世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

ならず者国家・中国、アレコレ!(30)

2015-12-28 00:00:00 | Weblog

成長鈍化を受け入れよ

 「中国政府は財産を再分配できる制度を速やかに取り入れるべきです。驚くべきことに、中国には相続税がありません。それは、格差を助長させる要因にもなっています。資産を持つ者に対しては相続税を課すべきです。加えて中国政府は、所得税の納付状況を透明化した方が良いでしょう。それは、政府に対する国民の信頼を高めることにつながるはずです」

 ピケティ氏が格差の解消を強く求めているのは、富裕層に対する一般大衆の不満を解消させるためだけではない。このまま格差を放置したままでは、中国経済の発展が難しい段階に達しているとの認識がある。その最大の要因は、一人っ子政策による出生率の低下だ。世界最大の人口を誇る中国も近い将来、人口減少に転じるのは確実視されている。

 「人口の減少は、中国のGDPに確実に影響を与えます。2030年以降、中国の人口は減り始めます。同じ人口が多い国でも、生産人口を依然多く抱えるインドと高齢化が既に始まっている中国とでは、中身が全然違います。これから人口ボーナスが期待できるインドと、それが消失しつつある中国では、今後たどる道は明らかに違ってくるでしょう」

 中国が、安価で豊富な労働力を武器に高い経済成長を遂げてきたのは周知の事実。だが、その最大の強みと言われていた労働力も、近年は人件費の高騰人口減少で優位性が崩れつつある。

中国でも数多く講演したピケティ氏。写真は2014年11月の上海での講演模様(写真=王辰)

 2桁の経済成長率が望めなくなった今、中国政府は経済構造の改善を通じ、成長の質を変化させることで持続的な経済発展を目指そうとしている。

 だからこそ景気が減速している現状を「新常態」と表現し、国民に成長鈍化を受け入れるよう促している。言い換えれば、それは大規模に資本や労働を投入することでリターンを得る従来型の発展の形との決別である。資本の効率性を高めると同時に、得られた収益を適正に分配できる経済モデルへの転換を意味している。

 幸いにも、足元の経済成長が鈍化しても失業率は高まっていない。徐々にではあるが、製造業に代わりサービス業の雇用が増えているためだ。

 世界に通用する中国企業も次々と台頭している。斬新なスマートフォンを販売し中国のアップルとも評される小米科技(シャオミ)、中国語圏以外にも勢力を拡大するインターネット企業の騰訊(テンセント)、そして世界有数の家電メーカーとなった海爾集団(ハイアール)など、イノベーションの担い手は着実に増えている。

 新常態下で活躍するのは中国企業だけではない。中国の抱える問題を解決したり、拡大する中間層向けのビジネスを得意とする日系企業にもビジネスチャンスが広がっている。

(ピケティ氏のコメント部分は本誌取材、中国内での講演やインタビューでの発言を基に再編集した)

日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則

中国経済が歴史的な転換期を迎えている。世界2位へと駆け上がった高速成長時代に別れを告げ、安定成長と構造改革を両立する「新常態」の時代に突入した。その影響は、日本を含め世界経済を揺るがすインパクトを持つ。習近平国家主席は抵抗を受けながらも反腐敗運動を進め、格差の是正という難題を解決しようとしている。大きく変化する中国では役人との付き合い方も含め、ビジネスモデルを抜本的に見直す必要がある。経済が失速する中でも賢く稼ぐ鉄則を探った。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150403/279549/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt



ピケティ氏は次のように言っている。

「・・・一握りの人がお金持ちになりました。それ自体は途上国の発展段階として自然な現象です。しかし、中国政府は富裕層が資本を独占することを規制し、低所得者層にも富がきちんと分配される仕組みを導入できていません


これこそが共産党(ならず者)国家・中国の本質をあらわしているもの、と小生には思えるのである。

中国共産党政権は、(国民)国家を作ったわけではないのです。国民のためではなく、共産党と言う団体のために国と言う組織を作ったのである。いわゆる中華人民共和国と言う巨大な軍閥組織(国家)を作り上げたのである。すべてが共産党に奉仕すべきもの、と定めている。国民が一致協力して、国民のためになるように国と言う組織を作ったわけではない。共産党と言う組織のために国と言う形を作ったのである。だから国と言う形態をしているが、いわゆる「国民国家」と言う概念ではないのであろう。その証拠に中華人民共和国という名称を吹聴している。

中国には人民しかいないのである。人民とはトップに君臨する共産党が、党に奉仕するためのものとして人民を育てているだけなのである。だから中国人民には基本的人権などはないのである。いわゆる、国民の、国民による、国民のための政治ではないのである。共産党の、共産党による、共産党のための政治なのだ。リンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」とは訳が違う。

だから共産党の意に反する事や者や物は、すべて即座に排除される仕組みとなっているようだ。共産党に富が配分されさえすれば、低所得者層に富がうまく配分されなくても、それはプライオリティの高い問題ではないのである。

だから共産党に富が入ってくれば、富がキチンと分配される仕組みなんぞは、それほど必要がないのであろう。

しかし現在は中国景気は下り坂である。格差が表面化して、失業がはびこり社会不安が発生しないとも限らない情勢となってきているのである。

今年2015年も残すところ後4日となりましたが、このブログも明日から年末年始のためお休みとしますので、よろしくお願いいたします。我々のこの日本と皆様に、よいお年を迎えられますようお祈り致しております。また来年2016年、身も心も元気に、お目にかかれることを楽しみにしております。

(来年に続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(29)

2015-12-25 00:00:00 | Weblog

まず腐敗をなくすことから始めるべきだ

 2014年11月、上海の名門、復旦大学で開かれたピケティ氏の講演会で、こんなやり取りがあった。会場の参加者から「中国のこれからの発展に関して、習国家主席に何かアドバイスはありませんか」と質問を受けたピケティ氏はこう答えた。

 「企業や政府の間にはびこる汚職、そして腐敗が不透明な収入を増やし、一部の人に富が集中する要因となっているのは紛れもない事実です。その意味で、習政権が推進している反腐敗運動は、富の不平等な分配を確実に是正できる方法と思っています」

 「そもそも中国では、なぜここまで汚職が蔓延するのでしょうか。それは、個人の収入をきちんと管理する制度がないからです。賄賂を受け取っても長期にわたって誰にも気が付かれないので、通常ではあり得ない金額の蓄財に走る人もいます。だからこそ、反腐敗運動は格差是正に非常に効果があるのです

 習政権の反腐敗運動に対しては、国際社会から批判の声も上がっている。重大な規律違反の疑いで逮捕された共産党幹部は既に100人を超えた。「腐敗を撲滅する」という大義を振りかざし、政敵を次々と葬り去ろうとする習政権の姿勢は、時に「強権的」とさえ映る。だが、ピケティ氏は格差を是正するには、まず腐敗をなくすことから始めるべきだと指摘する。

 中国では政府高官の巨額蓄財が度々明らかとなっている。真相はいまだやぶの中だが、温家宝前首相の一族が27億ドル(約3240億円)以上もの資産を蓄えていると米ニューヨーク・タイムズ紙が報じたこともある。腐敗はあらゆる階層に広がっている。地方政府の中堅幹部が高級腕時計を複数所有していることがばれて、失職に追い込まれる事件などは頻繁に起きている。

