世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

番外編・プリウス急加速問題(104)

2012-04-28 08:40:23 | Weblog

世界中を日本発の電気自動車が走る日

――基本性能が同じなら、どこにオリジナリティを持たせるのか、企業間競争の中身も変わってきますね。

シムドライブ 清水浩社長

清水: 時計のクオーツムーブメントはセイコーとシチズンの2社がほぼ100%のシェアを占めていて、世界中のメーカーに極めて安価に提供されています。そこに付加価値をつけて高額の時計として販売するメーカーもあれば、手ごろな値段で量産するメーカーもありますね。電気自動車のプラットフォームも同様に誰でも使える技術として提供されるようになれば、どんな車体デザインにするかで製品としての価値が変わります。デザイン次第で何倍にも価値が上がるわけですから、カーデザイナーの仕事は面白くなるでしょうね。
 新しい産業が興るときは、さまざまな技術が登場しますが、最終的には一番シンプルで、最も合理的な技術が残るものです。電気自動車のプラットフォームでは当社の「SIM-Drive」が最も効率がよく、シンプルで、合理的です。こうした点で「SIM-Drive」は私が30年間かけて出した答えなのです。

――電気自動車が量産段階に入るフェーズ3では、シムドライブ社は製造サポート事業や教育事業などを展開する予定です。具体的にはどのような事業になるのでしょうか。

清水: サポート事業で行うのは、各社が独自の電気自動車を開発するときの支援です。提携企業は先行開発車に関するノウハウを持ち帰れますが、実際に開発するときには、我々が30年間で蓄積した知識や技術を生かして、さまざまなアドバイスをできたらと考えています。
 教育事業は、電気自動車の開発者と技術者に向けた教育です。今はエンジン車の技術者が全国に約20万人いますが、この人たちはいずれ電気自動車に対応するための知識や技術を習得する必要性が出てくるでしょう。そのための教育用ツールの開発などを事業化していく計画です。


電気自動車と太陽電池が世界を変える

――電気自動車は世界を変えるともおっしゃっています。

清水: 世界の人が電気自動車に乗るようになれば300~500兆円規模の市場になるとの試算があります。もし、日本企業がこのうちの10%のシェアをとることができたら、それだけで50兆円になります。日本経済のことを考えればこれは大きい。そして日本には電気自動車を大きな産業として育てる能力と資格があると思っています。
 私はいま、2回目の産業革命が起ころうとしているのだと考えています。1回目は農業社会から工業化社会への変革で、社会を支える基盤が食料からエネルギーへと変わりました。農業も工業もサービスも、すべてエネルギーに立脚しています。20世紀はエネルギーを十分に使える豊かな生活を目指しましたが、その豊かさを手に入れたのは一部の先進国の人たちだけで、世界人口から見たら1割に過ぎません。残る9割は農業社会時代と変わらない生活を送っているのです。
 そうした状況を打開する技術の一つが電気自動車。そしてもう一つが太陽電池です。解決できるのは環境問題だけではありません。
 試算では、地表の1.5%に太陽電池を張り付ければ世界の70億人が米国人並みにエネルギーを使えるようになります。エネルギーが行きわたるようになれば、世界の農業や工業、教育もすべてが変わる。そして、電気で走る電気自動車は環境やエネルギーの制約を受けない最も手軽な移動手段として世界中で自由に使えるようになるでしょう。そうなれば、世界中の人々の生活を変わります。貧困や人口爆発もなくなって、先進国と途上国の差がなくなっていきます。
 これが21世紀の産業革命だと私は考えています。成功のカギは、こうすれば我々は明るい未来をつくれるのだと、世界中のみんながポジティブに考えることだと思います。

清水浩(しみず・ひろし)氏
株式会社シムドライブ 代表取締役社長
慶應義塾大学環境情報学部 教授
http://www.eliica.com/
1947年、宮城県生まれ。75年、東北大学工学研究科博士課程修了。
76年、環境庁国立公害研究所(現・環境省国立環境研究所) に入所。87年、国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官に就任。97年に退任。

97年、慶應義塾大学環境情報学部教授に就任。環境問題の解析と対策技術についての研究(電気自動車開発、エネルギーシステム開発)に従事する。

2009年8月、株式会社シムドライブ(SIM-Drive)を設立。インホイールモーター型の電気自動車の普及を目指す。

これまでの30年間で9台の電気自動車の試作車開発に携わる、日本の電気自動車開発の第一人者。新世代の駆動方式として期待を集める「インホイールモーター」を使用した実験車両「Eliica(エリーカ)」は、04年に電気自動車として最高速度の370km/hを記録した。 09年からは神奈川県と共同で電気バスの開発も手掛ける。

著書に『脱「ひとり勝ち」文明論』(ミシマ社)、『温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)、『高性能電気自動車ルシオール』(日刊工業新聞社)などがある。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/interview/20091120/102668/?P=1


2次電池のコストは大量生産ができれば、劇的に安くなると言っている。電気自動車の普及とリチウムイオン電池の価格低下は、同一次元で起こってゆくのであろう。お互いが夫々影響を受け、且与えながら、価格は下方へ収斂してゆくことであろうが、それほど単純な動きでもないことと思う。まだ一波乱も二波乱もあることであろう。

このSIM-Driveは「オープンソース」方式と言うことで、参加企業にはそこで培われた技術・知見などは自由に提供されることになっている。しかも参加企業や団体は世界にまたがっている。そのためその技術・知見は日本国内だけに留まっていない。願わくは、日本国内だけでの「オープンソース」方式にできれはよかったとも思われるが、それにしても技術の特許管理などはどんな扱いとなっているのであろうか。参加企業や団体だけでの使用などの縛りや規則違反に対する罰則はあるのであろうか。事実オープンソース方式に基いてアウターローター式のインホイールモーターについては、台湾の企業が製品化を進めていると言うし、SIM-Drive社は大型バスの電気化もトライしていると言う。まあそれにもましてSIM-Drive社内情の一端が垣間見られるやりとりも載っているので興味深い。何はともあれ、電気自動車といえども実用に供する車を作ることにはそれなりのステップを踏んだ車造りが必要であるということ。単にエンジンをバッテリーとモーターに置き換える程度の車造りでは、当然駄目である。

(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(103)

2012-04-27 08:19:02 | Weblog

異例のオープンソース方式を採用

――その電気自動車コンポーネントに社名と同じ「SIM-DriveSHIMIZU In wheel Motor-Drive)」という名前をつけて、オープンソースで開発を進めるそうですね。そして、2013年には「SIM-Drive」搭載の電気自動車が提携企業によって量産されることを目指すと表明されました。

清水: 事業展開は3段階で考えています。今はフェーズ1として、一緒に開発に取り組む提携企業を募り、さまざまな調整を図っています。提携企業は20社を目標としていましたが、それは遠からず達成できる見込みです。
 続いてフェーズ2として、提携企業と一緒に先行開発車を試作し、技術の標準化を図っていきます。予算はおそらく1台4億円くらい。それを20社で均等に負担していただく予定です。提携企業には「SIM-Drive」に関わる情報はすべて開示しますし、技術は共同研究成果としてすべて持ち帰っていただくことが可能です。これがオープンソースということです。
 そして、各社が持ち帰った技術を生かして「SIM-Drive」搭載の電気自動車を量産するのがフェーズ3となります。ここでは当社は電気自動車製造のためのサポート事業、電気自動車の開発者や技術者の教育事業などを展開する予定です。






シムドライブ社のビジネスモデル(提供:シムドライブ)


リアルタイムで情報を得られる場

――提携の呼びかけに応じた企業はどういう企業なのでしょうか。

清水: 自動車メーカーや部品メーカー、材料メーカーなどが中心です。商社も関心を示しています。意外なところでは、複数の自治体が地域興しのための新技術習得という観点で参加を表明しています。
 自動車市場の中心が電気自動車になるとき、既存メーカーは3タイプに分かれます。今まで通りのビジネスができる企業、電動パーツメーカーのように電気自動車化を追い風に成長できる企業、エンジン用パーツ専門メーカーのように事業転換しないと生き残れない企業です。すでに名乗りを挙げてくださっているメーカーには3タイプともいらっしゃいます。
 そのほかでは通信・IT関連企業も関心を寄せてくださっていますね。ITS(高度道路交通システム)や充電インフラ整備には通信・ITの技術が欠かせませんし、車内に映像配信をするといったエンターテインメント分野にもビジネスチャンスがあるかもしれません。

――同じ部品を製造する競合メーカーが名を連ねて、共同で研究開発に携わる可能性もあるわけですか?

