世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

次世代エコカー・本命は?(45)

2015-01-30 00:00:00 | Weblog

ここで一応トヨタのFCVに関する特許の内訳を整理しておこう。もちろん先の記事に書かれていたものを、まとめておくだけのものであるが、どんな内容の特許か知っておくことも大切な事ではないのかな。なお数字については、すべて約(おおよそ)とするものである。

燃料電池スタック(本体)  1,970件  2020年末まで無償
高圧水素タンク         290件    同上
燃料電池システム制御    3,350件    同上
水素ステーション関係      70件  期限なしに無償
     合計          5,680件  

これで見るとFCV本体に関する特許件数よりも、そのFCVの動作を制御するための特許の数の方が、1.7倍ほどである。と言う事は燃料電池の物理的なことに関する特許よりも、それを円滑に動かすためのカラクリの方がより難しいものであったのであろう。燃料電池本体はすでに実用化されているのでその原理に関することは特許とはならずに、物理的にはむしろ自動車に搭載するための工夫などが特許となっているのであろう。FCVはご承知のように、メカニカル(機械系)なものと言うよりも化学反応なので、その化学反応を機械系の車の合わせると言う、車を普通のエンジン車と同じように動かすためのFCVの機能・動作に関するための工夫の方が、難しかったのであろう、と推察される。

その点テスラの電気自動車に関する特許は、それほど複雑なものではなかったようだ。電気自動車であれば、リチウムイオン二次電池に関する特許の方が重要となるのであるが、テスラのEVは既知のパソコン用バッテリの「18650」を7,000~8,000個を束ねただけのものなので(と言ったら語弊があるが)、そこら辺のみが特許の対象となっただけのものであろう。



トヨタとテスラ、特許開放に意味はあるのか
独VW幹部が投げかける知財戦略の疑問
2015年1月21日(水)  広岡 延隆

独フォルクスワーゲン電子・電装開発部門担当専務のフォルクマル・タンネベルガー氏

 「トヨタの特許は無償公開の発表がされたばかり。精査できていないのでコメントできない。テスラの特許に関してはすでに調査したが、新しいものは何もなかった

 このほど来日した独フォルクスワーゲン(VW)電子・電装開発部門担当専務のフォルクマル・タンネベルガー氏はこう語った。

 このところ、自動車業界では「特許開放」の動きが話題を集めている。昨年6月米テスラ・モーターズがEV(電気自動車)関連特許を開放すると発表。トヨタ自動車今年1月、2020年までの期間限定でFCV(燃料電池車)関連特許を無償公開した。いずれもEVやFCVの本格的な普及拡大を睨み、デファクトスタンダード(事実上の標準)を獲得しつつ、仲間作りを急ごうとする姿勢が鮮明だ。

 2014年に世界販売で1014万台を達成し、トヨタと業界の盟主の座を争うVW。EVは既に発売済みで、FCVについては「(水素ステーションなど)インフラが整えば迅速に発売できる」(同)と自信を見せる。

 本当にVWはトヨタの特許を使わずにFCVの開発・販売を実現できるのか。この質問に対してタンネベルガー氏は「前述したように精査中なので一般論だが」と前置きしつつこう答えた。「VWは新技術開発にあたって、必ず関連技術が競合他社にあるかをチェックし、持たなくてはならない技術はどこにあるのかを見極める。その上で他の自動車メーカーやサプライヤーとの協力がどの部分で必要かを判断する」と言う。

マスコミ受けは良いかもしれないが…

 特許開放についての質問が連続したせいもあるのだろう。インタビュー中に、そうした動きをもてはやす風潮について釘を刺すコメントが飛び出した。

 「特許を取得してから数年後に業界として標準化するのにあたり、必要に迫れられて特許を公開するようなやり方はしたくない。もし技術の公開や標準化が必要であれば最初からそう取り組むべきだ」。

 「特許をオープンにするというのは、メディアにとってはよいストーリーなのかもしれない。だが、より重要なのはサプライヤーの動向だ。現在複数の自動車メーカーがサプライヤーを共同で利用するという状況になっており、同じ方向を向いていくことがより大事だ」

 いち早く他企業と協調すべき部分を明確にしていくことが、仲間作りの上でますます重要になってくるとの指摘だ。しっかりと技術ロードマップを組み立て、特許として囲い込む競争領域と、むしろその技術やノウハウをシェアする協調領域を切り分けられるかが重要になってくる。

 難しい作業だが今後、その切り分けはますます避けて通れなくなる。「自動運転」など、新しい技術分野が焦点になろうとしているからだ。

 「事故被害を最小限に抑えるためにハンドルを切る必要がある時、両サイドに人がいたとする。その場合、どのようにハンドルを操作するアルゴリズムを作るべきなのか。そんな基準を、自動車メーカー1社で作ることなど不可能だ」(同)。

 自動運転分野には米グーグルなど、IT企業の進出も目立つ。これまでとは異なる様々な価値観の相手と競争しつつ、必要な部分ではいかに協調していくか。各社の試行錯誤が続きそうだ。

ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150120/276500/?rt=nocnt


それにしてもテスラのイーロン・マスクCEOは、かなり強気だ。と言ってもトヨタのFCV「MIRAIミライ」と言う強力なライバルが現れたので、いささか慌てふためいているのかも知れない。事ある毎に
燃料電池(車)に対して、悪口雑言を吐いている。2014.12.9のNO.11でも紹介しておいたが2014.9月の時点で既に「燃料電池車には勝ち目がない」と言っているし、2015.1.8のNO.29では「燃料電池は馬鹿電池(Fuel Cell=Fool Cell)」と言った事を紹介している。今度はデトロイトモーターショー(2015.1.12~25)関連の会議で講演し自社の電気自動車を大いにPRし、その後の記者会見でも燃料電池車をこき下ろしている。余程燃料電池車は気に入らない存在として、脅威を感じているのであろう。

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(44)

2015-01-29 00:00:00 | Weblog

次の100年は水素燃料の時代となる」と、Senior Vice President(Toyota M Sales , USA)のBob Carter氏 は、2015.1.5(米国時間)の国際家電ショー「2015 Internationl Consumer Electronic Show(CES),1/6~9」にあわせて開始前日に述べている。確かに燃料電池の普及にはかなりの時間が必要となろう。そのため少しでも水素社会の到来を早めるために、トヨタがもっている燃料電池関係の特許を公開すると発表している。まあトヨタとしても、FCVの普及については必死なのである。これほど必死になっていると言う事は、トヨタのZEV対応車はこのFCVだけなのかとも勘ぐってしまう。燃料電池車「ミライ」の量がある程度捌けて、コストダウンも図らなければならないのは確かだが、思い切った手を打ったものだとも思う。たしかトヨタは小型のEVも開発していた筈だが、ZEV規制に対してはFCVのみで対応するのか、(我々には計り知れない)遠大な深謀遠慮があるとも思えないのだが、それだけの数が捌けると言う自信があるのかな。


太っ腹!? トヨタが燃料電池関連の特許実施権を無償提供する狙いとは?

