水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第百七十一回)

2010年12月14日 00時00分02秒 | #小説

  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百七十一回
「ハハハ…。玉は霊を超越した無限の存在です。霊力は出しますが、霊力の影響を一切、受けません。ただ、交信するだけです…。飽くまでも、だけです」
「はあ…、だけですか。つれないですねえ」
「いやあ、それは飽(あ)くまでも交信を受けた場合です。玉の方から霊力を送る時は、その人の最良の結果を考えますから、つれない、ということはないと思いますよ」
「これから私はどうなっていくんでしょう?」
「また心配しておいでだ…。もっと太っ腹で行きましょうよ。何をしたところで、成るようにしか成らないんですから…」
「そうですよね…。煮付(につけ)先輩のプロジェクトも、成るようにしか成らないのか…」
「ええ、まあそういうことです。今の塩山さんは、どうなるかという結果を知らない。しかし玉には将来のあなたがどうなっていくかが分かっている。つまり、先が見える、ということでしょぅな」
「なるほど…。大よそは分かりました。ああ…、長く話してしまった」
 タイミングを計ったようにママと早希ちゃんが戻ってきた。
「おかわり、作りましょうか?」
「沼澤さん、どうします?」
 と、私が訊(き)く。
「はあ、…じゃあ、もう一杯、戴きます」
「ママ、同じのを…」
「はい…」
 しばらくして、シェーカーの音が小気味よいリズムで流れ始めた。


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残月剣 -秘抄- 《惜別》第十六回

2010年12月14日 00時00分00秒 | #小説

        残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《惜別》第十六回

「別に難しくはないと思いますが…」
 遠慮気味に鴨下が云う。
「なに? 鴨葱に、いい算段があると申すか?」
「はい…。算段と云えるかどうかは別としましても、足取りを追えば樋口さんには必ず会えます」
「ははは…。そんなことだろうと思おた。それは、必ず会えるという手立てでは、なかろうが」
「はあ、それはまあ…。しかし、権十にでも頼めば、相応の知らせは得られるのでは…」
「おお! それはいいぞ。権十なあ…。奴(きゃつ)ならば小走りが利くから、探りも容易かろうしなあ。…鴨葱も最近は味がよくなったなあ」
 
そう云って長谷川は大笑いした。
「ますます美味くなりますよ」
 鴨下は鷹揚に返し、逆手に出た。思わず二人は顔を見合わせて笑い合う。左馬介だけが二人の話に取り残された形である。
「権十に私から頼んでおきます」
 左馬介が漸く二人に割って入り、そう告げた。二人は真顔に戻り、左馬介の顔を見た。


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