シムドライブ 清水浩社長

清水: 当社として1業種1社といった制約を設けるつもりはないので、可能性としてはあります。
 部品メーカーの方がおっしゃるのは、クルマづくりの全体像を見たいということです。現状は自動車メーカーから提示された条件に従って部品をつくっていますが、部品の使用目的や周辺環境などの詳細情報が分かれば、もっとよい部品がつくれるのにと歯がゆい思いをすることもあるそうです。部品メーカーとしては、これからクルマが電気自動車に代わっていくのだから、今のうちに電気自動車の全体像に関するリアルな情報を得たいと思っているのではないでしょうか。オープンソース方式を採用するシムドライブは、そうした期待に応えることができます。


車両は150万円以下で電池はレンタル

――フェーズ2として開発される先行試作車には、20kWhの電池で航続距離300kmの5人乗りのグランドアップ車(ゼロから開発するクルマ)と、中古車のパワートレインを「SIM-Drive」に置き換えた改造型の2タイプがあるそうですね。

清水: これまでのクルマはエンジンを中心に設計していました。しかし、モーターをそれぞれのホイールに内蔵するインホイール方式の「SIM-Drive」は、エンジンのレイアウトの制約がなくなる。構造がシンプルなので、グランドアップ車の車体はまったく新しい発想でデザインすることが可能です。それがどんなデザインかは分かりませんが、例えば、現在の携帯電話は市場創成期には思いもよらなかった形状になっていますよね。この折りたたみのデザインは携帯電話として合理性があるから主流になったわけで、電気自動車も10年後、20年後にはまったく違ったスタイリングになっているかもしれません。
 一方、中古車の車体を利用する改造型の場合は、専用設計のグランドアップ車ほどの効率にはなりませんが、名車や愛車を電気自動車にできますから、市場性はあると思います。

――シムドライブ社はグランドアップ車を電池抜きで150万円以下にする目標を掲げていますが、実現可能でしょうか。

清水: 電気自動車は特に高額な部材を必要とするわけではなく、構造がシンプルで部品点数も少ないので、将来的にはガソリン車よりも安価になると考えています。エネルギー効率はガソリン車の4倍ですから、維持費を圧倒的に安くできる。こうした利点が電気自動車の普及を後押しすることになると思います。
 いま発売されている電気自動車が高額なのは、リチウムイオン電池高価だからです。しかし、それは材料費が高いわけでも生産が難しいからでもなく、大量生産に至っていないから高いんです。つまり、年間10万台くらいのペースになれば、おのずと価格は下がります。
 150万円以下というのは、しばらくは値段が下がらない電池をリースかレンタルとすることで、車両価格を下げようという発想から生まれた目標価格です。電池をイニシャルコストから外して下げることで、まずは電気自動車を普及させたい。リースやレンタルは、ユーザーが電池を選ぶことになるので、自動車の利用目的などに合わせて好みの電池をチョイスできる点も魅力になるかもしれません。一方でリースやレンタルの実現には乾電池のように電気自動車用二次電池も形状や仕様の標準化が不可欠になります。今後はその議論も進めていくことになると思います。


自動車産業の構造が変わる

――オープンソースでの開発体制、量産を前提としたコンポーネントのプラットフォーム化、二次電池を車両から切り離してリースかレンタルにするという販売方法など、いずれもこれまでの自動車ビジネスにはない斬新なアイデアです。一方で、既存の自動車メーカーもそれぞれのビジョンに基づいて電気自動車の開発にちからを入れていくことになります。これから電気自動車市場はどのように発展していくとお考えですか?

清水: 米国と日本では産業の発展の仕方が少々違いますよね。例えば、米国のコンピュータ産業は、メーンフレームの時代はIBMという巨人1社が君臨していましたが、ミニコンからパソコンへと移行するにつれて新規企業の登場と既存企業の淘汰が繰り返され、メインプレイヤーがどんどん変わっていきました。これに対して日本では、パソコンの時代になってソニーとパナソニックが新たに加わりましたが、富士通やNECなどのメインフレーム時代の主役も主要プレイヤーとして変わらず健在です。ポジティブに考えれば、日本の企業は産業構造の変化にうまく対応してきたと言えるでしょう。自動車産業もそうなるかもしれません。
 もう1つ注目したいのがデジタルカメラ市場です。1990年代にまず家電メーカーが参入しました。そのあとで従来からのカメラ大手が転換を図りました。現在、新旧多くの企業が共存できている理由はデジタルになってカメラの販売台数が何倍にも伸びたからです。産業が変わるということは、その技術が使いやすくなり、効率化が進むということです。そうなれば価格が下がって買いやすくなり、マーケットが大きくなります。携帯電話もそうでしたし、レコードがCDに移行したときもそうでした。言い換えれば、マーケットが大きくなれば、既存メーカーが生き残りつつ、新たな企業の登場や参入も可能なのです。

――昨今は若者のクルマ離れなどを背景に新車販売台数が伸び悩んでいますから、電気自動車市場がどこまで成長するか、懐疑的な見方もあります。

清水: 国内は確かに飽和傾向にありますが、世界を見れば日本の10倍以上の市場があります。現状は先進国でしかクルマが普及していませんが、今後は既存のマーケットだけを見ていてはいけないでしょう。
 また、電気自動車はガソリン車と比べて部品点数が少ないので、周辺産業が縮小するのではと危惧する声もあります。しかし、その産業の雇用規模は最終マーケットの規模で決まります。電気自動車の市場規模がガソリン車とは比べモノにならないほど大きくなるとすれば、全体としては非常に大きな産業になるというわけです。
 今後、自動車の産業構造は現在のピラミッド型の垂直統合から、水平展開へと変わる可能性があります。機械モノは誰がつくっても同じにはならないので、技術力の差が企業の強みとなり、垂直型にする意味がありました。しかし、電気モノは誰でもほぼ同じ性能のものをつくれます。これは電気モノの宿命と言っていい。同じような性能の電気自動車を誰でもつくれるようになるわけですから、市場構造も産業構造も大きく変わっていくでしょう。
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(102)

2012-04-26 10:18:26 | Weblog

さて電気自動車の話に戻ろう。

と言っても今までも電気自動車の話しをしていたのであるが、エリーカのシムドライブ社の話しに戻ろう。2009年の論考なのでかなり古いが、シムドライブの清水浩教授の電気自動車に関する考え方がわかって、意外と参考となろう。そこには2次電池の性能向上もあながち無視出来ないものがあるようである。小生はリチウム・イオン電池の性能向上はなかなか難しいのではないか、と考えているのであるが意外と早く性能向上もありそうな感触である。




ECO JAPAN 2009年11月26日http://eco.nikkeibp.co.jp/article/interview/20091120/102668/?P=1
なぜ電気自動車が世界を変えるのか 清水浩が新会社をつくったわけ
シムドライブ社長/慶應義塾大学教授 清水 浩氏


聞き手・文/林愛子

 一般に電気自動車の将来は二次電池進化次第とされる。しかし、環境省国立環境研究所を経て慶應義塾大学教授となった清水浩氏は、電池の進化に依存しない電気自動車を提唱してきた。2004年には自身の持論を裏付けるかのようにインホイールモーターの電気自動車「エリーカ」で最高速度370km/hを実現している。

 このニュースは世界を駆け巡り、エリーカの実力は広く知られるに至った。これまでに皇太子ご夫妻や小泉純一郎元首相、石原慎太郎東京都知事、松沢成文神奈川県知事らがエリーカに試乗している。なかでも松沢知事はエリーカやその前身となる電気自動車「カズ」の試乗体験が、電気自動車の普及を実感する契機になったと述べている(参照記事)。

 2009年8月、清水氏は株式会社シムドライブを設立し、社長に就任した。同社取締役には、やはりエリーカ試乗で電気自動車の将来を確信したというベネッセコーポレーション代表取締役会長兼CEOの福武總一郎氏や、ガリバーインターナショナル代表取締役会長の羽鳥兼市氏らが名を連ねる。シムドライブ社では、清水氏が過去30年間で9台の電気自動車開発に携わった実績とノウハウを生かして新しい電気自動車のプラットフォームを開発し、オープンソース方式で事業を展開して普及を目指す。

5つのエネルギーロスに着目

――2009年夏三菱自動車工業富士重工業が電気自動車を発売し、これから数年内に主要自動車メーカーのほとんどが電気自動車市場に参入する見込みです。いよいよ開発競争が激化してきましたが、シムドライブ社の電気自動車は「インホイールモーター(タイヤホイールの中にモーターを内蔵させる技術)」を採用している点が他社との大きな違いです。独自の開発思想を持つに至った経緯を教えてください。

シムドライブ 清水浩社長

清水浩社長(以下、敬称略): 30年ほど前、初めて電気自動車の研究開発に乗り出すときに、いろいろなシミュレーションをしたんです。まず、電気自動車とガソリン車の効率を比べたところ、電気自動車の方が優れているのは明らかでした。技術は必ず効率の悪い方からよい方へと移行しますから、電気自動車はいずれ確実に普及するだろうと思いました。

 次に注目したのは二次電池。そのころから電気自動車の課題だと言われていましたが、本当にそうなのかと疑問に思いました。エネルギー源がガソリンから電気に代わることで、クルマづくりが一から変わりますから、電池の進化だけに頼らずとも、全体を見直すことでエネルギー効率のよいクルマがつくれるのではないかと考えたんです。

 電気自動車においてエネルギーが消費されるのは「加速時のモーター」「減速時の回生ブレーキ」「モーターから車輪のエネルギー伝達」「転がり摩擦抵抗」「空気抵抗」の5つ。それぞれのロスを最小限にとどめれば効率が上がります。当時主流だったエネルギー密度40Wh/kg程度の鉛蓄電池でも、計算上は航続距離300kmが達成可能でした。航続距離が300kmあれば十分実用に耐え得るので、電池の性能向上を待つよりも、おそらくこの5つのロス低減に注力する方が早くゴールにたどり着けるだろうと考えたのです。

 ちょうどオイルショックの後で、自動車メーカーが省エネルギー技術として転がり摩擦抵抗や空気抵抗の研究に熱心だった時代です。そのときは、5年もあれば計算通りの電気自動車をつくれると思っていました。ところが1990年代に入ると原油価格が下がって省エネへの関心が薄れ、結局構想から今日まで30年の歳月が過ぎてしまいました。実現までの時間は読み違えましたが、当時も今も、取り組んでいることは基本的に同じです。


要素技術の進展が総合力を底上げ

――これまで研究されてきた30年間と、今回立ち上げたシムドライブという会社組織としての取り組みでは、どのような点が違ってくるでしょう。
清水: 主に資金調達です。これまでの9台の電気自動車は国の予算に提案書を出したり、民間企業にお願いしたりということを数多く繰り返してきました。シムドライブ社はベネッセコーポレーションやガリバーインターナショナルなどから出資を得て、慶應義塾大学発のベンチャー企業として設立しましたので、そこが大きな違いです。

 また、時代の要請も違います。少し前まではさほど電気自動車に注目が集まっていませんでしたよね。それが2008年原油価格が急騰し、その後のリーマンショックで世界が一変しました。米国ではオバマ大統領がグリーンニューディール政策やスマートグリッド構想を打ち出し、日本では鳩山首相が2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという目標を掲げました。今は電気自動車普及に追い風が吹いている、よい時期だと思います。

