水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<9>

2015年04月22日 00時00分00秒 | #小説

 世界的に超有名猫になりつつあった小次郎は、この週刊誌の一件で新たな世間の荒波に翻弄(ほんろう)されることになった。小次郎にとって、翻弄されるとは、水ではないにしろ、風呂の終(しま)い湯が入った洗濯機の中へドポン! と放り込まれて、スイッチを入れられたようなものである。これは命が危(あや)うい。幸い、これは例(たと)えであって、小次郎の身が危険に晒(さら)される…ということはなかったが、心理(メンタル)面で、小次郎と里山はかなり参ってしまった。このマスコミ騒動を救ったのが、テレ京のプロデューサー、駒井だった。
[困った記事が出ましたね…]
「そうなんですよ。本人…いや、本猫も大弱りでしてね。それにしても、マスコミは凄いですね。どこで、二匹のことを知ったのか…」
 仕事のため車でテレビ局へ移動中の里山に携帯が入った。最近まで、里山が自家用で移動していたのだが、かかってくる携帯の多さに、お抱え運転手を雇ったのだ。狛犬(こまいぬ)という、いかにも霊験新(あら)たかそうな苗字だったが、苗字とは裏腹に、物忘れが激しいショボい初老の男だった。それでも、元タクシー運転手だけのことはあって、運転は確かなのだ。これで、気がねなく入る電話に応じられる…と里山は思った訳だ。加えて、道交法で運転中の通話は危険運転で禁じられていたから、気の疲れも和(やわ)らぐし、一挙両得の効用があった。このため、里山は車を新しく買いかえた。身入りは十分あったから、余裕で買えた。とはいえ、中古の高級車だったのだが…。


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