水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (47)温度差

2019年11月12日 00時00分00秒 | #小説

 楽しいと思えることでも、人によって温度差がある。この温度差は気温から派生した言葉のようだが、普通は、熱い寒いを感じるただの温度差の意味だ。この場合は、お風呂のいい湯加減、冬の熱燗(あつかん)のいい燗加減といった人による違いを示す。政治的使われた場合は、二国間の温度差などと言われたりする。片想いで終わる恋愛の温度差だってある。^^ 総じて、温度差がない方が楽しい展開となるケースが多いようだ。
 とある家庭の様子である。
「パパ! 今度の連休はニャゴ高原へ行くでしょ!?」
「んっ? パパ、そんなこと言ったか?」
「言ったわっ! 先週の日曜。もう、忘れたの?」
「あっ、そうか。パパ、そんなこと言ったか…」
 新聞を読んでいた父親は、小学2年の娘にそう訊(たず)ねられ、否定することも出来ず、逃げをうって暈(ぼか)した。
「言ったわよ。行こうねっ!」
「ははは…ああ、行こう、行こう!」
 とは言ったものの、娘と父親の温度差は大きく、父親は余り乗り気ではなかった。逆に娘は大乗り気で、今日にでも行きたい気分がしなくもない。そこへ母親が現れた。
「今度の連休はワン温泉じゃなかったかしら。あなた、確か、そう言ったわよねっ?」
「んっ? そんなこと言ったか?」
「言ったわよっ! 先週の土曜曜。もう、忘れたの?」
「あっ、そうか。俺、そんなこと言ったか…」
「言ったわよ。行くんでしょ!」
「ははは…ああ、行こう、行こう!」
 母親と娘は互いに顔を見合わせ、ダメだ…のジェスチャ ーをした。ジェスチャーどおり、次の連休はニャゴでもワンでもない近くのファミレスで、形ばかりの食事となった。
 温度差があった場合は、よく掻(か)き混ぜないと、楽しい展開には至らない・・という典型的なお話である。^^ 

                                


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 楽しいユーモア短編集 (4... | トップ | 楽しいユーモア短編集 (4... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事