 これまで、実に様々な関連技術がそれぞれの分野で進歩を遂げてきました。二次電池はエネルギー密度の高いリチウムイオン電池が、パソコンや携帯機器の分野ではすでに主流になっています。また、強力なネオジム磁石の登場はモーターの効率を飛躍的に高めることを可能にしました。インバータ用のトランジスタも性能がよくなり、モーターの回転制御の効率も高まりました。近年は転がり抵抗を低減するエコタイヤの開発も活発です。

 30年前と違って、いまはこうした技術が使えるわけです。これらを駆使して、市販の際には現在発売中の電気自動車と同等の容量のリチウムイオン電池で、航続距離300kmを達成したいですね。それは十分可能だと思います。

――三菱自動車「i-MiEV」の航続距離は160kmですから、その2倍近い距離を実現しようというわけですね。それが可能なのはインホイールモーターだからでしょうか?
清水: もう少し詳しく言えば、モーター自体の効率が高く、かつダイレクトに車輪を回すからです。

 モーターにはコイル(固定子)の外側に磁石(回転子)を置く「アウターローター方式」と、コイルの内側に磁石を置く「インナーローター方式」があります。前者はダイレクトに車輪を回すので効率がよく、一時期はこれを採用していました。しかし、重さあたりの出力の不足など技術的な課題があり、15年前からはインナーローター方式で、モーターと車輪の間に1個だけギアを挿入する方式を採用しています。「エリーカ」もそうでした。

 しかし、この方式はギアを挟む分のロスが生じます。これが最終的には無視できず、4年間かけて新しいモーターを開発しました。ここにきてそれが可能になったのは、磁石が強力になったこと、コイルの鉄芯の材料がよくなったこと、コイルを高密度で巻けるようになったこと、コンピュータの発達が複雑なシミュレーションを可能にし、設計の精度が向上したことなどがあります。

 この新しいモーターのおかげでアウターローター方式ダイレクトドライブが可能になり、モーター、回生ブレーキ、伝達におけるエネルギー損失が低減されました。さらに、床下のフレーム構造に電池などを収納するので、車台がシンプルで軽く、車体デザインの自由度も高い。これで転がり摩擦と空気抵抗も減らせますから、先に挙げた5つのエネルギー消費のすべてにおいてロスを抑えられるというわけです。


2004年に製造した電気自動車「Eliica(エリーカ)」。最高速度370km/hを達成している(提供:慶應義塾大学 電気自動車研究室)
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(101)

2012-04-25 06:46:31 | Weblog

参考までにテスラの「モデルS」のアンダーフロアのPhotoを次の掲げる。エリーカと同様にこのモデルSのアンダーフロアに電池を搭載しているが、ここには(パソコン用リチウム・イオン電池18650をテスラロードスター6,831個搭載しているので)確証はないが8,000個~1万個?程積載しているのではなかろうか。これだけで重量は500kgを超えるであろう。詳しくは次ぎのURLを参照願う。ちなみにSIM-LEIもSIM-WILも18650型(パナソニック製)をフロアフレームに搭載している。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20120120_503480.html

そしてそのモデルSは、当初2012年量産開始で「Deliveries begin Fall 2012」と発表されていた。

MODEL S
21ST CENTURY PERFORMANCE
Premium electric sedan
Up to 300 miles per charge
Deliveries begin Fall 2012
Starting at $49,900 USD *
Learn More
https://www.teslamotors.com/own



この件は2010.6.3,NO.45等を参照願いたいが、そしてそのためにトヨタとGMの合弁工場の加州・フリーモント市のNUMMIの一部を購入してその「モデルS」を製造することになっていた。現在その工場では「モデルS」の生産準備の真っ最中である。しかしその準備もやや遅れているようで、生産開始は2013年初旬と言っている。

モデル S
21世紀のパフォーマンス
プレミアム電気自動車セダン
最大航続距離約 480 km
2013年中旬から納車開始
https://www.teslamotors.com/jp/own?country=JP#/model-s



まあこの程度の遅れなら、ITベンチャーだったテスラにしてみれば、上出来の部類に入るのであろう。よくやっている、と言える。どの程度トヨタやダイムラーが協力しているかは定かではないが、生産準備要員としては元トヨタの社員を採用していると言う。イーロン・マスクCEOは「最高の仕事ができる人材を集めた」と言っているが、それは将に正解である。車の開発や生産準備にはしっかりとした経験が必要であり、人だけ集めれば事足りるものではないのである。いくら電気自動車と言ってもそれなりのパーツから成り立っているので、設計や量産するための準備には素人では無理であろう。




【インプレッション・リポート】 テスラ・モーターズ「モデルS」
  2012年 1月 20日  Text by 川端由美

0-98km/h加速は5.6秒、1回の充電で走れる距離は300マイル(約480km)、排気ガスはゼロ。今までの内燃機関にも、電気自動車にもない独自のスペックは、テスラ・モーターズが新たに放つ新型EV「モデルS」のものだ。2008年のデトロイトショーから3年、当時、資本を投下したダイムラーの肝いりで開発された5人乗り+2の新型EV、「モデルS」がようやく世に送り出される。

旧GM/トヨタの工場で生産

 正直に言えば、以前はITベンチャーが作るEVに対して、あまり期待していなかった。「ロードスター」という現行の2座オープンカーの走りは魅力的だが、こと生産においては創業から9年で2,000台以上を納車した「程度」であり、自動車メーカーといえる規模ではない。ダイムラーやトヨタ、パナソニックによる投資などの話題は尽きないが、それでも実際に自動車を量産できるのかどうか疑問に思っていた。

 しかし、工場を見学し、モデルSの実力を知った今、その気持ちは一転した。量産体制の確立は着々と進んでいたし、なによりも、スポーティな走りとセダンの実用性、魅力的なスタイリングといったすべてが50,000ドル以下で手に入るなら、クルマ好きにとって歓迎すべきことだ。

 実際、現行モデルの「ロードスター」を生産し始めたばかりの頃と比べると、わずかな間にテスラ・モーターズのクルマ作りは格段に進化した。「モデルS」が作られるのは、サンフランシスコ空港からクルマで約1時間ほど走ったところにあるフリーモントという町にできた「新」工場だ。以前は、GMとトヨタの合弁工場があった場所であり、閉鎖された工場の一部をテスラ・モーターズが買い受けて、リノベーションして使っている。

 最大の驚きは、原材料のアルミ・ロールからボディの組み立てまで、一貫した生産を行える点だ。大型のパネルも成型可能な6軸の油圧プレス機に加え、電池パック、内装の組み立て、プラスチック部品の成型まで備えている。6軸の油圧プレス機はデトロイトのサプライヤーから1ドル以下で購入した中古品である一方で、ダッシュボードの組み立てにはKUKA製の最新ロボットを導入し、生産設備の制御装置には高機能なものを採用するなど、限られた投資を有効に使う努力が垣間見られる。

 最も投資を集中したのは人材だ。技術担当ピーター・ローリンソン副社長は元ジャガーのエンジニアであり、彼曰く、ハンドリングはロータスで経験を積んだ人物が、エンジニアリングに関してはフォードでGT40の設計に携わった人物が、それぞれの得意分野でモデルSの設計に貢献しているという。デザイナーは欧州の自動車メーカーで経験を積んだ人物であり、生産現場をまとめるのは元トヨタの社員でレクサスにも関わった人物だ。CEOを務めるイーロン・マスク氏いわく「最高の仕事ができる人材を集めた」というだけのことはありそうだ。

EV専用設計ゆえの安定した挙動とスポーティネス

 三菱「i-MiEV」が380万円(16kWh)、日産「リーフ」が約376万円(24kWh)というEVの価格を鑑みると、「モデルS」の5万ドルは、コストを抑えたからこその価格なのがよく分かる。極端な円高である現状に加えて日本への導入コストを考えると、日本での発売価格が400万円以下という設定は考えにくいが、5万ドルという値付けがアメリカでのBMW「5シリーズ」の人気グレードと同等であることを考えれば、「ロードスター」の半額程度で日本導入されると思われる。

 加えて、電池の容量=1回の充電で走行可能な距離で価格は異なる。ベッシーク・モデル(42kWh)は160マイル(256km)の走行が可能で、オプションで電池の搭載量を増やせば、最大300マイル(480km)まで走行距離を延長できる。

 工場の公開に伴って用意されたのは「ベータ版」なる最終試作品だったためにステアリングを握ることは許されなかったが、広大な工場の一角に設置された試乗コースにてタクシーライドながら試乗がかなった。

 4ドア・セダンながら空力を重視したクーペ風のスタイリングは、ヨーロッパの自動車メーカーから移籍してきたフランツ・フォン・ホルツハウゼン氏がデザインを担当した。口をすぼめたような独特のグリルの上部は、エンジンの冷却をする必要がないため閉じられているが、その下には電池を冷却するためのエアインテークが存在する。

 4,973×2,189×1,426mm(全長×全幅×全高、全幅はミラー込み)のボディ・サイズはDセグメントに属するが、見た目よりも室内は広々している。プラットフォームからすべて新設し、EVの独自性を生かした居住空間の設計を行っているからだ。パソコンを始め多くの電子機器に採用されて普及しているリチウムイオン電池18650」の搭載性の高さを利用して、床下に広く薄く搭載した。

 このことは、居住空間を広く使える以外にも、スポーティな走行性能にもつながった。前後の重量配分を50:50とし、重心を低めた結果、コーナリング時の姿勢は驚くほど安定している。ブレーキをかけて前輪に荷重を移動して、415Nmという巨大なトラクションを余すことなく路面に伝える。コーナーの出口からストレートに向かってスロットル・ペダルを踏み込むと、EVならではの鋭い加速感に、体がシートに押し付けられるようだ。エンジン車とは比べようもなく滑らかに加速する。


モデルSt11_s
                                       

 スポーティな走りをする一方で、セダンの乗り心地のよさも両立させている。前・マクファーソンストラット/後・マルチリンクの足回りはよく動く印象で、特にオプションで設定されるエアサスペンションを備えたモデルは、荒れた路面からの突き上げなどないかのようにいなしてくれる。