 こうした実態が肌身に染みているだけに、ピケティ氏の発言は中国国内で大きな話題を呼んだ。在日中国人ジャーナリスト、徐静波氏や中国メディア『陸家嘴』のインタビューなどに答えたピケティ氏は、中国特有の問題点をこう指摘している。

 「日本は経済成長の過程で格差が解消されていきましたが、中国は経済が発展すればするほど格差が広がっています。中国は社会主義の国であるはずなのに、大部分の資本が一握りの人に独占されています。このことを私は理解できない」

 「ただ、私は中国が毛沢東時代に戻って全ての人が平等になるべきだと言っているのではありません。むしろ、適度な格差は社会にとって有意義だと捉えています。なぜなら、それは人々の上昇志向やイノベーションを生み出す動機となるからです」

 歴史をさかのぼって実証分析を積み重ねる手法はピケティ氏の最大の持ち味だ。同氏が指摘する通り、個人の利益より国全体の利益が優先された毛沢東時代、中国は発展から取り残されていた。ところが、小平が実権を握ってから経済が急成長した。格差を許容する「先富論」を打ち出したからだ。

「中国には相続税がない」

 先富論は、先に豊かになれる地域、あるいはそうした力のある個人から豊かになることを推奨した。小平の改革解放政策の根幹を成す考え方であり、平等の問題はいったん棚上げされた。発展に乗り遅れた地域や人はいずれ支援できると考えたからだ。

 まず選ばれたのが沿岸部だ。中国政府は深圳など沿岸部を中心に経済特区を設け、市場経済化のためのモノとインフラ、そして外資導入のシステムを集中させた。狙い通り沿岸部から豊かになり始め、富裕層が次々と生まれていった。

 ところが沿岸部と内陸部都市部と農村部の所得格差は急速に広がってしまった。小平以降の江沢民および胡錦濤政権は「西部大開発」という目標を掲げ、内陸部も発展させようと試みた。ただ、抜本的な解決には至っていない。

 2012年の中国統計年鑑によると、都市と農村部の1人当たり所得格差は1980年に2.5倍だったが、2011年には3.1倍へと拡大している。また、1人当たりのGDP(国内総生産)は最も高い天津市と最も低い貴州省の差は約5倍だ。沿岸部と内陸部の経済格差はいまだ解消されてはいない。

中国主要地域の1人当たりGDP。先に豊かになった沿岸部内陸部との格差は5倍(出所:「中国統計年鑑2012年版」)

 ではどうすればいいのか。格差が度を超えてしまうと社会階層を固定化させる要因に
なってしまうため、政策で強制的に格差を是正する必要があるとピケティ氏は説く。

 「問題の本質は、資本の分配のされ方、そして税制の問題にあります。中国は急速な経済発展を遂げて、一握りの人がお金持ちになりました。それ自体は途上国の発展段階として自然な現象です。しかし、中国政府は富裕層が資本を独占することを規制し、低所得者層にも富がきちんと分配される仕組みを導入できていません

 「例えば、中国の富豪ランキングに載るようなお金持ちがこの1年間に納めた所得税は、一般的なホワイトカラー1人が納めた所得税とそれほど変わりません。これではお金持ちはますます富み、貧しい人はますます苦しむ。これが非常に大きな問題なのです」

 ピケティ氏が推奨する仕組みは富裕層への課税強化だ。格差を解消するための処方箋として『21世紀の資本』の中でも繰り返し述べられていることだ。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(28)

2015-12-24 00:00:00 | Weblog

そして2種類の特徴について述べている。

即ち「六つの特徴」と「九つの特徴」である。この二つの種類の特徴を分けているところを見ると、違う種類の特徴と見える。

小生には、「六つの特徴」はマクロで見た特徴を現しており、「九つの特徴」は、どちらかと言うと、ミクロで見た特徴を現そうとしているのではないのかな、と見た。

そして中国の現状を人口が減少する社会と認めて、「新常態」からの更なる成長をもたらすためには、人の能力資質、技術進歩に頼る経済成長に頼るしかないのだ、と談じている(「九つの特徴」の【5】)。

そして社会体制は、 「正常な市場経済国家に変わっていく」と論じ、 「正常な市場経済国家に変わらなくては」成長は維持できないと論じているように見える。

そしてそのためには、「市場経済の本質は、自由、平等、公開の原則にのっとった競争メカニズム(「具体的影響力」の【3】)。国家は公権力と私権利のメカニズムをどのように処理していかねばならないか問われることになる。」と断じているのである。

これはなんとなく、自由、民主、基本的人権、法の支配、と言う民主主義国家に近い原理を想定している、と思われてならないのである。しかもこれは「政治体制改革」である、とも言っている。

そしてこれらは、左派経済学者の郎咸平ブログでの解説だと言う。本人は判っていっているのかどうかは知らないが、低成長時代から脱却するためには人々の総意と工夫が必要で、そのためには人の能力資質、技術進歩に頼る経済成長に頼るしかない、まで言っている。

当然これが突き進んでゆけば、共産党の一党独裁政治は破綻することになる、と小生には思われるのであるが。

しかもそうすることによって、「中国的文化的価値観を国際社会の価値観に融合させる」ことができる、ともほざいている。これって、国際秩序は中国の「新常態」が作るのでぞ、何ぞと言っているのと同じではないのか。

言うならば、G2を超越して国際秩序は中国が作ります、と言っていることではないのかな。

それが、「中国の夢・中華民族の復興」なのである。恐ろしいことだ。景気が悪くなったことの幸いに、「新常態」何ぞと訳の判らない事を言って、いつの間にか中国は「世界の覇権」を目指す、と宣言したのである。

左派経済学者の郎咸平がこのことを意識して言ったかどうかはわからないが、少なくとも習近平政権はこのことを了解しているはずである。習近平も、愈々衣の下の鎧を見せ始めたのか、真剣に注意するに越したことはない。

この「新常態」について郎咸平は、「新常態が国家と個人に与える影響力は、当時の南巡講話をはるかに超えることだろう」とも言っているし、更には「…現政権が打ち出した“新常態”とは中国経済、社会の直面する問題を解決する根本的な方法論だ。…今年に推進される行政、国有企業、金融、不動産市場に対する改革について深く分析すれば、“新常態”と“旧制度”の本質的違いがはっきりするだろう」とも言っているので、この「新常態」は単なる「低成長」や「安定成長」の時代に入ることを認識せよ、何ぞと言った後ろ向きの慰め言葉とは根本的に異なる。

中国の「覇権」を目指す方法論だと言っているようにも、小生には、見える。もう一つ「新常態」に関する論考を考察する必要がある。



ピケティが解説、中国が「新常態」に突き進む必然
2015年4月6日(月)  武田 安恵

 『21世紀の資本』で所得と富の分配について明らかにした経済学者のトマ・ピケティ氏。中国には経済が発展するほど格差が広がってしまう歴史的な構造要因が残っており、「新常態」でそれが是正できなければ中国の先行きは厳しいと説く。

 「中国の格差問題に対する私の率直な印象は、解決は非常に難しいというものです。中国を訪れた際、政府関係者や学者と議論しましたが、その多くが中国で格差が拡大していくことに対して心配し、懸念を示していました。しかし、今のところ中国には格差を解消する手段がない。あったとしても不十分なものばかりです」
 