2015/01/06 11:33 by 塚田勝弘

世界初の市販燃料電池車(以下、FCV)である「MIRAI」を発売したトヨタ。箱根駅伝でもその姿を見た方も多いと思います。

FCVはまだ高額な車両価格をはじめ、水素ステーションの整備など課題も多いのは間違いありません。それでもトヨタは、FCVをいち早く市販化することで水素社会実現に向けてモビリティ分野で貢献するという意気込みを示しています。

1月6日(日本時間)、トヨタは「FCVの普及に向けた取り組みの一環として、同社が単独で保有している世界で約5,680件の燃料電池関連の特許(審査継続中を含む)の実施権を無償で提供する」と発表しました。

テスラがEV関連の特許を開放するというニュースを思い起こさせますが、今回の発表は「FCV導入初期段階においては普及を優先し、開発・市場導入を進める自動車メーカーや水素ステーション整備を進めるエネルギー会社などと協調した取り組みが重要であるとの考えに基づくもの」としています。

労力と時間をかけて苦労して取得し、また大企業に不可欠であるはずの特許の「特許実施権無償提供」に踏み切るトヨタのFCV普及にかける意気込みのほどがうかがえます。

具体的な内容としては、燃料電池スタック(約1,970件)、高圧水素タンク(約290件)、燃料電池システム制御(約 3,350件)といったFCVの開発・生産の根幹となる燃料電池システム関連を活用してFCVの製造、販売を実施する場合は、市場導入初期(2020年末までを想定)の特許実施権を無償化。

また、水素供給、製造といった水素ステーション関連の特許(約70件)に関しては、水素ステーションの早期普及に貢献するため、水素ステーションの設置、運営を行う際の特許実施権は、期間を限定せずに無償とするとのこと。
これらの特許実施は、特許実施権の提供を受ける場合の通常の手続きと同様、トヨタに申込をして、具体的な実施条件などについて個別協議の上で契約書を締結する予定だそうです。

EVと比べられることの多いFCVですが、EVは航続可能距離や充電時間の長さなど、FCVは車両価格やインフラ整備などそれぞれ課題を抱えています。今回のトヨタの決断によりどれだけFCVの普及に貢献できるか注目です。





http://clicccar.com/2015/01/06/285465/2/


昨年テスラも自身の持つEVの特許を開放したのであるが、テスラの特許はそれほど真新しいものはなかったようでたいした物ではなかったとVWは言ってる様であるが、トヨタの燃料電池に関する特許は、反対に新しすぎて他の自動車メーカーは直ぐには使う事が出来ないのではないのかな、などと考えてもしまう。まあ何はともあれ、トヨタのFCVに関する特許を使用するのであれば、使用条件などに関するきちんとした契約書取り交わす必要があるとしている。まあ当たり前の事ではあるが。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(43)

2015-01-28 00:00:00 | Weblog

パナソニックがEV電池工場 テスラと共同で米に建設へ
近藤郷平
2014年7月4日07時16分

 パナソニックは、電気自動車(EV)向け事業を強化するため、米テスラ・モーターズと共同で米国に大規模EV電池工場を建設する方針を決めた。7月中にも同社と契約し、パナソニックの投資額は200億円以上になる見通し。テスラとの共同工場で、自動車向け電池事業を5年後に3倍以上に伸ばす計画だ。

 テスラの新工場は年内に米国内で建設を開始。2017年に電池の生産を始め、20年に全面稼働させて年50万台分を生産する。テスラは新工場に最大50億ドル(約5千億円)を投じる計画で、電池材料メーカーなどに工場建設への参加を打診。パナソニックはその柱との位置づけだ。

 パナソニックは、テスラが12年に量産を始めたEV「モデルS」(米国で約7万ドル~)に、パソコンでも使われる円筒形リチウムイオン電池を大阪市の住之江工場などから供給。14年3月期、リチウムイオン電池部門が黒字転換する原動力になった。モデルSの世界販売は今年、前年比55%増の3万5千台が見込まれ、来年には多目的スポーツ車「モデルX」発売を控えており、共同工場でさらなる納入増を図る。
http://www.asahi.com/articles/ASG7244C2G72PLFA001.html



馬鹿電池」と呼ばれようが、石油がなくなるか、相当高価になってからでは遅いのである。またいつまでもCO2を排出している余裕はないのである。地球環境が坂道を転がり落ちるように悪化してゆく、その時に果たして電気は、何から作られるのであろうか。もちろん再生可能エネルギーも大事ではあるが、今のうちに安定的に電力を供給する術を準備をしておかなくてはならないのである。だから「究極のエコカーなのである。トヨタが燃料電池車「ミライ」を一般販売したお陰で、その準備が始まるのである。

これはすばらしい事だと、思わなくてはならない。電気自動車は電気を消費するだけで作り出すことはしない、しかし燃料電池(車)は水素(と酸素)で電気を作り出すことが出来るのである。しかもCO2フリーの可能性があるのである。再生可能エネルギーも重要ではあるが、電力を作り出す事の出来る燃料電池はもっと可能性が感じられる。だから水素社会と言うのであり、すばらしいのである。

似たよう論調があったので掲載しておく。ここでも画期的なイノベーションに言及している。



トヨタの「MIRAI」は未来をひらくか 編集委員 後藤康浩
2015/1/11 7:00 ニュースソース 日本経済新聞 電子版

トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」(東京都江東区)
H s5nk
 水素を燃料とする燃料電池車の世界初の一般向け市販車が発売されました。トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」です。自動車は過去20年近くの間で大きな変革期に入っています。なかでも最も大きな変化は、動力を生み出す部分で起きています。1997年にトヨタが発売したハイブリッド車はエンジンと電動モーターを組み合わせて最適化して走る仕組みで、ブレーキをかけたときに失われるエネルギーの回収・再利用も含め自動車の効率を劇的に改善しました。トヨタとホンダがハイブリッド車では先行しました。さらにエンジンを持たず、モーターだけで走る電気自動車が商品化されました。三菱自動車、富士重工業が軽自動車で実用化し、日産自動車が本格セダン「リーフ」を世界で発売しました。米国では電動スポーツカーでのし上がったテスラ・モーターズもあります。中間的な車では、ハイブリッド車でありながら外部の電源で充電もできるプラグイン・ハイブリッド車もあります。

■「C」と「H」の組み合わせ


後藤康浩(ごとう・やすひろ) 84年日本経済新聞社入社。バーレーン駐在、欧州総局(ロンドン)駐在、中国総局(北京)駐在、編集委員兼論説委員、アジア部長などを経て現職。アジアの産業・経済やモノづくり論、資源・エネルギー論などが専門。亜細亜大学大学院で「アジア産業論」を教える。著書に「強い工場」「勝つ工場」「アジア力」「ネクストアジア」など。

 こうした動力の変化をさらに推し進めるのが燃料電池車です。燃料電池は一般の住宅で都市ガスや灯油などから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電し、排熱もお湯として利用する「エネファーム」がこの数年、勢いよく普及しています。発電する仕組みは燃料電池車も変わりありませんが、車のうえで都市ガスや灯油から水素をつくるのが難しいため、燃料電池車はあらかじめつくった水素を積んで、燃料にします。電気自動車はバッテリーに電気としてエネルギーをためて走りますが、燃料電池車は水素をタンクに積んで走り、水素と酸素を車の上で反応させて発電してモーターで走るわけです。

