだ。

 その際、習近平氏に対する最も有力な反撃の一つとして、外交トラブルをわざと引き起こすことも選択肢の一つとして考えられる。何らかの外交的危機が発生した場合、中央国家安全委員会主席の習氏は責任を持ってそれを処理しなければならない。外交上のトラブルはすなわち習氏自身のトラブルなのである。

ただただ沈黙を守る習近平

 そうすると、浮上してくる可能性の一つは、石油閥の面々がASEAN首脳会議の直前というタイミングをわざと選んで、しかもベトナム側の猛反発を見込んだ上で係争の海域での掘削を断行した、ということである。

 そうすることによって習近平氏を外交的窮地に追い込んでその政治的権威を傷つけることができるだけでなく、いわば対外的危機を作り出すことによって「国内の一致団結」という大義名分において「腐敗摘発」の動きを食い止めることもできるからである。

 実際、石油閥のこの作戦はすでに一定の効果を上げていると見ることもできる。掘削の断行がベトナムとの衝突を引き起こし、地域における中国の外交的孤立化が進んでいることは前述の通りであるが、中国国内の動きとしてもう一つ不思議に思えるのが、この一連の事件発生以来の習国家主席の態度である。

 ほとんど信じられないようことであるが、中国国民がベトナムの反中暴動において殺されたという由々しき事態が発生したにもかかわらず、国家主席で国家安全委員会の主席でもある習氏はこの問題について、いっさい発言していないのである。少なくともこの原稿を書いている日本時間5月19日午前10時現在まで、習氏はただただ沈黙を守っているだけである。

 5月15日、ベトナムの暴動で中国人が殺されたその翌日、習近平氏は国家主席として「中国国際友好大会」というイベントに出席してまさに外交問題について「重要講話」を行ったが、その中で彼はベトナムとの衝突やベトナムでの反中暴動については一言も触れなかった。自国民が暴動で殺された直後に、何事もなかったかのように行われたこのような「重要講話」は、実に情けないものである。

 要するに習近平氏は進退両難の窮地に立たされているのであろう。ことを起こしたのは石油閥の陰謀であることを承知しているから、ベトナムに対して強く出れば中国にとっての外交的トラブルがますます大きくなり国家主席としての自分の対処はますます難しくなる。それはまさに江沢民派・石油閥の思うつぼである。


しかしあまりにも弱い姿勢を示すと、それが逆に国内から「弱腰」の批判を招くこととなる。そして「弱腰」への国内批判はそのまま、石油閥にとっての習近平攻撃の材料ともなる。どの道、嵌められた習近平氏は大変不利な状況になるから、結局彼のとれる唯一の対処法はすなわちこの問題についていっさい態度を表明せず、外交部門に任せて事態の推移を見守ることであろう。

 もちろん、何も発言しないこの態度は結局、習近平氏の無能さと決断力のなさを国民に晒し出す結果となるから、やはり習近平氏の負けである。

突然姿を現した曽慶紅

 窮地に立たされた習近平氏が立ち往生している最中、得意満面で公の場に姿を現したのは、石油閥の陰のボスの曽慶紅氏である。中国の一部メデイアが写真付きで報じたところによると、公職から引退して以来いっさい姿を現したことのない曽慶紅氏は5月14日に突如、江沢民派の古巣の上海に現れた。表向きの活動の内容はある美術館の参観であるが、共産党政治局委員・上海市共産党書記の韓正氏と江沢民氏の子息で上海科学技術大学校長の江綿恒氏が同伴しているから、どう見ても単なる個人的な参観ではない。見事な政治的行動である。

 それでは、とっくに引退してめったに姿を現すことのない曽慶紅氏が一体どうして、このようなタイミングで突如姿を現したのか、ということになると、本稿が今まで記述してきたこの経緯からすれば、彼の意図するところは明らかであろう。決戦に臨む江沢民派・石油閥に対する激励であると同時に、相手の習近平氏に対する容赦のない警告でもあろう。

 そして14日の曽慶紅氏の登場はまた、10日ほど前から始まった件の「掘削断行」の黒幕はまさに自分たち石油閥であると自供したようなものである。この堂々ぶりは、曽氏がすでに習近平氏に対する抗戦を覚悟していることが分かる。今後、江沢民派・石油閥と習近平国家主席との権力闘争はますます激しさを増していくことは予想できるであろう。