 運転を担当したエンジニアいわく「ステアリングの応答性がすばらしく、アクセルの開閉へのレスポンスも高い」とのこと。そう聞くと、自らステアリングを握れなかったことに残念で仕方ないが、EV専用設計ゆえの安定した挙動とスポーティネスが備わっていることは間違いなく体感できた。

 近い将来の登場が噂されるSUVの「モデルX」にも、モデルSのプラットフォームが使われる予定であり、両モデルあわせて最大2万台まで、この工場での生産台数を拡大する予定だ。

 創業から数年で世界的な企業に成長するサクセス・ストーリーはIT業界では珍しくないかもしれないが、創業から10年足らずで数万台を生産するまでに至る例は自動車業界では稀だ。

テスラ・モーターズ
http://www.teslamotors.com/tokyo

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20120120_503480.html

ここには工場内の写真などもあるので、是非上記のURLを参照願いたい。
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(100)

2012-04-24 14:24:18 | Weblog

それに、これには罰則があり不足ZEV1台につき5,000ドルのペナルティとなる。そして単に電気自動車と言っても、その航続可能距離により持ち点が異なっている。

電気としての航続距離が50マイル未満を1台とカウントする事になっており、それ以上の航続距離を持つ電気自動車は持ち点が増加している。これをクレジットと称している。

(4) 電気自動車の航続可能距離別クレジット点数について
(「加州のゼロエミッション車」http://www.yasuienv.net/ZEV-CA.htm '09.830による。)

(タイプ)  (航続距離など)  (クレジット点数)
Type 0   ~50マイル走行EV      1
Type 1    50~ 70マイル走行EV   2
Type 1.5   75~100  〃      2.5 三菱・iMiEV、iQ EV、フッィトEV
Type 2    100~200 〃   3  日産・リーフなど
Type 3    200 or 100 〃で急速充電や水素補給可 4
Type 4    200  〃      5  テスラ・ロードスター
Type 5    300  〃  7  燃料電池車

(5) ハイブリッド車の分類

  Type C モーター10kw以上、駆動電圧60V以下  0.2
   Type D モーター10kw以上、駆動電圧60V以上  0.4 ホンダ・インサイトなど
  Type E モーター50kw以上、駆動電圧60v以上  0.5 トヨタ・プリウスなど

  トヨタのPHEV・プリウスはEnhanced AT-PZEVとして電気走行距離が10~20マイルのため、0.9クレジットとなるようだ。シボレー「ボルト」は40マイルなのだが、1.35クレジットと言う。

(6) クレジットの計算方法
  
  先に2012~2014年 12%のZEVを所定の構成で販売しなければならないことを述べた。この時は簡単に台数として説明したが、実際はクレジット換算で計算される。性能のよい電気自動車はより多いクレジットを持たなければ不公平となるからである。
  即ち10万台販売するメーカーはその12%の12,000(台)クレジットポイントのZEV車を販売しなければならないのである。
  この12,000クレジットポイントを先に説明した夫々の車種のクレジットで消化しなければならない事になる。

12,000×0.79%/12%= 790クレジットは、電気自動車で、Type1.5(2.5crdt)なら790÷2.5=316台

12,000×2.21%/12%=2,210クレジットは、PHEVで1.35crとすると、2,210÷1.35=1,637台

12,000×3.0 %12%=3,000クレジットは、通常のHEVで販売しなければならない。HVで0.5crとすると3000÷0.5=6,000台となる。

12,000×6.0%/12%=6,000クレジットは、普通の低燃費車でよいことになる。仮に0.2cr/台と仮定すると3000÷0.2=15,000台の低燃費車となる。一般的に残りの88%も低燃費車となる筈なので、
10万台-(316+1,637+6,000+15,000=22,953台)=77.047台の普通燃費車となる。トヨタであればこれらも総てHEVで済ます事も出来る。

と言うことで、少なくとも(このケースでは)316台電気自動車を売らなければならない。これがなければこの会社は加州で10万台の車を売れなくなるので、電気自動車の導入は死活問題となる。

だからトヨタも、ホンダも電気自動車を慌てて出してきたのである。慌ててと言っても本当に慌てて出せるものでもないので、ずっと前から開発はやっていたものと思われる。各社が言う2012年導入と言うことには、このような意味があったのである。
(以上は我流による試算なので間違いがあるかもしれないが、その点は悪しからず。)


このZEV規制の2009~2011年は11%である。そして2012年にもあるようにPureZEVを一定数販売することも義務付けられている。トヨタもホンダも90年代からEVのリース販売を行っていたが、トヨタはリース終了後それらのEVを売り渡したようだ。然るにホンダはリース終了後それらのEV車を総て引上げてしまったようだ。そのためこのZEV規制になんの効力も持たなくなってしまった。トヨタはテスラと提携して、RAV4EVを再度発売しているので、ZEV規制はクリア出来ているようだ。

しかし、ホンダは引上げたEVをスクラップにしてしまったので、ホンダは1台もPZEV車を加州では売っていないことになってしまった。ペナルティを払うか、さもなくば他社から余っているクレジットを購入する必要に迫られることになる。そこでホンダはテスラから「ZEVクレジット」を購入したのである。しかも悪いことに、テスラにトヨタが出資してしまったのである。ホンダともあろう会社がなぜ「そんなことをしたのか」などとの批判的な意見もあるようだが、これは致し方ないことであった。

'70年代にいち早くCVCCを物にしたホンダではあるが、一瞬の経営判断の誤り?が会社の行く末に大きな影響を与えるものである。トヨタも一時期リコール問題の対応を間違えて、偉い目にあっている。だからトヨタも慎重にならざるを得ない。

トヨタがテスラと提携したのは2010.5.21(2010.5.31,NO.42を参照のこと)で、ホンダがテスラから「ZEVクレジット」を購入したのが判明したのが、2010.6.2のテスラの新規株式公開の登録届出書であった。ホンダとしても購入交渉の時点ではテスラがトヨタと提携するなんぞと言う情報は、入っていなかったことであろう。ちなみに三菱自動車や日産にもクレジットの余剰分の購入オファーがきていると言う。これからはますます環境対策・電気自動車への注目が高まると言うものである。




米電気自動車テスラ:ホンダへの環境ポイント売却で本業の損失穴埋め  
2010/06/04 07:51 JST   Bloomberg.co.jp

  6月3日(ブルームバーグ):トヨタ自動車と独ダイムラーが出資する米国の新興電気自動車メーカー、テスラ・モーターズは、映画俳優のブラッド・ピットやジョージ・クルーニーが運転するスポーツカー「ロードスター」の事業で赤字が続いている。損失の一部を穴埋めしているのは、排ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)の販売実績に応じてカリフォルニア州が付与する環境ポイントをホンダに売却するという地味な事業だ。
同社が2日、米証券取引委員会(SEC)に提出した新規株式公開(IPO)の登録届出書によると、テスラは2008年以降、カリフォルニア州の厳格な排ガス規制を満たすために大手自動車メーカーが必要とする「ZEVクレジット」を売却し、計1380万ドル(約12億8000万円)の利益を上げた。唯一の売却先として社名が挙げられたホンダは、ZEV368台分に相当するクレジットを購入したほか、287台分を追加購入する契約を結んだ。

テスラは08年以降、映画スターやミュージシャン、電気自動車推進者に計約1000台のロードスターを1台10万9000ドル(約1000万円)で販売した。エロン・マスク最高経営責任者(CEO)は12年にトヨタの旧合弁工場で1台5万7000ドルのセダン「モデルS」を生産する計画だ。
テスラは計画中のIPOで少なくとも1億ドルを調達する可能性がある。SECへの届出書では、03年の創業以降、毎年赤字を計上していたことを明らかにした。
ホンダの環境・エネルギー戦略担当米上級マネジャー、ロバート・ビーネンフェルド氏は「ZEVクレジットを持つことで、当社の将来の柔軟性が高まる」と説明。「追加購入するかどうかは、話せない」と語った。ホンダは米消費者向けに販売する自動車メーカーで燃費効率最上位にランクされている。

テスラの複数の幹部は、ホンダがクレジットを購入したかどうかについてのコメントを控えた。テスラの届け出によると、ホンダ以外の少なくとも1社にクレジットを売却したが、社名は明らかにされていない。
-- Editors: Steve Geimann, Romaine Bostick
記事に関する記者への問い合わせ先:Alan Ohnsman in Los Angeles at aohnsman@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:Kae Inoue at kinoue@bloomberg.net;Larry Liebert at lliebert@bloomberg.net
更新日時: 2010/06/04 07:51 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L3GL9A0YHQ0X01.html

なおテスラとトヨタとの関係は、このブログの2010.5.28,NO.41から2010.6.10,NO.50に詳しく書かれているので参照願えれば幸いである。
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(99)

2012-04-23 00:39:46 | Weblog

だから究極のエコを考慮すると言うならば、太陽電池を搭載して充電するか、風力を利用して発電する機能なども搭載することを考えないと、電気自動車のブレイクスルーはなかなか起きないものと考えておく必要がある、と小生は感ずるのであるが。そのため急速充電スタンドが、ガソリンスタンドに代わって、あちこちにある状態が想像される。すると「CHAdeMO」などの急速充電の仕組みは必須となろう。日本も国際標準としてチャデモを強引にPRしていく必要があろう。早いとこ全米にチャデモのスタンド網を敷いて、リーフとかi-MiEVを大量に走らせる必要がある、と言うものである。

電気自動車はその走行中にはCO2は排出しないが、その製造過程や充電過程(電気を作る過程ex火力発電)では大いにCO2を排出している。そのため電気自動車は完全なクリーンカーであるなどと思わない方がよい。しかも石炭火力発電が主要な国にであれば尚更である。そんな意味で、電気自動車のCO2の排出に関して「発電電力」を含めたCO2の排出量比較を行っているデータがあるので紹介しよう。これはLCA(Life Cycle Assessment、製造・使用~廃棄・再利用の過程を含めて生涯負荷を評価する)での評価では必ずしもない?と思われるが、参考となろう。


