水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<42>

2015年05月25日 00時00分00秒 | #小説

 話が急展開しだしたのは翌朝である。小次郎とみぃ~ちゃんの最大の障害が崩れ始めたのである。ゴロツキ猫の二匹、タコ、海老熊がその障害であることは疑う余地がない事実だったが、海老熊が急な病(やまい)で寝込んだ だ。当然、猫にもかかりつけの医者はいる。ただ、海老熊は気まま一人旅の風来坊猫だったから、そのかかりつけ医者がいなかった。病となれば、そこはそれ、悪猫でも世間の同情はある。どこで聞きつけたのか、猫交番のぺチ巡査が公園の片隅に身を臥(ふ)せる海老熊を見舞った。小次郎もぺチ巡査に同行した。この辺りの猫で見舞ったのはこの二匹だけで、あとあと、病の癒(い)えた海老熊を大層、感動させたのだった。この一件で小次郎に対する態度は恩人扱いとなり、小次郎に対する海老熊の凄味(すごみ)は消えた。海老熊の一喝(いっかつ)の下(もと)、タコや与太猫のドラを含むゴロツキ猫の嫌がらせは影を潜(ひそ)めたのである。不思議なこともあるものだ…と、一連の流れが小次郎には思え、これは氏神さまのお導(みちび)きに違いないと、みぃ~ちゃんと連れ添って近くの神社へお礼参りした。
『これ、ほんの、お裾(すそ)わけ。口に合うかどうか、分からないけどね…』
 小次郎は里山が持ち帰った昨日の土産の鰻(うなぎ)の蒲焼を三切ればかり残しておいた。本当のところ、鰻には目のない小次郎だったから、ぺロリとすべて平らげたかったのだ。そこをグッ! と我慢して折り詰めを口にぶら下げてきたのだ。


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