【関連記事】
ベトナムに加えフィリピンとも深まる対立 漁民に振り回される中国当局
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3874
ベトナムとの衝突は必然 南シナ海確保に必死な中国の「関心」の変化
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『中国はこうして国際秩序を破壊する』http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3264
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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3867?page=1


ベトナムもフィリピンも、中国共産党の権力闘争のトバッチリを受けるようでは、堪ったものではない。
しかもそれが領土問題という極めてシリアスなものと絡めているから、尚更である。

ますますアメリカの軍事的なプレゼンスが必要となるのである。さもなけば、中国はますます増長して、本当に西太平洋を自分の海としてしまいかねない。中国は世界から非難されようが馬鹿にされようが、物理的な押さえがなければ、無限に侵略してくる国なのである。

中国は江沢民派がベトナム沖に石油リグを設置した事を良いことに、この権力闘争が一段落した暁には、本格的に石油リグを進出させてくるに違いない。今度は中国共産党政府として、本格的に侵略してくる筈だ。

日本もこの事件をしっかりと分析して、尖閣諸島の侵略に備えなけばならない。それにしても、習近平は本格的に江沢民派を叩き潰すつもりなのであろうか。

結局2014.7.29に、周永康は立件される事になった。

(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(11)

2014-08-21 00:00:00 | Weblog

掘削を実施した「中国海洋石油総公司」とは?

 このような状況では、掘削の開始からベトナム船に体当たりで衝突するまでの中国側の一連の行動が果たして、中央指導部の指揮下におけるものであったのかどうか、という疑問が当然生じてくるのである。

 ASEAN首脳会議の直前という中国にとって悪すぎるタイミングから考えても、それが東南アジア諸国の対中国結束を固めることになる結果からしても、あるいは衝突直後の中国外務省の混乱した対応ぶりからしても、掘削の断行は中央指導部の統一意志の下で行われた戦略的・計画的な行為であるとはとても思えないのである。

 だとすれば、今回の断行は、掘削を実施した部門の個別的判断によるものであろうという可能性も出てくる。それならば、その関係部門は何の目的のために、中国にとって大変不利なタイミングで大きなトラブルとなるような判断を行ったのか、という疑問が浮上してくる。そうなるとここではまず、掘削を断行した張本人の中国海洋石油総公司という巨大国有企業に目を転じてみるべきであろう。


石油閥の正体と激しい権力闘争

 ベトナムとの係争海域で今度の掘削を実施した中国海洋石油総公司。9万8000人以上の従業員を有するこの巨大企業は、中国国務院国有資産監督管理委員会直属の国有企業である。「国務院国有資産監督管理委員会」とは中央官庁の一つだが、おそらく中国政府は、採掘すべき石油資源は全部「国有資産」であるとの視点から、中国海洋石油総公司をこの中央官庁の直属下に置いたのであろう。

 それはともかくとして、実は去年の夏から、まさにこの国務院国有資産監督管理委員会において、驚天動地の腐敗摘発が行われていたのである。2013年9月1日に国営新華社が伝えたところによると、中国共産党中央規律検査委員会は、国務院国有資産監督管理委員会の蒋潔敏主任に対し「重大な規律違反」の疑いで調査を始めた、というのである。

 蒋氏は国有石油大手、中国石油天然気集団(CNPC)前会長で、2013年3月に国資委主任に転じたばかりだった。彼は共産党内では約200人しかいない中央委員も務めており、2012年11月の習指導部発足後、調査を受けた党幹部では最高位に当たる。

 このような立場の蒋氏に対する汚職調査は当然、習近平政権が進めている「腐敗撲滅運動」の重要なる一環であろうが、ここで注目されているのは、石油畑出身の蒋潔敏氏の背後にある、「石油閥」という共産党政権内の一大勢力のことである。

 中国でいう「石油閥」とは、蒋氏が会長を務めた中国石油天然気集団という巨大国有企業群を基盤にして中国の石油利権を一手に握る政治集団のことである。この政治集団の始祖は、1958年に中国の石油工業相に就任した余秋里氏である。

 中国の建国に貢献した「第一世代の革命家」の一人である余氏は建国の父である毛沢東からの信頼が厚く、58年に石油工業相に就任してから、中国最大の大慶油田の開発を仕切って「中国石油工業の父」と呼ばれるようになった。その後も中国経済を取り仕切る国家計画委員会(国計委)主任や国家エネルギー委員会(国エネ委)の主任などを歴任した。共産党内で隠然たる力をもつ石油閥の形成はまさにこの余秋里氏からはじまる。