 従来のエンジンだけの自動車はガソリンや天然ガスを燃料にしますが、燃料を構成する原子で考えれば、炭素の「C」水素の「H」の組み合わせです。石油やガスが「炭化水素」と呼ばれる理由です。そのなかで水素の「H」だけで走るのが「MIRAI」のような燃料電池車電気だけで走るのが電気自動車ですが、電気の”原料”には発電所で使う天然ガスなどの「C」と「H」が込められています。つまり、最近の自動車動力の進化は実は元は同じものの使い方の違いにすぎません。食べ物にたとえて言えば、お店が「おコメ」で売るか、「炊いた白米」で売るか、「おにぎり」で売るかといった違いなのです。

■燃料供給に大きな弱み

JX日鉱日石エネルギーが開設した水素ステーション(神奈川県海老名市)=共同

 さて、売り出された「MIRAI」は700万円を超えるような”高級車”です。しかも燃料の水素を補給できる拠点はわずかしかなく、かなりの期間は、実用上はとても不便な車になるでしょう。官民あげて、水素ステーションを増やす計画ですが、今、全国に3万5000カ所もあるガソリンスタンドのようにはならないでしょう。ガソリンスタンドは30年先、50年先もガソリンや軽油を売り続けなければならないので、水素ステーションに簡単に商売替えはできませんし、水素だけではなかなか商売にはなりません。電気自動車の充電は実はお店やオフィスの駐車場、家庭など様々な場所で可能で、電気そのものは全国どこでも簡単に手に入ります。将来的には非接触方式の充電で、道路の路面から電気を供給するアイデアもあります。燃料電池車は現状では燃料の供給に大きな弱みを抱えています。

 その点は世界で売ることを考えると、さらに大きな課題になります。今、世界で自動車販売が伸びているのは新興国と成長を始めた途上国です。自動車販売台数(2013年)ではトップは中国、4位がブラジル、6位がインド、7位がロシアです。途上国ではガソリンスタンドすら圧倒的に不足し、道路沿いに並べたドラム缶から給油するような場所すらあります。ガソリンの供給網が整い、自動車が生活に根付いた後に人々の目が環境性能のよい車に向くとすれば、現在の新興国、途上国で燃料電池車が売れ始めるのは遠い先の話でしょう。

 技術を進化させていくことは企業にとっても社会にとってもとても重要です。まだ大きな需要を期待できない燃料電池車を商品化し、燃料電池車関連の特許も無償公開したトヨタの英断は歴史的にも高い評価を受けるでしょう。それを名誉だけでなく、現実のビジネスに変えていくには、水素の供給システム画期的イノベーションと需要が成熟化した先進国で広く売れる水準まで車両価格を下げることが必要です。「MIRAI」の発売は千里の道の第一歩にすぎません。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81760470Z00C15A1I00000/
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(42)

2015-01-27 00:00:00 | Weblog

なお現在ではこの論考に、次のものが挿入されているので、序に紹介しておこう。

"Forget Hydrogen Cars, and Buy a Hybrid"

マサチューセッツ工科大学の雑誌「MIT Technology Review」の2014年12月12日号は"Forget Hydrogen Cars, and Buy a Hybrid"(燃料電池車は気にせず、ハイブリッド車を買おう)と題する記事を掲載している。

この記事で言っていること:

◎ FCVに関するメーカーの「燃料電池車は水しか出さない」などの宣伝文句は少し"misleading"(誤解を招く恐れがある)、車を動かす水素の大部分は現在天然ガスから製造しており、製造時に相当な量のCO2を大気に排出している。

◎ 市販されているFCVよりCO2排出の少ない車はいろいろあり、その一つハイブリッド車はFCVの約1/3のコストでリース可能。

◎ 米国環境団体UCSの計算ではヒュンダイの燃料電池車Tucson(ツーソン)はガロン38マイルのガソリン燃費相当のCO2を排出し、これは同じTucsonのガソリンエンジン車のガロン25マイル燃費よりは良い。しかしガロン38マイルより良い燃費の車は沢山あり、例えばトヨタのプリウスVはTucsonより少し車室が広くてガロン42マイル走る。Tucson FCVのリース料が月499ドルなのに対して、プリウスVは月159ドルでリースできる。

◎ 新技術によっていつかは水素がクリーンで安価になるであろう。再生可能エネルギー発電による電解水素や太陽光による直接水分解の可能性もあるが、現在のところ水素の燃料電池車の電気自動車に対する主たる優位性は燃料補給の速さにある。
(2014年12月17日追記)


まあFCVの評価は散々であるが、化石燃料から水素をつくるのであれば、当然CO2は排出されるしそれほど環境に優しいものともいえない。であるからして、燃料電池車の水素を化石燃料である天然ガスから取り出す方法での比較であるので、これでは本末転倒であろう。

化石燃料を使わないために燃料電池車を開発してきたのではないのかな、トヨタは。地球上には水素は沢山存在する。だから水素を作り出すための技術革新が待たれるのである。化石燃料はそのうちになくなる物と思わなくてはならないし、化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出す方法と言うものはすでに時代遅れになりつつある、と考えなければきれいな地球は残せないのだ。だから化石燃料から水素を取り出すのは、考えないほうが良い。水素社会の本当の初期の初期のことだけにするほうが良い。


2014.01.08のNO.29出紹介した「村沢義久氏」の主張を再掲しよう。彼は「究極のエコカー」はEVで、燃料電池車はなり得ない、と主張している。

まあわからないでもないが、これはあまりにも一面的な主張のように、小生には思われる。EVにはEVの良さと悪さがあり、FCVにはFCVの良さと悪さがある、と認識しておかなければならない。性急にEVだ、FCVだ、と言う一元的な認識は、間違った方向へ人々を導き技術革新の芽を摘みかねない。


・・・
 筆者は、定置型燃料電池と比較して、FCVの先行きには悲観的な見方をしている。日本では、「究極のエコカー」と呼ぶ人もいるのだが、世界の見方かなり違っている

 まずは、テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)。マスク氏は、テスラの年次総会などで「燃料電池(Fuel Cell)は馬鹿電池(Fool Cell)」と発言し、FCVの普及には否定的な見方をしている。

 マスク氏は、その理由として、水素燃料はつくるのに時間もコストもかかり、貯蔵、輸送が難しく、さらに安全性の問題があること、などを挙げている。

 フォーブス誌も辛辣で、今年(2014年)4月17日に発表されたコラムで、水素燃料補給の困難さなどネガティブな面を指摘した上で、「(トヨタのFCVは)買うのがバカバカしいほどのもの(ridiculous to buy)」と突き放している。

 筆者は、FCVについて、マスクCEOやフォーブズ誌のように、「Fool」や「Ridiculous」などと言う気はない。トヨタの技術は素晴らしいものだと思う。しかし、FCVが「究極のエコカー」の座を勝ち取れる可能性は極めて低いと考える。
・・・



だから小生は、水素社会実現には水素を取り出すための諸々の技術革新が必要となる、と主張しているのである。地球上に半ば無限に存在する水素をいかに効率的にCO2フリーで取り出すか、これには相当の時間が必要となる。だから「究極の」とか「次世代の」とかの言葉が付くのである。

現時点の、または近い将来のエコカーを目指しているのではないのであるが、テスラーのイーマロン・マスクはよっぽど燃料電池(車)にある種の脅威を感じているようだ。そうでなければ半ば人が変わったように”馬鹿電池”などと、燃料電池を呼ぶ筈はない。自分も一ベンチャー企業の創始者であり、技術革新の価値は十二分に承知している筈なのだから。トヨタの燃料電池車「ミライ」を水素社会へのきっかけとなるものと認識し、自身のEVに対してそれなりに危惧を感じているからこその発言なのであろう。愚かなことだ。

「モデルS」や「モデルX」(7人乗りのSUV、2015年春以降に発売)、「モデル3」(2017年発売予定のBMW3シリーズ対抗車)の影が薄くなる事を心配しているのであろうか。テスラーの電気自動車も、その内に、燃料電池で発電した電気のお世話になる時が来るのではないかと、心配しているのではないのかな。

今まではそれなりに「テスラーのイーロン・マスク」と尊敬の念を持ってみていたが、これではシカゴのマフィアの下っ端と見間違うほどの悪の本性を剥き出した一介のがめつい視野の狭い我利我利の痩せ細った企業人に成り下がってしまったようにも見える。誠に残念である。

まあ、イーロン・マスクも向上と革新を旨とするベンチャー精神ではなく、金儲けを旨とする下賎な企業人の本性も持ち合わせていたものと、推察する。ある程度功なると人は変わるものなのであろう。

それとも聡明な頭脳から、燃料電池の未来の輝かしさを予想して、自身のEVに対する不安とあせりからの言動とも推察できる。

燃料電池は「馬鹿電他」と言われようが、CO2排出ゼロで安定的に電力を供給できる可能性がある現時点では唯一のものである。再生可能エネルギーは安定的に電力を供給するには、いまだ覚束ないのだ。燃料電池で作られた電気で水を電気分解して水素を取り出す。その水素で燃料電池を動かしてゆく。そして電気を作り、水を電気分解して水素を取り出す、と言うサイクルが出来上がる可能性がでてきたのである。そして今後の技術革新でそのサイクルは、もっと円滑に進むことになろう。そしてその燃料電池もCO2フリーの唯一のものでは無くなるかも知れないが、テスラのEVに使われているパソコン用の「18650」電池の製造工程もCO2排出ゼロに出来るのか努力を集中する必要がでてくるのではないのかな、マスクさんよ。テスラはパナソニックと共同で大規模なEV電池工場を建設する予定だ。大規模と言うからにはCO2フリーにする事を考えているのかな、とも勘ぐれるがまあ考えてはいないのであろう。ここではCO2を排出しながら、テスラの新たなモデルXなども生産するつもりなのかな。

(続く)
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次世代エコカー・本命は?(41)

2015-01-26 00:00:00 | Weblog

追記1:  Well-to-Wheel評価 – JHFCとトヨタ自動車の効率値を比較する

一次エネルギーとして天然ガスのみを用いた場合の次世代自動車のWell-to-Wheel(総合)効率の比較評価としては、本文に記載のJHFCの評価のほかに、総合資源エネルギー調査会・第28回基本問題委員会(2012.7.5)にトヨタ自動車が提出・説明した資料の中の図(p.12、下記転載)がある。
 
(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1195971/www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol06_01/special/p12.html
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1195971/www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol06_01/vol06_01_main.html)



この図では、燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)の総合効率の値がJHFCの評価結果と全く逆になっている。

すなわち、JHFCの評価結果(10.15モードの場合)ではEVの総合効率がFCVの約1.3倍となるのに対し、トヨタ自動車の資料では逆にFCVの総合効率がEVの約1.3倍となっている。

(この”水素とFCV”の総合効率は、水素56%とFCV60%の積となる筈なのであるが、それなら33.6%とならなければならないものが36%となっているが、これはどういう訳であろうか?正しくは34%ではないのかな。)

トヨタ自動車によるCNGV-HV、FCV、EVの「燃料の効率」、「車の効率」、「総合効率」の値とJHFCによるこれらの効率の値を比較して下の表に示す。

(注、FCVトヨタの総合効率は36%ではなくて、33.6%で34%ではないのか?)

この表のJHFC欄の効率値はJHFC報告書に記載されている評価結果から次のようにして求めた。

① JHFCの圧縮天然ガスハイブリッド車(CNG-HV)の値はJHFCの評価データを参考に推算(推算方法は本文の「一次エネルギーを天然ガスのみに固定した場合」に記載)した値から算出

② JHFCのTank-to-Wheel評価値はMJ/kmで示されているので、効率値にするためにトヨタ自動車のCNG-HVの「車の効率」34%を基準としてJHFCのMJ/km評価値 (10・15モード)から算出

③ 「総合効率」欄のJHFCの値はJHFCの評価値から算出した「燃料の効率」と「車の効率」の積として計算

この表から、FCVとEVの総合効率におけるトヨタ自動車の試算とJHFCの評価の間の差は、それを構成する「燃料の効率」と「車の効率」における以下に示すような両者の評価値の差に起因していると推測する。

① FCVの「車の効率」はJHFCの49%に対してトヨタ自動車は60%になっている。トヨタ自動車のFCVの「車の効率」の60%の値は、燃料電池での発電効率とそれ以降のインバーター・モーターなどの効率を含んだものとしては大きい値である。インバーター・モーターなどの効率から逆算すると燃料電池の発電効率は70%以上になり、現状の燃料電池効率がトップランナーでも60%程度(LHV)なのに対して大きな値を想定している。

② EVの「燃料の効率」はJHFCの40%に対してトヨタ自動車は32%になっている。トヨタ自動車のEVの「燃料の効率」32%の値は、天然ガスの「採掘・液化・運搬」効率85%、「送電」効率95%および「充電」効率86%を用いて「火力発電」の発電効率を逆算すると46%となる。この46%の値は現在発電効率57%(LHV、送電端)の天然ガス火力発電プラントが既に導入されているのに対して小さい値を想定している。

③ 上記の差に加えて、FCVの「燃料の効率」とEVの「車の効率」における其々約6%の差が両者の評価の差を大きくする方向に働いて、「総合効率」がJHFCの「EV:FCV=1.31:1」に対してトヨタ自動車の「EV:FCV=1:1.38」という全く逆の評価になったと推測する。

同じ天然ガス起源の燃料電池車とハイブリッド車・電気自動車の総合効率評価値にこのような大きな差があることは議論・憶測を呼ぶので、試算・評価の条件や根拠などが公開されていることが望ましい。
(2013.10.26)

関連ブログ:
 ●『「水素社会」は来るか? 今後の水素エネルギー利用の方向』
 ●『低温ガソリンSOFCで自動車が変わる?』
 ●『自動車メーカーによる燃料電池車の国際共同開発、「バスに乗らない」フォルクスワーゲン社』

2013.08.22 自動車 | 固定リンク
http://hori.way-nifty.com/synthesist/2013/08/jhfcco2-854a.html