電気自動車のCO2排出量比較(欧州試験モード基準)
「ゼロ・エミッションビークル」(http://www.cordia.jp/blog/?p=557)


これを見れば、いたずらに早く中国に電気自動車をもっていっても、環境的には効果が薄いと言うことであろう。プリウスのようなハイブリッド車のほうが環境的にはベターなのである。

それにしてもリーフ2010年12月に発売されているから、かれこれ1年と数ヶ月(今は'12.4月)は経過しているから、航続距離に関するそこらへんの具体的な事情は日産も把握していることと思われる。いずれにしても走行条件別の航続距離のことを考えると、電気自動車の普及はまだまだ相当先のこととなろう。などと思っているとどんでん返しがあるかもしれないので、自動車メーカー各社は疑心暗鬼なのである。

こんなことからトヨタやホンダはEVには消極的なのであろう(と思われているだけかもしれない)。トヨタは、コミューターとか集配車から電気自動車に入ってゆくことを考えている。トヨタはプラグインハイブリッドEVビークルを出したから、ある意味、着実に電気の道を辿っているのではなかろうか。

「間違いだらけの“電気自動車”報道!トヨタとホンダが本格参入しない本当の理由」('09.4.30)(http://diamond.jp/articles/-/5207)には、そのことが述べられているから一読願いたいが、本格参入しない訳ではなかったが、今まで参入しなかった理由を(古い記事ではあるが)概略しておく。その理由は電池業界の品質管理上の考え方の違いと電池事業会社の将来性が全く読めないところにある、と書かれている。要はリチウムイオン2次電池の性能と価格の問題なのである。

しかしながらトヨタもホンダもEVでの最大の関心事は、日本でなくアメリカである。アメリカにはZEV規制と言うものがあるからである。ZEVとは、Zero Emission Vehicle無排気自動車つまり無公害車を普及させようとするカリフォルニア州の規制である。ホンダは2008年から量産型燃料電池車ホンダFCXクラリティ」をリース販売を開始している。そして2009年2月には、IMAタイプのハイブリッド車ホンダ・インサイトZE2型(1.3L)」を発売している。ZE/3型は1.5L・E/G車で'11.11.11発売。インサイトはカルフォルニア州大気資源局(CARB, Calpfornia Air Resources Board)の定めるAT-PZEV(Advanced Technology Partial-Credit Zero Emission Vehicle)に類別される。FCXクラリティはいわばホンダのイメージリーダー的存在と思われていたが、加州では最上位のZEVにランクされる車として中心的な役割を担うべき車なのである。('12.4.1,NO.91参照のこと。)

トヨタにも「FCHV-adv」と言う燃料電池車があるが、トヨタは1990年代から燃料電池車の開発に取り組んでいるが、これは2008.6.30に国土交通省から型式認証を取得したものである。現在各所で実証実験中であり、1回の水素充填で800km前後の航続距離があるという。これもFCXクラリティと同様に、最上位のZEVにランクされる車である。現在は(2011年モーターショー)「FCV-R」と言う次世代燃料電池自動車へと進化している。

また'12.4.2,NO.92でも紹介しているように今年'12年1月30日プリウスプラグインハイブリッド車を発売している。プリウスPHEVは、EV走行が26.4kmとかなり短いのでCARBのEnhanced AT-PZEVに属さないかもしれないが、一応単なるHVよりZEVとしては高いランクに位置している筈である。

それに「iQ EV」と言う電気自動車を今年の秋に発売すると言う。'12.3.29,NO.88で紹介しているのでご承知のことと思う。

トヨタのこれらの動きもカリフォルニア州のZEV規制が多分に影響しているものと思われる。ついては加州のZEV規制に触れてみたいと思う。これなくして電気自動車などは語れないのである。
そうすればトヨタが降って沸いたように一介のベンチャー企業の「テスラ」と提携した意味もなんとなくわかると言うものである。

カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制についてはこんなものであろう。ただし我流の解釈なので、間違っているかもしれないので、その点は責任は負いかねる。

(1) 加州で6万台以上の車を販売するメーカーは一定量以上のZEVを販売しなければならない。
  このメーカーは、トヨタ・日産・ホンダ、GM・Ford・Chryslerの6社である。マツダやVWが入って
7社とする記事もあるが、合計で次のZEV車を販売しなければならない。各社は当然シェア
  相当の割合のZEVの販売が必須となる。
  (現時点では台数条件などは変わっているかもしれない。)

  2009~2011年 11%のZEVを販売すること。
  2012~2014年 12%
  2015~2017年 14% 〃
  2018~   16% 〃

(2) ZEV車は、次のようなランクに分類される。

  ZEV車  FCV(Fuel Cell Vehicle) , BEV(Battery Electric Vehicle)
  Enhanced AT-PZEV  Plug in HEV , 水素エンジン車
  AT-PZEV ※  Hybrid車 , CNG(Compressed natural gas天然ガス)車,メタノール型燃料電池車
  PZEV  極限まで)排気がクリーン普通車

※Advanced Technology Partial Zero Emission (Allowance) Vehicleとも。

(3) 2012~2014年 12% の車種構成
  12%が総てZEVで満たすことは出来ないと想定されるので、それ以外のLEVで代替しても
  よい。その比率は次の通りである。

  ZEV  0.79%
Enhanced ATPZEV  2.21%
ATPZEV  3.0%
PZEV  6.0%
合計  12.0%

例えば、加州の年間の市場規模が100万台で、10%のシェアを持つ会社があるとする。その100万台の10%の10万台の12%の12,000台は最低でも上記の比率での車種を販売しなければならないことになる。即ち、12,000台×0.79/12%=790台電気自動車(燃料電池車はまだ実用化されていないと想定すると)でなければならないことになる。そして12,000台×2.21/12%=2,210台Plug in HEVを販売する必要がある。又はこの3,000台総てを電気自動車で売ることも出来る。ただし売れればの話だが。だから燃料電池車の実用化はまだ相当先の話となるため、自動車各社はどうしても顧客に買ってもらえる価格で電気自動車を売らなければならなくなるのである。

現実的な話として、

もちろんZEVからATPZEVまでの6%(6,000台)を総て電気自動車でも構わない。だから日産は確かリーフを5万台販売するとしていたから、電気自動車だけで6,000台をカルフォルニア州にもって行けば事足りる。まあ日産は加州のZEV規制については、左団扇である。

トヨタはそのために、何とか電気自動車を物にしようともがいている?様である。その表れがテスラとの提携話だと見ることも出来る。しかし2012年後半に「iQ EV」と言う電気自動車を発売すると言う。'12.3.29,NO.88で紹介しているがこのZEV規制のため、航続距離80kmの「iQ EV」をサイオン系列で販売する計画なのである。そしてAT-PZEVに分類されるPlug in HEV'12年1月30日プリウスプラグインハイブリッド車として発売したのである。このためトヨタは何とかこの加州の「ZEV規制」には対応出来そうなのである。

問題はホンダである。「FCXクラリティ」と言う燃料電池車で対応する気だったようだが、間に合わない。そのため慌てて?フィットEV(タイプ1.5)を発表している。'12.4.1,NO.91参照のこと。しかしEVはZEVにランクされるが次のタイプの Enhanced ATPZEVにランクされるPHEV(プラグイン)がない。そのためこの分野もフィットEVでカバーすることになる。それだけ売れるのかが問題である。3%分がどれ程の台数になるかは小生とってはつまびらかではないが、果たして造れて売れるであろうか。それが問題である。

(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(98)

2012-04-20 09:31:28 | Weblog

  「10・15モード」、「JC08モード」、「米国LA4モード」で、電気自動車の航続距離に大きな差が生じるのか?
 A 我々が「i-MiEV」で実験した結果では、「JC08モード」での航続距離は「10・15モード」の場合より若干短くなった。「米国LA4モード」は、(カリフォルニア州)ロサンゼルスのダウンタウンで、朝の通勤時間での走行状況を反映したモード。これは都市内走行と高速道路走行が組み合わさっている。「10・15モード」と比較して、平均車速も最高速度も高いため(ガソリン車の場合、アイドリング比率も米国LA4モードの方が低い)、「米国LA4モード」での電気自動車の航続距離は、「10・15モード」より短い値になることが想像出来る。
(筆者注:つまり、「10・15モード」は、「JC08モード」、「米国LA4モード」どちらに対しても、電気自動車での航続距離は長くなる。また、「リーフ」メディア向け試乗に関する報道で、日産関係者はリーフは「JC08モード」で200km程度になる、と予測している。つまり、現状日産が提示している「米国LA4モード(100マイル=160km)」より「JC08モード」の方が数値として上になるということだ)

  プラグインハイブリッドについては燃費(=電費)について昨年、交通研が試験方法を策定し、国土交通省で認証された(企業向けリースされている「プラグインプリウス」のカタログに表記済み)。電気自動車に関して、航続距離だけではなく、電費に関する試験法/走行基準を策定する計画はあるか?
 A プラグインハイブリッド試験法において、電費(航続距離〈等価プラグイン距離〉、充電電力)を規定したが、これと同等の考え方を電気自動車にも導入する必要があると考えている。具体的な試験法としての策定については、現時点では決まっていない。

  電気自動車の航続距離は、搭載される電池の劣化によって大きな影響を受ける。現状で、自動車メーカー、または蓄電池メーカーが交通研、または国の機関に、電池劣化に関するデータを提供する義務はあるか?
 A 自動車メーカー、蓄電池メーカーが、国の機関に電池劣化データ、もしくは電気自動車等において、駆動用バッテリー劣化に伴う性能変化について提出する義務はない。

一般ユーザーの認識を高めるために
条件別の航続距離を明示すべし


 このように日本において、電気自動車の各種規定は「発展途上」にある。さらに「走行条件別での航続距離」に至っては、国としての基準は皆無であり、自動車メーカー側から、ユーザーに対する「説明責任」のあり方も不透明だ。

