原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

「フランチャイズ」の正体

2007年10月01日 | 仕事・就職
 私が50歳を過ぎた今なお就職活動にチャレンジしていることは別章「就職活動悪戦記」で既に述べた。

 昨年、フランチャイズ自営にも挑戦した。(過去形であるのは既に廃業しているからだ。)

 近年、このフランチャイズをめぐる訴訟が急増している。 不二家の賞味期限切れ事件に伴うフランチャイジーの訴訟はまったく気の毒の一言だ。 不二家側が十分な損失補償をするべきなのは当然であり、是非とも原告(フランチャイジー側)勝訴を願うばかりである。


 私が昨年チャレンジしたのは、某教育関係大手企業が募集する学習教室のフランチャイズ自営だった。

 この学習教室の場合、応募段階ではフランチャイズであるという事実は一切公表しておらず、学習教室の指導者募集と銘打っての募集である。
 応募資格条件は一応あるものの、50歳を過ぎたおばさんの私が採用される位だからほとんどないに等しく、応募して採用試験さえ受ければほぼ全員が採用されると考えてよい。

 さて、採用から初期研修(この段階でフランチャイズであることを正式に告げられる。)を経て貸会場の設営までとんとん拍子で進み、いよいよ生徒募集の段階に入った時のことだ。
 担当者はそれまでは、「初期段階で生徒は20名程集まり1年後には50名位になっているでしょう。」と豪語していた。 ところが生徒募集直前になると、「とりあえず1名入ればいい方です。」と手のひらを返してくる。 私の場合、経営関連の修士を取得し、税理士試験税法3科目免除申請も通過しており、経営に関してずぶの素人という訳では決してない。 後で思えば、事前に自らよく市場分析もせず、それを信じた私が馬鹿であったの一言なのだが、新聞折り込み広告やポスティング、街頭配布等で2万枚近いチラシを配布(一応自営のため当然ながら経費はすべて自費である。)しても、生徒からの反応は皆無に等しいのだ。
 この時点で、やっと騙された(とまで言うと言い過ぎかもしれないが、それに近い感覚があった。)事に気がついても既に後の祭りで、私も耄碌したものだと嘆くしかない。
 担当者が言うように、それでもしばらく我慢を続け、投資を続けていればいつかは生徒数も増加したかもしれない。

 だが、私がどうしても受け入れ難かったのは、経営方針はすべて本部の指示に従うことが開業の条件だったことだ。
 教材は本部が用意したもの限定で使用を強制され、副教材の使用すらまったく許されず、教室運営もすべて事細かくマニュアル化され勝手な指導は許されない。 教室に置く備品までにも細かい指定があり…。 という訳で指導者の自由裁量の余地など皆無なのである。

 要するに経営者兼指導者とは名のみで、単なるフランチャイズ本部の“ロボット”の募集であることに、遅ればせながら生徒募集の段階まで来てやっと私は気付いたのだ。 こんなことだから、募集に際し何の経験も資格も必要ないどころかむしろ邪魔なのだろう。 本部にとって必要なのは“ロボットに成りきれる素直さ”だけなのである。

 フランチャイズが自営であるのは表面だけ、その正体とはよくぞまあこんな巧妙な手口を考えるものだと呆れるばかりの代物である。
 フランチャイジーである弱者を食い物にしてあごで使い、フランチャイズ本部は何の損失もなく利益だけを享受できるシステムなのだ。
 それでも尚、自営の一形態としてこの世に存続し続けられるのは、不況、就職難で社会に就職難民があふれているためであろう。 加えて特別な経験や資格も必要とせず先行投資も小額で済むため、誰もがフランチャイジーと成り得るからでもあろうと想像する。

 だが小額投資とはいえ、たとえ損失の原因が本部にあろうとも、現行法の下では本部に損失補償責任は一切無いのが実情である。 この損失額を個人がすべて引っかぶらなければならないのだ。


  これからフランチャイズ自営をお考えの皆さん、フランチャイジーの置かれている現状をよく周知されて、くれぐれも安易な考えでフランチャイス自営に着手なさらないよう、老婆心ながらアドバイス申し上げる次第だ。