 1999年に余氏が亡き後、彼の後を継いで石油閥の元締めとなったのは元国家副主席曽慶紅氏である。2002年からは中国共産党政治局常務委員、03年から国家副主席を務めた曽慶紅氏は、元国家主席江沢民の懐刀として知られていて江沢民政権の要だった人物であるが、実はこの曽氏は江沢民の腹心となる以前、余秋里氏に仕えていた。

 余氏が国計委主任を務めた時に同委の弁公庁秘書となり、余氏が国エネ委に移ると、曽氏も同委弁公庁に異動した。そして余氏はその後も中央顧問委員会常務委員などを歴任して実権を握っていたため、曽氏は余氏の「ご恩顧下」で石油省や中国海洋石油総公司(CNOOC)で出世した。

 このような経歴から、余氏が死去した時、江沢民の腹心として政権の中枢にいる曽氏は当然、石油閥の次のボスとなった。そして曽氏自身が政治局常務委員・国家副主席となって権力の頂点に達すると、彼を中心にして石油閥は党内の一大勢力に伸し上がった。もちろん、石油閥総帥の曽氏は党内最大派閥の江沢民派(上海閥)の「番頭」的な存在でもあるから、石油閥はごく自然に江沢民派の傘下に入って江沢民勢力の一部となった。

 そのとき、石油閥の「若頭」として曽氏が抜擢してきたのが石油畑幹部の周永康氏である。周氏は中国の石油業界の「聖地」とされる大慶油田でキャリアをスタートして、その後、石油工業省次官、CNPC総経理、国土資源相などを歴任した。そして2002年に胡錦濤政権が発足するとき、政治局常務委員となった曽氏は周氏を政治局員に推挙した上で警察を司る公安部長に転任させた。2007年の共産党17回大会では、曽氏は自分の引退と引き換えにして周氏政治局常務委員の地位に昇進させた。しかも政法部門(情報、治安、司法、検察、公安など)を統括する中央政法委員会書記という政治的に大変重要なポストに就かせた。

 これで江沢民派・石油閥の党内基盤は盤石なものとなって、胡錦濤政権時代を通して、この派閥の人々はまさに飛ぶ鳥を落とすほどの権勢を振る舞った。そしてその時、徐々に老衰していく江沢民氏にとってかわって、引退したはずの曽慶紅氏江沢民派・石油閥の陰のボスとなり、現役の政治局常務委員の周永康氏は政権中枢における派閥の代弁者の役割を果たしていた。


「腐敗撲滅運動」を手段に

 しかし2012年11月に開かれた共産党18回大会において胡錦濤指導部が退陣して今の習近平指導部が誕生すると、石油閥はやがて受難の時代を迎えた。18回大会で誕生した7名からなる新しい政治局常務委員会に、江沢民派・石油閥は4名の大幹部を送り込んで習氏を取り囲むような形で勢力を固めた。あたかも新指導部が彼ら江沢民派・石油閥によって乗っ取られたかのような形勢であるが、それに不満を持つ習氏は今度、前総書記の胡錦涛氏の率いる「共産主義青年団派」と手を組んで、江沢民派・石油閥を叩き潰すための権力闘争を起こした。徹底的に潰さない限り、自前の政治勢力の拡大と自分自身の権威樹立は永遠に不可能であると習氏も分かっているからだ。

 この権力闘争のために習氏の使用した手法がすなわち「腐敗撲滅運動」の推進である。石油利権という莫大な経済利権を手に入れてうまい汁を吸っているのは他ならぬ江沢民派・石油閥の面々であるから、彼らを倒すのに「腐敗の摘発」ほど有効な手段はない。そのために、習近平氏は自分の盟友である王岐山という経済部門出身の幹部を畑違いの中央規律検査委員会のトップに据えて、「腐敗撲滅」という名の権力闘争を始めた。

 前述の国務院国有資産監督管理委員会の元主任で石油畑出身の蒋潔敏に対する「汚職調査」は、まさに石油閥潰しの政治的摘発の一環であるが、習近平氏のターゲットは蒋潔敏のような「小物」ではない。石油閥大物幹部周永康氏はまず標的にされていた。蒋潔敏氏に対する調査開始はむしろその前哨戦であったと見るべきだ。そして2013年12月から周永康氏の消息が断ったことから、その時点で彼は既に拘束されていてて取り調べを受ける身となったと思われる。今年の3月初旬に、一部の中国メデイアがいよいよ「周永康問題」について報道し始めたことから、彼に対する取り調べが進んでいる事実が白日の下に晒された。
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(10)