 前述の日産・渡部執行役員の講演の前、同社は日本では初めてとなる一般ユーザー向けの「リーフ」試乗会を開催した。その現場で参加者の声を30人強(参加者は約100人)拾ってみると「160km走るそうなので、それなら一応安心」という方が多かった。だが「走行条件別での航続距離大幅な変化」について認識している人ほとんどいなかった

 こうした状況について、日産自動車マーケティング本部・マーケティングダイレクター(兼)ゼロエミッション事業本部事業部長(兼)渉外部担当部長、島田哲夫氏は、次のように説明した。

 「使用条件で電気自動車はガソリン車より航続距離が変わる、ということをまずユーザーに(今後)伝える。そのうえで、どういう条件で変わるのかを理解して頂くことが、電気自動車を使って頂く際のポイントだと思う。一般的にガソリン車の場合、ユーザーの方の多くがカタログ燃費を鵜呑みにはしていない。実燃費がカタログ値の2~3割減が当たり前、という風潮がある。電気自動車の場合、そのような『世間相場』がない。

 それ(=世間相場)を我々メーカーとして作るつもりはない。(事例として)初期にi-MiEVを購入した顧客から(実際の走行条件で、10・15モードの160kmの)『なんだ半分しか走らないではないか』という声があったとも認識している。そうしたなか、我々としては、ユーザー側とより密接なコミュニケーションをとっていく。(航続距離の変化を理解してもらうには)時間はかかると思うが、今後ジックリと説明していくつもりだ」(島田氏)

 具体的なコミュニケーション方法として、同氏は以下の例を示した。

●「リーフ」にエコモード切り替えスイッチがあり、同機構が作動すると、エネルギー効率が約10%向上。これにより、エアコンの風量が落ちたり、加速が落ちるが、市街地走行の距離が伸びることを説明。

●急加速、急減速をしない、いわゆるエコドライブを心がければ、ガソリン車以上にエネルギー効率が良くなることを説明。

●最終的には、ユーザー側の様々な使用シチュエーションで、航続距離とバッテリーの残量がどうなるのか、何パターンか示していく。

 世界的な電気自動車普及の立役者である日産におかれては、「走行条件別の航続距離」について今後、是非ともユーザーと真正面から向き合って頂きたい。

 長年にわたり「(事実上の)タブー視」されてきた、「電気自動車の航続距離問題」。日本が電気自動車の本格普及期を目指すいまこそ、自動車メーカー各社は自社の電気自動車の「ありのままの姿」を公の場にさらすべきだ。さもなければ、「鶏と卵」といわれる、電気自動車のインフラ整備の明確な事業計画も立たず、日本全体の成長戦略が大きく崩れてしまう。
http://diamond.jp/articles/-/9038



ハイブリッドをもたなかった日産は、電気自動車にその経営資源を集中している模様だ。もっとも2004年にトヨタからハイブリッド技術を買い、2007年にアメリカでアルティマハイブリッドを発売している。そのハイブリッドも販売が振るわず、その間トヨタのハイブリッド技術を習得して新たに自社開発のハイブリッド技術を完成させたのである。そして2010年11月2日にはアルティマハイブリッドの販売を中止し、日産のハイブリッド車両はフーガハイブリッドに置き換わっている。このハイブリッドシステムは、1モーター・2クラッチ式と言われているもので、ハイブリッド用バッテリーには(トヨタのニッケル水素電池と異なり)リーフと同じのリチウムイオン電池を採用している。そのためクラッチの一つでエンジンを切り離してモーターのみの走行を可能にしている。そしてその間発電機はエンジンの力を借りて、2次電池に電気を充電しているのであろうか。その結果高速域での燃費向上がネックであったTSH-Ⅱに比べて燃費も向上しているという。

フーガハイブリッドの発売開始から1ヶ月半後の2010年12月20日に、日産は満を持して完全な(5人乗りの実用的な)電気自動車の「リーフ」を発売した。三菱自動車iMiEVに次ぐ完全な5人乗りの電気自動車であり、電気自動車としては2番手であったが2011年11月15日2012年次RJCカーオブザイヤーを受賞し、更には2011年12月3日には2011-2012日本カーオブザイヤーも受賞したのである。そして世界のもろもろのカーオブザイヤーも席巻して行ったのである。

RJCとはAutomotive Researchers' & Journalist' Conference of Japan「日本自動車研究者・ジャーナリスト会議」と呼ぶらしい。(http://www.npo-rjc.jp/)

この電気自動車としての実用性を持ったと言うことは、持続可能なゼロ・エミッションの実現に近づいたと言うことなのである。内燃機関のエンジンでガソリンを燃やして常にCO2排出しながら走る代わりに、低騒音の電気モーターで車が走るということは、ゼロエミッション社会に近づくことができそうだと言う気持ちを世に与えたことが評価されたのであろう。もちろん総ての車が電気駆動になっている訳でもなく、モーター、バッテリー、ボデー、アクスルなどの製造過程では多くのCO2が排出されているが、車の走行時でのゼロ・エミッションが可能となることに、評価の目が行ったものであろう。

だから1997年に世界で始めて、エンジンとモーターで動く量産型のハイブリッド車・プリウスが新発売された時にも日本カーオブザイヤーを受賞しているが、それと同じ内容の衝撃だったのである。

日産「リーフ」は下記に示すように世界で、各種の賞を受賞している。
(http://ev.nissan.co.jp/EFFORT/HISTORY/award.html)

2011-2012日本カーオブザイヤー受賞(2011年12月3日、東京ビックサイト・東京モーターショー)
2012年次 RJCカーオブザイヤー受賞(2011年11月15日、ツインリンク茂木・栃木県)
ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2011受賞(2011.4.21,ニューヨークインターナショナルオートショー)
欧州カー・オブ・ザ・イヤー2011受賞(2010.11.29,フランス・パリ)
グローバルモバイル賞2011受賞(2011.2.15,GSMAモバイル世界会議スペイン・バルセロナ)
2010年度グッドデザイン賞 金賞(2010.11.10,東京ミッドタウン・ホール港区赤坂)
グッドデザイン賞には内閣総理大臣賞(大賞1点)と経済産業大臣賞(金賞14点)がある。


それにしてもバッテリーによる航続距離の変動幅の大きいことには、要注意だ。

先の論考に記載されているように、
「i-MiEV」の電池消耗量は、ハイペースで走行すると電池残量表示の1目盛(全部で16目盛)でコース1周(2.4km)だった。つまり、満充電状態での航続距離は、16×2.4=38.4kmとなった。これは、同車のカタログ値(10・15モード)の160kmの4分の1以下だ。

と述べられているように、その走行状態の違いにより、航続距離は極端に少なくなる。これでは自動車としては困るのである。日産のリーフでも、『航続距離は米LA4モード100マイル(160km)とされてきた』ものが、我々が巷で使う日常的な走行条件では、その半分の80km前後に減少してしまうという。これもi-MiEVのように高速走行すると、更に減少して40km程度しか走らないものと思われる。これでは高速道路では常に充電を考え考え走ることになり、その都度充電ししかも充電に数時間かかっては全く時間の浪費となってしまう。やはり電気自動車は何らかの方法で充電するための動力を積載していることが必須となろう。だからGMの「ボルト」は1.4Lのガソリンエンジンを積んだのであろう。積んだら積んだで遊ばせておくにはもったいないと考えて、ハイブリッド式に車の動力としても使うようにしたものと推測できる。
だから「レンジエクステンダー式」などとしゃれた名称を付けざるを得なかったのである。

(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(97)

2012-04-19 11:07:20 | Weblog

テスラは扇風機と氷で冷却
i-MiEVは充電に苦労


 だが、そうしたメランコリックな感情とは別に、レース関係者の多くから「テスラの性能に対する疑問の声」も上がった。アメリカ在住で、過去に数回テスラ取材をし、本連載を含めて同社関連の様々な記事を提供してきた筆者に、旧知のレース関係者たちから質問が浴びせかけられた。

 「むこう(=アメリカ)では、こうしたレースはやっていないのか?」、「テスラでサーキット走行するユーザーもいるはずだが、今日のようなトラブルは発生していないのか?」、「テスラは量産車なのだから、大手自動車メーカーが耐熱試験を行っているデスバレー(ラスベガスに近い高温地帯)に行ってテストしているのではないのか?」、「所詮ベンチャーということで、このレベルで許されるのか?」、「リコール問題は発生していないのか?」などなど。

 こうした各種の課題は、テスラと技術提携を結んだトヨタにとっても、テスラの技術詳細を解析している現時点で、浮上してきている「悩みの種」に違いない。

 テスラ陣営は走行後、過熱したモーターとリチウムイオン2次電池が収納された車両後部に、氷の入った袋をいくつも乗せた。そこに向かって大型扇風機で送風した。リチウムイオン2次電池の電池パックは、周囲を冷却水が流れる仕組みだが、今日のような状況ではその効果が低い。(BMW Mini Eは、水冷装置はなく空冷式)。

全日本EV選手権で件でモーター電池を冷やすテスラ

 対する三菱陣営は、さすが大手メーカーの量産車だけあって、特別な冷却対策は施さなかった。それよりも課題は航続距離。急速充電器が設置されていないこのレース場では、決勝に向けて一般電源からの数時間の充電が必要。練習走行で思いのほか電池を消耗した1台のi-MiEVは決勝開始までに満充電になるかどうか分からない状態だった。

 午後3時過ぎからの決勝(50km)。テスラ2台が「熱への懸念」からレース序盤/中盤で様子見走行するも、レース後半には「航続距離への懸念」でペースダウンする「i-MiEV」たちを一気に引き離した。「i-MiEV」の電池消耗量は、ハイペースで走行すると電池残量表示の1目盛(全部で16目盛)でコース1周(2.4km)だった。つまり、満充電状態での航続距離は、16×2.4=38.4kmとなった。これは、同車のカタログ値(10・15モード)の160kmの4分の1以下だ。

 だが、同カタログには注意書きとして「10・15モードは定められた試験条件での値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて値は異なります」と、赤字で記載されている。決勝前に満充電に達しなかった1台の「i-MiEV」は、レース終了直前にコース上で、ガス欠ならぬ「電欠」して停止した。

