原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

個人情報保護法と学校の緊急電話連絡網

2007年10月12日 | 教育・学校
 子どもを学校に通わせるようになって、現在の学校の諸制度や諸手続きにおいて保護者にとっては厄介で手を煩わされる事柄が多いことを実感している。
 その最たるものが「緊急電話連絡網」ではなかろうか。

 個人情報保護法が施行されて以降は、学校もようやくこの緊急電話連絡網の運用において細心の注意を払い始めたようである。 が、それ以前はこの緊急電話連絡網の運用は野放し状態であり、その濫用には閉口するばかりであった。

 最も多い濫用はPTA役員からの連絡である。 このケースがなぜ「濫用」に該当するかにつき理解していない教員やPTA役員が多いため、ここで説明しよう。
 学校の電話連絡網は通常、新年度当初に保護者が記載して提出した生徒調書から転記して作成される。 この生徒調書は極秘文書である。 そもそも、この文書から保護者に無断で電話番号等個人情報を転用して連絡網を作成、配布すること自体、法的に大きな問題をはらんでいるのであるが、現在どこの小中学校においても「緊急電話連絡網」の作成が慣行となっている以上、ここでは不本意ではあるが目をつぶることにする。
 次に、学校とPTAとは法律上の組織が異なる。(学校要覧等で学校の組織図をご覧いただきたい。)学校によってはPTAを学校の下位組織と位置づけ学校長を最高責任者としている例もあるが、多くの場合はPTAは学校とは別組織となっている。故に、学校が作成した連絡網をPTAが発動することは、法的には「濫用」に該当するのだ。

 しかもそのPTAの連絡網濫用の内容と言えば、重要性が乏しくくだらないものばかりだ。 茶話会のお知らせ、先生への謝礼(だいたい、公務員が公然と保護者から謝礼もらって法的に問題ないの~?)について、等々…。 そしてすべてが文書にて連絡済の通達事項の念押しである。 PTA役員にとっては、電話で連絡を回すことにより保護者皆がそれに従うため偉くなったような気分にでもなるのであろうが、電話を回される方はたまったものではない。

 担任からの連絡網濫用も経験した。 文書にて配布済みの通達事項に担任の記載ミスがあり、それの訂正のため連絡網が回ってきたことがある。 さすがに私は堪忍袋の緒が切れ夜9時半頃であったが担任の自宅に電話し、連絡網の濫用である旨抗議した。まず、担任は「こんなに遅い時間に連絡網が回っているのか。」と驚いた。 夕方、学校から連絡網を発令したらしい。 教員が連絡網の実態を把握していないことにも落胆するのだが、保護者は皆それぞれに多忙で連絡網が迷惑な存在であることも露知らず、皆電話の前で学校の連絡網を待っているとでも思っているのであろうか。 私はひるまず訴えた。「自分の仕事上のミスを保護者の手を煩わせて穴埋めしようなどという考えはもっての外だ。 自分のミスは自分で後始末しろ! そんな甘い考えだから教員はじめ公務員は非難されるのだ。 こんなことを民間企業でやったら即リストラだ、あんたが思っているほど世の中甘くない!」と熱くまくし立てた。 
 (数日後、言い過ぎたことを謝ったが…。) その担任、多少考えの甘いところはあるが子ども思いのいい先生で、学校運営に関する考え方も私と共通していた。 それでもこういう濫用を何も考えずに軽はずみにする無神経さを、私は叩き直したいのだ。

 保護者個人による濫用もある。 私が経験したのは、自分の仕事のセールス、自分が信仰している新興宗教への勧誘などだ。
 外部組織や個人による濫用は皆さんも経験されていることであろう。 塾や家庭教師団体からの学校の電話連絡網濫用は日常茶飯事である。 私は、この手の電話セールスの場合、必ず個人情報をどこから入手したのか確認し個人情報の濫用である旨釘をさす。

 最近、このような見解を個人情報保護の過剰反応だと警戒する世論もあるようだ。 が、過剰反応だと騒いでいるのは学校やPTA役員等、大抵は個人情報の発信側だ。 自分の都合に合わせて個人情報保護法を解釈することは避けるべきである。

 誤解しないでいただきたいが、決して私は学校の緊急電話連絡網の存在自体を完全否定している訳ではない。 
 学校の緊急連絡網とは天災地変、事件事故等その名の通り「緊急」時(すなわち子どもの身に危険が及んだ時)に学校の最高責任者である学校長の責任において発令されるべき性質のものであるはずだ。
 これが濫用ばかりされ“狼少年物語”と化し、緊急連絡網としての使命が果たせず、救うべき時に子どもを救えないという事態となってしまうことを私は憂えるのである。 
 
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