『21世紀の資本』を著したフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏。経済格差が各国で深刻な問題を引き起こしている中で、同氏が導き出した「資本収益率(r)>経済成長率(g)」という不等式は世界的に注目を集めることになった。過去の膨大なデータを解析することで、「富める者がさらに富み、持たざる者との格差が広がる」という法則を明らかにしたからだ。

 そこで本誌は、急速な経済発展に伴い格差が拡大した中国について、ピケティ氏に意見を求めた。その答えは、現状の中国を憂慮しつつも、問題点に鋭く切り込むものだった。

『21世紀の資本』で所得と富の分配について明らかにした経済学者のトマ・ピケティ氏(写真=Getty Images)

 「もし本気で格差解消に取り組もうとするならば、今以上に多くの人が牢屋に入ることになるでしょう。中国はまず、所得、不動産、相続に関する税の累進性を強化するように、税制度を改正しなければなりません」

 実は、ピケティ氏は『21世紀の資本』の中で中国についても取り上げようとしていた。だが、中国では国際的な基準の統計データが不足しており、あったとしても信用に足る内容かどうかが確信できなかったため、断念した。

 ただ、ピケティ氏は習近平政権が推し進めている反腐敗運動については極めて高い評価を下している。

新常態」とは

もとは2008年のリーマンショック後、世界経済が新しい局面に入ったとの意味で使われるようになった「ニューノーマル」の中国語訳。2014年5月に習近平国家主席が河南省を視察した際にこの言葉を使ってから、高速成長から安定成長に移行する中国経済の現状を意味する言葉として広まった。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(27)

2015-12-23 00:00:00 | Weblog

常態化した経済構造と政治・社会を変える

 要するに、中国は改革開放以後、常態化していた経済構造を変えていくつもりだ、ということである。また、その転換の際には、今までと違う異常事態が起こるだろうが、それは新常態として受け入れよ、ということである。

 この「新常態」と、党規約にいずれ盛り込まれるのではないかと言われている、習近平の政治理念を表す「四つの全面」(全面的なややゆとりある(小康)社会の建設、全面的な改革の深化、全面的な法治、厳格な規約に従った全面的な党の統治)とセットで考えると、習近平反腐敗キャンペーンに見られる、従来の共産党秩序を無視した元政治局常務委員や退役上将の党籍剥奪や、軍区指令への異例な若手抜擢や、大学教育での「西側価値観」排除指示といった政治・社会における異常事態も、この「新常態」につながると考えるべきだろう。

 この「新常態」について、左派経済学者の郎咸平はブログでこう解説する。

 「中国のGDP成長速度は2015年7.1%にまで落ち込むだろう。…経済の冷え込み、通貨緊縮のリスクは年初にすでに露見している。…現政権が打ち出した“新常態”とは中国経済、社会の直面する問題を解決する根本的な方法論だ。…今年に推進される行政、国有企業、金融、不動産市場に対する改革について深く分析すれば、“新常態”と“旧制度”の本質的違いがはっきりするだろう」

 「1992年の小平の南巡講話は、社会主義市場経済体制に一連の改革をもたらし、中国を大きく変えた。“下海(個人企業)ブーム”“出稼ぎブーム”“創業ブーム”などの改変により無数の人々の運命が変えられた。しかし、新常態が国家と個人に与える影響力は、当時の南巡講話をはるかに超えることだろう」

建設者になれば中国的価値観が世界に受け入れられる

 郎咸平が指摘するその具体的影響力とは、こうだ。

 【1】公務員や国有企業幹部による創業ブームが起きる。“簡政放権”と反腐敗キャンペーンによって、市場と権力の癒着が断ち切られると、そこにぶら下がっていた官僚・国有企業幹部は頭を切り替えねばならない。おそらくは、彼らの間で、それまで地方行政が握っていた権利業務を代行するような新ビジネスが生まれるのではないか。

 【2】権力と市場の切り離しに成功すれば、正常な市場経済国家に変わっていく。

 【3】市場経済化が国家の体制改革の先鞭をつけるかもしれない。市場経済の本質は、自由、平等、公開の原則にのっとった競争メカニズム。国家は公権力と私権利のメカニズムをどのように処理していかねばならないか問われることになる。この公権力と私権利の関係調整こそ、政治体制改革といえないか。“新常態”は経済改革にみえて、その本質は政治体制改革である。

 【4】国際経済の枠組みにおける中国の役割が参与者から新たな国際経済秩序の建設者に転換する。小平の改革開放は、中国をグローバル経済に参加させ、WTO(世界貿易機関)加盟を実現させた。だが、それはあくまで、グローバル経済の一員になったというだけ。“新常態”に基づく外交・経済政策の骨子として打ち出されている“一帯一路”(中央アジアからロシアに向かうシルクロード経済帯と南シナ海からインド洋に向かう21世紀海のシルクロード経済帯を中国が中心となって開発していく構想)によって、中国は国際経済の枠組み秩序を主導的に建設する役割を担う可能性がある。

 【5】新常態は中国的文化的価値観を国際社会の価値観に融合させることができる。中国が国際社会において経済包囲網、軍事包囲網、エネルギー包囲網などの脅威にさらされ、特に米国がアジアリバランス政策を打ち出してから中国はほとんど友達がいない。これは中国的価値観が国際価値観基準と大きく違うためである。だが(国際経済秩序の参与者から建設者に転向できれば)中国的価値観が国際社会に受け入れられるようになる。

 郎咸平の解説は、習近平政権の期待している効果をわかりやすくまとめているという意味で、非常に参考になった。現地の消息筋から聞く話では、習近平が目指しているのは小平を超えること、G2という米中二大国家による国際秩序の形成(あるいは米国もしのぐ影響力を発揮する国家になること)という。「中国の夢・中華民族の復興」を掲げる習近平の野望シナリオの具体策が「新常態」にあると言えそうだ。

 もっとも、以上のことは言うが易し、為すが難しであることは言うまでもない。問題はこの新常態宣言によって生じる中国の負の面である。

「世界の工場」の終焉、厳しい生活が常態に

 まず予想されるのはエネルギー料金の高騰。これは中国石油を含めた石油産業や石炭業界の整理再編が進められるに伴って、低く抑えられた国内のエネルギー料金が値上がりするだろうし、実際、タクシーや地下鉄料金の値上がりは始まっている。エネルギー料金の値上げは物価上昇を加速させるだろう。バブル崩壊、一部金融機関の破たんもやむなし、という声は中国の元官僚や専門家からも聞こえる。江沢民、胡錦濤政権時代に銀行の破産は絶対ありえなかったが、これからは、それが新常態になる。

 今年早々、中国広東省で松下、東芝、シチズン系の日系資本の入った工場が相次いで
撤退し、中国の労働市場に動揺を与えていることが報道されているが、この傾向は日系資本だけでなく、マイクロソフトやノキア、ネスレといった外資の労働集約型工場全体に言えることであり、これが中国の実質失業率に大きく影響している。改革開放以来続いていた「世界の工場」という常態もいよいよ終わりを告げる。庶民の暮らしぶりについて言えば、間違いなく厳しいものに変わっていき、それが「ニューノーマルなのだ、文句言うな」と強制的に受け入れさせられる、ということでもある。