 また、テスラ「ロードスター」の航続距離は、390km(米国LA4モード)。だが、今回のようなサーキット走行では極端に航続距離は落ちるため、チーム側は商用の大型発電機をピットに持ち込み充電作業にあたっていた。

 また、テスラ「ロードスター」と同様、18650(直径18mm×長さ65mmの円筒型/いわゆるパソコン用電池)のリチウムイオン2次電池を大量搭載するBMW「Mini E」の航続距離は、240km(米国LA4モード)だ。両社の基本技術が米ベンチャーのACプロパルジョン社によるという事実は、本連載第45回「世界の自動車業界関係者もびっくり仰天! トヨタと米電気自動車ベンチャー・テスラ提携の真実」他に詳しい。(この件は、'10.5.31,NO.42に概略しているので参照願う。)

 なお今回出場の改造車クラスの3台は鉛蓄電池搭載で、50kmを完走するためにかなりペースダウン。量産型電気自動車に何度となく周回遅れにされた。

マスコミも明確に伝えない
日産リーフの条件別航続距離


 量産型電気自動車の航続距離については、日産が今年(2010年)6月11日~19日、同社追浜工場(神奈川県横須賀市)敷地内でマスコミ、アナリスト、株主等向けに開催した「リーフ試乗会」でも波紋を呼んだ。日産側は同車の航続距離の詳細を初めて公開したからだ。これまでの同車資料では、航続距離は米LA4モード100マイル(160km)とされてきた。だが使用条件で航続距離は大幅に変化するという。

 例えば、北海道の草原地帯を時速60kmで定速走行すると、航続距離は220km。対して、夏場で都心などで渋滞になりエアコンをつけて時速10km程度でノロノロ走行すると、航続距離は75km。また欧州走行モードとして、平均時速81kmで走行すると、航続距離は76km。こうした「走行条件別の航続距離」について、同試乗会に参加したマスコミ多くが明確に伝えなかった

 ほとんどの場合、これまで公開されてきた「航続距離160km」を強調し、上記にあるような「走行条件別の航続距離」を主体とした「電気自動車の本質」を考える報道が極めて少なかった。本稿執筆時、ウエブ上で「リーフ、航続距離」で検索してみても、上記の「走行条件別の航続距離」について、トヨタ系のgazoo.comで日刊自動車新聞の記事を掲載しているのが目立つ程度だ。

 こうした状況について、日産自動車・執行役員・グローバルゼロエミッションビークルビジネスユニット・渡部英朗氏に7月31日、同社本社内でのイベント直後に聞いた。同氏は、神奈川県松沢成文県知事の「同県の電気自動車への取り組み」の講演の後、一般ユーザー向けの「リーフ及び、日産の電気自動車ビジネス」関連の講演を行った。しかし、そのなかで、「走行条件別の航続距離」については触れなかった。

講演する日産の渡辺英明執行役員

「本日の講演は電気自動車事業の全般的な内容のため、航続距離の詳細には触れなかった。(リーフの走行条件で航続距離で大幅に変わることは)先日の試乗会でマスコミ対象に公表しており、それが一般ユーザーへの公開とイコールだと思っている。今後はユーザーに対して、航続距離に対してより詳しい説明が必要だと考えている」(渡部氏)

 本稿ここまでで、読者の多くは、各社が航続距離に関して提示する「走行モード」というものが理解できないはずだ。そこで日本における「走行モード」に関して、中心的役割を果たす機構の方に説明をお願いした。

走行モードについて
交通研の専門家に聞く


 この機構とは、国土交通省所管の「独立行政法人 交通安全環境研究所」(東京都府中市)だ。通称、交通研と呼ばれている。ここでは鉄道、自動車に関する各種の試験検査を行っている。自動車については、国の安全・環境基準への適合性の審査を、公正・中立な立場で行う日本で唯一の自動車審査機関だ。

 自動車の燃費基準については、国土交通省と経済産業省の双方が協力し、省エネルギー法に基づいて決定。同研究所は、燃費測定方法、試験方法の策定について技術的なサポートを行っている。つまり、自動車のカタログ等で記載されている「10・15モード(一般的に『じゅう・じゅうごモード』と読まれる」など日本国内での燃費モードは事実上、同研究所が策定している。

 この「10・15モード」は、10種類の市街地走行パターン、15種類の郊外走行パターンを持つ。試験計測については、交通研内の試験設備(シャーシダイナモと呼ばれる機器、固定されたローラーの上で自動車が駆動輪を回して計測)で行うことが多い。だが自動車メーカーなどの所有する試験設備で、公式認証試験に使用可能と確認できた場合、交通研の審査部審査官が立ち会い試験を行う。

 また最近、自動車のカタログ等で「JC08モード」という表記を見かける。これは「10・15モード」をさらに実走行状態に近付けるもの。ここ数年、これら2モードは併用されてきたが、2010年8月2日、当初は今年秋口といわれて来た「JC08への完全移行」が決定した。

 以下、交通研・環境研究領域・領域長補佐・河合英直氏の回答だ。同氏には筆者著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ」の取材にて、同領域所属の新国哲也氏と共に、プラグインハイブリッドの燃費(交通研の表現では、電費)効率測定方法の説明、及び電気自動車の法規の問題点について指摘を頂いた経緯がある。

  電気自動車の航続距離について、カタログなどに表記しなければならない法規があるのか?
 A (量産車としての)許可時に提出する諸元表への記載項目となる。また、公正取引委員会の指導の下、原則として、国土交通省での審査値でなければ、自動車のカタログ等に表記できない。本研究所としては、ユーザーの方々により正確で、より分かりやすい車両性能を伝えることのできる各種性能値の試験方法を日夜研究している。

  現状で、電気自動車の航続距離の試験方法はどうなっているのか?
 A 試験方法は定まっている。現状では10・15モードでの繰り返しで行っている。だが、ガソリン車では、現実的な走行状況に反映できるJC08モードに移行しており、電気自動車の航続距離試験法についてもJC08モードへ移行するべく改定作業を行っている。(筆者注:同質問は8月2日のJC08モード完全移行決定の前。つまり、既に販売されている「i-MiEV」は10・15モードのまま、今年(2010年)12月発売の「リーフ」はJC08モードが義務付けられる)
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(96)

2012-04-18 09:03:45 | Weblog

「株式会社SIM-Drive先行開発車事業第3号募集開始」(2011.9.12付け)による「先行開発車事業第2号参加機関」を下記しておく。
http://www.sim-drive.com/news/2011/0912_press-release.pdf

ちなみに第1事業参加機関の中には、いすゞ自動車株式会社(自動車)と三菱自動車工業株式会社 (自動車)の名前がある。ただし自動車関連部品会社は数社見受けられる。各社はいずれも1回のみの参加である。




旭化成株式会社(材料)
株式会社アドバンテスト (電子)
オイレス工業株式会社(部品)
川工業株式会社(部品)
株式会社クラレ(材料)
サンスター技研グループ(材料)
株式会社ソミック石川(部品)
タカタ株式会社(部品)
ダッソー・システムズ株式会社(ソフト)
千代田化工建設株式会社(建設)
株式会社ティラド(部品)
株式会社TBK(部品)
デュポン株式会社(材料)
東レ株式会社(材料)
東北電力株式会社(エネルギー)
東京エムケイ株式会社(輸送)
凸版印刷株式会社(出版)
豊田通商株式会社(商社)
日本パーカライジング株式会社(表面処理)
PSA Peugeot Citroën (自動車)
株式会社日立アドバンストデジタル(電子)
日立化成工業株式会社(材料)
ポリプラスチックス株式会社(材料)
BOSCH(部品)
株式会社ミクニ(部品)
三井・デュポンポリケミカル株式会社(材料)
株式会社ミツウロコ(エネルギー)



SIM-Driveでは第3号開発車で、第2号と同様「インホイールモーター技術」と「コンポーネントビルトイン式フレーム技術」などを組み合わせて、モーター利用の効率化、空気抵抗の低減、転がり摩擦の極小化などを目指すとしているし、開発工程の中では新しいことも追加したいとしている。

その中には今流行の「スマートグリッド」関係の概念の確立を狙いそのハード・ソフトを開発したい、と「先行開発車事業第3号:26の参加機関を集めて始動」には述べられているから、電気自動車そのものよりも電気自動車の使い勝手の開発に進んでゆくものと思われる。
http://www.sim-drive.com/news/2012/0328release1.html

と言うことは、インホイールモーターに関することは概ねマスターしたと言う事で、車本来の技術の向上と言うよりも、電気自動車をつかった仕組みの開発にも目を向けているようである。しかしながら、問題のバッテリーに関する技術の向上に関する事項は、ここでは言及されていない。

バッテリーに関してはなかなか手が出せない、と言うことか。であるならば、この事業は単なるとは言っては失礼に当たるが、外部からバッテリーを調達した電気自動車作りに終わる可能性がありそうだ。だから続けて参加する企業が無いのであろう。

ちなみに搭載するバッテリーは(先の記事によれば)、パナソニック製18650型で容量は35.1kWh、充電時間は「CHAdeMO」規格の急速充電器で3時間家庭用電源(200V)で12時間である。もちろんパナソニックにはそれなりの要求は出していることであろうが、それがどのようにバッテリーの性能向上やコストダウンに効くのかは不明である。しかしながら、351kmも走れば合格レベルなのであろう。この18650型Φ18mm×L65mmの円筒形のパソコン用のリチウムウオン2次電池であり、例のテスラー「ロードスター」6,831個も束ねて載せられているものと同じである。('11.4.21,NO.80参照のこと、'10.5.28,NO.41~なども。)

http://matome.naver.jp/odai/2133295194491607401 によれば、

三菱のiMiEVが180km、日産のLeafが200km(いずれもJC08モードでのカタログ値)の航続距離なので、この先行開発事業第2号車の351kmはリーフの1.7倍以上の航続距離を誇り、ほぼ実用に供せられる値に近いものである。実際のところ日産のリーフの実用航続距離としては160km程度だそうなので、この記事に言う日産リーフの約2倍の航続距離と言う表現も、あながち的外れでは無さそうだ。リーフの航続距離については'11.4.25,NO.83~84や'12.3.29,NO.88なども参照願う。

