あんたはすごい! 水本爽涼
第百六十一回
『嘘をおっしゃい。あなたは内心で、会社の中では聞かれるから困る、と云ってましたよ』
お告げの声は穏やかに私の内心へ語りかけていた。
「参ったなぁ~、すべてお見通しとは…」
『私に見えないものなど何もありません。人の内面や外面、その他、万物の事象、あなた方が科学と云っておられるありとあらゆるものを含むのです…』
「なら、私の未来は?」
そこまで云ったとき、ふと、長風呂になっている自分に気づいた。もう、かれこれ一時間近くは浸かっている計算になる。むろん、バスルームの防水時計を見た上の判断だった。
『そうです。もう随分と浸かっておられますから、話は上がられたあとで…』
そこでお告げは途絶えた。以前にも云ったと思うが、お告げの声は他の者には聞こえない。私の脳に直接、響く声だったが、私の声をやや太くしたような、それでいて低くもなく響くのだった。私はお告げに促されるように浴槽から勢いよく上がった。いつもなら上がったあとの残り湯で洗濯をしてしまうのだが、この日はお告げのこともあり、気も漫(そぞ)ろに浴室から出た。お告げによれば、この段階以降は、いつお告げが霊流してきたとしても不思議ではないのだ。缶ビールを片手に、私はいつになく家の中を、うろついていた。
第百六十一回
『嘘をおっしゃい。あなたは内心で、会社の中では聞かれるから困る、と云ってましたよ』
お告げの声は穏やかに私の内心へ語りかけていた。
「参ったなぁ~、すべてお見通しとは…」
『私に見えないものなど何もありません。人の内面や外面、その他、万物の事象、あなた方が科学と云っておられるありとあらゆるものを含むのです…』
「なら、私の未来は?」
そこまで云ったとき、ふと、長風呂になっている自分に気づいた。もう、かれこれ一時間近くは浸かっている計算になる。むろん、バスルームの防水時計を見た上の判断だった。
『そうです。もう随分と浸かっておられますから、話は上がられたあとで…』
そこでお告げは途絶えた。以前にも云ったと思うが、お告げの声は他の者には聞こえない。私の脳に直接、響く声だったが、私の声をやや太くしたような、それでいて低くもなく響くのだった。私はお告げに促されるように浴槽から勢いよく上がった。いつもなら上がったあとの残り湯で洗濯をしてしまうのだが、この日はお告げのこともあり、気も漫(そぞ)ろに浴室から出た。お告げによれば、この段階以降は、いつお告げが霊流してきたとしても不思議ではないのだ。缶ビールを片手に、私はいつになく家の中を、うろついていた。