2014-08-20 00:00:00 | Weblog

さて、習近平政権誕生からの行動を時系列的に眺めてみよう。

2012.11.14~15、第18期1中全会で、習近平が共産党総書記、中央軍事委主席に就任

2013.1.22、中央規律検査委員会で習近平総書記は、「石油閥 もハエも一緒に叩く」と明言。

2013.3.5~17、第12期全人代、習近平国家主席,李克強首相。中華民族の偉大な復興・中国の夢

2014.4.22から4.29には、オバマ大統領がアジア4ヵ国を歴訪している。

その直後の
2014.5.3には中国海洋石油(CNOOC)がベトナムの排他的経済水域に石油リグを投入

2014.5.2~9、中国船、ベトナム船に放水、体当たりする。ベトナム側負傷者9人となる。

2014.5.11、アセアン首脳会議でネピドー宣言を採択。「南シナ海問題は深刻な懸念

2014.5.14、ベトナム中部で反中デモ。21名死亡、外資系企業放火される。

2014.5.16、カーニー米大統領報道官は「中国の行動は挑発的だ」と非難、中国側に原因。


2014.7.10、米上院が中国拡張主義を非難する決議を採択している。そして

2014.7.16、中国海洋石油(CNOOC)は、8/中旬までの予定だったが、石油リグを撤去した。


と言う事は、2013.1.22から2014.5.3までの間に、何か重大な事が起こっていたに違いない。と言うのも、腐敗撲滅の対象として石油閥に狙いを定めていたにも拘わらず、2014.5.3にはその石油閥が南シナ海でひと悶着起こしている。その間もその後も、習近平は何をしていたのであろうか。この件に関して、この間、習近平は何も言っていない様だ。


そこら辺を「石平氏」が解説している。3ヶ月ほど前のものであり、すでに新しく展開もしているが、的を得ているように思えるので是非ご一読願う。

この解説はかなりの長文なので、少し小生なりの解読をしておこう。

(1)これは、石油閥習近平権力争いである。習近平は反腐敗運動として、江沢民派を叩き始めた。江沢民派石油閥を牛耳っている。

(2)現在江沢民派は、政治局常務委員の7人中4人を占めている。これに習近平は不満である。

(3)このため習近平は胡錦濤派と組んで、江沢民派、即ち石油閥を「反腐敗運動」として叩き潰すことにしたものである。

(4)江沢民自身は既に老衰しているが、現在はその懐刀の曽慶紅(元国家副主席,2003年)がボス役で、その代弁者が周永康である。曽慶紅氏は石油閥の元締めである。

(5)周永康は、曽慶紅に押されて2007年に常務委員に昇進し、しかも中央政法委員会書記と言う重要ポストにも就いている。かれは、大慶油田でキャリアをスタートさせた石油閥の大物幹部である。

(6)周永康氏は2013年12月から消息を絶っており、2014年3月には周永康問題が取りざたされ始めたが、5月になっても周永康摘発の正式発表はなかった。それは江沢民派が反撃に出たからである。

(7)その反撃が、2014年5月3日の石油閥が牛耳っている中国海洋石油総公司の、ベトナム沖での石油掘削と言う「外交問題」の発生である。しかもASEAN首脳会議の直前と言うタイミングで、しかもベトナムの反撃を見込んで、敢えて外交問題を態(わざ)と発生させたものである。

(8)こうして習近平を外交的窮地に追い込んで、「腐敗摘発」の動きを石油閥は食い止めたかったのである。ベトナムに強く出れば中国は世界から叩かれ、弱く出れば国内から弱腰の批判を招くことになる。だから習近平は沈黙せざるをなかったのである。

(9)結局のところは、この腐敗摘発は、周永康だけで押さえられてしまって、他の大物には波及しないということで、妥協したのではないのかな。だから石油閥は、早めに石油リグを撤退させたのである。