何はともあれ、電気自動車の航続距離は、その走りっぷり(電気の使われ方)によってかなり上下すると言われているから、そのことをよく認識して常にバッテリーの電気を確認しながら使うことが大切なのであろう。今ではこのことは多くのユーザーが認識していることと思うが、「リーフ」発売前には、日産もこの航続距離の減少にはかなり頭を悩ませていたようだ。一般的な状態(ガソリン車でのように)で走っても、いわゆるJC08モードでの航続距離は出ない。このようにただでさえ充電量の減少が早まるので、電気自動車航続距離は水物なのである。一寸古いが次の論考を参照願う。




DIAMOND online エコカー大戦争
走行条件によって大きく変わる
電気自動車のタブー「航続距離」の正体

【第51回】 2010年8月11日 桃田健史 [ジャーナリスト] 

ついに、「真剣に速さを競う」電気自動車レースが始まった。
 海の日で祝日だった2010年7月19日、袖ヶ浦レースウエイ(1周2.4km/千葉県袖ヶ浦市)で全日本EV選手権第1戦が開催されたのだ。


('10年)7月19日に袖ヶ浦レースウェイで開催された全日本EV選手権第1戦の様子。

 「全日本」と銘打つも、参加車はたったの9台。市販車クラスが6台で、2台が全日本GTカー選手権の老舗プライベーター「チームタイサン」のテスラ「ロードスター」。残り4台が三菱「i-MiEV」で、そのうち3台は三菱自動車工業本社の広報車両だ。その他、改造車クラスに、自動車整備の専門学校/千葉自動車総合大学校から「カローラEV」とスバルの軽自動車「ビビオEV」、さらに「チームタイサン」のポルシェ「916EV」が参加した。(日産リーフはまだは発売されたいない。)

 これまで、日本で電気自動車レースというと、毎年11月に筑波サーキットで開催される「EVフェスティバル」に代表されるように、「速さ」より自主改造の技術向上を狙うことを基盤に運営されてきた。対して、こちら「全日本EV選手権」は、電気自動車の高速走行パフォーマンスを前面に押し出すものだ。

路面温度67度で性能ダウン
まるでガソリン車の創世記


 大会当日の午前10時過ぎ、各車が練習走行を開始するころには、気温34度路面温度67度に達した。

 そうしたなか、各車は大きな壁にブチあたった。

 「全開走行だと、2周もたない。バッテリーの警告ランプがつくし、モーターの警告ランプが付いた、それまで200Nmだった最大トルクが、コンピュータ制御がかかって一気に4分の1程度まで落ちて、加速できなくなった」(テスラロードスター、飯田章選手)。

 「警告灯はつくし、クルマが重いし、リアの重心は高いし。コーナーの入り口ではアンダーステアが強くて曲がりづらいし、コーナーの出口ではいきなりオーバーステアでリアが大きく流れるし。とにかく大変だ、このクルマを速く走らせるのは」(テスラロードスター、植田正幸選手)。

 「バッテリーの過熱も課題だが、思ったより電気を食ってしまって。決勝ではかなりペースダウンしないと完走出来ないかもしれない」(三菱i-MiEVでの出場者)。また、デモンストレーション走行を行った、BMW「Mini E」も「各種警告灯がついてしまって2周もたない」と、早々にピットインした。

 居合わせたベテランのレース関係者は「こりゃまるで1962年、鈴鹿サーキットが開業した頃みたいだ。あの頃、量産車はブレーキも、トランスミッションも、エンジンも弱くて、鈴鹿を全開で1周出来なかったンだから」と、日本のガソリン車創世記を回想した。

 つまりはこの全日本EV選手権第1戦、日本の自動車産業の新たなるステージへの幕開けなのかもしれない。
(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・プリウス急加速問題(95)

2012-04-17 11:18:46 | Weblog

さていま少し自動車の話を続けたいと思う。
電気自動車の核となるものは、バッテリーである。これは誰にでもわかっていることであるが、関連メーカーはこのバッテリーに四苦八苦しているのであろう。なんと言っても今の技術レベルでは量産して量販できるほどのコストにまでは下がっていない。それにバッテリーに充電する技術もイマイチだし、充電されている電気の量も問題だ。この充電できる電気の量とコストは比例しているし、大量の電気を充電しようとすれば必然的にバッテリーは高価になり、重たくもなるし嵩張ってしまう。ガソリンタンクと異なり、蓄えられている電気の量が少なくなればバッテリーが軽くなることもない。その上取り扱いを間違えると、シボレー「ボルト」のように発火しかねない。だから厄介なのであろう。もっともガソリンの方が燃えやすいので、衝突事故などで車が燃えることは、頻繁でもないが、起こっている。だから電気自動車の発火事故についても、それほど目くじらを立てる事ではないかもしれないが、その発火のカラクリが余りはっきりとしていないことに、拒否反応があるのであろう。何と言ってもガソリンは目に見えているが、電気は目に見えないから厄介なのである。

そのため何やかやで電気自動車は、近距離用のコミューター的な使われ方から普及するのではないかと、一般的には思われている。そんな折に、1回充電350kmも走ることの出来る車が出来上がったと言う。

これはEliica(エリーカElectric Lithium-Ion Car)を製作した慶應義塾大学清水浩教授の主宰するSIM-Driveと言うベンチャー企業(と言ってよいと思うが)が、作った「SIM-WIL」と言う電気自動車だ。これは初代ではない、実用型車としては2代目の車なのだそうだ。




SIM-Drive、電気自動車の先行開発車第2号「SIM-WIL」を発表、351kmの航続距離と広い室内が特徴
2012/03/28 16:10
鶴原 吉郎=日経Automotive Technology

図1 SIM-WILを発表するSIM-Driveの福武總一郎会長(左)と清水浩社長

図2 リアビュー

図3 インストルメントパネル

 電気自動車(EV)開発会社のSIM-Driveは、2011年1月から取り組んできた先行開発車事業第2号の「SIM-WIL」が完成したと発表した。この事業は2014年ごろ量産化を想定した先行開発車の試作を目的としたもので、将来、EVビジネスに参入を検討している34の企業・団体が参加した。

 SIM-WILは、先行開発1号車の「SIM-LEI」よりも電池の搭載量増やし、一充電あたりの航続距離351kmを実現したほか、全長4150×全幅1715×全高1550mmのBセグメントの車体に、Eセグメント車に相当する車内スペースを実現したとしている。また0→100km/hの加速性能は5.4秒と中級レベルのスポーツカーに匹敵する。

 車体構造は、鋼板プレス構造のフロアフレーム内部バッテリを搭載する「コンポーネントビルトイン式フレーム」をSIM-LEIと同様に採用するのに加え、アッパーボディはハイドロフォームにより成形した閉断面材でフレームを構成するスペースフレーム構造を採用した。

 モータは、アウターロータ・ダイレクトドライブ方式インホイールモータであることはSIM-LEIと同じだが、SIM-LEIで課題になっていたトルクリップル(初動時の回転ムラによる振動)を減少させる目的で構造を見直し、大幅に低減したとしている。

 車両質量は1580 kg、走行エネルギの消費量 (JC08モード)は99.7Wh/km、最高速度は180km/h、搭載するバッテリは、パナソニック製18650型で容量は35.1kWh、充電時間は「CHAdeMO」規格の急速充電器で3時間家庭用電源(200V)12時間

 なおSIM-Driveは、2013年3月末までにスマートグリッドやスマートハウスなどの技術を盛り込んだ高性能EVの試作を目指す先行開発車事業第3号に、26の企業・団体が参加したことを併せて発表した。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120328/210341/


ついでにもう一つ。ここには協賛企業としてP.S.Aが参画している。

30年間の成果、1回充電で350km走るEV
2012年3月28日(水)19:33

(読売新聞)
 電気自動車(EV)の技術開発を産学連携で進める新興企業「シムドライブ」は28日、1回の充電で351キロ・メートルを走れる第2号試作車「シム・ウィル」を発表した。

 各車輪にモーターを内蔵して動力の効率を高めたほか、ドアに繊維強化プラスチックを使って重量も軽くした。1回の充電で走れる航続距離は、昨年発表した1号試作車より3割程度伸びた。日産自動車のEV「リーフ」2倍近くにあたり、ガソリンに換算すると1リットル当たり60キロ・メートル以上走る計算という。電池など走るための部品をすべて床下に置く構造で、高級車並みの室内の広さを実現したという。

 開発には、東レや旭化成、仏自動車大手プジョー・シトロエン・グループや独自動車部品大手ボッシュなど内外の34団体が参加した。

 シムドライブは試作車の開発のみを行い、生産や販売は他の企業に委ねる。2014年頃の量産化を目指す。

 清水浩社長(慶大教授)は「過去30年間の開発で最高のEVができた」と強調した。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20120328-567-OYT1T00785.html



P.S.Aとは(Peugeot Société Anonyme英語で言うとPeugeot Corporation)と言う事の様で、正式にはP.S.A Peugeot Citroën、略称としてはGroupe P.S.Aと言うようです。
http://nagasaki.peugeot-dealer.jp/cgi-bin/WebObjects/111c62c5682.woa/wa/read/pj_11c360a7f1e/

このP.S.Aは、2012.4.4,NO.94で言及したように、GMと提携している。
従ってGMはP.S.A Peugeot Citroënなどから「SIM-Drive」などの知見も手に入れることが出来るのではなかろうか。

株式会社SIM-Driveの先行開発車事業の募集案内によれば、この第2号の開発事業に参画している機関は34と言う。その中に明確に自動車企業としてはP.S.A Peugeot Citroën1社の名前が載っている。公表されている機関の数は27なので、34-27=7機関名は未公表である。この中に自動車企業はあるかもしれないが、定かではない。

(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする