今、枚方の学校に文部科学省から「原発副読本」が配布されている。読んだが、福島の原発事故で明らかになった事故の現実、食を含め放射能の汚染の事態は一切触れられていない。突きつけられている科学の限界にはふれず、冊子の最後に「防護措置自体も過大な費用と人員をかけることなく、経済的・社会的にみて、合理的に達成できる限りにおいて行うべき」とのコメントで締めくくられている。命の大切さ、放射能の危険性は伝わってこない内容になっている。
文科省がこの副読本作成を電力業界とつながる「日本原子力文化振興財団」に委託した問題で、文部科学大臣は12月の閣議後の記者会見で「本来であれば、電力会社が中心になって作っている団体に対する委託は見直す必要があった。委託先は適当ではなかった」と釈明しているとおり、この副読本が客観的につくられているとは思えない。
この間、政府姿勢に変化が出てきた。国は原子力の研究と利用の推進を目的に、学校教育を支援する「原子力・エネルギー教育支援事業交付金」を実施してきた。しかし政府は、1月原子力に偏らず自然エネルギーも学校教育で幅広く取り上げるようにするべきだ」と指示。文科省は交付金の運用方針を修正し、これまで対象外だった原発の危険性を学ぶ教材費なども交付対象と変更した。
背景に、福島県等東北の被災地から交付金辞退が相次いだことがあるという。
枚方市教育委員会は、3月に「放射能副読本の子ども達の配布をしないこと」という請願を短時間の審議で否決した。不採択の理由は「放射線、放射能及び放射能物質の基礎知識とその危険性から身を守る方法を学ぶ為の教材の一つとして、活用されるものと認識している」というもの。本当にそういう内容なのか、子ども達に放射能は危なくない。身を守らなくてもそんなに心配ない」と伝わる副読本ではないのかと疑問がのこる。
政府の見解に見られるように、原子力だけでなく自然エネルギー問題として取らえることも必要かも知れない。そして、なによりも「現在の技術水準では、人類と共存できない」現状を明らかにした「命」「人権」の視点こそを子ども達に学んでほしい。