 ニューヨーク在住の華人コラムニスト北風は「ボイスオブアメリカ」の取材で「“新常態”なんていうのは庶民の目をくらませる共産党の政治用語にすぎない」と批判している。「中国の直面する負の局面を婉曲に表現して、表面上だけ大衆からの批判・反発を避けようとしているのだ。典型的な共産党言語のニセ文法」と。

「おぼれかけている」中国にどう対するか

 過去にも「失業」という言葉を使うと反発が強いので「下崗」(一時休職)という言葉を造ったりしてきたが、それと同じというわけだ。そう考えると「新常態宣言」とは、中国の経済衰退宣言、社会不安定期突入宣言ともいえる。

 小平は改革開放推進の際に、『石をなでながら河を渡る』と言う表現で、市場経済と計画経済、社会主義と資本主義の矛盾に関わる先鋭的論争を回避したが、今の中国の状態は、川底の石を確かめながら前に進むどころか、とうに川底に足がつかない河の深みにはまっておぼれかけている。その現状について、「新常態」(おぼれかけている)だと追認した。

 この深みにはまった中国は独自の泳法でもって自力で河を泳ぎ切ってこちらの岸につくのか、それとも引き返して元の岸に戻るのか。もちろん途中でぶくぶくと沈む可能性だってある。それを周辺国として、どう眺めるかが、問われるかもしれない。手助けしたほうがいいか。手助けしても感謝されるどころか、岸にたどりついた相手に、いきなり殴り倒されることもあるわけだが。

中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス

 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150309/278478/?n_cid=nbpnbo_leaf_bn


なかなか難解な論考であるが、「新常態」とは低成長または安定成長時代に突入したぞ、と宣言していることである。このことは冒頭で触れられている。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(26)

2015-12-22 00:00:00 | Weblog

それは、新築住宅価格の上昇が止まったことであった。先にも紹介した日本経済新聞社編の「中国バブル崩壊」によると、2014年9,10,11月と3ヵ月連続で、主要70都市で新築住宅価格上昇が見られなかったと言う。住宅市況の不振は、不動産関連投資の終焉を意味して、景気の減速感が愈々強まってきたことになる。不動産バブル崩壊である。土地譲渡収入の伸びは、既に2013年には急激に鈍っていたのであるが、2014年後半には減少に転じていった、と記されている。

個人も企業もさることながら、地方財政も行き詰っていた。地方政府も土地を売って金を工面して公共工事を行っていたが、その土地の使用権を売ってその歳入に当てていた割合は、約3割にも達していたと言う。その回転が止まりだしたので。地方政府は早々に資金繰りに、当然行き詰まってしまった。

地方政府が資金繰りに困り、ばたばたと倒産したらそれこそ一大事である。そのため習近平政権は、大慌てで金融緩和に走ったのである。

即ち地方政府の借金返済の負担を軽くするための、大幅な金融緩和であった。

地方政府が借金を借り替えるためのカネを工面するために、大量の債券の発行を特別に認める特例を制定したのである。更には先の日経編の書籍によれば、中国人民銀行は2014.11月以降毎月のように金融緩和策を講じていった。2015.8月までに5回もの利下げを実施し、今年になって3回(2,4,9月)もの預金準備率引き下げている。

4兆元(約57兆円)もの経済対策は、5年ほどの中国景気を維持して来たが、そろそろ下降局面になりつつあった。4兆元の大半は公共工事・不動産関連に投資されたが、それもそろそろ飽和状態となり、不動産価格の上昇が止まりだした。2014年の秋ごろからは新築住宅価格が下落を始める。それに伴い、土地譲渡収入に頼っていた地方政府は土地財政がほころび始めた。

地方政府の破綻は、習近平政権にとっては一大事である。一挙に社会不安が爆発しかねないからだ。そのため、習近平政権は、大慌てで金回りをよくする必要に迫られた。習近平政権の最大テーマは経済問題となった。8月の北戴河会議(8/6~8/16)は経済問題一色だったと言われていることが、その証拠である。

ルイスの転換点に突入       2012~2013年頃(完全雇用、賃金上昇、過剰設備)
新築住宅価格の下落        2014.10頃~
土地譲渡収入の減少        2014.10頃~  2014.10~12月、20%減少
政府による利下げ金融緩和)   2014.11~2015.8月まで毎月実施
借金借り換え債券発行許可     2014.末~2015.初(推定)
預金準備率全面的引き下げ    2015.2,4,9月
元の切り下げ(約2%、結局4.5%) 2015.8.11(輸出の増加?)
人民元のSDR化           2015.11.30(外に向かって需要を求める)


このような状況は、中国政府による苦しい景気対策の状況をあらわしている。

このような状況であるから、中国景気はおいそれとは回復はしないであろう。

そして金融緩和を背景に、不動産に向かっていた資金は、株式市場へとなだれ込むことになった。

この「中国不動産バブルの崩壊」に伴い、この中国の余剰資金は不動産市場から株式市場へと流入し、株式市場がバブル化し飽和する事になる。すると今度はそのカネは再び不動産市場への流れ込む。シャドーバンキングなども急速に膨らみ、住宅市場が供給過剰から不振になると再びカネは株式市場へと向かうのである、と記されている。この歴史は繰り返されると言う。

このことは、中国では革新的成長が生まれ難い状況にあることを示しているのではないのかな。これこそが共産党一党支配による最大の弊害なのであろう。人民にによる自由な発想が乏しくなってしまうのであろう。一党独裁下では、新しい発想でのカネの使い道が、なかなか見つからないのである。だからこの局面を打開するには、全国民の自由な発想が最も必要となるのである。しかし共産党の一党独裁体制では、中国の場合はその人民(国民にあらず)の自由な発想と言うものが、常に抑圧されている結果、誠に乏しくならざるを得ないのである。

習近平政権は、この行き詰まりを新常態」と位置づけて、何とか人民の目を誤魔化そうとしていると見える。




中国「新常態」という異常事態
改革開放を超える大転換か、経済崩壊のシグナルか
2015年3月11日(水)  福島 香織

 中国の国会にあたる全国人民代表大会が3月5日から開幕し、李克強首相は政府活動報告で、中国の経済成長率目標7%前後に引き下げ、「中国の経済状況が新常態(ニューノーマル)に入った」と位置付けた。この首相の新常態宣言は、小平の改革開放以来の30年の中国の高度経済成長に終わりを告げる「低成長宣言と受け取る向きもあれば、小平の改革開放以来続いてきた経済構造を痛み覚悟で転換するというシグナルと受け取る向きもある。左派経済学者の郎咸平などは、「習総書記の語る『新常態』は小平の南巡講話以上の影響力」とも言っていたが、果たして「新常態」とは、どういう状況をいうのだろうか。そして、その「新常態」とはいつまで続くのだろうか。

新状態に適応し、戦略上の平常心を保て

 習近平が最初に「新常態」という言葉を使ったのは2014年5月河南視察旅行中の発言だ。「中国の発展は依然重要な戦略的チャンスの時期にあり、我々は自信を強化し、目下の中国経済発展の段階的特徴から出発して新常態に適応し、戦略上の平常心を保ち続けなければならない(更に次のように続く。---戦略上は各種のリスクを重視して防ぎ、早めに策を練り、雨が降る前に雨戸を修理し、対応措置をタイミングよくとり、マイナスの影響をできるかぎり小さくせねばならない。---日本経済新聞社編の「中国バブル崩壊」56頁による)」。