なお現在ではこの論考に、次のものが挿入されているので、序に紹介しておこう。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(40)

2015-01-23 00:00:00 | Weblog

報告書のWell-to-Wheel評価の「標準ケース」の結果の整理(p.90)にも次のように記述されており、上記と同様の結論になっている。

① 水電解を除くすべてのFCVパスで,ICEVより必要エネルギー,CO2排出量とも改善される。

② FCVとHEVを比較すると,必要エネルギーはHEVの方が少ないが,CO2排出量についてはFCVの方が少ない場合もある。

③ オフサイト大規模NG 改質CHG 輸送のFCVはHEVよりCO2排出量が少なくなっている。

④ オンサイト都市ガス改質およびオンサイトLPG改質のFCVは,ガソリンHEVに比べてCO2排出量が下回る。

⑤ CHG輸送とLH輸送のFCVを比較すると,必要エネルギー,CO2排出量の両方でLH輸送の方が大きい。

⑥ 必要エネルギー,CO2排出量とも最も少ないのはBEVおよびPHEV(EV)である。

以上、水素燃料電池車のエネルギー消費量・CO2排出量を他の次世代自動車(ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド車、電気自動車)および従来型エンジン自動車と比較した標準ケースの結果を総合して、

エネルギー節減・地球環境保全への効果で見ると、水素燃料電池車はエンジン自動車よりは優れているが、ハイブリッド自動車と同程度で、プラグインハイブリッド車および電気自動車より劣る

と言えよう。

なお、このJHFCの検討では上記日本の平均電源構成(J-MIX)を用いた「標準ケース」のほか、電力では一次エネルギーを一つに固定するケース(no-MIX)について、また水素製造では副生水素、バイオマス起源水素、再生可能エネルギー電力による電解水素(国内のほか海外のパタゴニアの風力発電、オーストラリアの太陽光・太陽熱発電の電解水素を船で輸送するケースを含む)についても評価している。

また、発電プラントや水素製造プラント(オフサイト大規模改質装置のほかオンサイトの都市ガス改質装置)でCO2を回収し貯留サイトまで輸送して貯留するCCS(CO2回収・貯留)のケースも評価している。これらの検討対象のエネルギーパスは80パスあり、主要なケースの各自動車のエネルギー消費率とCO2排出量についてはデータのほか比較図が示されている。

一次エネルギーを天然ガスのみに固定した場合

ここで一次エネルギーを天然ガスのみに固定した場合についてJHFC報告書の評価結果をもとに考察してみる。
天然ガスはシェールガス採掘技術の確立により一気に供給量が増え、石炭・石油よりエネルギー量当りのCO2排出量が少ないこともあり、天然ガスの輸送燃料としての需要は今後増大していくと見られている。(OECD/IEAのMedium-Term Gas Market Report
http://www.iea.org/newsroomandevents/pressreleases/2013/june/name,39014,en.html)

天然ガスの水蒸気改質法は、従来から大量の水素を安価に製造する工業的に主流の水素製造方式である。JHFC評価においてはFCVへの水素供給16方式の内6方式が天然ガスベースであるが、これら各種方式の中で水蒸気改質の水素製造法が最も効率が良いので、オンサイトおよびオフサイトの改質水素方式について評価する。

一方、エンジン自動車に天然ガス燃料を使用する圧縮天然ガスエンジン自動車(CNGV)の開発・導入が加速しつつあり、これが今後ハイブリッド自動車、さらにプラグインハイブリッド車と電動化していくのは当然の方向と考えられる。そこでガソリン燃料の場合と同様に天然ガス燃料の場合も、エンジン自動車・ハイブリッド自動車・プラグインはブリッド車について評価する。

一次エネルギーを天然ガスのみに固定して次世代自動車のエネルギー・環境性能を比較する際には、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車(水電解水素供給)への電力の供給は天然ガス火力発電を想定することになる。
一次エネルギーを天然ガスに固定した場合のJHFCのエネルギー投入量・CO2排出量の評価結果は報告書p.101の図5-12に示されている。この図に示されているデータをもとに、下記の7車種(エンジン自動車と次世代自動車6車種)について1km走行当りの

一次エネルギー投入量とCO2排出量を比較してみる。

 ① 都市ガス圧縮充填の圧縮天然ガス燃料エンジンCNGV「エンジン自動車」
 ② 都市ガス圧縮充填の圧縮天然ガス燃料エンジンCNGVの「ハイブリッド自動車」*
 ③ 都市ガス圧縮充填の圧縮天然ガス燃料エンジンCNGVの「プラグインハイブリッド車」*
 ④ 天然ガス火力発電の電力による電池充電のBEV「(電池)電気自動車」
 ⑤ 水素ステーションで都市ガスを改質する天然ガスオンサイト改質水素使用のFCV「燃料電池車(オンサイト改質)」
 ⑥ 集中型プラントで天然ガスを改質し水素ステーションに輸送する天然ガスオフサイト改質水素使用のFCV「燃料電池車(オフサイト改質)」
 ⑦ 天然ガス火力発電の電力による水素ステーションにおける水電解の天然ガス電力-水電解水素使用のFCV「燃料電池車(水電解)」

上で*印の車種についてはJHFC報告書では評価されていないが、筆者がJHFC評価のガソリンエンジン車のICEV-HEV-PHEVの関係からエネルギー消費量・CO2排出量ともにHEV/ICEV=0.65として推算した。なお、天然ガス燃料のPHEVの電力走行距離割合(ユーティリティファクター)はガソリン燃料の場合と同じUF=0.5を想定した。
一次エネルギーを天然ガスに固定した場合のこれら7車種のエネルギー投入量とCO2排出量の比較を標準ケースと同じグラフ形式で表示すると下の2図になる。






上の2図から、一次エネルギー源を天然ガスに固定した場合の水素燃料電池車と他の次世代自動車および従来型エンジン自動車のエネルギー消費量とCO2排出量の比較結果は次のようにまとめられる。

エネルギー消費量(1km走行当たりの一次エネルギー投入量)

1.オンサイトおよびオフサイト改質水素を使用する燃料電池車の一次エネルギー投入量はハイブリッド車と同程度で、プラグインハイブリッド車・電気自動車より大きい。

2.水電解水素を使用する燃料電池車の一次エネルギー投入量は、エンジン自動車と同程度でハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車よりはるかに大きい。

CO2排出量(1km走行当たりのCO2排出量)

1.オンサイトおよびオフサイト改質水素を使用する燃料電池車のCO2排出量はハイブリッド車と同程度で、プラグインハイブリッド車・電気自動車より大きい。

2.水電解水素を使用する燃料電池車のCO2排出量は、エンジン自動車と同程度でハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車よりはるかに大きい。

以上、一次エネルギー源を天然ガスに固定した場合の水素燃料電池車のエネルギー消費量・CO2排出量を他の次世代自動車および従来型エンジン自動車と比較した結果を総合すると、

エネルギー節減・地球環境保全への効果で見ると、オンサイトおよびオフサイト改質水素を使用する燃料電池車はエンジン自動車よりは優れているが、ハイブリッド自動車と同程度で、プラグインハイブリッド車および電気自動車より劣る

