五輪ヒーローに「一生無料で提供」の国民食
今回、回収騒動の中心となったのは農心の袋ラーメン「さ袋ラーメン」だ。ノグリは韓国語でタヌキの意味で、パッケージの一部にタヌキが描かれている。コシのある太麺とだしの効いた辛めのスープが特徴で、麺と一緒に煮込んでだしを取るための乾燥コンブが丸のまま入っているのが売りだ。
韓国の即席ラーメンといえば、日本では同じ農心が販売する「辛ラーメン」が有名だが、韓国でノグリは、辛ラーメンに勝るとも劣らない人気定番。日本でも大手スーパーなどで販売されていた。
韓国で即席ラーメンは国民が平均週1・5回は食べる「国民食」で、日本以上に「普通の食事」として定着。食堂などでも堂々と正規メニューとして提供されている。
ノグリをめぐっては今夏のロンドン五輪にまつわりこんなエピソードも生まれた。
体操男子跳馬で韓国体操史上初の金メダルを獲得した梁鶴善(ヤン・ハクソン)選手(19)。家も建てられず、農業用のビニールハウスで暮らす両親に少ない選手手当を仕送りし続けていた境遇もあって韓国最高のヒーローとして脚光を浴びた。
その梁選手が大好物の「ごちそう」がノグリで、母親が韓国メディアの取材に「帰ってきたらノグリを食べさせてあげる」と答えたことから、農心は梁選手に「一生涯分のノグリを無料提供する」と申し出た。
この国民定番商品の自慢のだし味に使われていたかつお節が今回、問題となった。
韓国で食品などを管轄する食品医薬品安全庁(食薬庁)が10月25日、基準値を超える発がん性物質「ベンゾピレン」が検出された業者のかつお節を粉末スープに使っている4社9製品の自主回収を命じる方針を示した。一部は既に流通していないことが分かり、最終的にノグリなど2社5製品が回収された。
中国では「辛ラーメン」にも飛び火…売り上げ4割減
農心や食薬庁は「生涯食べ続けても健康に害はないレベルだ」と強調したが、食の安全に敏感な消費者は過剰反応を示した。
インターネットでは「発がん性物質が含まれた農心のラーメンは絶対食べてはいけない」「10年以内に農心のラーメンを一度でも食べた人はがん検診を受けるべきだ」との根拠のない書き込みが相次ぎ、不安をあおった。
韓国での回収命令に日本も即座に反応。韓国食薬庁の方針決定の翌日には厚生労働省が該当製品を輸入した業者に自主回収を指導するよう自治体に要請。韓国食品を扱う店舗に加え、農心商品を取り扱う大手スーパーの棚からも一斉にノグリが消えた。
回収騒動はノグリが流通する台湾や香港にも広がり、一部店舗が販売する米国やマレーシアでも撤去の動きが出た。
中国では、メディアが「韓国の辛ラーメンから発がん性物質が検出された」と報道。辛ラーメンは発がん性物質とは全く関係がないが、農心を代表する商品だけに誤解され、とんだとばっちりを受けた。韓国メディアによると、そもそも中国で売られる製品は現地で生産されるため、回収原因となったかつお節を使ってさえいなかった。
農心は韓国即席ラーメン市場のシェアの70%を占めるだけに業界への影響は大きかった。食薬庁の方針決定から数日間でノグリの売り上げは4割減少。即席ラーメン全体の売り上げも5%落ち込んだという。
ラーメン談合で庶民の懐から1兆ウォン奪う…悪いのはどっち?
農心など大手4社をめぐっては今年3月、2001年から10年間にわたって談合を行い、価格を不当につり上げていたとして、韓国公正取引委員会が課徴金1354億ウォン(約100億)の納付を命じていた。
韓国メディアは「価格つり上げで庶民は1兆ウォン(約738億円)以上の余計な出費を強いられた」と厳しく非難した。
それだけに業界への風当たりは強かったが、今回はそれ以上に食薬庁が激しい批判にさらされた。
というのもそもそも加工業者のかつお節から基準値を上回るベンゾピレンが検出されたのは6月のことだ。この際、食薬庁はノグリなどの粉末スープも検査したが、基準値を下回る数値しか検出されず、「健康に害はない」と不問に付していた。
ところが10月23日になって一部メディアが「農心商品から発がん性物質が検出された」と報道。翌24日に韓国国会で食薬庁長は「健康に害はない」と答弁しながら、野党議員が厳しく追及すると、「是正措置を取るべきだった」と弱気に転じ、実務方としっかり協議することなく、25日には自主回収を命じる方針を発表したのだ。
ベンゾピレンは、がんを誘発する環境ホルモンであるものの、肉の焦げや排ガスにも含まれ、日常生活の中でもある程度の摂取は避けられない。農心側は「粉末スープから検出された量は豚の焼き肉を食べるのに比べて1万6000分の1に過ぎない」とも説明する。
特に回収騒動が海外まで及ぶと、食薬庁の場当たり的対応に対し、メディアや専門家の非難は高まった。食の安全に関する専門家団体などが「科学的根拠がないまま、商品を回収させ、社会的損失を招いた」と批判の声を挙げた。
ただ、6月に発がん性物質が検出された際、事実と安全性について消費者にきちんと説明しなかったのは業者も食薬庁も同じだ。「業者と監督省庁が癒着し、事実をあいまいに処理した」と勘ぐる声もある。
談合による値段の不当つり上げに続いて食の安全に対する不安をかき立てられ、右往左往させられたのは消費者だ。今回の騒動が日本同様にインスタント食品に依存し過ぎる現代韓国の食生活を見直すきっかけにでもなれば、無駄な空騒ぎとはならないだろうが。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121117/kor12111712000002-n1.htm
発がん物質の量についてのはそれほどのことでもないようだが、業者も監督官庁も、その対応がなっていないことのほうが、小生には問題だと思う。何はともあれ、キチンと実態を説明して国民を納得させていない。ここでは監督官庁の食品医薬品安全庁(食薬庁)の対応が、まるでなっていない。多分叩けばほこりが出る体だったので、相当に腰が引けてしまっていたのであろう。検査結果をしっかりの報道して、その影響もしっかりの、堂々と説明しておけば、そんなに大騒ぎにはならなかったのではないか、と思われるのだが。この食薬庁の対応を見ていると、この役所も相当甘い汁を吸っていたのではないか、と思われても仕方が無いであろう。まあ韓国全体がこんな調子なのであろう。朴槿恵の手には負える物ではないのであろう。だから外に向かって国民の目を逸らさせたいのだ。
そんなニーズはまだありそうだ。
(続く)