 この新常態の理念について、さらに具体的に説明されたのはその年の11月APEC商工サミットでの「発展の持久を求め、アジア太平洋の夢をともに築こう」という演説の中で、「新常態は中国のさらなる発展のチャンスをもたらすものなのだ」と発言。新常態六つの特徴とは、【1】高速成長から中高速成長への転換 【2】経済構造の不断のレベルアップ 【3】経済の牽引力を投資駆動からイノベーション駆動へ転換 【4】中国経済の新常態の出現 【5】中国政治の新常態の出現 【6】中国社会建設の新常態の出現、とした。

 この新常態中国の発展にもたらす状況として、四つ挙げられている。

 【1】経済成長は緩やかに減速するが、たとえ7%前後に落ちても、その経済規模総量にしろ成長率にしろ、全世界の中で上位に入る【2】成長動力が多元化し、各種のリスクに対応する能力がつくようになる。新型工業化、情報化、農村の都会化、農業の現代化などにより、成長に伴う各種の悩みを緩和できる。【3】経済構造のレベルアップにより、消費の経済成長の貢献度は投資を超え、サービス産業の占める割合は第二次産業を超える。ハイテク産業と装備製造業の成長速度が工業の平均的成長速度を上回り、GDP単位あたりのエネルギー消費が下降し効率化する。【4】政府の「簡政放権」(認可などの手続きの簡略化、権力の干渉の減少)により、市場が活性化し、企業登録制度改革により新企業数が増加する。

 さらに、新常態には九つの特徴があるという。

 【1】模倣型横並び消費(みんなが持っているから買う、人気の少数商品が市場を席巻するような消費)の段階が終わり、個性化、多様化消費が主流となる。【2】基礎インフラの相互連携による新技術、新産品、新業態、新ビジネスモデルの投資機会が続々とできる。【3】低コストが売りの業態からハイレベル品質が売りの業態に転換し、大規模な企業の海外進出が同時に起きる。【4】新興産業、サービス業、マイクロビジネスがさらに突出し、生産小型化、知能化、専業化が産業組織の新たな特徴となる。【5】人口高齢化が進むことで農業の余剰人口が減少し、低賃金労働に頼る経済成長から人の能力資質、技術進歩に頼る経済成長に転換する。【6】単純な質と量による市場競争から、差異化を主とした競争に転向する。【7】エコ・省エネ型の低炭素循環型経済の発展方式を推進しなければならない。【8】経済リスクはおおむねコントロールできるが、ハイレバレッジとバブル化がもたらすリスクの解消にはしばらくかかる。【9】生産過剰問題はすでに緩和しているが、市場メカニズム作用の発揮を通じて未来型産業の発展方向を探らねばならない。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(25)

2015-12-21 00:00:00 | Weblog

  続く写真2は、体育館の近くに建設中のビルだが、工事はストップしていた。地元の人は途中で造るのを止めたようだと言っていた。まさに、バブル崩壊の象徴と言える。

  次の写真3は体育館から車で10分ほど離れたところの風景だ。どこの国かと思ってしまったが、イギリスの街並みを真似て作ったのだそうだ。ただ、ここも人通りは少なく、閑散とした街並みが続いていた。

  写真4はその街並みの一画にある販売センター。多くの旗が翻っているが、駐車場に車は少なく、また、その前の道路を走る車もまれである。前は空き地になっており、荒涼とした風景が広がっている。
(追記注、写真2~4,6は見当たらない。)


(写真5)販売センターにあった街並みの完成予想模型
[拡大]
  そして、写真5は販売センターに作られた街並みの模型。開発地区の完成図を示している。

  ただ、私たち以外に客はいなかった。販売員もよっぽど暇なのであろう。私が日本から来た旅行者だと知っても、にこやかに対応し事細かに説明してくれた。暇つぶし相手になったようだ。

  最後の写真6はモデルルームの食堂にて。日本のバブル期もそうであったと思うが、その生活感のバブリーな仕様には驚いてしまった。欧米人でもこのような食堂で日常生活を送ることはないだろう。こんな部屋で暮らしたら、気疲れしてしまう。

■「鬼城」の裏に見え隠れするもの

  このような内装にすると、約100平米のマンションが日本円で約4000万円。そして、その女性販売員は、正直、ほとんど売れていないとも言っていた。

  売れたのはほんの一部、市役所の職員が買ったのだそうだ。それには理由がある。新開発地区は営口の郊外にあるが、近日中にそばに市役所が引っ越してくるという。だから、市役所の幹部職員が購入するというわけだ。

  言い忘れたが、この訪問は11月初旬であったがとても寒かった。3日ほど前に雪が降ったそうで、その影響で軒にはツララが垂れ下がっていた。営口は海岸部にあり、遼寧省の中では暖かいというが、11月の初旬にツララができるほど寒い。

  だが、この「遼寧省の中では暖かい」というフレーズに、この鬼城が作られた理由がある。営口の新開発は市役所主導で行われた。不動産開発は民間会社が行っているが、その背後には市役所がある。そしてその背後に遼寧省、最後は中国共産党が控えている。

■李克強の計画はなぜ失敗に終わったのか

  この巨大開発の陰に、現首相(第7代 国務院総理、2013年3月~)である李克強(り こくきょう)の姿が見え隠れするという噂を聞いた。彼は2004年から2007年にかけて遼寧省の書記(遼寧省共産党支部のトップ)であった。その頃、彼は政治局常務委員候補の1人であり、実績が求められていた。その実績の1つが営口での鬼城づくりである。

  彼のプランは次のようなものであった。中国では農村の発展が遅れているが、農業によって農村を豊かにすることは難しい。そのために、農民を豊かにするには彼らを農村から都市へ移動させる必要がある。農民を都市住民に変える。

  しかし、膨大な農村人口を抱える中国では、全ての人を北京や上海の周辺に移住させることはできない。そんな事情から地方の中小都市の拡充が図られた。遼寧省では営口で巨大開発が行われることになった。

  営口は渤海湾に面しており、海運の便がよい。そして温暖である(そうは言っても11月の初旬にはツララが垂れ下がる)。だから、営口を開発すれば遼寧省に住む多くの農民が押し寄せるはずだ。これが、李克強が立てたプランだそうだ。

  李克強は2007年に遼寧省の書記を退任したが、その後にリーマン・ショックが起こり、その対策として全国で4兆元もの投資が行われ、その一環として営口を通る新幹線も2路線が作られた。

  だが、それは所詮、官僚が作った机上のプランである。そもそも、農民の世帯収入は日本円にして100万円程度。彼らが購入できるマンションは高くても500万円。そんな彼らを対象にして、これまで見たようなバブリーな物件を作ったことに無理があった。もちろん、写真の物件は市の幹部用であり、農民にはもっと安いマンションを用意したようだが、それでも価格が500万円を下回ることはない。

  そして、もっと重要なことは、営口に産業が育たなかったことである。工業を中心に据えた開発の時代は既に終わっていた。営口で工業は発展しなかった。就職口がないから、農民が移住することもなかった。