といったところであろうか。




infinity>国際>チャイナウォッチャー [チャイナ・ウォッチャーの視点]
ベトナム衝突事件を仕掛けた
中国の「黒幕」

2014年05月19日(月)石 平

 南シナ海での石油掘削をめぐる中越衝突が発生して以来、関係諸国の猛反発の中で中国の孤立化が目立ってきている。

タイミングが悪すぎる掘削開始の不可解さ

 たとえばケリー米国務長官は5月12日、両国の艦船の衝突について「中国の挑戦だ。この攻撃的な行動を深く懸念している」と中国を名指しで批判した。さらに5月16日、カーニー米大統領報道官は記者会見において、南シナ海での中国の一方的な行動は「挑発的だ」と改めて批判し、領有権争いをめぐるベトナムとの対立激化は中国側に原因があるとの考えを示した。これでアメリカは、中国とベトナムとの対立においてほぼ完全にベトナム側に立つことになったのである。

 もちろんアメリカだけでなく、南シナ海周辺諸国の中国に対する反発も強まってきている。

 5月10日から開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は、中国とフィリピン、ベトナムなどが領有権を争う南シナ海問題をめぐり、関係国に自制を求める共同宣言を採択したが、首脳会議に先立つ外相会議では、南シナ海での緊張の高まりに「深刻な懸念」を表明する共同声明を発表した。ASEAN諸国が結束して中国をけん制する立場を示したといえる。

 それに対し、中国外交部の報道官は5月10日に談話を発表して反発した。ASEAN外相会議・首脳会議の共同宣言・声明は中国を名指しで批判したわけでもなく、「関係諸国の自制」を求めているはずであるが、唯一中国だけがそれに反発したのは、要するに中国自身も、上述の宣言と声明はまさに中国に矛先を向けているものであると分かっているからであろう。

 とにかくベトナムとの海上衝突の一件をもって、中国は米国から強くけん制されているだけでなく、東南アジア諸国から総スカンを食った結果となっている。外交的に見れば、それは中国にとって大いなる誤算と失敗であると言えよう。

 このような失敗はすべて、中国自らの行動が招いた結果である。事実関係を整理すると、ことの発端はまず5月初旬、中国側が問題海域での石油掘削を一方的に宣言し実施したことにある。それに対して、ベトナム側はまず外交ルートを通じて中国に抗議して掘削の中止を求めたが、中国側がそれを拒否して掘削を継続したことから、ベトナム船がこの海域に入って中国側の掘削を阻止する行動を取ると、中国船は逆に体当たりしてきて放水の応酬などの衝突事件に発展した。

混乱が観られる当局の対応

 このような経緯を見れば、今回の事件は中国側の一方的な行為が原因で起きたことがよく分かるが、ポイントは、中国側が一体どうしてこのようなタイミングこのような問題を起こしたのか、ということである。

 より具体的に言えば、中国は一体なぜ、わざわざASEAN首脳会議開催の直前というタイミングを選んでこのような挑発的な行動に至ったのか、それこそが問題なのである。ASEAN諸国の結束を促して中国自身の孤立化を自ら招く、あまりにも愚かな行動である。

 5月13日付の英フィナンシャル・タイムズ紙も、「中国とベトナムの衝突、観測筋が首ひねるタイミング」と題する記事を掲載して、中国側がことを起こしたタイミングの悪さを指摘しているが、まさしくその通りである。

 したたかな中国がどうしてこのような初歩的なミスを犯してしまったのか。それがまず湧いてくる疑問の一つであるが、さらに不可解なのは、ベトナム船との衝突が世に知られた後の中国外交当局の対応である。

 5月7日、ベトナム政府は証拠の映像を公開し、中国側の船舶がベトナム船に意図的に衝突してきたと発表、中国側を強く批判した。それに対して8日、中国の程国平外務次官は「そもそも衝突していない」と言って、衝突という明らかな事実を頭から否定し問題から逃げるような姿勢を示している。

 しかし同日午後、同じ中国外務省の別の高官が急きょ会見し、「ベトナム側が大量の船を出し、170回以上中国側にぶつかってきた」と発表した。つまり中国側もこれをもって「衝突があった」ことを認めたが、それは結局先の「衝突していない」という外務次官の発言を、中国外務省自ら否定することになる。この二つの発言のあまりにも明々白々な矛盾は、中国政府自身の対応がかなり混乱していることを露呈している。
(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(9)