という標準ケースと同様の結論になる。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(39)

2015-01-22 00:00:00 | Weblog

Tank-to-Wheelの評価結果

ガソリン・軽油が燃料タンクに給油された状態、電気がバッテリーに充電された状態、水素が圧縮水素タンクに充填された状態から、自動車を駆動して1km走行するに要する「Tank-to-Wheel」エネルギー量(MJ)は、各自動車の想定燃費・電費から算出できる。図4-6はJC08モードでの走行の場合。

図4-6に示されているTank-to-Wheelのエネルギー消費率(MJ/km)の大小は其々の自動車のパワートレインの特長から説明できる。

電気自動車(BEV)はエネルギーとして最も質の良い電気からモーター駆動による電力走行をするので最もエネルギー消費率が小さい

水素燃料電池車(FCV)は水素からの燃料電池発電を経てモーター駆動による電力走行になるので、燃料電池発電の損失の分だけ電気自動車よりエネルギー消費率が大きくなる

●この図では、次にハイブリッド車(HEV)のエネルギー消費率が小さくなっている。ガソリンエンジンの動力を一部電力に変換して機械力走行に電力走行を組合せてハイブリッド走行するので燃料消費率がガソリンエンジン車(ICEV)の64%と効率的である。

プラグインハイブリッド車(PHEV)は、充電電力による電力走行とガソリンエンジンによるハイブリッド走行を組み合わせるので、エネルギー消費率ハイブリッド車と電気自動車の中間になる。図4-6のハイブリッド走行の値1.17は1kmを全部ハイブリッド走行した時の値で、0.36は1kmを全部電力走行した時の値で、このJHFCの検討ではPHEVとしてユーティリティファクターUF=0.5の車を想定しているので1km走行のエネルギー消費率は1.17x(1-0.5)+0.36x0.5=0.765となる。
(図4-6記載の「*プラグインハイブリッド走行」の値の「0.59」は2009年7月に国土交通省が定めた「プラグインハイブリッド燃料消費率(複合燃料消費率)」の計算方法により 1.17x(1-0.5)=0.585 で算出したもの。この値はガソリン消費量のみで電力消費量は含まない。プラグインハイブリッド車のガソリンと電力の消費量を合算した値は上記の「0.765」となる)

なお、ここで充電電力におけるエネルギー消費率の値はバッテリーに充電された状態のエネルギー量(MJ)をベースにしており、通常の電費が充電器に入る前の交流電力を基準とする所謂「交流電力消費率」で表されるのと異なっているので注意が必要である。(JHFC評価では充電効率86%を想定している)

Well-to-Wheelの評価結果


Well-to-TankTank-to-Wheelのエネルギー消費量とCO2排出量を総合するとWell-to-Wheelの1km走行当たりのエネルギー消費量とCO2排出量の値が求まる。
標準ケース(J-MIX)におけるWell-to-Wheelのエネルギー消費量とCO2 排出量の算出結果(JC08 モード)は図5-3に示されている。この図でWell-to-Wheelのエネルギー消費量(左側)は上の目盛で,CO2 排出量(右側)は下の目盛で読む。

図5-3に示されている燃料電池自動車の水素製造供給16方式を、「オンサイト改質」、「オフサイト改質」、「水電解」の3種に集約して、これら集約3方式の燃料電池車のエネルギー消費量(一次エネルギー投入量)とCO2排出量をエンジン自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車と比較してみる。次の二つの図では集約したデータの最大・最小の値を線の上と下の位置で示し、最大最小の中間の値を点で示した。





なお、報告書には、筆者がJHFC評価結果から作成した上の二つの図のような縦軸にエネルギー消費量とCO2排出量をとり横軸に車種をとって端的に比較した図は掲載されていない。

JHFC「標準ケース」評価のまとめ

これらの図から判るように、JHFC標準ケースの燃料電池車のエネルギー消費量とCO2排出量には水素製造供給16方式でその大きさに差があるが、水素燃料電池自動車と他の次世代自動車とのエネルギー消費量とCO2排出量の比較結果は次のように整理できる。

エネルギー消費量(1km走行当たりの一次エネルギー投入量)

1,水電解水素を使用する燃料電池車のエネルギー消費量は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車はもとより、エンジン自動車よりも大きい。

2,最もエネルギー消費量が小さい燃料電池車でもハイブリッド車と同程度のエネルギー消費量であり、最もエネルギー消費量が小さい燃料電池車よりもプラグインハイブリッド車と電気自動車の方がエネルギー消費量が小さい。

CO2排出量(1km走行当たりのWell-to-Wheel CO2排出量)

1,どの燃料電池車のCO2排出量もエンジン自動車よりは小さい。燃料電池車水素製造供給16方式のCO2排出量の巾の中にハイブリッド車が入る。

2,最もCO2排出量の小さい燃料電池車でもプラグインハイブリッド車と同程度のCO2排出量であり、最もCO2排出量の小さい燃料電池車よりも電気自動車の方がCO2排出量が小さい。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(38)

2015-01-21 00:00:00 | Weblog

評価の対象とする車種

JHFCの検討においては下記の5車種を対象としてWell-to-Wheel評価を行なっている。

●内燃機関自動車(ICEV) 燃料はガソリン、軽油、圧縮天然ガスの3種
   ガソリン(ICEV) Internal Conbustion Engine Vehicle内燃機関自動車
   ディーゼル(DICEV)
   圧縮天然ガス(CNGV) Compressed Natural Gas Vehicle

●内燃機関ハイブリッド車(HEV) 燃料はガソリン、ニッケル水素電池
   ハイブリッド車(HEV)

●プラグインハイブリッド車(PHEV) 燃料はガソリン、リチウムイオン電池、電力走行割合は0.5
   プラグインハイブリッド車(PHEV)

●(バッテリー)電気自動車(BEV) リチウムイオン電池
   電気自動車(BEV) Battery Electric Vehicle

●(水素)燃料電池車(FCV) 圧縮水素搭載、リチウムイオン電池
   燃料電池車(FCV)

評価対象の車種の基本性能は原則として同等としており、その他の前提条件、車種想定、各車種の燃費・電費などの具体的な数値およびその導出の基礎などは報告書に記載されている。
なお、想定しているプラグインハイブリッド車は「電力走行割合」ユーティリティファクターUF=0.5のもの。因みに、プリウスPHV(2012年式)はUF=0.48、ホンダアコードPHEV(2013年式)はUF=0.59、三菱アウトランダーPHEV(2013年式)はUF=0.72である。


JHFC報告書では、この一覧表に示す各種水素製造・輸送方式の燃料電池自動車(FCV)と比較の対象とする各種自動車(ICEV、HEV、PHEV、BEV)について定量的評価を行い結果を示している。
燃料電池自動車への水素の供給方式としては、JHFC プロジェクトの実証水素ステーションの各種方式を参考に、標準ケースでは化石燃料オンサイト改質8方式、化石燃料オフサイト改質6方式、商用電力オンサイト電解2方式の合計16方式を評価している。

Well-to-Tankの評価方法

Well-to-Tank評価とは、一次エネルギー(原油、天然ガスなど)の源の油田やガス田などから自動車のガソリンタンク・圧縮水素タンク、バッテリーまでのエネルギーの流れ(輸送、変換などのプロセス)を評価して、車載のタンク・バッテリーに単位(1 MJメガジュール,エネルギーの単位)のエネルギーを入れるのに必要な一次エネルギー投入量と途中のプロセスで環境に排出するCO2排出量を計算することを言う。

検討の対象とするガソリン、軽油、電気、水素などの一次エネルギー源からタンク・バッテリーまでのエネルギーの流れ(パス)のそれぞれについて数値的に計算する。このJHFC報告書では80のパスについて計算してWell-to-Tankの一次エネルギーとCO2排出量を算出している。

電力の流れでは電源の構成によってエネルギー投入量とCO2排出量が大きく変わる。この検討における電源構成比には検討当時最新の経済産業省 資源エネルギー庁「平成22 年度電力供給計画の概要」(2010.3)による2009 年の推定実績を用いている。この電源構成による電力を「J-Mix」と呼びこの検討では「標準ケース」としている。

発電のCO2排出量は発電方式により異なり、この検討では電力中央研究所による電源別CO2排出原単位のデータと上記J-Mixの電源構成比から算出している。

Well-to-Tankの評価結果


図3-14は、標準ケース(日本の2009年の平均電源構成電力、J-MIX)におけるWell-to-Tankの燃料消費量とCO2排出量を水素燃料電池車の水素製造・供給16方式をエンジン自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車と比較したものである。

数値は、燃料1 MJ をタンク・バッテリーに充填するまでの(Well-to-Tank)エネルギー消費量(一次エネルギー投入量)および燃料1 MJをタンク・バッテリーに充填するまでに放出される(Well-to-Tank)CO2 排出量を示している。Well to Tank でのエネルギー消費量は上の目盛で,同CO2 排出量は下の目盛で読む。なお,圧縮水素の車両充填圧力は70MPa。
報告書に記載されている「標準ケース」の結果の整理(p.59)から主なものを下記転載する。

① 水素を製造するためには,現行のガソリンおよびディーゼル燃料を精製する以上のエネルギーを必要とする

② 日本の平均電源構成を用いた水の電気分解による水素製造および電力発電は,現行のガソリンおよびディーゼル燃料以上に多くのエネルギーを必要とし,CO2 排出量も多い

③ 現行のガソリンおよびディーゼル燃料以外で比較的必要エネルギーが少なく,CO2 排出量も少ないのは,オフサイトでNG 改質して圧縮水素(CHG)で輸送するパスと,オンサイトでの都市ガス改質のパスである。

④ オフサイト改質で製造した水素を液体水素(LH)にして輸送すると,CHG を輸送・充填するケースと比較して多くのエネルギーを必要とし,CO2 排出量も多い。


(続く)
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次世代エコカー・本命は?(37)

2015-01-20 00:00:00 | Weblog

Well-to-Wheelによる総合評価

一般に自動車のエネルギー消費量とCO2排出量を評価する際に、エネルギー採掘の源まで遡って、そこから車のテールパイプまで途中のエネルギー変換プロセスにおけるエネルギー損失やCO2排出を含めて評価する「Well-to-Wheel」(油井から車輪までの意味、略してWtW)の手法が用いられる。

ここでは「JHFCプロジェクト」と略称される「水素・燃料電池実証プロジェクト(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)」によるWell-to-Wheel評価結果から考察を行う。このJHFCプロジェクトは経済産業省が実施する燃料電池システム等実証試験研究補助事業に含まれる「燃料電池自動車等実証研究」と「水素インフラ等実証研究」から構成されるもので、Well-to-Wheel評価に関しては2006年に発行された第1期報告と2011年に発行された第2期報告がある。

なお、Well-to-Wheel評価についてはこのほか下記に示すように、米国では自動車メーカー・国立研究所・石油会社による研究、日本ではトヨタ自動車・みずほ総研による研究などがある。

● GM, ANL, BP, ExxonMobil and Shell “Well-to-Tank Energy Use and Greenhouse Gas Emissions of Transportation Fuels – North American Analysis” (2001) Download

● GM, ANL, BP, ExxonMobil and Shell “Well-to-Wheels Analysis of Advanced Fuel/Vehicle Systems — A North American Study of Energy Use, Greenhouse Gas Emissions, and Criteria Pollutant Emissions” (2005) Download

● トヨタ自動車、みずほ情報総研 「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価 日本における輸送用燃料製造(Well-to-Tank)を中心とした温室効果ガス排出量に関する研究報告」(2004) Download

ここでは、2010年度日本自動車研究所(JARI)が発行した報告書「総合効率とGHG排出の分析」にまとめられている上記JHFCプロジェクトのWell-to-Wheel評価結果を中心に以下の参考文献をもとに考察する。(GHG:Greenhouse Gas温室効果ガスの事)

【参考資料】

1.JHFC総合効率特別検討委員会「JHFC総合効率検討結果報告書」(日本自動車研究所発行2006年3月) Download

2.JHFC総合効率検討作業部会「総合効率とGHG排出の分析報告書」(日本自動車研究所発行2011年3月) Download

3.JHFC国際セミナー 企画実行委員会・総合効率検討作業部会 石谷久委員長 特別講演資料「総合効率とGHG排出の分析」 2011年2月28日 Download

このJHFC検討の目的について上記報告書の最初に次のように記している。

から経済産業省の補助事業としてスタートし,2009 年度から新エネルギー産業技術開発機構(NEDOの助成事業「燃料電池システム等実証研究」として推進されたJHFCプロジェクトでは,燃料電池自動車を主とする各種の高効率低公害(代替燃料)乗用車のWell-to-Wheel総合効率のデータを確定することにより,燃料電池自動車の位置づけを明確にし,燃料電池自動車および燃料電池自動車用燃料供給設備の普及促進を図ることが目的のひとつに掲げられている。」

JHFCではこの調査の前に同様のWell-to-Wheel総合効率の調査を実施しており、この結果は2005年度に「JHFC総合効率特別検討委員会」による「JHFC総合効率検討結果報告書」(上記参考資料1)として日本自動車研究所から公表されている。今回参考にするWell-to-Wheel総合効率の調査(上記参考資料2)は2005年度までの結果を見直し、最新の車両の燃費データ・諸元等を用い,エネルギー消費量・CO2排出量に関わるデータやエネルギーパスなども最新の情報に基づくものを使用している。

2010年度調査では2005年度と同様に、燃料電池車を含む自動車・エネルギー・環境・水素エネルギー・燃料電池・インフラなどに関係する専門家・有識者・関係者による「総合効率検討作業部会」(石谷久委員長)を組織して、データ提供や助言を受けつつ進めている。

総合効率検討作業部会には次の35団体が参加している。

【大学・研究所】
新エネルギー導入促進協議会 東京工業大学 東京大学 横浜国立大学 筑波大学 工学院大学 国立環境研究所 産業技術総合研究所 日本エネルギー経済研究所 地球環境産業技術研究機構

