原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

朝日新聞「相談室」論評

2007年10月08日 | その他オピニオン
 私は30年来の朝日新聞の愛読者である。朝日新聞なくして私の生活が成り立たないと言っても過言ではない。私のオピニオンの源として欠かせないアイテムのひとつである。
 加齢と共にお気に入りのジャンルが変わり行くのであるが、「社説」と読者のオピニオンの公表の場である「声」欄は毎日はずせない。その内容に我が意を得たりの思いであったり、時には反感をあおられて“馬鹿書くんじゃない!”と怒りつつ、自分とは異なる価値観に触れることも大いに刺激となり有意義な時間を過ごすのである。(堪忍袋の緒が切れる記事には、意見書を提出させていただいたりもする。残念ながら未だかって返答を頂戴したことはないが。)

 近年の朝日新聞のコラムの中で私がお気に入りなのは「相談室」である。これは相談者の各種相談に回答者が答えるというよくあるQ&Aのパターンのコラムではあるが、興味深いのは、回答者が数人いて皆さんそれぞれ個性的な方々でユニークな回答を書かれていることである。私は相談者の立場ではなく、回答者の立場でこの「相談室」を楽しませていただいている。
 その中でも、私は明川哲也氏の大ファンである。この「相談室」に出会うまで、私は「明川哲也(ドリアン助川)」のお名前位しか存じていなかった。ご回答から察する限り、明川さんは繊細なハートの持ち主でいらっしゃるのに心の大きい人物なのである。私はすっかりファンになってしまい、尊敬する人物は?と聞かれると「明川哲也」と応えることにしている程だ。 明川さんの回答は、いつも涙なくして読めない程私に感動を与えてくれる。なぜならば明川さんの場合、どんな相談であれまず相談者の人格を認めることが根底にあるからだ。 例えば、先だって30歳代の主婦から“聞き役になるつもりはないのにどういう訳か人から長話をされてしまい、後で自己嫌悪に陥るのだがどう対処すればよいか?”という趣旨の相談があった。この相談を読み私は、この主婦はキャパシティが大きく周りが安心して話せる人なのだと感じたのだが、明川さんも同様の回答をユーモアセンスたっぷりに書かれていらっしゃったように記憶している。(微妙なニュアンスがわかりにくいと思うので、是非実際の明川さんの回答をお読みいただきたい。)
 室井佑月氏もいい。相談内容にかかわらず室井さんの回答からは、“人間は一個人として自己を確立することが最優先”との一貫したポリシーが感じ取れる。これは私の信念と一致する。どのような相談であれ、「うだうだ悩んでないで、まずは自分を磨くべく努力しろよな。」とアドバイスされている。“よくぞ言ってくれた”の思いで、室井さんの回答を拝見すると私の心もスカッと晴れる。
 おすぎ氏は、辛口回答者である。一見厳し過ぎはしないかとも感じるのであるが、おすぎさんがすばらしいのは相談者の裏心をちゃんと見抜いているところである。先だっての40歳代主婦の相談は“自分はPTA役員として活躍していて大変やりがいがあるのに、夫はじめ家族がこれを嫌がるがどうすればよいか。”という趣旨だった。そもそも、PTA役員をはじめ立候補さえすれば誰でもなれる役員をやりたがる人達には共通の気質(簡単なことで自分は偉いんだと勘違いしてしまい、場が読めていないような…)があることを私も感じているのであるが、おすぎさんはその辺の裏心を見通した上で、本末転倒であると手厳しい回答をされていて私の胸のつかえもとれた。
 水道橋博士氏の回答には奥深い思慮がある。相談内容はうろ覚えであるが、先日の水道橋氏の回答における「学校」の解釈は私の考えと一致した。(当ブログ別章「不登校という選択肢」参照)
 「相談室」の編集者は相談内容に応じて、相談を適材適所にうまく回答者に配分しているようだ。明川さんには根がよさそうな人の相談、室井さんには多少軟弱な人の相談、おすぎさんには自分を正当化しているような裏心のありそうな相談…という風に。(違うでしょうか?)

 とにかく今後共楽しみにしておりますので、どうか内容の濃い「相談室」をお届け下さいね、朝日新聞の編集者さん。 
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