2014-08-19 00:00:00 | Weblog

先に、科学的発展軍の近代化海洋強国の建設特色ある社会主義中華民族の偉大な復興個人の夢の実現 が習近平が考えている道筋だと述べたが、このためには膨大なエネルギーが必要となる。そのために中国における石油関連の事業は、一大国家プロジェクトなのである。上記の文章は2006年1月号の「ペトロテック」と言う雑誌に掲載されたものと記されており、10年近く前のものであるが、この筋道をたどるためには、習近平は世界のあちこちで顔を出す(摩擦を起こす)ことであろう、と言うよりも顔を出している。

そのために石油関連事業を牛耳ることは、中国国家をなかば牛耳ることに繋がっていく。したがってこれらの事業のボスには、莫大な利権がついて回ることになる。いわゆる汚職、賄賂、不正、腐敗がはびこる事になる。その状態では中華民族の偉大な復興は覚束ない。

そして習近平は「腐敗撲滅運動」に力を注ぎだしたのである。

習近平は2012.11月に総書記、2013.3に国家主席に就任している。その間の2013.1.22の第18期中央紀律検査委員会第2回全体会議で、反腐敗運動に関する重要演説を行った。

虎もハエも一緒に叩く」がそれだ。石油利権も例外ではない。



【禁聞】習近平の反腐敗 「虎もハエも叩く」 誰が「虎」か 外界が注目 2013年01月27日
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【新唐人2013年1月28日付ニュース】深刻化の一途を辿る中国の腐敗問題に対し、人々はただ当局の腐敗一掃の力度が不十分であるとの認識にとどまっていました。先日、習近平総書記は共産党中央規律検査委員会(中紀委)の会議(2013.1.22第2回全体会議)において、“虎”も“ハエ”も一緒に叩くと明言しました。では、習総書記の指し示す“虎”とはいったい誰なのでしょうか。

中国共産党の代弁者・新華網の22日の報道によると、習近平総書記は中国共産党中央規律検査委員会(中紀委)の会議で反腐敗問題に言及した際、”も”ハエ“も一緒に叩き、誰に波及しようとも徹底的に調査し、見逃すことはないと強調しました。しかし、どのクラスの官僚が”虎“であるかは明確に示しませんでした。

では、習氏が退治しようとしている“虎”はいったい誰なのでしょう。様々な推測が出されています。
香港『文匯報』(ぶんわいほう)の報道によると、中国人民大学反腐敗および廉政政策研究センターの毛昭暉主任は、今後一定期間内に中国共産党は最も重い拳を2匹の“トラ”―金融領域と省・部クラスの高官の汚職に振り下ろすだろうと分析しています。
ある海外メディアによると、旧正月の後、反腐敗行動は金融業界の高官から始まる予定で、リストもすでにできているそうです。

情報によると、第十八回共産党大会の終了後間もなく、海外のツイッターでは、中央規律検査委員会の王岐山書記の反腐敗の第1ターゲットは、党内序列第5位で政治局常務委員の劉云山の息子・劉楽飛および、前政治局常務委員・李長春の娘・李彤のプライベートファンドではないかとの情報が伝い出されました。

香港誌”動向”の最新情報では、中国国務院常務会議において、李克強)副首相は中央国有企業の大手5社である中国石油、Sinopec(シノペック)、中国海洋石油(SCOOC)、チャイナ・テレコム(中国電信)、チャイナ・モバイル(中国移動)の名をあげ、縁故者採用、多額の公的資金乱用、官商結託、別会社を作り”家族業務”を行う等を指摘したと伝えています。

李副首相はまた、”整頓せず、大きく改変しなければ、大きな問題が生じ、誰も責任を負うことが出来ない”と警告したそうです。

李副首相のこの話は、習近平総書記の”反腐敗”運動に協力したもので、矛先は周永康に向けられており、周永康とその家族が隠した巨額の腐敗汚職が明らかになりつつあることを指していると、外部は見ています。

在米社会問題学者の張健さんは、反腐敗運動は江沢民元国家主席や李鵬元中央政治局常務委員、中央政治局常務委員7人、および周永康など血の債務がある人物から始めるべきと指摘します。

情報よると、1992年、江沢民が政権と軍を掌握すると、長男の江錦恒に多額の利益を流しました。江錦恒は中国の民衆から“中国一の汚職者”と呼ばれています。

”新唐人”の時事評論家・ジェイソンさんは、中国当局の大々的な反腐敗運動は、新指導者になった習近平氏の威信を打ち立てる方法のひとつにすぎないと示します。

時事評論家 馬傑森さん

「彼はこれを利用して、人心をつかみ、同時に自分の権力を集中することもできます。しかし、虎とハエを一緒に退治できるのかどうか。これが問題なのです。その可能性は実に疑わしいのです。これは彼(習近平)の威信を打ち立てるための方法であって、別に彼が本当に中共の腐敗官僚全員を打ち倒すわけではありません。中共が清廉な政党になるのは不可能です」