  これからはサービス産業の時代。新たなサービス業は大都市に起こり、その中心には高学歴の若者がいる。コンピューターを自在に使いこなす彼らが中心になって産業が発達し、その周辺に各種のサービス業が発展する。これが21世紀の経済発展である。

■官製バブルの夢の後

  だが、どの国の官僚もこの事実を理解することが苦手である。日本の官僚も苦手だが、独裁体制の中で育った中国の官僚はもっと苦手のようだ。官僚はインフラの整備と工業団地の建設しか頭になかった。だが、いくらインフラを整備しても、ものあまりの時代に田舎街に工業が栄えることはない。

  面白い話を聞いた。営口の若者は、できれば上海、北京、広東、深圳、香港で働きたいと思っているのだそうだ。最低でも大連。田舎街である営口は大嫌い。中国の若者にとっても大都市の魅力は絶大である。

  そんな中国で労働人口が減少し始めた。2025年頃には人口も減り始める。そんな状況で田舎街に人が集まるわけはない。いくら市政府が力を入れても、売れ残ったマンションが飛ぶように売れる時代は来ないだろう。

  ただ、その建設に営口市や共産党が深く関わっているから、周辺企業が簡単に倒産することもなさそうである。大きな問題が発生すれば、首相を勤める李克強の威信にも傷がつくからだ。今後、営口市は巨額の不良債権を抱えながら、共産党のお慈悲にすがって不透明な資金繰りを繰り返すことになるのだろう。

  中国の経済は官僚が作った不動産バブルによって隘路にはまり込んでしまった。今回の旅では、それを肌で感じることができた。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151209-00045460-biz_jbp_j-nb


まあ中国政府の考えた公共投資であるから、どこに鬼城が出来ようがそれは知ったことではないが、
総額4兆元の内の4分の3ほどは、いわゆる公共工事、不動産関連投資もそろそろ頭打ちになるときが来た。

(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(24)

2015-12-18 00:00:00 | Weblog

4兆元の景気刺激策によって内需拡大へ」(http://www.nissui.co.jp/academy/market/17/03.html)によると、

家電下郷」では、農村部での家電製品の購入に際してはその金額の13%を補助すると言うもので、農村部での家電製品の普及率が急速に伸びたと言われている。その証拠に2009年1月~9月の家電製品の輸出が、農村部での売れ行きの上昇のために、18.2%も落ちてしまったといわれている。国内販売の上昇は6.5%も増えている。

また「汽車下郷」(汽車は自動車のこと)政策では、農村部での自動車買い替えには、その購入金額の10%を補助し、更に1600cc以下の乗用車の取引税を引き下げると言った優遇策がとられている。そのため自動車の生産・販売も増加し、2009年の生産台数は1,379万台(938万台、2008年)に達し、この年の中国での自動車生産台数は日米を抜き世界第一位となっている。

と言った状況の様だ。


そして、総額4兆元の内の4分の3ほどは、いわゆる公共工事、即ち主に不動産関連投資に該当したものであった。そのため土地開発が爆発的に進み、一部で、と言っても全国的に土地立ち退き問題などの社会問題が発生したが、中国各地の地方政府は土地開発業者などと結託して、その獲得した土地を工場用地に開発したり高級マンションの建設を進めていった。

中国の場合は土地はすべて国有地のため、その使用権を不動産業者に売って土地開発を進めていったものであったが、そのサイクルが次々のと回っていって開発ブームとなったのである。

当然その過程で地方政府と業者の結託による汚職が蔓延していったのであるが、この件は先に言及しているのでそちらを参照願いたいが、そのため完全に需要を無視した開発が競うように横行したのである。

この状況は、2015.12.04の当ブログのNO.15で紹介した「中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス 天津にゴーストタウン、5兆元が泡 始まったバブル崩壊、対策は政治改革のみ」を参照願えればその状況がわかると言うものであるが、新しいゴーストタウンの例も次に紹介しよう。




中国のゴーストタウンで見た官製バブルの成れの果て 盛大にコケてしまった官僚の描いた机上のプラン
JBpress2015/12/9 11:45川島 博之

建設が中断された営口市にあるマンション(筆者撮影、以下同)


この(2015年)11月中国遼寧省営口市を訪問する機会があった。

  営口市は大連の北方約200キロメートルに位置し、渤海湾に面しており、昔は漁港だったそうだ。市の人口は230万人とされるが、それは周辺部を含んだものであり、中心部の人口はその10分の1程度。中国のどこにでもある都市と言ってよいだろう。

■わずか3年でできた新幹線

  営口へは大連から新幹線で行った。乗った車両は外観も内装も日本の新幹線によく似ていた。真似したのであろう。切符を買うのに外国人はパスポート、中国人は身分証明書が必要であり、乗る際には空港と同じように荷物検査があった。ただ、それほど厳重ではなく、係員の態度はおざなり、また身体検査はなかった。

遼寧省 営口市
  車内にメーターがあり、スピードが乗客にも分かるようになっていた。最高速度は毎時300キロメートルを記録したが、その際にも大きく揺れることはなく、まあ快適な旅だった。大連から営口まで約1時間。

  驚いたことに、大連と営口を結ぶ新幹線が2本ある。海沿いと山沿いの2路線。どちらも2010年以降に完成したと言っていたから、リーマン・ショック後の景気対策急遽建設されたと思われる。だた、海沿いを走る列車は少なく、1日に数本。明らかに必要のない路線であり、過剰投資と言ってよい。

  人々が新幹線が作られるという話を聞いてから3年程度でできてしまったという。日本をよく知る中国人は、新幹線を作ると言ってから完成するまでに30年程度を要する日本とは、スピード感が全く異なると言っていた。独裁国家の強みだろう。

(写真1)小さな町に似つかわしくない巨大な体育館


■不動産バブルの残骸と化した街

  そんな営口で見たのが「鬼城」(住む人がほとんどいない街、ゴーストタウン)である。写真を見ていただこう。

  写真1は郊外に作られた体育館。新開発区の中心にある。写真を撮ろうとしたが、大きいので全景を入れるために、道路を隔てたところでカメラを構えた。写真を見れば分かるように道幅が広い。だが、車はほとんど走っていない。また、体育館は開店休業状態で、駐車場に車は1台もなかった。


(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(23)

2015-12-17 00:00:00 | Weblog

さて中国経済の減速はなぜ起こったのであろうか。あれ程盛隆を誇っていた中国の経済であるが、中国政府は7.0%の成長は維持していると言っているが、実際のところは5%を切っていると経済の専門家達には思われているが、それほど今はその不透明感で、世界各国が中国のことを疑心暗鬼で眺めている。

5%でも成長していると言うことは他国からに見ればうらやましてかぎりであるが、中国にとってはマイナス成長に等しいののであるが、現在の中国経済の減速はどのようにしてして発生していったのであろうか。



事の起こりは、あの2008.9.15のリーマン・ブラザーズの破綻に端を発したリーマンショックである。正確に言うと、リーマンショックによる景気下落を防ぐために2008.11.9に打ち出した4兆元(当時の為替レートで約57兆円)もの経済対策であった。

この中国経済の景気対策のため世界は中国の需要に助けられ、夫々の国は自国経済の下降を幾分でも防ぐことが出来たのも事実で世界経済がこれで一息ついたことも確かである。しかしこの経済対策のかなりの部分は、社会福祉などではなくて、いわゆる不動産などに関する公共投資と言われる部分に使われたのである。これが中国経済の景気減速の一因となってゆくのである。

この4兆元もの景気刺激策は、胡錦濤・温家宝政権によってなされたものであるが、当時の中国経済は輸出依存度がGDPの30%ほどに達しており、世界経済の不況をまともに受けることを深刻に考えていた胡錦濤政権が、内需拡大を目指して打ち出したものであった。景気減速が中国の社会不安の結びつき、反政府運動に結びつくことを恐れたものでもあった。

当時の中国経済の主要テーマは、やはり経済成長の維持による「雇用の拡大、社会不安の阻止」であった。



危機に対する中国の景気対策
BRICs辞典 > 中国 > 景気対策

サブプライム問題を発端とする世界的な金融危機により、2008年後半辺りから世界の景気は急激な悪化を辿っています。IMFやOECDなどの国際機関が、2009年度の世界のGDP成長率が、戦後初めてマイナス成長に陥ると予想するなど、自体は深刻化しています。

その為、G7やG20などの会合では、世界各国が景気浮揚の為の経済対策を打ち出す方向で協調体制を取ることが決められました。各国はそれぞれ財政出動を行い、政府主導で経済の需要を作り出し、景気の下支えをする計画を立てています。

そんな中でも、中国の財政出動(景気刺激策)は、その規模では群を抜いています。中国の景気刺激策の総額は、今後2年間で4兆元(約60兆円)と発表されています。金額ベースではアメリカの2年=約7870億ドル(約78兆円)には及びませんが、対GDP比ではアメリカが約2.8%であるのに対し、中国は約6.5%にものぼります。

この景気対策が効果を発揮し、中国のGDP成長率は2009年度プラス6%を達成すると見込まれています。世界全体がマイナス成長、日本などはマイナス6%前後と予想されている中ですから、突出して優秀な数値です。

中国の景気対策の内訳(単位:億元)

道路・鉄道・電気などのインフラ整備 15000

四川大地震の復興対策費 10000

低所得者向けの住宅開発 4000

農村部対策(農村インフラ整備) 3700

技術開発・産業構造調整対策 3700

環境保護対策(省エネ対策) 2100

医療・福祉・教育対策 1500
合計 40000


道路や電気などインフラ整備(公共事業)がメイン

内訳を見ると、最も大きいのが道路などのインフラ整備費、次に2008年に起きた四川大地震の復興対策費です。三番目の住宅開発などと合わせる、総額4兆元の内の4分の3ほどは、いわゆる公共工事に該当します。

先進国、特に日本は社会インフラが既に完備され尽くしているので、公共事業を行ってもその場だけお金をばらまくに過ぎず、将来の役に立つどころか、維持管理コストだけで赤字になる「負の遺産」を残すケースが極めて多いです。

ところが中国は、上海や北京などの沿岸部は先進国並みに発展を遂げつつありますが、内陸部に行けばまだまだ道路や電気・水道などの社会インフラが未整備な所だらけです。景気刺激策として公共工事を行えば、そのまま中国の将来の経済発展に直結するものとなります。

また、中国はこの位の景気対策をしないと、経済が持たないとも言われています。確かにここ数年、中国は実質GDPで年率10%超の高成長を続けてきましたが、それでもなお、13億人という莫大な人口を養っていくにはぎりぎりだというのです。

上海・北京などの沿岸部と内陸部での所得格差が激しく、沿岸部の都市へ出稼ぎに来る労働者が大量にいるため、彼らの雇用を生み出す為に公共事業をどんどん行っていました。しかし、都市部の失業率が4%程度で推移していたのが、2008年の経済危機により10%近くにまで上昇しているという民間の統計も出ており、政府が公共事業をさらに増やして、雇用の受け皿を作り出すしかないのです

四川大地震での失態や、チベットや台湾の問題など、中国共産党政府への反発は強まっています。もし経済政策に失敗して失業者を更に増やせば、いよいよ政府へ暴動の矛先が向く可能性が出てきます。13億人の国民を統率し、共産党政権を維持していく為には、(対GDP比で)世界最大の景気対策を打つ以外に選択肢はなかったともいえるのです
http://www.brics-jp.com/china/keiki_taisaku.html


このため特に農民や都市部の低所得層に補助金を増やすなどが実施され、「家電下郷」「汽車下郷」と言う政策も実施された。
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(22)

2015-12-16 00:00:00 | Weblog

まあ中国が失速しても、直接的には、日本にはそれほど影響はなかろう。と言うのも、日本の対中輸出のGDPに占める比率は、2%台前半しかないのである。幸か不幸かあの「尖閣諸島問題」で、日本の中国離れが進んでいたのだ。しかし中国経済が失速したため東南アジアやその他の国が失速してゆくその影響は、少しは日本にも来るであろうがそれほど深刻に考える必要はなかろう。


世界がヒヤリ、「中国お化け」の正体を探れば
編集委員 滝田洋一
2015/8/16 5:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 いま世界の市場を妖怪が徘徊(はいかい)している。中国リスクという妖怪が。市場参加者にとって悩ましいのは、そのリスクの中身が不透明で、波及経路が読みにくいことだ。

3日連続の人民元切り下げに踏み切った中国人民銀行と人民元紙幣=共同

 政策運営の議論はひとまず置き、ここでは中国経済が失速した際の影響をみておこう。中国・天津市の爆発事故の打撃の大きさなどは読めない。が、国際通貨基金(IMF)によると、中国の国内総生産(GDP)の成長率が実質で1ポイント低下した場合、その翌年に他のアジア諸国の成長率0.3ポイント低下する。

 下押しが大きいのは韓国、マレーシア、台湾、タイ。反対に日本やインドは相対的に影響が小さい――。

 みずほ総合研究所によれば、カギを握るのは「付加価値ベースの貿易(TIVA)」である。手っ取り早くいえば、中国がモノやサービスの最終需要先となるほど、付加価値ベースの輸出先としての重みを増す。


 付加価値ベース輸出で目を引くのは韓国である。対中輸出額は2011年時点で652億ドル。米国向けの588億ドルや欧州連合(EU)向けの417億ドルを上回っている。

 国を挙げて中国に傾斜し、現代自動車やサムスン電子は中国市場を販路としてきた。中国と一体となりすぎた韓国の経済運営は、今や大きく揺さぶられている

 台湾も付加価値ベースの対中輸出額は、11年時点で451億ドル。対米の343億ドルや対EUの206億ドルをしのいでいる。

 GDPに占める対中輸出比率はどうか。最も高いのが台湾の9.30%。マレーシアの8.36%が次ぎ、韓国5.42%、タイ5.15%、ベトナム5.13%と、5%を上回っている。09年時点と比べても、各国の対中輸出は金額でも、GDP比でも上昇している。

 これに対して、11年時点の日本の対中輸出額は、付加価値ベースで1279億ドル。金額こそ韓国の2倍近いものの、日本の場合は対米輸出が1475億ドルと対中輸出を上回る。

