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「クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」

2020年09月13日 12時51分57秒 | 映画(2020)
ヒーローは現れるものではない。


「クレしん」の劇場版は当たり外れの差が結構激しい。しかし今回は予告映像から期待度は高かった。

上空遥か高くに浮かぶ王国・ラクガキングダムは、地球の子供たちが描く落書きの自由な心をエネルギーとして生き永らえてきた。しかし近年、子供たちは落書きをしなくなり、王国の運命は危機に晒される。

王国の防衛大臣は春日部へ実行部隊を派遣し、子供に落書きをするよう強制する。抵抗する大人たちは排除され、奴隷のように働かされる子供たち。すくいのヒーローは現れるのか。

「クレしん」の根底に共通して流れるテーマは家族や仲間の絆や愛情である。これまで父・ひろし、妹のひまわり、園児仲間のカスカベ防衛隊、飼い犬のシロと、様々な登場人物がフィーチャーされてきたが、今回重要キャラとして前面に出てきたのは、しんのすけの落書きから生まれたキャラ・ぶりぶりざえもんであった。

「すくいのヒーロー」という設定でありながら、基本何もしない。むしろ足を引っ張るばかりで、テレビ放送で出てくるときの話はあまりおもしろくない(個人的感想)というおまけつき。この扱いの難しいキャラクターをどう生かすのかは見どころであった。

本作が出した答えはシンプルかつ的確であった。タイトルにある勇者たちは、ぶりぶりざえもんのそもそもの登場と同様に、しんのすけの落書きから誕生する。それはしんのすけの最大の長所である自由な心を投影して様々な活躍を見せる。もちろん、ぶりぶりざえもんは基本何もしない。基礎となる設定を崩すことなくまとめ上げた手腕に敬意を表したい。

勧善懲悪に話をまとめない点も、最近のパターンとしてよく見るが、本作は特にバランスが優れていると感じた。行き過ぎた行動をとった防衛大臣の反省と赦しが描かれる一方で、他人を持ち上げておいてすぐに手の平を返す普通の人たちが持つ理不尽さを一刺しする場面もあり、いずれも自然な流れとして映画に溶け込んでいるところが素晴らしい。

また、今回、相模湖で出会った少年・ユウマ以外のキャラクターに明確な名前が存在しなかったことにも注目したい。ラクガキングダムの人たちはキングであり、防衛大臣であり、宮廷画家と呼ばれた。これは、彼らの行動は個性によるものというよりは、立場から生じたものであり、人は場合によっては誰もが加害者にも被害者にもなるということを表したのかもしれないと思った。

ほかにも、そもそも何故落書きなのか、防衛大臣はどうすべきだったのか等、憶測レベルの推測や議論が発展しそうな設定に溢れていた。今回も、オトナにとっても十分見応えのある映画の名に違わぬ出来映えと呼んでいい。

細かい点になるが、毎度おなじみ一発屋・バラエティ芸人によるゲスト声優枠のりんごちゃん。武田鉄矢や大友康平の声に替わって子供をしごく場面は見事にハマっていた。これまでのゲスト声優で最も必然性のある配役だったかもしれない。

(90点)
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