時事評論家の史達さんは、反腐敗運動共産党内部のことで、民衆とは何の関係もないので、あまり期待しないほうがよいと促します。なぜなら、反腐敗運動は党が生きながらえるためであって、民衆の為ではないからです。

時事評論家 史達さん

「皆さん考え方を変えて、一度考えてみてください。民衆は反腐敗に対し、発言権があるかどうか、監督権があるかどうか、何かできる事があるかないか。私はないと思います。前回、民衆が積極的に反腐敗に参加し、ネットに実名で告発をしました。しかし、最終的な結果はどうなったのでしょうか。やはり中共に否決され、鎮圧されました。巻き添えになった人もいるでしょう」

史達さんは、共産党が腐敗暴露を通じて汚職官僚を叩いて民心を集めようとしても、すでに遅いと述べます。今の共産党の反腐敗はただの”面子プロジェクト”にすぎず、まるでオオカミ少年が”オオカミが来た!”と叫んでいるようなものだと指摘します。

新唐人テレビがお伝えしました。
http://www.ntdtv.com/xtr/gb/2013/01/25/a836783.html(中国語)
(翻訳/赤平 編集/坂本 ナレーター/村上 映像編集/工)
- See more at: http://jp.ntdtv.com/news/3052/index.html#sthash.KOzxNeBB.dpuf

http://jp.ntdtv.com/news/3052/index.html


2012.11.14~15の第十八回の全国代表大会で共産党総書記に就任した習近平は、3ヶ月もたたない2013.1.22の中央規律検査委員会の第2回全体会議で腐敗撲滅運動を声高らかに叫び、“虎”も“ハエ”も一緒に叩くと明言した。

巷では江沢民や李鵬と言った大物も上がっていたようだが、その虎はどうも石油閥の重鎮に狙いを定めたようだ。

狙いを定められてから一年余、しかもその石油閥は、2014.5にベトナム近海に最新式の石油リグを繰り出して、世界から総すかんを食っている。あまりにもタイミングがよいと言うか、悪いと言うか。

(続く)
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日清戦争開始120年に考える。(8)

2014-08-18 00:00:00 | Weblog

オバマは2014.4.22から4.29の予定でアジアを歴訪した。しかし中国はその直後の5/3中国初の最新式の深海リグをベトナム沖に設置した。ベトナムは当然黙ってはいない。中国と石油リグをめぐって、中国艦船に向かって阻止行動を取っているが、多勢に無勢だ。


中越艦船、南シナ海で放水の応酬 石油採掘巡り
2014/5/12 18:50
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 【ハノイ=伊藤学】南シナ海の石油掘削を巡ってにらみ合う中国とベトナムの艦船が12日、放水で応酬する場面があった。越国営紙トイチェ(電子版)によれば、中国船15隻に囲まれて放水を受けたベトナム漁業監視船が放水で応戦した。

 同日朝、ベトナム船が石油掘削装置に近づき、「ベトナムの水域からの掘削装置の撤去を要求する」と中国語で書かれた横断幕を掲げたところ、15隻の中国船に囲まれた。そのうち5隻の船がベトナム船に放水を開始。ベトナム船も放水で反撃した。

 ベトナム船には乗員のほか、同紙の記者2人が乗り込んでいたが、負傷者はいなかった。2日以降、中越船は衝突や放水が断続的に続いており、これまでベトナム側は計9人が負傷している。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM12020_S4A510C1FF8000/


しかし5/11にはミャンマーでASEAN首脳会議が開催されることになっていた。当然中国もこのことは知っている。この会議では、当然中国への非難が採択される可能性が高い。その為タイミングとしては誠に都合の悪いことこの上ない。


ASEAN首脳会議、南シナ海問題に「深刻な懸念」表明
2014/5/12 20:19   ニュースソース   日本経済新聞 電子版

 ミャンマーの首都ネピドーで11日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明が12日公表された。中国と一部加盟国との緊張が続く南シナ海問題について「深刻な懸念」を表明。名指しは避けたが厳しい調子で中国をけん制した。マレーシアなど南シナ海問題で中立を保っていた加盟国がベトナム支持を打ち出したのが一因だが、中国は反発を強めている。


