水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (48)なんとかなるっ!

2019年11月13日 00時00分00秒 | #小説

 不慮(ふりょ)の出来事で窮地(きゅうち)に陥(おちい)ったとしよう。そこで責任者やリーダーに求められるのは落ち着きである。なんとかなるっ! と自分に言い聞かせるか、あるいは他の者達にそう口にすることによって、冷静さが維持される訳だ。困ったとき・・特に命にかかわるような場合は尚更(なおさら)だ。こういうときは楽しい相場の話ではない。なんとかなるっ! と、落ち着けば、得てしていい考えが浮かぶものだ。そうなれば、窮地を脱出できることも可能となる。ただ、なんとかなる! はいいが、なんともならない場合も当然、あるから、心しなければならない。^^
 秋の連休に入り、行楽の山登りに出かけたのはいいが、地図[マップ]にない二手(ふたて)の分かれ道に出食わし、間違った道を選んだばかりに、迷ってしまった数人のグループのお話である。
 一行が進むに従い、道は益々(ますます)、狭くなっていった。
「リーダー! ほんとに大丈夫なんですかっ!!」
「ははは…大丈夫っ! なんとかなるっ!」
 次第にオレンジ色に変化した空を見上げ、不安がるメンバーの一人に、後方からそう訊(たず)ねられたリーダーは、余裕の笑い声で返した。だが、顔は、ちっとも笑ってはいなかった。
『ホホォ~~ホホォ~』
 なんとも不気味(ぶきみ)な声で梟(ふくろう)が泣き始めた。
 そうして道は、ついに獣道(けものみち)のような細さになった。
「戻(もど)ったほうが、よかないですかっ!!」
 ついに、副リーダーが意見を具申(ぐしん)した。
「いや、大丈夫っ! なんとかなるっ! … …いや、なんともならんかっ! よしっ! 戻ろう!!」
 九死に一生を得る・・とは正(まさ)にこのことである。一行は、日没ぎりぎりで下山することが出来た。ゆとりが生まれると、なぜかそれまでの苦が笑え、楽しい気分になる。一行はその夜、宴会で大いに盛り上がった。
 人は窮地に陥ったとき、なんとかなるっ! を起点にして、切り抜けられる妙な生き物・・ということになる。^^

                                


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 楽しいユーモア短編集 (4... | トップ | 楽しいユーモア短編集 (4... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事