【団体等】
日本自動車工業会 燃料電池実用化推進協議会 石油連盟 電気事業連合会

【企業】
トヨタ自動車 日産自動車 本田技研工業 GM ダイムラー スズキ マツダ JX日鉱日石エネルギー コスモ石油 昭和シェル石油 東京ガス 岩谷産業 大陽日酸 ジャパン・エア・ガシズ 新日鉄エンジニアリング 出光興産 栗田工業 伊藤忠エネクス シナネン 大阪ガス 東邦ガス

以上のほかに、オブザーバーとして経済産業省、NEDO、新日石総研、事務局として日本自動車研究所ほかが参加



Well-to-Wheelの範囲

Well-to-Wheelを総合した効率とCO2排出の評価は、図(水素燃料電池車の場合)に示すように一次エネルギーの採掘から、燃料製造、輸送、車両への充填を経て、最終的に車両走行にいたる全てのエネルギー消費を考慮した、総合的なエネルギー効率CO2排出量を評価するもので、Well-to-TankとTank-to-Wheelに分けて評価しこれを総合してWell-to-Wheel評価としている。
(続く)
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次世代エコカー・本命は?(36)

2015-01-19 00:00:00 | Weblog

その分析に出てくるJHFCとは、Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project 水素・燃料電池実証プロジェクトである。そのホーム・ページの冒頭の案内を紹介しよう。


JHFCプロジェクトとは
JHFCプロジェクトは未来の地球のために生まれたプロジェクトです。

「水素・燃料電池実証プロジェクト(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)」とは、経済産業省が実施する燃料電池システム等実証試験研究補助事業に含まれる「燃料電池自動車等実証研究」と「水素インフラ等実証研究」から構成されるプロジェクトです。

平成14年度~平成22年度まで、燃料電池自動車の本格的量産と普及の道筋を整えるため、各種原料からの水素製造方法、現実の使用条件下でのFCV(燃料電池自動車)の性能、環境特性、エネルギー総合効率や安全性などに関する基礎データを収集し、そのデータの共有化を進めるための研究・活動を行っていました。

第1期の主な成果

1. FCVの自動車としてのエネルギー効率の高さを明らかにした。

2. FCVや水素ステーションの実証データを用いてWell to Wheel総合効率(1次エネルギーの採掘から、燃料製造、輸送、車両への充填をへて、最終的に車両走行にいたる全てのエネルギー消費を考慮した、総合的なエネルギー効率)を明らかにした。
http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/jhfc/index.html


それではJHFCの論考を紹介しよう。


synthesist シンセシスト(http://hori.way-nifty.com/synthesist/)
an intellectual who synthesizes
2013.08.22
(http://hori.way-nifty.com/synthesist/2013/08/jhfcco2-854a.html)

燃料電池車はどの程度エコか? JHFCの検討結果からエネルギー消費量とCO2排出量を他の次世代自動車と比較する
水素燃料電池車の導入には水素ステーションの整備支援や車の販売助成など政府による多額の援助が必要であるが、果たして燃料電池車に「水素を燃料とし、走行時にはCO2を一切排出せず、省エネルギー・地球温暖化対策に大いに寄与することが期待される・・・」と謳われているようなエネルギー・地球環境への効果はどの程度あるのか?

前の記事「自動車メーカーによる燃料電池車の国際共同開発、『バスに乗らない』フォルクスワーゲン社」(http://hori.way-nifty.com/synthesist/2013/07/post-d18b.html)の続きとして、本稿では「JHFC(水素・燃料電池実証)プロジェクト」によるWell-to-Wheel評価結果から水素燃料電池車のエネルギー消費量・CO2排出量を他の次世代自動車(ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド車、電気自動車)と比較してみる。

JHFCプロジェクトによる次世代自動車のWell-to-Wheel総合効率評価の結果から、標準ケースについては次のように言える。

「エネルギー節減・地球環境保全への効果で見ると、水素燃料電池車はエンジン自動車よりは優れているが、ハイブリッド自動車と同程度で、プラグインハイブリッド車および電気自動車より劣る」

評価方法・前提条件・仮定・各種ケースの結果など詳細については、以下の説明およびJHFCプロジェクトの報告書を参照下さい。

「ZEV」と「EEV」

カリフォルニア州大気資源局による低公害車の分類の中に「ZEV」(Zero-Emission Vehicle)という最もクリーンな自動車を指す部類がある。八重樫武久氏は「Cordia」ブログの「エミッション・エルスオエア・ビークル」(http://www.cordia.jp/blog/?p=1029)の中でZEVについて次のように述べている。

「ZEVの代表のバッテリー電気自動車(BEV)は、確かに走行時に燃焼による排気ガスを出しませんが、厳密に言えばその走行の為に、地球温暖化ガスである CO2は排出しています。当然の話しですが、充電の為に使用する電気は、どこか(elsewhere)で、エネルギーを消費し排出(emission)して作られたものです。」

このEmission Elsewhere Vehicle(どこか他所で排出する車)略して「EEV」という呼び名はStanford大学のLee Schipper教授が冗談めかしに作ったもので、八重樫さんがブログで紹介しているようにDaniel Yergin の著書"The Quest: Energy, Security, and the Remaking of the Modern World" (日本語版ダニエル・ヤーギン「探求――エネルギーの世紀」)の中で引用されている。カリフォルニア州大気資源局(CARB)で「ZEV」に分類されているバッテリー電気自動車が実際は「EEV」であるのと同様に、CARBで同じく「ZEV」に分類されている水素の燃料電池車も水素を製造する際にCO2を排出する場合は車以外でCO2を排出しているのでこれも「EEV」となる。

バッテリー電気自動車(BEV)や水素燃料電池車(FCV)が再生可能エネルギーあるいは原子力によってつくられる電力や水素によって駆動される場合は発電や水素製造におけるCO2排出がゼロなので、この場合は「ZEV」と言うことができよう。


電気自動車と燃料電池車のエネルギー効率の比較

ここで、バッテリー電気自動車と水素燃料電池車について電力からスタートした時のエネルギー効率、すなわち電力系統が供給した電力の内自動車の駆動に使用されるエネルギーの割合を見てみる。BEVとFCVの電力系統から車輪までのエネルギー効率の比較においては、下の図にあるようにBEVは交直変換→充電→モーターの段階を経由するのに対して、FCVは電気分解→液化または圧縮→(輸送)→燃料電池発電→モーターなどの段階を経由する。この場合、供給する電力は再生可能電力以外でも効率は同じである。





上の3つの図に例示されているケースのFCV/BEVのエネルギー効率の比は、

【Ulf Bossel】 19~23/69=1/3.6~1/3
【Eberhard & Tarpenning】 (0.7x0.9x0.4)/(0.93x0.93)=1/3.4
【日本産業機械工業会調査報告】 22.9/63.9=1/2.8

となり、上記の例では電力からスタートした時のエネルギー効率は燃料電池車は電気自動車の1/2.8~1/3.6と低い。すなわち、同じ走行をするのに、燃料電池車は電気自動車の2.8倍~3.6倍の電力を消費することになる。ただし、この比較は各ステップの一般的な効率から求めたもので、正確には後段で説明するように個々のケースについて具体的な数値を入れた計算が必要である。
(続く)
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