 GDPに占める対中輸出比率でみても、日本は2.17%と2%台前半だ。不幸中の幸いというべきか、尖閣摩擦の影響もあり、12年以降は貿易や直接投資の面で中国離れが進んでいる

 こうみると日本の場合、中国失速のダメージは相対的に小さい。だから、いたずらに浮足立つのは禁物だ。ただし、アジア諸国を通じた二次的な波及については、十分に警戒しておく必要がある。

 アジア域外への波及はどうか。米独についても、付加価値ベースの対中輸出のGDP比をはじくと、米国が0.63%、ドイツは1.69%となっている。

 米国に関しては、中国が失速しても直接の影響は軽微といえよう。むしろ、アジア諸国や資源国が音を上げて、ドル高が進むことがリスク要因となる。人民元の一方的な切り下げが、通貨安競争を誘発するようだと、そのリスクは増幅される。


 ドイツの対中輸出比率は日本と近い。とはいえ、自動車や自動車部品、鉄道部品、医療機器など特定の分野では中国市場に深く食い込んでいる

 伸び率の高い市場をがっちりと押さえているともいえる。その分、中国が失速した場合、自動車など主力産業への影響は大きくなるフォルクスワーゲンを例にとると、今年上期の中国での乗用車販売台数は、全世界の4割近くを占めている。

 もうひとつ見逃せないのは、中国失速を織り込んだ国際商品市況の崩落である。なかでもWTI原油が一時1バレル41ドル台と、6年5カ月ぶりの安値を付けるなど、原油相場が再び底割れとなっている。

 輸入国である日本にとって、資源安は朗報。半面で、気がかりなのは中東の政情不安。最大の産油国、サウジアラビアでも自爆テロが起きている。万が一にも体制が揺らぐようだと、世界経済のシナリオはちゃぶ台返しとなる。

 中国発のリスクの広がりについては、きちんとしたデータに基づく情勢分析が欠かせない。夏の肝試しではないのだから、中国お化けに一喜一憂するばかりでは大人げない。
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=1&bf=0&ng=DGXMZO90532590U5A810C1000000
(続く)
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ならず者国家・中国、アレコレ!(21)

2015-12-15 00:00:00 | Weblog

その魂胆は判らないが、アメリカのSDRの割合は、Wikipediaによると

(現在)   (2016.10.1~)
ドル・  41.9%---41.73%
ユーロ・ 37.4%---30.93%
(人民元)0.0%----10.92%
ポンド・ 11.3%----8.09%
 円・  9.4%-----8.33%

となっている。即ち一単位のSDRをIMFから借りたとすると、すぐさま0.419ドルだけ現金化することが出来るのである。他の3通貨もあるので、ドルに換算すると 1SDRは1.391343ドル(12/10現在)となるようだ。
(http://www.imf.org/external/np/fin/data/rms_sdrv.aspx や http://ameblo.jp/tokyo-kouhatsu-bando/entry-12042318939.html  による。)


SDRの構成通貨となる要件としては、次の二つである。

(1) 発行国の輸出規模が大きいこと。
(2) 国際的に自由な取引が可能であること。


と言う条件がありながら、不透明な部分がありながら人民元が、2015.11.30のIMFの理事会において、2016.10.1よりSDRの構成通貨となることが決まってしまった。

この過程で「ワシントンと北京とで裏取引があった」と、考えている人がいる。

これもVoiceの10月号の「過剰生産で自滅する中国」(産経新聞特別記者 田村秀男氏)に書かれていたものである。

それによると、IMFは人民元をSDRの構成通貨として認定してやるが、その代わり「三年以内に変動相場制に移行せよ」と習近平に約束させたのだと言う。正確に言うと、「約束させた」とは書いてはいないが、「約束を迫ったわけだ」と記している。

中国では市場ではなくて、共産党が中国経済を支配している。党がカネと生産を支配する経済モデルは、変動制に移行すれば金融市場も自ずと自由化せざるを得ず、党の存在理由がなくなる、と断じている。国際的な自由な取引はIMFの基本テーゼである。

人民元の国際通貨化は、共産党支配が終わりに近づく歴史的転換点になるかもしれないのである。だからIMFは、人民元をSDRの構成通貨と、敢えて認定したのだ、と言った論調である。

なんだかよく判らないが、習近平は人民元の国際化と景気対策(人民元の切り下げ)を一緒くたに実行してしまったようだ。その結果世界への大ショックとなった。




人民元ショック、習政権追い込んだ「経済」 想定超す減速
2015/8/16 2:01 ニュースソース 日本経済新聞 電子版

北京の中国人民銀行=ロイター

 【北京=大越匡洋】人民元ショックが世界を襲った。中国人民銀行(中央銀行)が11日からの3日間、人民元売買の目安となる「基準値」を大幅に切り下げたためだ。反腐敗闘争を通じて政権基盤を固めつつある習近平指導部が、焦りにも似た行動に出たのはなぜか。「政治」を押さえても、想定を超す景気減速で「経済」に足をすくわれるリスクを恐れたようにみえる。

 世界の市場を揺るがした3日間は11日火曜日の朝、なんの前ぶれもなく始まった。「大きな貿易黒字を確保し続ける点を考えると、人民元の実効為替レートは各種通貨に対して高い」。人民銀は突如、一片の声明とともに元相場の基準値を一気に2%近く切り下げると発表した。



 無理に高めに保ってきた元相場を市場の実勢に近づけるという建前だが、元安誘導で輸出を刺激して景気をテコ入れしたい本音がのぞく。元の基準値は3日間で4.5%も切り下がった。

 「中国景気は想像以上に悪いのではないか」「通貨安競争が始まる」――。市場を不安が覆った。この時期にいきなり政策転換に動いた中国当局の意図を巡る疑心暗鬼も不安に拍車をかけた。

 謎を解く鍵は北京の東にある河北省の海辺の避暑地にある。この時期、習近平国家主席ら共産党の現役指導部や長老が集い、国政の重要政策を密室で話し合う「北戴河会議」が開かれている。

(注)北戴河とは、北京の真東の海岸地区で秦皇島の南隣。渤海に面する。

 共産党関係者は「最大の議題は経済だ」と言い切る。7月は輸出、生産、投資、消費が軒並み悪化し、習指導部が描く「年後半に景気が持ち直す」との筋書きに狂いが生じた。反腐敗運動で党内の対抗勢力をほぼ制圧した習氏だが、経済が揺らげば責任追及の声が上がり、求心力に陰りが生じかねない。



 一方で、急激な元安は巨額の対中貿易赤字を抱える米国を刺激するだけでなく、海外への資本流出を招く恐れもある。それでも元安誘導に動かざるを得ないほど、景気の想定を超える減速に習指導部は危機感を深めた。

 だが中国といえども市場を意のままには動かせない。元切り下げが急激な元売りを誘発し、人民銀は12日の上海外国為替市場で元買いの為替介入に追い込まれた。翌13日には「元安誘導による輸出刺激」を否定する異例の記者会見まで開いた。

 これを大幅な元切り下げの終了と受け止めた14日の上海市場では、元相場が前日よりわずかに元高・ドル安で取引を終えた。市場はひとまず落ち着きを取り戻したが、「経済」に照準を合わせ始めた習指導部に今後も翻弄される可能性は高い。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM15H4U_V10C15A8NN1000/
(続く)
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