 ASEANは11日の首脳会議後に採択した「ネピドー宣言」で関係当事国の自制と法的拘束力のある行動規範の早期策定の必要性を盛り込んだ。12日議長声明10日の外相会議共同声明を踏襲し、「深刻な懸念」というより強い表現を選んだ。

 首脳会議では南シナ海問題を巡る加盟国の温度差が表面化した。ベトナムのズン首相が「中国は恥知らずにもベトナム領海を侵犯し、深刻な違法行為を繰り返している」と激しく対中批判を繰り広げた。南シナ海では12日も両国の艦船が放水で応酬する場面があった。

 これに対し、議長国ミャンマーのテイン・セイン大統領は「加盟国の結束」の重要性を強調。中国との関係が強いカンボジアラオスも沈黙を貫いたもようだ。

 一方、南シナ海問題で比較的中立的だった加盟国がベトナム支持を打ち出した。マレーシアのナジブ首相は「行動規範をすぐ締結すべきだ」と述べ、ベトナムの主張に理解を示した。マレーシアも中国と領有権紛争を抱えるが、これまで中国批判と一線を画してきた。

 中国とのパイプ役を担ってきたインドネシアのユドヨノ大統領もベトナムに同調した。中越間の緊張が高まるなか、ASEANの団結を強く打ち出さなければ、加盟国間の亀裂が大きくなるとの判断が働いたようだ。

 議長声明に対し、中国外務省の華春瑩副報道局長は12日の記者会見で「南シナ海問題は中国とASEANとの間の問題ではない」と反発。ベトナムを念頭に「一部の国が中国とASEANの友好協力関係の破壊をたくらんでいる」と批判した。

 ベトナムでの相次ぐ反中デモについても「強く懸念している」と述べ、ベトナムにいる中国人の安全確保を求めた。

 中国が米国の介入を警戒し、一時的に慎重姿勢に転じる可能性があるが、南シナ海を実効支配下に組み込むとの目標を変えることはあり得ない。当面はASEANへの経済協力をちらつかせてASEAN内部の親中派と反中派の分裂を誘い、再び攻勢をかける時機をうかがうことになりそうだ。

(ヤンゴン=松井基一、北京=島田学)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1202C_S4A510C1FF8000/


ではなぜこのタイミングで敢えて、中国最大の沖合石油探査会社、中国海洋石油(CNOOC)は最新式の石油リグを、ベトナム近海に投入してきたのであろうか、と言う疑問は残る

中国海洋石油総公司、China National Offshore Oil Corp.:CNOOC は、日中中間線付近で春暁ガス田・日本名白樺ガス田を開発している、いわくつきの会社である。開発の実行部隊は子会社の中国海洋石油有限公司(CNOCC Ltd.)が行っている。

中国の国営石油関連企業には、中国石油天然気集団公司(CNPC)と中国石油化工集団公司(Sinopec)が存在している。CNOOCは、3兄弟の末っ子的存在で規模は小さい、と言われている。
(http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/contribution/2006/jpi0601.html)


中国石油天然気集団公司(CNPC)-原油・天然ガスの生産・供給、石油化学製品の生産・販売
中国石油化工集団公司(Sinopec)-石油・天然ガスの探査・開発・輸送など
中国海洋石油総公司(CNOOC)-中国大陸沖合いでの石油・天然ガスの探査・採掘・開発

なおこのURLではまとめとして、次のような文章を載せている。



『中国のエネルギー需要は増加を続けており、その伸び率や増加量は他の国を圧倒的に上回る規模である。これらの需要を満たすため、中国の国営石油会社は世界中の石油と天然ガス資源を求め、東奔西走の状況が続いている。鉱区の取得や権益の買収に加え、CNOOCは、Unocalという大手の買収に打って出た。結果は失敗に終わったが、Unocalの生産量は、CNOOCのそれを上回る規模であり、CNOOCが目指す今後の企業規模をうかがい知ることができた。
Unocalは、日本に最もLNGを輸出しているインドネシアの液化基地への主要なガス供給企業であり、仮に買収が成功していた場合、CNOOCがこれに代わっていたことになる。同社による国際的な買収活動は、今後も継続していくものと見られ、展開の仕方によっては、日本へのエネルギー供給の主要企業となり得る可能性もある。日中中間線の開発のみでなく、今後も同社の動向に留意していく必要があろう。
(続く)
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